情勢の特徴 - 2016年4月前半
●「国土交通省は1日、2016年度当初予算における一般公共事業や官庁営繕事業などの配分額を決めた。配分額は前年度比1%増の7兆6155億1900万円(事業費ベース)。配分額のうち、直轄事業は2兆4408億0600万円、補助事業は5兆1747億1300万円となった。直轄事業の68億0600万円、補助事業の240億0600万円を保留額としている。」(『建設通信新聞』2016.04.04)
●「政府は、2016年度予算の執行について、前倒し契約が可能な公共事業などの8割程度を上期(4−9月)に執行する方針を固めた。麻生太郎財務相が5日の閣議後会見で『16年度予算についてはできる限り前倒しで契約締結などを進め、公共事業については上期末において予算現額12兆1000億円の8割程度が契約済みとなることを目指す』と表明。対象事業のうち、10兆円規模の契約を9月末までに終えるよう各大臣に要請した。個人消費などが停滞する中、早期の予算執行で景気をてこ入れするのが狙い。景気の下振れリスクに対応するため、補正予算など下期の経済対策も求められることになりそうだ。」(『建設通信新聞』2016.04.06)
●「国土交通省が取り組んできた地方自治体発注工事での『歩切り』の全面廃止が達成される見通しとなった。同省などの繰り返しの要請にもなお『見直しを行う予定はない』としていた3自治体すべてが見直しを表明した。適正な予定価格設定を定めた改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)に違反する行為と位置付けられた歩切りが全面廃止されることで、品質確保の前提となる適正な競争環境の整備が前進することになる。」(『建設工業新聞』2016.04.01)
●「国土交通省は、都道府県が発注する工事で施工時期を平準化する取り組みの実施状況を緊急調査した結果をまとめた。平準化目的の債務負担行為の活用は、単独事業、補助事業、交付金事業ともに半分以上の団体が活用。16年度はその数がさらに増える見通しだ。年度内に支出が終わらない場合に年度末直近の議会で行っていた繰り越し承認手続きをそれ以前の議会に前倒ししているのは29団体。さらに6団体が16年度から『実施』または『実施を検討』と答えた。」(『建設工業新聞』2016.04.05)
●「農林水産省は、16年度に発注する直轄土木工事に適用する積算基準を決定した。最大の柱は、積算作業を効率化・簡素化できる『施工パッケージ型積算方式』を10月から導入すること。12年10月に先駆けて導入した国土交通省の手法に倣い、土工など農業土木34工種を対象に、直接工事費を構成する機械経費、労務費、材料費といった各単価を一つの標準単価としてまとめて設定し活用する。今後は10月までを同方式の導入に向けた準備期間と位置付け、標準単価の設定作業を進める。」(『建設工業新聞』2016.04.05)
●「増加の兆しを見せていた都道府県における土木・建築部門の職員数が再び減少に転じている。総務省の定員管理調査(2015年4月1日時点)によると、都道府県の土木・建築部門(一般行政部門)に所属する職員数は2年ぶりに減少し、47都道府県中34道府県で減少した。東日本大震災からの復旧・復興工事の減少や公共投資需要の一服感が影響しているとみられる。自治体による職員確保の勢いが収まることは、担い手確保に悩む地域建設業には好材料になるものの、改正公共工事品質確保促進法に沿った適正な予定価格の算定や社会資本の適切な維持管理にはマイナスの影響を及ぼす可能性もある。」(『建設通信新聞』2016.04.06)
●「国土交通省は、16年度の直轄港湾工事の入札に適用する総合評価方式の実施方針を決めた。他のインフラに比べ工程が天候に左右されやすい港湾工事でも休日を確保できるようにするため、『休日確保方針提案型』と呼ぶ新方式を試行。作業船の減少に歯止めを掛けるため、作業船の保有と環境性能に対する評価の配点ウエートも高める。」(『建設工業新聞』2016.04.07)
●「国土交通省は11日、石井啓一国交相が本部長を務める国土交通省生産性革命本部の2回目の会合を省内で開き、生産性革命プロジェクト第2弾として7件を選定する。3月の初会合で選定した初弾6件に続くもので、都市や不動産、道路、インフラ海外展開といった同省所管各部門から上がった各種プロジェクトを具体化させ、生産性を高める事業に省を挙げて取り組む。今後も本部会合を月1回のペースで開き、順次プロジェクトを選定していく予定だ。石井国交相は、今年を『生産性革命元年』と位置付けている。3月に設置した本部が、各局から提案のあった生産性革命プロジェクトを選定することで、具体的な取り組みを加速させる。第1弾プロジェクトのうち、建設現場の生産性を向上させる『i-Construction』については、同日、有識者委員会の小宮山宏委員長(三菱総合研究所理事長)が石井国交相に報告書を提出する。会合で選定予定の第2弾プロジェクトの内訳は、『社会のベース』の生産性を高めるプロジェクトが2件、『産業別』の生産性を高めるプロジェクトが4件、『未来型』投資・新技術で生産性を高めるプロジェクトが1件。」(『建設工業新聞』2016.04.11)
●「国土交通省は、建設労働者の技能と経験を『見える化』し、処遇改善などに役立てる就労履歴蓄積システムの開発支援に着手する。システムの要件や仕様などを作成する調達支援・開発監理支援業務の企画競争を5月初旬に公示し、支援事業者の募集を始める予定だ。国交省は、民間主体で進められる予定のシステム開発を支援するため、2016年度予算に3000万円を新規計上。16年度後半の試行運用、17年度の本格運用を目指している。」(『建設通信新聞』2016.04.14)
●「国土交通省は、専門工事業における繁閑調整の支援ツールとして、地域、工程、季節による繁忙期のズレを“見える化”する繁閑予測の推計モデルを開発した。受注者サイドに限りある技能労働者の有効活用を促す一方、ディベロッパーなどの発注者にとっても発注時期の選定や適正な工期設定に役立つことになりそうだ。結果として受発注者双方での平準化につながる可能性もある。」(『建設通信新聞』2016.04.15)
●「国や自治体の関係者らで組織する内閣府の『羽田空港周辺・京浜臨海部連携強化推進委員会』(座長・和泉洋人首相補佐官)は、多摩川を隔てて隣り合う羽田空港(東京都大田区)と川崎市周辺のインフラ整備の工程表をまとめた。新設する連絡道路の橋梁部の構造形式などが固まり、16年度中の都市計画決定に向けて環境影響評価などの関連手続きのほか、工事関係の契約手続きにも順次着手する。17年度前半に着工し、20年度中の完成を目指して工事を進める。」(『建設工業新聞』2016.04.15)
●「東日本建設業保証がまとめた15年度の公共工事前払金保証統計で、東日本大震災の復興工事が続く東北地区で請負金額が5年ぶりに減少したことが明らかになった。建設業界では『復旧・復興工事の発注はピークを越え、手持ち工事の消化を進めている』(準大手ゼネコン)との見方でほぼ一致しており、被災地の建設市場の潮目が変わったことを裏付けた。業界各社の今後の事業戦略にも影響が出てきそうだ。」(『建設工業新聞』2016.04.15)
●「厚生労働省は1日から、中小建設業向けに技能労働者の雇用環境の改善を財政支援する『建設労働者確保育成助成金』を拡充する。最上位のキャリアに当たる登録基幹技能者と、女性の雇用環境を改善する2種類の助成メニューを新設。登録基幹技能者を雇用する事業主に対し、最長3年間で段階的に賃金を引き上げていくことを条件に人件費を助成する。自社で施工管理している建設現場に女性専用のトイレや更衣室といった施設をリースで確保する場合の費用も助成する。」(『建設工業新聞』2016.04.01)
●「国土交通省は、建設産業の中長期的な担い手の確保・育成で、ターゲットを▽若者の入職▽中途採用▽離職防止(現役)▽女性の活躍推進▽高齢者(引き留め)―の五つに分類して、それぞれに対応した施策を検討する。ターゲットを明確化することで現行施策で不十分な点を洗い出し、具体策を講じることで、建設生産を支えるのに必要な技能労働者の確保につなげる狙いだ。」(『建設工業新聞』2016.04.04)
●「国土交通省が15年4月に開始した『外国人建設就労者受け入れ事業』で、今年3月末までの1年間の受け入れ人数が400人を超えた。同2月末までの受け入れ人数は293人。特定監理団体と受け入れ企業が共同で作る大臣認定の適正監理計画によると、16年度末までに累計で1000人程度が入国する予定だという。」(『建設工業新聞』2016.04.04)
●「神奈川県は、2015年度賃金実態調査(工事・一般委託)の結果を公表した。工事の職種別平均賃金は、25人以上のサンプル数の多い職種では、法面工、とび工を除き、設計労務単価の約8割以上の賃金が支払われていた。元・下請け別では、12職種のうち約6割に当たる7職種で1次下請けが元請けの賃金を上回る。さらにこのうち4職種で2次下請けの賃金が1次下請けの賃金を超えた。工事の調査期間は15年11月から12月まで。県土整備局発注案件が対象で、対象事業者数は366社、有効回答件数は213社(58.2%)だった。設計労務単価と平均賃金の関係は、配管工の94.1%が最も高く、次いで運転手(特殊)93.4%、特殊作業員91.5%、軽作業員91.2%と続いた。全23職種のうち、9職種で80%を上回っている。一方、最も低い値を示したのは、橋りょう特殊工の47.7%で、橋りょう塗装工56.6%、鉄骨工57.1%、鉄筋工60.8%だった。」(『建設通信新聞』2016.04.05)
●「札幌市は15年度の元請・下請関係実態調査結果をまとめた。下請契約で標準見積書の活用については、元請、下請企業とも活用率が上昇したことが分かった。今回から調査を開始した技能労働者の賃金に関しては、『引き上げた』『引き上げる予定』との回答が元請、下請企業ともに過半数を占め、賃金水準の改善が進んでいる実態が明らかになった。」(『建設工業新聞』2016.04.05)
●「建設業労働災害防止協会(建災防、錢高一善会長)は、建設業のメンタルヘルス対策に関する取り組みを加速させる。工事現場での実施を建設会社に求める『健康KY』と『無記名ストレスチェック』について具体的な手法を検討。建設労務安全研究会(労研)の会員企業の現場で試行し、実施マニュアルをまとめる。建設会社の本・支店と現場の双方で対策の必要性が高まっていることから、医学的な事象や判例を考慮したテキストの整備、シンポジウムによる普及啓発にも取り組む。」(『建設工業新聞』2016.04.11)
●「人材の確保・育成を目的に建設業界が取り組む『処遇改善』が統計上でも明確になりつつある。昨年末の年末賞与や月間給与額は、前年同期比・同月比ともに増加する一方、実労働時間も所定内・所定外ともに減少しつつある。賃金が上昇、労働時間もわずかとはいえ短くなる『賃金アップ』+『時短』の取り組みが徐々に広がっている格好だ。」(『建設通信新聞』2016.04.12)
●「厚生労働省は中小企業で働く人が長時間労働を強いられる原因に親事業者からの『下請けいじめ』が疑われる場合、中小企業庁や公正取引委員会への通報を始める。中小企業が無理な納期で受注したり、極端に安い価格で仕事を請け負って利益確保のために残業を余儀なくされる事態を防ぐ。政府が5月にまとめる『ニッポン一億総活躍プラン』に盛り込む方針だ。現在中企庁や公取委と調整を進めており、2016年度から始める。現状でも賃金不払いなどの問題を把握した際に、下請けいじめが原因であると疑われるときは厚労省から中企庁や公取委に通報する制度があり、その仕組みを長時間労働の解消にも応用する。 具体的には、労働基準監督署の調査で長時間労働が確認され、その理由として親事業者からの極端に短い納期での発注や不当に低い金額での発注などが疑われる場合、中企庁や公取委に通報して改善を促す。通報の際には下請け事業者の意向を事前に確認することを必須にする。」(『日本経済新聞』2016.04.15)
●「環境省は3月31日、1日から適用する除染特別地域内の直轄除染等工事で使う設計労務単価が各職種で上昇することを踏まえ、技能労働者の賃金を引き上げるよう、日本建設業連合会と全国建設業協会の2団体に対し文書で要請した。両団体には、技能労働者の賃金引き上げなどの処遇改善を通じ、若年層の入職促進に向けて、会員企業に対し適切な対応を講じるよう周知徹底を求めた。要請文書では、労務単価の上昇を技能労働者の処遇改善につなげるためには、建設業界全体が一定の共通認識を持った上で取り組みを進める必要があると指摘。元請企業には適切な価格での下請契約締結の徹底とともに、下請企業に対し、技能労働者への適正水準での賃金支払いを要請するなどの特段の配慮を求めた。専門工事業者にも、雇用する技能労働者の賃金水準の引き上げを要請した。」(『建設通信新聞』2016.04.01)
●「東京商工リサーチがまとめた2015年度(15年4月〜16年3月)の建設業の倒産(負債1000万円以上の企業倒産)は前年度比9.7%減の1690件と年度集計としては7年連続で減少し、1990年度(1579件)以来25年ぶりの低水準にとどまった。負債総額は1806億4900万円(前年度比25・2%減)と2年連続で前年度を下回った。年度集計の負債総額が2000億円を割り込んだのは26年ぶり。負債50億円以上の大型倒産がゼロ(前年度2件)だったことが影響した。」(『建設工業新聞』2016.04.11)
●「日本型枠工事業協会(日本型枠、三野輪賢二会長)は、社会保険加入の原資となる法定福利費を別枠表記した標準見積書の作成用ソフトウエア(16年度版)を開発し、一般販売を始めた。保険料計算の基準となる日額賃金や、見積書への法定福利費と本人負担分の社会保険料の表記を複数のパターンから選択でき、契約相手などに適した様式の見積書を効率的に作れる。作成手順書を含めてCDに収録。1枚5000円(税込み)で販売する。…最新の社会保険料率と公共工事設計労務単価を反映させた。保険料計算の基準単価は本人負担を含むケースと含まないケースの日額賃金、本人負担額を含む公共工事設計労務単価、法定福利費を含む日額人件費から選択可能。本人負担分や法定福利費の計算・表示は、▽本人負担・法定福利費100%加入を前提▽該当工事の加入者分だけ▽未加入者分を減額―の三つから選べる。」(『建設工業新聞』2016.04.14)
●「清水建設は14日、2016年3月期の連結純利益が前の期比75%増の585億円になったと発表した。25年ぶりに最高益を更新し、従来予想より増益幅が広がる。首都圏の再開発やインフラの更新需要が高まり、国内建築工事の採算が大きく改善した。年間配当は前の期より8円増やし、16円とする。売上高は前の期比5%増の1兆6450億円、営業利益は940億円と前の期より88%増えた。従来予想(810億円)を大きく上回る。」(『日本経済新聞』2016.04.15)
●「東京都は31日、2020年東京五輪大会後の選手村整備で、約5650戸の住宅を配置するまちづくり計画を発表した。建物の間取りを広げるなどして従来構想から約300戸減らすほか、全体の3割弱を賃貸住宅に充てる。五輪開催のレガシー(遺産)として、次世代エネルギーなどを活用した持続可能なまちづくりを進める。」(『日本経済新聞』2016.04.01)
●「熊本県益城町で震度7の揺れを観測した地震で、警察庁は15日、午前6時時点で死者が9人になったと発表した。益城町で倒壊家屋の下敷きになるなどして20〜90代の男女8人が亡くなったほか、熊本市東区の家屋内で転倒した女性(68)が搬送先の病院で死亡した。熊本県によると午前5時現在、県内のけが人は少なくとも860人で、うち53人が重傷。気象庁は15日、今回の地震を『平成28年熊本地震』と命名し、『強い余震が発生している。危険な場所に近づかず安全を図ってほしい』と注意を呼び掛けた。震度1以上の余震は15日正午までに125回。菅義偉官房長官は15日朝の記者会見で『夜間に明らかでなかった被害状況の全容把握と救命救助を最優先に災害応急対策に万全を尽くす』と述べた。熊本県によると、午前10時時点で県内505カ所に計約4万4千人が避難した。県内5カ所の主要病院だけで少なくとも負傷者計約390人を受け入れた。益城町では多数の家屋が倒壊しており、自衛隊と警察、消防は計約4千人以上の態勢で救助活動を行っている。」(『日本経済新聞』2016.04.15)