情勢の特徴 - 2016年2月前半
●「1月の景気動向で全国10地域すべてで悪化したことが、帝国データバンクの『全国景気動向調査(1月)』で浮き彫りになった。10地域すべてで悪化したのは2014年8月以来1年5カ月ぶり。うち6地域は2カ月連続の悪化となった。帝国データバンクでは『公共工事の全国的な減少に加え、1月前半の少雪、その後の大寒波など異常気象が響き景況感が大きく悪化した』と分析している。景況感悪化の理由として、公共工事では国、自治体、市区町村の発注件数が大幅に減少しているほか、マンション建設も杭打ちデータ改ざん問題を受け減少傾向であること。さらに太陽光発電も昨年7月から固定買取価格が引き下げられたこともあり、新規受注が落ち込んだほか、土木工事でも暖冬が続いたことで除雪体制費用の回収が難しくなった。また空調設備の需要減も景況感悪化の一因となった。」(『建設通信新聞』2016.02.04)
●「自治体が発注する工事の施工時期を平準化するため、予算上の特例措置を柔軟に活用する動きが広がっていることが、日刊建設工業新聞の調査で分かった。年度末までの工期を延長する場合に必要となる次年度への支出繰り越しの議会承認を、従来の2〜3月議会から前年の11月や9月議会に前倒しする動きが都道府県などの間で目立ってきた。国の発注工事以上に繁閑の波が激しい自治体発注工事の施工時期を平準化する工夫に、国土交通省も注目している。」(『建設工業新聞』2016.02.03)
●「東日本大震災以降、復旧・復興事業に伴う工事量の急増などを背景に、被災地で頻発し、高止まり気味にあった入札不調の減少傾向が鮮明になってきた。国土交通省の調べによると、岩手、宮城、福島3県と仙台市の不調発生率(2015年4−12月期)は、前年同期より5.2ポイント低下し、16.4%と10%台に下がった。特に岩手は半減と改善が顕著になっている。労務単価の機動的な見直しや積算基準の改定を始め、この間に打ち出してきた施工確保対策が奏功した。」(『建設通信新聞』2016.02.04)
●「国土交通省は16年度から、建築基準法に基づく大臣認定を取得した建築材料のうち、建築物の安全に特に大きな影響を及ぼす材料を対象に、工場など生産現場の抜き打ちサンプル検査に乗りだす。昨年発覚した免震ゴムの性能偽装問題を教訓に始める建築材料の不正防止策の一環。大臣認定を取得した免震ゴムをはじめ、鉄骨接合部のボルトや鉄筋、コンクリートなどを対象に、国が抜き打ちで性能や検査・品質管理体制を直接確認して不正を防ぐ。建築材料の抜き打ちサンプル検査は、国が指定する計29の性能評価機関を通じて行う。」(『建設工業新聞』2016.02.04)
●「長野県は8日『建設工事における適正な労働賃金の支払いを評価する総合評価方式』の実施方法の概要を県契約審議会に説明した。労務費を明記した標準見積書を活用して実施する。下請次数を制限するなどの措置も盛り込んだ。予定価格8000万円以上の土木一式・建築一式工事を対象に、4月以降の公告案件から各発注機関1件程度の実施を目指す。」(『建設工業新聞』2016.02.09)
●「埼玉県は16年度、建設業の担い手確保・育成を後押しするため、新たな支援制度を創設する。建設業団体や専門工事業者(型枠工、鉄筋工など)、教育機関らがつくる共同体を対象に、指導者育成や資格取得などの研修に要する総費用の3分の2を県が補助する。補助金額に上限は設けない。支援制度の実施期間は16〜18年度の3カ年を想定している。16年度予算案に関連経費として6400万円を計上した。」(『建設工業新聞』2016.02.15)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、田中宏幸議長)は1日、2015年11月14日に実施した『統一土曜閉所運動』の結果を発表した。閉所率(振替日での閉所も含む)は前年同月比9.2ポイント増の59.6%で、11月の運動では過去最高を更新した。このうち民間工事が主体で閉所が厳しいとされる建築工事は改善が顕著で、10.9ポイント増の57.1%と同じく過去最高を記録。国土交通省発注工事も13.1ポイント増の66.0%と11月の運動では過去最高となった。」(『建設通信新聞』2016.02.02)
●「厚生労働省は、求職者支援法施行規則改正省令案をまとめた。求職者が訓練の受講より早期就職を優先するとのニーズに対応するため、求職者支援訓練制度を見直す。▽基礎訓練コースの期間短縮▽全国的に人材不足が深刻な建設分野は、建設機械運転などの基礎コース短期訓練を全国的に期間限定で実施し、訓練機関への訓練奨励金単価を引き上げ▽建設分野の東日本大震災被災地特例措置の期限を1年延長▽育児中の女性などが訓練の受講をしやすくなるよう、託児サービス支援付訓練コースの設定推進▽訓練実施機関の確保――が主要項目。全国展開する建機運転などの基礎コース短期訓練は、10月1日に施行する。同訓練と奨励金単価の引き上げは、2020年3月31日までに始める訓練を対象とした期間限定とすることも決めた。改正省令は3月末までに公布する。」(『建設通信新聞』2016.02.04)
●「建設業が『賃金』『時短』『雇用』の3指標とも2015年に改善していることが、厚生労働省の勤労統計調査で分かった。建設業界はこれまで、低賃金と長期労働、将来不安によって労働者数の減少問題に直面。さらに需要増と労働人口減少が一段と顕著になる中で人材確保が喫緊の課題となっていた。そのため、この数年間、建設業界が取り組む担い手確保・育成に対し、政治や国土交通、厚生労働両省を始め行政などが支援を進めていた。今回の15年勤労統計調査で、『賃金』と『雇用』が上昇する一方で『時短』も進むという、好循環の流れが初めて浮き彫りになった格好だ。」(『建設通信新聞』2016.02.12)
●「国土交通省は1月29日、2015年(15年1−12月)の建設工事受注動態統計調査報告(大手50社)をまとめた。受注総額は前年比1.4%増の14兆1240億円で6年連続での増加となった。特に前年比17.3%減となった公共工事に対して、19.4%増と好調に推移した民間工事が下支えした形だ。浮き沈みが大きい海外工事は58.2%減の4545億円で3年ぶりの減少となった。受注総額のうち、国内建設工事は6.5%増の13兆6694億円。内訳は建築が14.6%増の9兆3089億円、土木が7.5%減の4兆3606億円となっている。」(『建設通信新聞』2016.02.01)
●「清水建設の2015年4〜12月期の連結営業利益は620億円と、前年同期に比べて倍増したようだ。受注高の8割近くを占めるオフィスビルや工場など建築工事の利益率が改善。鋼材などの建設資材の上昇が一服し、コストを押し上げていた人手不足も和らいだため、利幅を確保しやすくなっているようだ。」(『日本経済新聞』2016.02.02)
●「中小建設企業の本業における経営力向上(生産性向上)・競争力強化に向け、政府が中小建設業の経営力向上目標や方法などを示すガイドラインを策定する予定があることが分かった。複数の政府関係者が明らかにした。ガイドラインに盛り込む内容は、今後検討を進めていくとみられる。政府は、開会中の国会に『中小企業新事業活動促進法改正案(中小企業等経営強化法)』を提出する。閣議決定は2月下旬を見込む。同法案では、特定の事業分野ごとに事業所管大臣による『事業分野別指針』(ガイドライン)の策定を盛り込み、事業分野の特性に応じた支援の仕組みを整える。また、ガイドラインに沿って中小企業が事業計画(経営力向上計画)を国に申請し、認定を受けた中小企業が税制や金融の支援措置を受けることができる制度を創設する。」(『建設通信新聞』2016.02.03)
●「大和ハウス工業が5日発表した2015年4〜12月期連結決算は、純利益が1195億円で前年同期比40%増え、9カ月間で最高になった。賃貸住宅の好調に加え、消費増税の反動減の影響が残っていた戸建て住宅の販売も持ち直した。衣料品チェーンなどの商業施設や物流拠点、工場建設の受注は足元も好調。16年3月期通期の純利益も前期比31%増の1540億円と最高を更新する見込みだ。」(『日本経済新聞』2016.02.06)
●「大林組、鹿島、清水建設、大成建設の上場ゼネコン大手4社の15年4〜12月期決算が9日出そろった。豊富な手持ち工事の消化が進み、全社が増収。完成工事総利益(粗利益)率の改善が着実に進んだことで、全社が営業増益となった。業績の先行指標となる受注高(単体ベース)は、前年同期に国内土木で大型案件を獲得した反動減があったものの、大林組、鹿島、大成建設の3社が前年同期を上回った。16年3月期は大成建設を除く3社が増収、4社が営業増益を見込んでいる。」(『建設工業新聞』2016.02.10)
●「福島第1原発事故に伴う福島県内での放射性物質の際染作業で、政府は住宅周辺などの生活圏に限定している対象区域を、生活圏からやや離れた里山にも広げる方針を固めた。環境省は昨年12月までに生活圏外の除染は行わない方針を固めていたが、健康への悪影響を懸念する地元自治体からの要望や、昨年9月の関東・東北豪雨で放射性物質を含んだ土壌などの流出が相次いだことなどを受け方針を転換。少数ながらも居住者がいる里山の除染も16年度から行うことにした。対象区域の拡大を柱とする16年度からの新たな除染方針は、復興庁、環境省、農林水産省の関係3省庁の閣僚が参加して4日にも発足させるプロジェクトチーム(PT)での協議を経て、東日本大震災の発生から5年を迎える3月11日までに正式に決定する。」(『建設工業新聞』2016.02.03)
●「政府は5日の閣議で、今国会に提出する都市再生特別措置法と都市再開発法の一括改正案を決定した。特措法改正案では大都市での大規模ビル開発への支援を強化。国の建設費融資などが受けられる国士交通大臣認定の『民間都市再生事業計画制度』への適用申請期限を5年延長する。都市再開発法改正案では地方都市でのコンパクトシティーづくりへの支援を強化。国の手厚い建設費補助などが受けられる市街地再開発事業の活用を促すため、施行要件を大幅に緩和する。」(『建設工業新聞』2016.02.08)