情勢の特徴 - 2016年6月前半
●「都道府県が発注する公共工事で、入札不調・不落が減少していることが国土交通省の調査で明らかになった。15年度の発注件数に対する不調・不落の発生率は4.7%で、前年度の6.8%から2.1ポイント低下した。東日本大震災の被災3県(岩手、宮城、福島)と仙台市を合わせた発生率は15年度に15.2%となっており、前年度の20.2%から5.0ポイント低下と改善が見られた。公共工事設計労務単価の機動的な見直しをはじめ、円滑な施工確保へ講じてきた各種施策の効果が現れた形だ。」(『建設工業新聞』2016.06.02)
●「第190通常国会が1日閉会した。政府提出法案(全56本)で成立したのは50本で、このうち国士交通省が所管する6本はすべてが成立した。6本のうち建設業に直接影響する予算関連法は、▽都市再生特別措置法・都市再開発法の一括改正法(施行予定日=公布から3カ月以内)▽改正港湾法(同)▽踏切道改良促進法・道路法の一括改正法(4月1日施行済み)―の3本。改正都市再生特別措置法・都市再開発法のうち、特措法では国際的ビジネス拠点施設になる大都市でのビル開発への支援を拡大。建設費の融資を行っている大臣認定制度の適用申請期限(16年度末)を21年度末まで5年延長し、共用空間の建設に限定していた融資対象施設に国際展示場・会議場を加えた。再開発法では、地方都市のコンパクトシティーづくりで国の手厚い建設費補助が受けられる法定の市街地再開発事業を促進する。既存建築物を全面撤去してから新たな施設建築物を建設することが原則だが、今後は既存建築物を一部残したままでも再開発事業を行えるように要件を緩和した。 港湾法では、地方自治体が管理する港湾区域で洋上風力発電事業者を公平性・透明性の高い公募型の方式で選定する制度を創設する。発電設備を設置する水域の占用計画の有効期間を最長20年間と定め、その期間内なら発電設備の運転と売電だけに専念できる占用許可期間を従来の原則最長10年間から延ばせるようにする。」(『建設工業新聞』2016.06.02)
●「厚生労働省は、市町村の水道事業の民営化を加速させる。公共機関が施設を所有したまま運営権を民間に売却するコンセッション(公共施設等運営権)方式の導入を促進。民間事業者が参入しやすくなる制度を整備し、老朽ストックが増大する水道施設の維持更新コストの縮減・平準化につなげる。具体策として、運営期間中に設備投資資金の積み立てを求める代わりに法人税負担を減らす仕組みの導入などを検討。来年の通常国会に提出予定の水道法改正案に盛り込む方向だ。」(『建設工業新聞』2016.06.03)
●「首都圏の各自治体が進めている新庁舎の建設(建て替え)計画に、熊本地震の被害状況が影響を及ぼしつつある。今のところ、耐震補強を施した庁舎や学校体育館などに予想を超える被害が出る一方、免震構造の建物に被害が少ないといった調査結果が関係機関から報告されている。設計者の選定では、より高い耐震性を確保できる提案が求められることは必至。免震構造の採用にはコストもかかるため、低コストで耐震性を高める提案が大きな課題になりそうだ。」(『建設工業新聞』2016.06.10)
●「すべての都道府県が建設業の社会保険未加入対策に取り組んでいることが、国土交通省の調査で分かった。5月時点で、全都道府県が工事の元請業者を社会保険加入業者に限定する取り組みを実施。うち23団体は下請も加入業者に限定していた。国交省は未加入の元請・1次下請業者を直轄工事から排除しており、こうした対策を都道府県にも要請。さらに管内の市区町村の未加入対策を支援するよう求めるなどし、発注機関での取り組みを強化していく。」(『建設工業新聞』2016.06.13)
●「国土交通省は都道府県を対象に、発注工事の下請を一定次数までに制限する取り組みの実施状況をまとめた。5月の調査時点で4団体が下請次数を制限し、2団体が導入やモデル工事を予定。総合評価方式の入札で次数制限に加点する団体もあった。実質的に施工しない企業を排除するため、工事の主要部分の自社施工を入札の原則にする団体もあった。今後も地域維持や災害時対応などの観点から、行き過ぎた重層化を是正し、管内業者が持続的に活動できる環境整備が進みそうだ。下請を過度に重層化すると、間接経費の増加を招き、生産性の低下や労務費へのしわ寄せといった課題が生じる一因になると指摘されている。このため国交省は直轄工事を対象に、施工体制台帳の備え付け状況や下請契約の締結状況などの点検を実施している。国交省は都道府県を対象に、下請次数の制限や現場の施工体制点検などの実施状況を調べた。その結果、福井、京都、鳥取の3府県が下請次数を原則として土木工事で2次まで、建築工事で3次までに制限。新潟県は、特殊な技術が不要で地域の安全・安心の確保に関わる土木工事(地域保全型工事)は2次までにしていた。このほかに2団体が次数制限の導入を検討中、モデル工事を実施予定と回答した。」(『建設工業新聞』2016.06.14)
●「北海道労働局は、12年3月に高校・短期大学・大学を卒業して建設業に就職した人の3年後(15年3月時点)の離職状況をまとめた。それによると道内の大学卒業者の離職率は44.1%と全国平均(30.1%)を14.0ポイント上回った。とりわけ男性は46.1%と半数近くに上ることが分かった。・同局の担当者は『道内は求人数が少なく、学生が就職先を十分に精査して選ぶことができないことなどが要因』とみている。各事業所からハローワークに提出された雇用保険の加入届から、被保険者の生年月日と各学歴ごとに、新規学卒者と推定される就職者数を算出。さらに、その離職日から離職者数と離職率を算出した。就職3年後の大卒者の離職率を見ると、全産業では全国が32.3%、道内が37.2%。建設業は全国が30.1%、道内が44.1%となり、道内の産業別では建設業が全国平均との差が最も大きかった。」(『建設工業新聞』2016.06.01)
●「厚生労働省の都道府県労働局が進める建設分野での『人材不足分野における人材確保のための雇用管理改善促進事業(実践コース)』の2016年度事業実施者が、6日時点で40労働局で決まったことが分かった。このうち、建設業関係団体が事業を手掛けるのは茨城、滋賀、宮崎3県の3団体にとどまり、ほかは社会保険労務士関係団体などが事業実施者となっている。」(『建設通信新聞』2016.06.09)
●「建設会社から工業高校に寄せられる求人が増加していることが、建設業振興基金(内田俊一理事長)が実施したアンケートで明らかになった。14年度(15年春就職分)に求人票を出した企業は、建築、土木といった1学科当たり平均156.9社で前年度比18.8%増。平均的な学科定員40人に対し求人倍率は3.9倍とほぼ4倍に達した。大卒、高専卒が優先されてきた求人で、将来の担い手として高校生もターゲットとする傾向が鮮明になっている。振興基金は、建設系学科のある全国の工業高校406校に調査票を送付。202校から回答を得て8日に速報値として結果を発表した。建設会社から送られてくる求人票の1学科当たりの平均数の推移は、12年度が105.7社(県内企業44.9社、県外企業58.2社)、13年度が132.1社(59.7社、69.7社)、14年度が156.9社(68.0社、86.1社)。県内企業、県外企業ともに増加している。振興基金が行ったヒアリングでは、15年度以降も工業高校への求人が積極的に行われていることが確認されたという。」(『建設工業新聞』2016.06.09)
●「14年5月に成立した改正建設業法のうち、新たな建設業許可業種区分に『解体工事』を加える規定が1日に施行される。施行に合わせ、解体工事の主任技術者要件の一つとなる『登録解体工事試験』を実施する試験機関の受け付けも同日開始。既存資格者(土木施工管理技士、建築施工管理技士、技術士)が解体工事の工法や実務、関係法令などの知識を得るための登録講習を実施する機関の受け付けも始まる。改正法では、とび・土工工事業のうち、工作物の解体を独立させ、29番目となる業種区分を新設。3年間はとび・土工の許可で引き続き解体工事を営むことができる経過措置を設け、さらに2年後の21年3月末までは、とび・土工に対応した既存技術者を主任技術者として認める。」(『建設工業新聞』2016.06.01)
●「積水ハウスが9日発表した2016年2〜4月期の連結決算は純利益が152億円と前年同期比32%増えた。賃貸住宅の販売や管理、都市再開発事業などが好調で、戸建て住宅の受注も回復した。日銀のマイナス金利政策導入に伴う市場金利の低下で退職給付債務の負担が約300億円増えるが、18年1月期以降に処理する予定だ。2〜4月期の売上高は1%増の4053億円。生産コストの低減や施工期間の短縮、物流拠点再編の効果などで営業利益は268億円と8%増えた。為替差損が発生し、経常利益は9%減った。業績のけん引役はアパートなど賃貸向け住宅を建てて地主に売る賃貸住宅事業だ。同事業の営業利益は104億円と14%増えた。相続税の節税対策として需要が根強く、受注高も5%伸びた。」(『日本経済新聞』2016.06.10)
●「国土交通省は、9日に開いた中央建設業審議会・社会資本整備審議会産業分科会建設部会の『基本問題小委員会』に、中間とりまとめ(素案)を提示した。重層構造の改善や民間工事における役割・責任の明確化といった『基礎ぐい工事問題に関する対策委員会』の提言に対して、一定の対応策を打ち出した形となる。月内に開く次回の会合で正式に中間とりまとめを行う。『建設生産システムの変革』『建設生産を支える技術者や担い手の確保・育成』『建設企業の持続的な活動が図られる環境整備』という3つの柱に沿って、今後の取り組みの方向性を整理した。対応策の具体化に向けて継続して検討を進める事項を残しながらも、実施段階にあるものは即座に実行に移す方針だ。」(『建設通信新聞』2016.06.10)
●「国土交通省は、建設現場の施工体制における問題点となっている監理技術者(元請け)と主任技術者(下請け)の役割の明確化に取り組む。『監理技術者制度運用マニュアル』の改定で、その役割の違いや責任の範囲を明確に打ち出す。現在の建設現場は、下請けの主任技術者が元請けが果たすべき職責を担っているケースもあるというのが実態。元下間での責任の明確化は法令順守の徹底を求められる上場企業を中心に大きなインパクトになる。 監理技術者と主任技術者の職務(役割)の明確化は、基本問題小委員会で議論が進む技術者制度の見直しの柱。というのも、現在の建設業法は監理技術者と主任技術者の役割が同一の条文で規定されているため、その役割の違いが必ずしも明確になっていない状況があるからだ。特に工事内容の高度化や、それに伴う専門化・分業化の流れの中で、施工体制が複雑化している現場の実態を踏まえれば、監理技術者と主任技術者の役割や責任の違いをより明確にしていく必要があると判断した。対応の方向性として示すのが、下請けを含む請負部分全体の統括的施工管理を担うタイプA(元請けの技術者=監理技術者)と、請負部分の施工管理を担うタイプB(下請けの技術者=主任技術者)の2種類に大別する考え方だ。」(『建設通信新聞』2016.06.10)
●「首都圏のアパートの空室率が悪化している。不動産調査会社のタス(東京・中央)が31日発表した統計によると、3月の神奈川県の空室率は35.54%と2004年に調査を始めて以来、初めて35%台に上昇した。東京23区や千葉県でも空室率の適正水準とされる30%を3〜4ポイントほど上回っている。相続税対策でアパー卜の建設が急増したものの、入居者の確保が追いついていない。アパートは木造や軽量鉄骨で造られた賃貸住宅で、空室率は入居者を募集している総戸数のうち空いたままの住戸の割合を示す。不動産会社のアットホームのデータなどをもとに算出した。東京23区の空室率は33.68%。15年9月から6カ月連続で過去最悪の水準を更新した。千葉県でも34.12%と過去最悪の更新が3カ月続いている。埼玉県は30.90%、23区以外の都内は31.44%と比較的安定した水準だ。…アパートの開発事業者は旺盛な建設需要に押されて営業活動に引き続き力を入れている。住友林業は全国の支店の営業・設計業務を支援するチームを4月に設立。大東建託は営業人員を20年に約4千人と16年と比べて1割強増やす計画だ。」(『日本経済新聞』2016.06.01)
●「東京都は、移転が決まっている中央卸売市場築地市場(中央区築地5の2の1、敷地面積23万0836平方メートル)の卸売・仲卸売場棟など既存施設の解体工事に着手する。総延べ床面積約28平方メートルの解体対象施設のうち、17万6739平方メートルを取り壊す工事4件の施工者を決める入札を6日に公告。4件とも7月21日に開札し、11月中の着工を目指す。残工事は17年度以降に発注する。都は今後、解体によって創出される跡地の利用方針を都民の意見を踏まえて検討する。」(『建設工業新聞』2016.06.06)
●「東京都は13日、東京電力福島第1原子力発電所事故に伴う都内への自主避難者に対し、都営住宅に200戸の専用枠を設ける新たな支援策を発表した。7月に募集を始める。福島県は自主避難者への住宅の無償提供を原則、2017年3月で打ち切る方針。都は自力で住宅を確保するのが困難な世帯が引き続き都内で生活できるよう支援する。都が提供している応急仮設住宅の入居者で、ひとり親や高齢者世帯など特に支援が必要な世帯を対象にする。入居者は所得などに応じて家賃を支払う必要があるが、民間の賃貸住宅に比べれば安い。都は東日本大震災後、都営住宅や民間の賃貸住宅などを応急仮設住宅として提供しており、福島県からの避難者は約1100世帯。このうち避難指示が出ていない地域からの自主避難者は約600世帯という。」(『日本経済新聞』2016.06.14)