情勢の特徴 - 2016年4月後半
●「国土交通省は18日午前、熊本地震に関する非常災害対策本部の第7回会議を開き、同省としての主な対応状況(同日午前6時現在)をまとめた。『住環境』『物流』『交通』 『土砂災害』を4本柱に据え、被災者の安全・安心の確保やインフラの応急復旧、2次災害の防止などに全力を尽くす。住環境関係では、最も激しい揺れにおそわれた熊本県益城町で、被災建築物の応急危険度判定を実施中。調査を終えた334棟のうち、209棟が危険、87棟が要注意と診断された。今後は熊本県内の他市町村や大分県由布市などでも判定作業を行う予定だ。被災者の住まいを確保するため、公営住宅や民間賃貸住宅の空き住戸の確認を急いでいる。受け皿の不足に備え、県からの要請があり次第動けるよう、プレハブ建築協会に対して応急仮設住宅の建設準備も指示した。エレベーターの閉じ込めは49台で発生したが、すべて救出を完了した。…確認できている土砂災害の発生件数は71件。垂玉温泉・地獄温泉地区の孤立は解消された。今後は重要交通施設が寸断されている個所や、人的被害が発生している可能性があり2次災害防止が必要な個所、家屋への被害がさらに拡大する恐れのある個所など、優先度の高いところを重点的に対策する。」(『建設通信新聞』2016.04.19)
●「熊本地震を受けて全国の自治体からの支援の輸が広がっている。上下水道や電気などのライフラインが寸断され、避難先で不自由な生活を送っている市民への救援物資の提供のほか、医療や建設関連職員の派遣など、物的・人的支援を継続的に実施。…各自治体では人的支援として、災害時派遣医療チーム(DMAT)や被災者の心のケアなどに当たる災害派遣精神医療チーム(DPAT)のほか、インフラの復旧支援に向けて技術職員の派遣を実施・検討する動きが活発化。東京都は熊本市の井戸施設の応急復旧の支援に当たる職員10人のほか、現地の被害状況の把握や支援ニーズの情報収集のための職員2人を17日に現地に派遣した。被災住宅の倒壊の危険性を判定する応急危険度判定士を派遣する準備も各地で進む。」(『建設通信新聞』2016.04.19)
●「国土交通省は、地方自治体の新たな入札契約方式の導入・活用を支援する15年度の『多様な入札契約方式モデル事業』の成果をまとめた。大規模工事の発注経験不足や、時間や施工条件の制約など地域がそれぞれ抱える課題を整理し、解決に向けたスキームを提案。同じ方式でも発注者ごとに取り入れた工夫や方法が異なり、各自治体の課題に合わせたオリジナルの方式を組み立てた。」(『建設通信新聞』2016.04.26)
●「景気対策を目的とする公共事業の前倒し執行に関し、政府経済財政諮問会議の民間議員は『前払いが可能な範囲の拡大の検討が必要だ』と主張した。前払金は労務費や資材費などに使途が限定されているが、充当できる対象費目を拡大することで、公共事業による景気のてこ入れ効果が及ぶ範囲を広げる狙いがあるとみられる。25日の会合で、麻生太郎財務相は『調整することは可能と考える』とし、石井啓一国土交通相も『実態を踏まえて検討したい』と応じた。」(『建設通信新聞』2016.04.27)
●「環境、国土交通の両省は、環境省の中間貯蔵施設(福島県大熊、双葉両町)整備事業で、用地補償業務に携わる補償コンサルタント会社の実績を、国交省直轄事業の用地調査業務を直接受注したとみなし、『業務実績』として評価することで合意した。各社の業務実績を環境省が証明する。証明を受けた補償コンは、今後、国交省が発注する業務で中間貯蔵業務の実績が、企業と予定主任担当者の国交省業務実績として扱われる。」(『建設通信新聞』2016.04.28)
●「国土交通省は19日、技能者の資格や就労実績を統一ルールで蓄積する『建設キャリアアップシステム』の構築に向けた官民コンソーシアムの会合を開き、システムの基本計画書を決めた。これに基づき建設業振興基金に開発準備室を設置し、システム構築に向けた要件定義書や調達仕様書などの詳細検討に入る。17年4月にシステムの登録申請・試験運用をはじめ、8月に本格運用に移る予定。1年後に約100万人、5年後をめどに技能者全員となる約340万人の登録を目指す。」(『建設工業新聞』2016.04.20)
●「国土交通省や業界団体などが構築を進めている技能者の経験を蓄積する『建設キャリアアップシステム』の基本計画に、証紙がベースの建設業退職金共済制度(建退共制度)を実質的に電子化する案が盛り込まれた。システムは、技能者の就業履歴を1日単位で把握できる。基本計画には、システムと制度の連携を前提に、『将来的には証紙に代替することを目指す』と明記された。建退共側の制度変更、中小企業退職金共済法の改正にも言及しており、電子化に弾みがつきそうだ。」(『建設工業新聞』2016.04.20)
●「勤労者退職金共済機構・建設業退職金共済本部(稗田昭人本部長)は、2015年度に実施した『建退共制度に関する実態調査』の結果を21日の検討会に提示した。民間工事で証紙を購入していない割合が3分の1を占めたほか、元請けの証紙購入が労働者の就労実態と合致していない状況が改めて浮き彫りになった。これを踏まえ検討会では、証紙を手帳に貼付する事務手続きのあり方や、労働者の就労実態と掛金納付額・退職金額を合わせるための方法、『建設キャリアアップシステム』が導入された場合の建退共での活用方法などを議論する。」(『建設通信新聞』2016.04.22)
●「建設産業専門団体連合会(才賀清二郎会長)は、会員団体とその会員企業を対象に雇用状況や給与の支払い状況など、登録基幹技能者の処遇に関する実態調査を実施した。登録基幹技能者に対して、資格手当を支給している企業の割合は全体の27.4%にとどまるなど、各企業の登録基幹技能者への位置付けがいまだに高まっていない現状が浮き彫りになった。背景には発注者における認知度や入札段階における評価への低さがあるとみている。 実態調査は、厚生労働省が2016年度から建設労働者確保育成助成金(建労金)の助成メニューとして拡充した、登録基幹技能者の賃金などの処遇を向上させた企業への助成金交付の開始を受けて、各企業の助成金の活用のあり方を探る目的で実施した。登録基幹技能者に関するアンケートは建専連として初めてだという。調査結果によると、登録基幹技能者の平均雇用人数は『正社員』が4.0人だった。一方で『資格を取得させたい社員数』の平均は5.6人となっており、今後、社員としての登録基幹技能者に増加の余地をうかがわせる結果となった。また、登録基幹技能者への給与の支払い額(基本給+諸手当)は、関東の44万5000円から北海道、四国、九州、沖縄の35万円まで地域的なばらつきはあるが、全体の中央値(平均値)は40万円となっている。…自由回答として『発注者側における認知度が低い』『地場ゼネコンでの認知度が特に低い』『あまり役に立っていない』といった意見が寄せられるなど、技能労働者にとって最上位の認定資格であるはずの登録基幹技能者への評価や位置付けがいまだに明確になっていない現状も浮き彫りになっている。」(『建設通信新聞』2016.04.24)
●「後継者難や求人難などを理由に企業が倒産に追い込まれる『人手不足関連倒産』が増加していることが、東京商工リサーチの調査で分かった。2015年度の人手不足関連倒産は全体で前年度比2.8%増の321件。このうち建設業は最多の85社と9業種全体の4分の1以上を占める。また倒産要因で約9割を占める『後継者難』の件数は前年度比5.1%増の287件と、倒産件数増加という悪化に拍車をかける形になっている。」(『建設通信新聞』2016.04.18)
●「ゼネコン(総合建設会社)大手の業績が拡大している。大成建設と鹿島の2016年3月期は本業のもうけを示す連結営業利益が従来予想を上回り、バブル期直後だった1990年代前半以来の水準となったもようだ。大林組は過去最高益となった。東京五輪を控えてインフラ建設需要が旺盛で、採算が改善した。…業績を支えるのは単価上昇と利益率の改善だ。15年度の建設投資は約48兆円とバブル期のピークの約6割にとどまるが、首都圏では老朽インフラの更新や2020年の東京五輪関連施設などの大型案件が増え、好採算の工事を受注しやすい。業績回復を受け株主配分も強化する。大林組は年間配当を前の期比8円増の18円、鹿島は同3円増の8円とする。大成建も株主還元の拡大に踏み切る公算が大きい。」(『日本経済新聞』2016.04.20)
●「建設経済研究所と経済調査会は25日、2016年度の建設投資見通し(名目)を公表した。最近の動向などを踏まえ、1月発表の前回推計に比べて、政府建設投資を2200億円上昇修正した一方、民間住宅投資は1700億円、民間非住宅投資は3300億円下方修正した。全体の建設投資は前年度比0.8%減の49兆6100億円で、2700億円の下方修正となった。」(『建設通信新聞』2016.04.26)
●「国土交通省は、15年度に行った公共工事の施工体制に関する全国一斉点検の結果をまとめた。点検は15年10〜12月、直轄工事819件を対象に実施。明らかな建設業法違反で許可部局への通知が必要な工事はなかった。改善すべき事項のあった工事は全体の約14.5%(14年度約16.8%)で、書類の不備などが見つかり、受注者に改善を求めた。改善事項のある工事は04年度から年々減少しており、公共工事の施工体制の改善が進んでいることが分かった。」(『建設工業新聞』2016.04.27)
●「26日の基本問題小委員会には、実質的に施工しない企業の施工体制からの排除(実施工への関与の度合いが小さい企業の関与のあり方)と、工場製品の品質確保(工場製品に関する品質管理)に向けた考え方も示された。実質的に施工しない企業の施工体制からの排除として、『実質的関与』の解釈や判断基準の曖昧さといった現行の問題点に着目。『一括下請負』の判断基準を再整理することで、商社や代理店、労務調達を専ら行う企業を的確に排除できる基準を検討する。一方、工場製品に対する品質管理に当たっては、製造品に起因して不具合が生じた場合など、製造会社に対して一定の指導監督を行うことができるスキームとして、届け出や登録制度といった製造会社に対する建設業法上の一定の制度的な関与を設ける必要性にも言及している。」(『建設通信新聞』2016.04.28)
●「建設関係団体が熊本地震への対応を開始した。政府から災害対策基本法に基づく指定公共機関に指定されている日本建設業連合会(日建連)と全国建設業協会(全建)は、防災業務計画に沿ってそれぞれ災害対策本部、災害対策協力本部を設置。日建連は九州支部が支援体制を整え、一部の会員企業が九州自動車道ののり面崩壊箇所の復旧に向けて西日本高速道路会社と対策を進めている。日本道路建設業協会(道建協)、建設コンサルタンツ協会(建コン協)なども対応に乗りだした。日建連は、14日の地震発生当日に東京・八丁堀の本部と現地の九州支部が関係機関からの支援要請に備えた。東部には15日朝に災害対策本部を設置した。現地では、西日本高速道路会社からの職員派遣要請に応じ、橋梁ジョイントがずれたり、のり面が崩壊したりした九州自動車道の被害個所に同日朝から鹿島、大成建設などが協力会社とともに急行し、現地調査を開始。午後には益城熊本空荷ICから約1キロとされる盛り土のり面の崩壊部分の復旧に乗りだした。付近に現場のある大林組も被災地で道路の陥没対策などを行っている。」(『建設工業新聞』2016.04.18)
●「熊本地震は収束が見えない状態が続いている。前例がないタイプの地震のため、気象庁も予測に慎重になっている。気象庁によると、18日に観測された震度1以上の地震は76回(午後11時現在)。16日(202回)、17日(138回)と徐々に減る傾向にある。熊本地方では16日以降、八代市など南西方向でも地震活動が活発になったが、震源域が広がる兆候はない。ただ18日に記者会見した青木元・地震津波監視課長は『地震活動が落ち着いてきたとは判断できない』と慎重だ。今回は14日夜にM6.5が起きた後、16日未明にM7.3の本震が起きた。今後さらに大きな地震が起きる可能性は『一般的には考えにくいが、わからない』(気象庁)という。」『日本経済新聞』2016.04.19)
●「石井啓一国土交通相は21日、熊本地震の被災者を受け入れる応急仮設住宅を今後1カ月間で2900戸分確保すると語った。同日、国交省を訪れた熊本県町村会長の荒木泰臣・嘉島町長と全国町村会長の藤原忠彦・長野県川上村長に対し明らかにした。両氏から早急な被災地のインフラ復旧や被災者支援の要請を受けた石井国交相は、『一日も早い環境改善に全力で取り組みたい』と述べた。住宅各社も仮設住宅の建設準備を始めた。業界団体のプレハブ建築協会(東京・千代田)は熊本県など被災自治体からの要請を受け次第、大和リース(大阪市)や親会社の大和ハウス工業など仮設住宅を手がける加盟各社にパネルなどの生産を発注する。福岡県内に工場を持つ大和リースと大和ハウスは素早く生産に入れるようシミュレーションを始めた。コマツハウス(東京・品川)など他の加盟社も対応できるよう人員確保などを進めている。」(『日本経済新聞』2016.04.22)