情勢の特徴 - 2016年2月後半
●政府は19日、2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場整備について、サッカーくじの売り上げから建設費の財源に充てる割合を引き上げることや、都道府県負税制度を創設することを柱とする日本スポーツ振興センター(JSC)法の改定案を閣議決定した。16年度から23年度までサッカーくじからの建設費への繰り入れを売上金額の5%から10%に引き上げる。また、地域の発展に資するものであればJSCの施設建設に都道府県が費用の3分の1を負担すると定め、東京都が経費の一部を負担できるとしている。政府は昨年12月の関係閣僚会議で、大成建設と建築家隈研吾民らによる技術提案書を採用。関連経費も含めた総工費1581億円を国費2分の1、サッカーくじと東京都でそれぞれ4分の1と決めていた。(『しんぶん赤旗』2016.02.20より抜粋。)
●「20政令指定都市の16年度当初予算案が19日までに出そろった。一般会計の総額は12兆7595億2200万円と前年度に比べ3.2%増加。景気の回復基調などを反映し、積極的な予算編成を打ち出す市が目立った。投資的経費の総額は6.6%減の1兆5318億4400万円。大規模な建設関連事業の完了などによる反動減で2〜3割の大幅減となる市もあった。…公共工事などに充てる投資的経費が前年度当初予算比で2桁の大幅増となったのは、約3割の伸び率を示した札幌市のほか、1〜2割増の堺、川崎、熊本、名古屋の4市。学校や庁舎など公共施設の改築、市街地再開発事業の支援などが押し上げ要因となっている。一方で、前年度からマイナスとなったのは過半数の12市に上り、全体的には公共投資の抑制傾向が浮き彫りになった。東日本大震災からの復興が進む仙台市については、災害公営住宅の建設と防災集団移転事業がほぼ終了するなど、復興関連事業の進展が減額要因に挙げられる。」(『建設工業新聞』2016.02.22)
●「高市早苗総務相は26日の閣議で、2015年国勢調査の人口速報値を報告した。15年10月1日時点で外国人を含む日本の総人口は1億2711万47人と、10年の前回調査に比べ94万7305人(0.7%)減少した。国勢調査で総人口が減るのは1920年の調査開始以来、初めて。大阪府が68年ぶりに減少するなど39道府県で人口が減り、東京圏への一極集中が進んでいる。総務省は『出生から死亡を引いた人口の自然減が大きくなっており、人口減少局面にはっきり入ってきた』と説明している。同省が毎月発表している推計人口では08年に総人口のピークを迎えたが、10年の前回国勢調査では在留外国人の増加などの影響で、05年比0.2%増だった。男性は6182万9237人、女性は6528万810人。」(『日本経済新聞』2016.02.26)
●「国土交通省は、地方自冶体が発注する工事の『歩切り』根絶に向けて直談判に乗りだす。総務省と連名で数度にわたって行ってきた実態調査を経てもなお、歩切りを『見直すことは考えていない』とした自治体が3団体残った。国交省の担当者がこれら団体へ月内にも直接出向いて首長と面会し、改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の趣旨をあらためて説明。適切な積算に基づく設計金額の一部を切り下げて予定価格とすることは違法行為だとして見直しへの理解を求める。」(『建設工業新聞』2016.02.17)
●「山形県は入札契約制度を一部改正、16年度から工事と業務それぞれの低入札価格調査基準価格を見直す。工事は一般管理費の算定割合を、現行の50%から55%に引き上げる。これにより予定価格に対する比率は89%から90%に上昇する見込みという。現行でも同県は国の基準を上回る比率となっているが、これがさらに高まることになる。業務についても一般管理費と諸経費、技術経費を国の基準より10%程度上乗せする。土木・補償や測量など業種ごとに算定値を見直すことで、現行の76〜82%が82〜86%に上昇する見込みだ。工事ではこのほか、契約約款を一部見直し、社会保険未加入業者との1次下請契約を原則禁止とする。違反した場合は指名停止や工事成績評定の減点といった措置を講じる。」(『建設工業新聞』2016.02.17)
●「国土交通省は2016年度に、人員や技術力が不足している自治体のインフラ維持管理支援策として、新手法の『技術者派遣』を試行する。インフラ関連の知識やノウハウを持った民間技術者を自治体に送り込み、点検・診断や補修・修繕、計画策定といったメンテナンス事務を補助・助言する。民間からの技術者派遣は、社会資本整備審議会・交通政策審議会技術分科会技術部会が、15年2月に発表した提言『市町村における持続的な社会資本メンテナンス体制の確立を目指して』に盛り込まれた具体施策の1つ。従来型の委託と異なり、自治体組織の一員として首長の指揮・命令系統下に入り、業務に当たるのがポイントだ。技術職員を新たに雇用・育成することが困難な市町村にとって、維持管理に精通した即戦力を確保できる方策として期待が高い。派遣を通じて正規職員への技術移転も図る。」(『建設通信新聞』2016.02.22)
●「石川県加賀市は、公契約条例のたたき台をまとめた。所管課ではパブリックコメントを反映した最終案を3月市議会に上程する方針で、条例化されれば、北陸の自治体で初めての運用となる。施行日は7月1日を予定している。公契約条例は、公共調達の受注者に、自治体が定める作業報酬の下限額以上を労働者に支払うことを求める制度。素案には、▽適切な価格の積算▽適切な公契約の締結▽発注の平準化▽市内事業者の受注機会の確保▽下請負人との契約▽実施状況の公表−−などを明記している。」(『建設通信新聞』2016.02.26)
●「地方創生の実現に向けて全都道府県が3月までに策定する『まち・ひと・しごと創生総合戦略』の案が出そろった。既に策定済みの42都道府県と今後策定する5府県のうち27府県が、地元建設業の担い手確保・育成策を盛り込み、その多くが若者と女性の入職・定着を図る施策に力を入れていくのが特色。建設業を地方創生の主力の一つと明確に位置付け、地域の活性化や防災・減災に貢献する社会資本整備を着実に進められるようにする狙いがある。地方創生戦略の策定は、まち・ひと・しごと創生法で全都道府県・市町村に努力義務とされている。…建設業の担い手確保・育成策を戦略に盛り込むのは27府県。…大阪府は、技術者が不足している市町村のインフラの維持管理体制を補完する取り組みを推進。…山梨県は雇用創出に有効な県内業者の経営多角化への補助金事業を展開。福島県は若手の担い手確保・育成で業界との連携を打ち出す。建設業への若者と女性の入職・定着促進は、厚生労働省が3月に正式決定する第9次建設雇用改善計画(16〜20年度)の最終案でも最優先課題に位置付けられている。」(『建設工業新聞』2016.02.29)
●「国土交通省は17日、公共工事従事者を対象に、2015年10月に実施した公共事業労務費調査に基づく、社会保険加入状況の概要を明らかにした。雇用、健康、厚生年金3保険すべての全国平均加入率は、企業単位が95.6%、労働者単位が72.0%となり、それぞれ前年同期より2.8ポイント、4.7ポイント上昇した。企業単位を地方別にみると、著しく低かった関東の加入が大幅に進んだ結果、全国の9ブロックすべてで加入率90%を超えた。労働者単位も全国的に上昇傾向にあり、次数別では2次、3次下請けとも初めて60%台に乗った。」(『建設通信新聞』2016.02.18)
●「国土交通省が、総務省の労働力調査(暦年平均)を基に作成した建設業就業者の現状によると、2015年の就業者数は前年より5万人少ない500万人となった。このうち、技能労働者数は10万人減の331万人。他産業に比べて高齢者層の厚い建設業界において、今後10年間で130万人近くがリタイアするとも言われている『大量離職時代』の兆しが表れ始めた。技能労働者数の推移を年齢階層別にみると、55歳以上は前年比4.1%(4万8000人)減の111万9000人となった。製造業、全産業ともこの層はまだ増加しており、建設業の高齢化がいかに進行しているかが分かる。特に退職間近の65歳以上は42万4000人となり、初めて40万人を超えた。40万人以上の労働力が確実に、今後数年で一斉にいなくなる。一方、29歳以下の若年層は1.9%(7000人)減の35万7000人だった。製造業も同様の傾向で、日本全体の少子化などが背景にあるとみられる。」(『建設通信新聞』2016.02.18)
●「厚生労働省は、建設業の労働災害防止に向けた16年度の新規重点施策をまとめた。建設工事の発注者が十分な安全衛生経費を確保し、受注者の元請・下請業者にきちんと支払われているかどうかを把握する初の実態調査を実施。問題が見つかれば是正を働き掛ける。2020年東京五輪までの建設需要の急増にも対応。首都圏の新規入職者向けに、600現場以上で専門家による安全衛生教育を行う取り組みにも乗りだす。」(『建設工業新聞』2016.02.25)
●「厚生労働省は26日、2016年度の『建設労働者緊急育成支援事業』の委託先候補として建設業振興基金を選んだことを明らかにした。25日に有識者と職員で構成する『企画書評価委員会』を開き、26日付で基金の企画書を選定したと通知した。16年度予算成立後に契約を結ぶ。この事実は、建設産業の担い手確保・育成に特化した厚労省の建設人材確保対策のうち、15−19年度の5年間で1万8000人の建設労働者を養成する緊急育成支援対策3事業の1つ。5年で5000人の建設技能労働者を養成する計画で、16年度は2年目となる。16年度は、前年度比3億2500万円増となる9億2447万6000円以内の予算で、前年度を400人上回る1000人の養成を見込む。実施期間は17年3月31日まで。また、養成対象職種を型枠工や鉄筋工、とび工など建設駆体職種に加え、電気や配管など建設設備職種にも広げる。」(『建設通信新聞』2016.02.29)
●「大手・準大手ゼネコンの2016年3月期第3四半期(15年4−12月)決算が出そろった。工事採算の改善に伴い、全25社が連結営業利益率を伸ばし、第2四半期時点に比べて本業の回復傾向がより一層鮮明になった。業績の先行指標となる受注高(単体)は、製造業を中心に民間設備投資が増加し、建築で半数以上が前年同期を上回った一方、土木では前期に受注した大型工事の反動から過半数が2桁の減少幅を示しており、通期の受注高は総じて減少を見込んでいる。」(『建設通信新聞』2016.02.16)
●「日本建設業連合会(日建連、中村満義会長)は22日、東京都内の本部で理事会を開き、建設技能者の処遇改善に向けて適正水準の賃金を支払うよう会員企業にあらためて周知した。国土交通省が17日の『建設産業の担い手確保・育成に係る意見交換会』で、1日に引き上げた公共工事設計労務単価を建設技能者の賃金に反映させるよう要請したのを受けた措置。中村会長は『これまでの処遇改善のための取り組みをさらに一層強化してほしい』と会員企業の幹部に求めた。」(『建設工業新聞』2016.02.23)
●「石井啓一国土交通相は、24日の衆院国土交通委員会(谷公一委員長)で所信表明を行い、今年を『生産性革命元年』と位置付けて省を挙げて取り組みを推進すると強調した。わずかな投資で過去の投資効果が開花する『ストック効果開花プロジェクト』や、社会資本整備のあらゆるプロセスに情報通信技術(ICT)などを導入して生産性を高める『i−Construction』を進め、『賢く投資・賢く使う』インフラマネジメント戦略への転換を図る方針を示した。」(『建設工業新聞』2016.02.25)
●「東京電力福島第一原子力発電所事故の除染で発生した汚染土などを保管する中間貯蔵施設に関し、施設本体工事と汚染土などの本格輸送の受注を目指すゼネコンなどの企業に対する事実上の受注条件として、輸送車両や作業員の被ばく線量などの情報を一元管理する『次期総合管理システム』と専用回線でつなぐシステムの構築を求めていることが分かった。環境省とともに『輸送統括管理者』であるJESCO(中間貯蔵・環境安全事業) が明らかにした。環境省が今後発注する施設本体工事・本格輸送業務の特記仕様書などには、工事や輸送の開始時までの専用システム構築を明記するとみられる。」(『建設通信新聞』2016.02.16)
●阪神・淡路大震災の被災者が入居する借り上げ復興住宅から転居を迫られている。神戸市は都市再生機構(UR)との20年の契約期限を理由に16日、同市兵庫区のキャナルタウンウエスト1〜3号棟の入居者3人にたいし、建物の明け渡しと損害賠償を求め神戸地裁に提訴した。入居と借上復興住宅弁護団、ひょうご震災復興借り上げ住宅協議会は、市長の専決処分による訴訟の動きにたいし、話し合いによる解決を求めてきた。西宮市では、同様の提訴議案が市議会で継続審議とされ、自治体が借り上げ住宅入居者を提訴するのは初めて。(『しんぶん赤旗』2016.02.17より抜粋。)
●「日本で風力発電の導入が加速する。国内首位のユーラスエナジーホールディングス(HD)と同2位のJパワーがそれぞれ2020年までに600億円規模を投資する。国内全体の風力発電能力は現在の約3倍、原子力発電設備10基分に増える見通しだ。政府は現在の太陽光偏重の是正に動いており、温暖化ガス削減の国際枠組み『パリ協定』で掲げた目標の達成に向け、風力も再生可能エネルギー活用の新たな柱になりそうだ。」(『日本経済新聞』2016.02.19)