情勢の特徴 - 2016年5月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府は、5月末までに決定する16年度版の成長戦略『日本再興戦略』の骨子をまとめた。経済政策の最重点目標として20年度までに名目国内総生麿(GDP)600兆円(14年度490兆円)を達成するため、官民で新規・継続的に取り組む10項目の重点プロジェクトとその目標値を盛り込む。新規に展開する主な施策として、ICT(情報通信技術)を活用して生産体制を最適化する『スマート工場』を普及させる。スポーツ施設の多機能化も進める。」(『建設工業新聞』2016.05.09)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、『公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律』(入札契約適正化法)に基づき、対象となる国や地方自治体など公共工事の発注者による取り組み状況(2015年度の調査結果、15年3月31日時点)をまとめた。ダンピング対策の柱となる低入札価格調査制度や最低制限価格制度を導入していない団体が08年度の359団体から181団体に半減するなど、着実な進展がみられている。…未導入とした181団体の内訳は市が11、町が109、村が61。小規模な自治体ほど末導入となっている。背景には指名競争入札が中心となっていることに加えて、そもそもダンピングが生じていないことから、対策への意識が低いことなどが挙げられる。一方、入札契約適正化法の改正で義務付けられた入札金額の内訳書提出については、提出を求めている団体が14年4月1日時点での1417団体から1605団体に増加した。15年3月31日時点で『提出を求めていない』と回答したのは327団体だった。また、予定価格の公表時期については、事後公表(事前公表および非公表との併用を含む)が1045団体、事前公表(非公表との併用を含む)が757団体、非公表としているのが130団体あった。」(『建設通信新聞』2016.05.09)
●「国土交通省は、熊本地震に伴う災害復旧工事の円滑化・迅速化などを目的に、施工者を選定する入札・契約手続きについて、必要に応じて指名競争入札や随意契約が活用できることを、各地方整備局や熊本県・管内市町村に周知した。被災地では、相当数の復旧事業にかかる入札・契約を短期集中的に行う必要がある。そこで、現行規定でも随意契約などが活用可能であることを改めて周知するため、4月28日付で直轄発注機関と自治体向けの通知をそれぞれ発出した。」(『建設通信新聞』2016.05.09)
●「国土交通省などがまとめた『公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律』(入札契約適正化法)に基づく実施状況(2015年3月31日時点)によると、元請業者を社会保険等加入業者に限定する取り組みを『実施していない』と回答した発注者は市区町村を中心に全体の約6割となる1149団体に上った。現段階では社会保険等未加入業者対策の取り組みが浸透しているとは言い難い状況が浮き彫りとなった。調査結果によると、公共工事の元請業者を社会保険等加入業者に限定する取り組みとして、定期の競争参加資格審査で限定していると回答したのは全体の34%に当たる計656団体。個別の発注工事における参加資格で限定しているとしたのは全体の9.4%となる182団体だった。取り組みを実施していないと回答したのは全体の59.5%に当たる1149団体。都道府県の19.1%(9団体)、政令指定都市の30.0%(6団体)、市区町村の65.3%は実施していないと回答するなど、地方自治体に限定するとその63.7%が『実施していない』という状況になっている。一方、元請企業が未加入の下請企業と契約することを禁じるなど、下請業者から未加入業者を排除する取り組みについては、すべての工事で『1次下請業者を社会保険等加入業者に限定している』としたのは、都道府県が2団体、政令指定都市が1団体、市区町村が89団体など。国や特殊法人を合わせても計115団体と、全体の6.0%にとどまっていることが分かった。下請業者から未加入業者を排除する取り組みを『実施していない』と回答したのは、都道府県が55.3%に当たる26団体、政令市が60.0%に当たる12団体、市区町村は90%を超す1585団体。国や特殊法人を含めても88.9%となる1718団体が『実施していない』と回答するなど、未加入業者の排除措置が全国的な取り組みとして浸透していない状況が鮮明になっている。」(『建設通信新聞』2016.05.10)
●「熊本県を中心に相次ぐ地震を受け、全国の自治体が災害時の対応強化に乗り出した。多くの公共施設や住宅が倒壊したのを踏まえ、広島市や宮城県は建物の耐震性を高める。避難先では車中泊でエコノミークラス症候群が多発したため、札幌市や和歌山県は予防策を検討し始めた。地域の防災・減淡対策を再点検することで、将来の災害への備えを手厚くする。熊本地震の発生から14日で1カ月が経過したが、政府は熊本地震対策の補正予算の成立などを優先してきたため、災害対策基本法に基づく国の防災基本計画へ教訓を反映するのはこれからだ。防災対策を実際に担う自治体は国の指示を待たず、独自に動き始めた。」(『日本経済新聞』2016.05.14)

労働・福祉

●「建設産業担い手確保・育成コンソーシアム(事務局=建設業振興基金)に設置したプログラム・教材等ワーキンググループ(WG、座長・蟹澤宏剛芝浦工大教授)は、入職前の生徒・学生を含めた未就職者や入職間もない見習い技能者をターゲットにした教材『建設現場で働くための基礎知識(仮称)』を作成した。主に建築躯体系職種を念頭に置き、建設業の役割や魅力、建築物の構造種別、施工体制、専門職種の紹介、安全・安心への取り組み、図面や道具などを分かりやすく解説した。WGは本年度、同教材を試行的に活用して有効性の検証や課題の抽出を行い、土木分野や設備など他業種への対応も検討する。入職前の工業高校生や大学生を対象に作成した『建築躯体系職種体験実習カリキュラム(試案)』にも組み込んでおり、躯体工事の一連の流れを理解できる実習とセットで行う座学用教材として活用できるようにする。」(『建設工業新聞』2016.05.09)
●「国土交通省は、技能実習生として日本の建設現場で作業に従事した外国人の帰国後の所在を把握する取り組みに着手する。7〜8月にも情報収集を行う事業者を公募する。帰国後どこにいるかを把握し、日本式のスキルやマネジメント能力を身に付けた人材のデータバンクやネットワークを構築することをイメージしている。中堅・中小建設企業などが海外の建設市場に進出する際に有効な人材を確保しやすい環境を整え、海外展開の後押しにつなげる。」(『建設工業新聞』2016.05.09)
●「建設産業担い手確保・育成コンソーシアム(事務局=建設業振興基金)は、総合工事業と専門工事業のそれぞれに求める人物像に関するアンケートの結果を明らかにした。大都市圏と地方あるいは建築と土木など、地域や工種によって求められる技能者の質やレベルのニーズは異なり、特に今後の人手不足が懸念される中、複数の技能を持つ、いわゆる多能工(複合工)について、元請けと下請けでの意識に差が生じていることも分かった。…複数の技能を持つ、いわゆる多能工に関する総合工事業への調査では、『今後、必要である』との回答が建築工事で72.7%、土木工事で80.2%と期待の大きさを表す結果となっている。建築工事では足場等仮設工事や型枠工事と合わせて、躯体工事を一括して担うことができる多能工の存在を求める一方、土木工事では土工事や建設機械土工持とともに土木躯体工事に幅広く対応できる技能者を求めるなど、躯体系の技能を併せ持つ多能工への期待が高い。専門工事業では、『今後、必要である』とする回答の割合が建築工事で51.9%、土木工事は63.4%と総合工事業に比べて低くなるなど、発注側の総合工事業と請負側の専門工事業で多能工に対する意識の差を示す結果となった。」(『建設通信新聞』2016.05.10)

建設産業・経営

●「日本建設業連合会(日建連、中村満義会長)は4月28日の理事会で、『産業構造と生産方式』『土木』『建築』の3分野についての生産性向上の取り組みをまとめた『生産性向上推進要綱』を決めた。生産性向上のアクションプランに位置付け、分野ごとに複数の施策を列挙。『技能者の尊厳を取り戻す』と明記し、生産性向上によって生産力の維持・増強と同時に技能者の処遇改善を推進する方針も強く打ち出した。対象期間は5年。発注者、設計・コンサルタント、メーカーに協力を求める。」(『建設工業新聞』2016.05.02)
●「主要上場ゼネコン各社が、16年3月期業績予想を相次ぎ修正している。3月から4月にかけて修正を発表したのは、売上高上位25社のうち計11社。すべての社が営業利益予想を上方修正した。国内建設工事の採算が改善したのに加え、手持ち工事が順調に進み、完成工事総利益(粗利益)が増えたのが要因だ。主要ゼネコンの16年3月期決算は13日に出そろう。4月に修正を発表したのは、▽大林組▽清水建設▽大成建設▽西松建設▽東急建設▽錢高組―の6社。連結ベースの売上高は、大林組、大成建設、西松建設の3社が微減となるものの、6社すべてが営業利益、経常利益、純利益をいずれも上方修正した。 このうち、本業のもうけを示す営業利益の予想を100億円以上増額したのは、大林組(増額幅260億円)、清水建設(130億円)大成建設(334億円)の大手3社で、大成建設と大林組の2社は、連結営業利益が1000億円を突破する見込みとなった。国内建設需要の増加で、各社が好採算物件を受注しやすくなり、粗利益が増えていることが営業利益の増額要因。売り上げ計上した工事の採算を示す完成工事総利益(粗利益)率は、大林組が10.8%(前回発表時9.3%)、清水建設が9.9%(8.6%)、大成建設が12.0%(9.3%)と1ポイント以上改善している。」(『建設工業新聞』2016.05.06)
●「東亜建設工業は6日、羽田空港C滑走路の地盤改良工事で、地震発生時の液状化を防ぐ薬液の注入量データを改ざんし、設計通りに完成したと国土交通省に虚偽の報告をしたと発表した。薬液の注入量は設計の5.4%だった。同省は『羽田空港の通常運用は構造上、問題はない』とし、同社が請け負ったほかの工事でも改ざんがないかどうか調査している。」(『日本経済新聞』2016.05.07)
●「日本建設業連合会(中村満義会長)の公共積算委員会が、国土交通省各地方整備局との意見交換会に合わせ、『工期の延長の実態』について調査したところ、6割の工事で工期延長があり、このうちの約7割が3カ月を超えて工期が延長されていることが分かった。その要因は条件の明示が不十分との意見が多い。これを踏まえ、今回は想定している準備や後片付けの期間について受発注者が共通の認識を持つためのあり方を各地方整備局と意見を交わすとみられる。日建連が11日の国交省関東地方整備局との意見交換会で提示した資料で『工期延長の実態に関する調査』の結果を示した。公共積算委員会の委員会社40社に対し、2014年11月から15年10月の間に竣工した公共工事(国土交通省、道路関係会社、水資源機構、都市再生機構、鉄道建設・運輸施設整備支援機構、日本下水道事業団、都道府県・政令市が発注した3億円以上の工事)について聞いた。この結果、計499件の工事のうち60%で工期延長となった。前年度、前々年度も同様のアンケートを実施しており、3年連続で60%を超えている。延長期間の内訳では、道路関係会社の91%、機構・事業団の83%などが3カ月を超える工期延長となっている。延長理由は、追加工事の発生や関連工事への協力が69%と最も多い。ただ、設計条件の見通しの甘さ・設計図書の不備も65%に上った。条件明示が不十分だったため工期に影響を与えたケースは全体の44%で、不十分だった内容は『工程関係』が56%で最も多かった。日建連の提出資料では、工期の設定条件の1つである準備工の前の準備作業や後片付けの期間の考え方が、地方整備局間で異なることも指摘している。」(『建設通信新聞』2016.05.12)
●「大手ゼネコン(総合建設会社)4社の2016年3月期連結決算が13日出そろい、全社の純利益が最高だった。東京都心を中心に旺盛な建設需要を取り込み、工事の採算を示す完成工事総利益率が改善した。ただ、労務費や資材価格の上昇で17年3月期は業績の伸びが一服しそうだ。大成建設が13日発表した16年3月期連結決算は、純利益が前の期比2倍の770億円だった。1992年3月期以来、24年ぶりの最高益となる。鹿島も24年ぶりに記録を塗り替えた。アベノミクスが本格化した13年ごろは建設作業員の人手不足が深刻化していたが、前期は労務費の上昇に一服感が出た。世界的な資源安などを受け、資材価格も下落した。各社が工事の工程管理を一段と厳格にした効果と相まって、完成工事総利益率は2ケタ台が定着するほど改善している。17年3月期は収益が踊り場を迎えそうだ。要因の1つが労務費の上昇だ。20年の東京五輪開催に向けた各種工事が本格化する影響もあり、熟練作業員を中心に労働需給が再び逼迫。賃金が急上昇する可能性が指摘されている。財務体質の改善を受け、各社は増配などの株主還元を強化している。大成建設は13日に19年ぶりの自社株買いを発表した。継続的に株主への利益配分を積み増す姿勢を示せば、収益の伸びが鈍化するなかでも株価は底堅く推移しそうだ。」(『日本経済新聞』2016.05.14)
●「大和ハウス工業は13日、2017年3月期の連結純利益が前期比59%増の1650億円になる見通しだと発表した。過去最高を更新する。物流拠点や工場、商業施設の建設に加え、賃貸住宅の販売が伸びる。法人向けの不動産事業を成長分野と位置づけ、19年3月期までの3カ年で土地の購入など7000億円を投資する中期経営計画もまとめた。今期の売上高は7%増の3兆4200億円、営業利益は5%増の2550億円を見込む。いずれも7期連続の増加となる。記者会見した大野直竹社長は『(これまで)普通に運営して結果が出てきたが、今後はさらにアクセルを踏み込んでいく』と、事業拡大に意欲を示した。けん引するのは企業向け不動産事業だ。少子高齢化で今後、住宅市場が縮小するとみられるため、収益源を広げる。部門別の営業利益をみると、商業施設事業は5%増の840億円を見込む。商業施設ではコンビニエンスストアや外車ディーラーなど、相次ぐ建設需要を着実に取り込むり物流拠点などの事業施設事業は、インターネット通販の普及を背景に増益基調が続く。」(『日本経済新聞』2016.05.14)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「環境省は、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴い福島県内で出た、放射性物質に汚染された廃棄物のうち、1キログラム当たり10ベクレル以下の『特定廃棄物』埋立処分事業の業務や工事の事業者選定手続きに着手した。4月18日付で既存の管理型最終処分場(フクシマエコテッククリーンセンター、富岡町)の売買契約を結んだことを受け、今後の埋立処分に備えて▽準備工事▽2016−20年度の詰替・搬出工事▽事業の業務と工事の監督支援業務――など5件を公告した。また、センターに埋め立て済みの産業廃棄物を埋め立て直す業務は、18日にフクシマエコテックと随意契約を結ぶ。」(『建設通信新聞』2016.05.06)
●「土木学会は4月29、30の両日、廣瀬典昭会長を団長とする会長特別調査団の被災地調査を実施した。調査結果について30日に熊本市内で会見した廣瀬会長は、大規模斜面崩落個所の緊急的な土砂対策と河川のモニタリングの必要性を訴えた。復旧・復興に向け、阿蘇大橋の改良復旧の考え方や、広域的な防災性と観光基盤の強化を目指す『九州横断観光・防災回廊』という概念も提示した。調査団は廣瀬会長のほか、地震工学、地盤工学、橋梁、防災、交通政策分野の6人の専門家で構成。調査結果によると、大規模斜面崩壌が発生した阿蘇大橋付近では、出水期に備え、河道内の土砂、河道周辺の不安定土砂の対策を緊急に行い、河道閉塞のリスクを低減するため常時のモニタリングの実施を求めた。土砂対策を適切に行わなければ熊本市街地を流れる白川の治水に甚大な被害を与える可能性があるという。」(『建設通信新聞』2016.05.06)
●「熊本県を中心に続く地震で同県が設置した『くまもと復旧・復興有識者会議』(座長・五百旗頭真熊本県立大理事長)は11日、復旧・復興に向けた緊急提言を発表した。『熊本地震からの創造的な復興に向けて』と題し、単に復旧するだけでなく『より良いもの』に作り直すことを理念に設定。将来の地域の発展や災害対応力の強化につなげる四つの復興の方向性を示した。記者会見した五百旗頭座長と蒲島郁夫知事は、東日本大震災と同程度の復興基準の維持が必要と強調した。」(『建設工業新聞』2016.05.12)
●「熊本県・大分県を中心とした地震の被災者が入居する応急仮設住宅の建設が、熊本県内で4月下旬から始まった。木造による仮設住宅建設も進んでいる。地場のビルダーによる木造仮設住宅建設は地元に予算が配分されることから復旧・復興の大きな力になる。中越沖地震や東日本大震災を経て蓄積された木造の仮設住宅建設のノウハウが、今回の仮設住宅建設にも活かされ、復旧・復興の一助となることが期待される。熊本県は今回の地震以前に、災害時の応急仮設住宅建設に関する協定を、プレハブ建築協会と地元ビルダーで組織する熊本県優良住宅協会の2団体と締結していた。そのため、熊本県優良住宅協会が建設主体の西原村では木造の仮設住宅が建設されているが、被災市町村からの木造の仮設住宅建設の要望が多いことから、熊本県は新たに全国木造建設事業協会(全木協)とも災害協定を締結。山都町での木造仮設住宅建設がスタートした。また、日本建築士会連合会と木と住まい研究協会も木造の仮設住宅建設を進めている。」(『日本住宅新聞』2016.05.15)

その他