情勢の特徴 - 2016年5月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「安倍晋三首相は28日夜、2017年4月に予定する消費税率10%への引き上げについて、19年10月まで2年半先送りする意向を政府・与党幹部に伝えた。景気にできる限り配慮するとともに、19年夏の参院選への影響を回避する狙いもあるとみられる。財政健全化への影響は必至で、政府・与党で調整を本格化する。」(『日本経済新聞』2016.05.29)
●「日本経済新聞社がまとめた2016年度の設備投資動向調査で、全産業の投資計画額は15年度実績比8.3%増になる。7年連続プラスだが、増加率は10.5%増だった15年度当初計画より鈍化する。国内外の不透明な経済情勢を受け15年度下期に投資を絞った企業が多く、今年度も計画通りに実行されるかが焦点となる。」(『日本経済新聞』2016.05.29)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、都道府県の担当者と入札契約に関する意見、2016年度上期のブロック監理課長等会議のテーマを決定した。担い手3法の着実な運用と、将来の建設市場を見据えた新たな方策をテーマに、地方自治体の実情や自主性を尊重しながら、抱える課題や現場の声を吸い上げる。議題となるテーマは、▽施工時期等の平準化▽ダンピング対策▽設計変更ガイドライン▽社会保険未加入対策▽多様な入札契約方式▽建設工事における週休2日の確保▽合併などに関する入札制度▽重層下請構造の改善方策――など。担い手3法の着実な運用と、将来の建設市場を見据えた新たな方策という2つの柱を軸に意見を交わす。」(『建設通信新聞』2016.05.18)
●「政府は18日、国や地方自治体の公共事業にPPP・PFIを普及させていくための行動計画を改定した。13〜14年度に定めた最初の事業規模の目標値や重点対象施設を拡大。13〜22年度の10年間で最大12兆円としていた事業規模の目標を、9兆円増の21兆円とした。16〜18年度の3年間で重点的に普及を目指す対象施設として、新たに公営住宅と文教施設を加えた。公的負担の抑制と民間投資の誘発を両立させ、地域経済の活性化と財政の健全化につなげる。…今後3年間で新たにPPP・PFIの普及を重点的に目指す公営住宅は6件、文教施設は3件の事業化をそれぞれ目標に掲げた。公営住宅の6件は、コンセッションや収益施設の併設・運営、公的不動産の有効活用といった3類型での事業化を目指す。文教施設の3件は、スタジアムなどのスポーツ施設や美術館などの社会教育施設を中心にすべてコンセッションでの事業化を目指す。」(『建設工業新聞』2016.05.19)
●「政府は24日、2016年度版国土強靭化行動計画を決定する。昨年9月の関東・東北豪雨を教訓に、官民で優先的・重点的に推進していく豪雨災害対策などの防災・減災対策と、その目標値となる重要業績指標(KPI)を設定。法律ですべての地方自治体に策定を求めている国土強靭化地域計画の策定指針の改定も同月決定する。」(『建設工業新聞』2016.05.24)
●「国土交通省は30日、各地方整備局などに設置している『建設業法令遵守推進本部』の2016年度の活動方針を決定した。重点事項となる新たな取り組みに、さらなる社会保険未加入対策の推進と、基礎杭工事の適正な施工を確保するために講ずべき措置(告示)の順守を設定。特に社会保険未加入対策では重点的な立ち入り検査を行う。社会保険加入対策の目標年次となる17年度まで残り1年を切る中で、推進本部としてもこの動きに連動した加入指導に力を入れる。07年度に開設した『駆け込みホットライン』や、13年6月から運用している『建設業フォローアップ相談ダイヤル』といった法令違反などに関する情報収集を担う通報制度の運用に加えて、毎年実施している下請取引等実態調査の結果などで寄せられた情報を基に立ち入り検査を実施。連反行為の一層の是正に努める。また、加入の原資となる『法定福利費』の確保として、法定福利費を内訳明示した見積書(標準見積書)の活用を徹底。今年度の立ち入り検査から、その活用状況の確認に力を入れる方針だ。」(『建設通信新聞』2016.05.31)

労働・福祉

●「総務省は13日、建築物の解体時や災害時におけるアスベストの飛散・ばく露防止対策が不十分なケースがあるなどとして、対策を強化するよう環境省や厚生労働省などに勧告した。大気汚染防止法の規制対象外であるスレート波板やビニール床タイルといった成形板など『レベル3建材』を含む建築物解体工事で、事業者による事前調査が不十分なことや建材の湿潤化不足によって飛散・ばく露のおそれがあった例がみられたことから、環境省に対し、アスベスト含有成形板の処理実態を把握し、大防法の規制対象とすることを検討し、必要な措置を講じるよう求めた。」(『建設通信新聞』2016.05.16)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、田中宏幸議長)は17日、加盟組合員約1万人を対象に実施した『2015時短アンケートの概要』を発表した。外勤技術者(土木・建築)の月平均労働時間は79.7時間と10年続いた80時間超から若干の改善が見られた。ただ、日建協が共通目標とする『45時間以内』にはほど遠く、引き続き行政や発注者、加盟組合企業などに労働環境の改善を強く訴えていく。…外勤技術者の休日は、日曜日はほぼ取得できているが、土曜や祝日は月のうち半分も取得できていない。国土交通省を含むすべての発注者で半数以上が『4週4休以下』。特に、マンションデベロッパーの発注工事ではその割合が8割近くになっている。」(『建設工業新聞』2016.05.18)
●「建設業の賃金上昇が続いている。厚生労働省が20日まとめた15年度の毎月勤労統計調査結果(確報値)によると、建設業の就業者に支払われた月間平均給与額は前年度比2.0%増の38万0690円と3年連続で増加し、1997年度に次ぐ高い水準だった。常用雇用労働者数も3.1%増の282.9万人と04年度以降では最高。景気回復などに伴う建設需要の拡大で、賃金上昇と雇用拡大が並行して進んでいる実態が明らかになった。毎月の勤労統計調査の対象は5人以上が働く事業所。15年度の全産業の月額平均給与額は0.2%増の31万4089円で、建設業は金額、増加率ともこれを上回った。」(『建設工業新聞』2016.05.23)

建設産業・経営

●「大手・準大手ゼネコンの2016年3月期決算が13日までに出そろった。受注環境の好転により、過去最高の収益など好業績のゼネコンが相次ぎ、国内建築工事の採算改善に伴い、開示25社中24社が連結営業利益率を伸ばした。今後も高水準の受注環境が続く見通しだが、『17年度下期には工事量の増加と施工の集中に伴って資機材・労務の需給がひっ迫する』との声が複数社から上がっており、次期は慎重な舵取りが求められる経営環境になりそうだ。16年3月期の連結売上高は、25社中19社が前期を上回った。25社合計は前期比4.4%増の12兆2881億円で、うち大手4社合計が1.9%増の6兆7313億円、準大手21社合計が7.8%増の5兆5568億円だった。過去に受注した不採算工事の消化と採算重視の受注戦略が奏功したことに加え、上昇が懸念されていた労務費や資材価格に大きな変動がなく、落ち着いていたため、各社いずれも完成工事総利益(工事粗利率)率が改善した。その結果、連結営業利益は24社が前期を上回り、25社合計は101.4%増の7453億円。うち大手4社合計が136.7%増の4295億円、準大手21社合計が67.4%増の3157億円となった。25社平均の連結営業利益率は2.7ポイント増の5.7%で、大手4社平均は3.6ポイント増の6.4%、準大手21社平均が1.7ポイント増の5.0%だった。」(『建設通信新聞』2016.05.16)
●「政府は、建設業の大企業(資本金3億円超)を対象に行っている下請の中小企業・小規模事業者との取引実態に関するヒアリング調査の中間報告をまとめた。約500社の中から20社(社名非公表)を抽出し、うち19社に4月21日から今月23日までにヒアリングを行った。その結果、ほぼすべての企業が建設業法令に基づいて契約を書面化し、透明性を担保していることが分かったとしている。今回の調査は、経済産業省中小企業庁が国土交通省の担当者などとチームを組みオフィスを直接訪ねて行った。主な聞き取り項目は、▽労務費等の価格見直し・賃上げ▽下請取引契約▽下請次数▽社会保険未加入対策▽コンプライアンス▽担い手確保・生産性向上。うち官民を挙げて対策に力を入れている下請への労務費や社会保険加入の原資となる法定福利費の支払いは、現場の最新実態や下請からの求め通りにほぼ行っている企業が多い半面、対策自体を知らない企業もー部にあったという。中間報告は23日に開かれた政府の『下請等中小企業の取引条件改善に関する関係府省等連絡会議』(議長・世耕弘成官房副長官)で行われた。」(『建設通信新聞』2016.05.27)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「日本建築学会による『2016年熊本地震被害調査速報会』が14日、東京都目黒区の東京工業大学で開かれた。国が新耐震基準を導入した1981年以降に建てられた建物でも多くの被害が見られたことから、同学会熊本地震災害調査委員会の高山峯夫委員長は、新耐震基準の有効性の検証に乗りだすことを明らかにした。速報会では5月10日までの各地の調査状況を公表。大きな被害があった益城町では、応急危険度判定が69チーム(約200人)に分かれて行われ、調査した8075棟(4月28日現在)のうち、『要注意』が2408棟、『危険』が3285棟と7割の建物に大きな被害が出ていたことが分かった。木造建物は新耐震基準以降に建てられた建物でも全壊や半壊などの被害が出ていた。RC造建物では益城町などで81年以前の建物で層崩壊が起きた建物があり、八代と人吉の両市庁舎は耐震壁のせん断ひび割れなどで使用不能の状態になっている。S造建物では県が所有する学校の体育館が71校中42校で被災していた。こうした状況を踏まえ、高山委員長は、『学会で今後、建物被害の調査を確実に進め、被害状況と地震動の大きさや地盤変状との関連性の検証、新耐震基準の有効性、耐震補強の効果を分析し、報告書をまとめる』と表明。新耐震基準の有効性については、震源近傍にある建物の耐震設計、複数回の地震による建物への影響などを検証する考えを示した。防災拠点となる施設の耐震補強の促進なども提案する方針だ。報告書は8月24日に福岡大学(福岡市城南区)で開く全国大会の報告会で公表する。」(『建設工業新聞』2016.05.17)
●「熊本地震で、家屋の補修を自治体が支援する『住宅応急修理』の利用が進んでいない。半壊以上の被害が確認された熊本県25市町村への申請は計202件にとどまり、完了した工事はない。罹災証明書の発行など、被害調査が遅れているためだ。修理額は最大57万6千円に限られ、不満を訴える被災者も多い。熊本県によると、21日時点の住宅被害は9万592棟に上る。制度は本来、1カ月以内に修理を終え、避難所から戻ってもらうのが目的。熊本より住宅被害が少なかった2004年の新潟県中越地震では約5800件(県の独自支援除く)の利用があった。熊本でも相談が多数寄せられている。当面7月中旬まで申請を受け付けるが、業者不足も予想され、早期に工事ができる態勢が求められる。共同通信が19日時点の状況を聞いた結果、申請を受け付けたのは12市町村で阿蘇市93件、御船町35件など。熊本市は申込書を受け取るなど1452件の相談に対し、申請はわずか4件。被害が集中した益城町や南阿蘇村などはゼロだった。被災者は所得証明、罹災証明などの書類を添えて市町村に申請、審査を受ける。申請が低調な理由について、熊本市や御船町など多くの自治体は罹災証明書の発行遅れを挙げる。西原村は『制度周知や受け付けなど態勢が整っていない』、嘉島町は『支援物資受け付けなどの対応に職員が追われている』としている。」(『日本経済新聞』2016.05.22)
●「環境省は、福島第1原発事故で周辺地域に飛散した放射性物質の除染で出た廃棄物を一時保管する『中間貯蔵施設』(福島県双葉、大熊両町)の整備で、本体工事初弾3件の一般競争入札(総合評価方式)のうちの1件『廃棄物処理業務(減容化処理)』を20日に開札し、落札者を276億6000万円で三菱重工環境・化学エンジニアリング・鹿島JVに決めた。工期は22年3月31日まで。本体工事初弾3件は3月30日に入札公告が行われた。残りの2件『土壌貯蔵施設等工事(双葉町)』『同(大熊町)』は、いずれも27日に入札、30日に開札が行われる予定だ。」(『建設工業新聞』2016.05.23)
●「大和ハウス工業は地震で被災した熊本県の仮設住宅の建設を10日ほど前倒しして5月中に完成させる。6月中旬としていた被災者の入居日は6月5日に繰り上げる方向で調整する。また同県内で169戸の仮設住宅の建設が新たに決まった。仮設住宅は熊本県が業界団体のプレハブ建築協会などに発注し、同協会などが建設業者をあっせんする。大和ハウスは4月末に同県甲佐町で90戸を着工し、5月7日からプレハブ住宅の組み立てなどを進めてきた。当初は6月中旬の入居を目指したが、日程管理を工夫したことで工期を圧縮。建材の調達も進み、5月中の完成にめどがついた。熊本空港近くの西原村でも169戸の建設が決まった。地ならしを終えており、甲佐町の引き渡しを待って建設工事に入る見通し。同社は東日本大震災の被災地で全体の2割強にあたる約1万1000戸の仮設住宅を建設している。」(『日本経済新聞』2016.05.27)
●「熊本県を中心に続く地震で現行の耐震基準を満たした住宅などの建築物に倒壊被害が出たことを受け、国土交通省は詳細な原因分析を行う官民の有識者会議を26日に立ち上げた。同地震では前震と本震で震度7の揺れが1回ずつ起きたほか、震度6揺れを含む強い余震が続いている。有識者会議は建築物の被害に地震の回数や強さがどれだけ影響を与えたのかをはじめ、構造別や地域別、築造年代別などで原因をできる限り細かく調べる。今夏に原因分析に絞った報告をまとめる。有識者会議は『熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会』。熊本地震前から同省国土技術政策総合研究所(国総研)建築研究部が運営してきた『建築構造基準委員会』(委員長・久保哲夫東大名誉教授)と、地震後に建築研究所構造研究グループが立ち上げた『建築研究所熊本地震建築物被害調査検討委員会』(委員長・塩原等東大大学院教授)の官民のメンバーで構成。今後、有識者会議は既設の両委員会を一体的に運営する形で会合を1〜2回程度開く。」(『建設工業新聞』2016.05.30)

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