情勢の特徴 - 2016年6月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「日本の官民がベトナムで日本品質の住宅普及に向け動き出す。国際協力機構(JICA)の円借款と日系企業などの資金合わせて約200億円を使い、2017年にも現地中間層向けの住宅ローンや個人信用保証の制度を作る。日本式の住宅購入者向け金融制度を築くことで、比較的価格の高い日本品質の住宅需要を喚起する。ベトナムでは地震がほとんどないことから、住宅は鉄筋にレンガを組み合わせて壁をつくる簡素な造りが主流で、担保価値が低い。それに加えて個人に対して信用保証する制度が整っていないため、長期の住宅ローンが普及していない。ローンの対象は、工場でコンクリートを固めて現場で施工する『プレキャストコンクリート工法』の戸建て住宅やマンションなど。日本では高層マンションにも使われる方式で、従来のベトナムの住宅より強度が高まり担保価値を上げることができる。第1弾として、比較的質の高い物件を求める中間層が多い南部の大都市ホーチミン市で新たな仕組みを導入する。」(『日本経済新聞』2016.06.18)
●「国債運用が基本だった貯金や年金などのお金がリスク投資に向かい始める。日本郵政グループのゆうちょ銀行は今後5年程度で国内外の不動産や未公開企業などの代替投資に最大6兆円を振り向ける。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も今年から7兆円を上限に投資。マイナス金利で国債に依存した運用が難しくなった状況に対応する。今後は運用資産の目利き力やリスク管理が課題になる。国内銀行で最大規模の資産を持つゆうちょ銀と世界最大の機関投資家であるGPIFがリスク資産に投資するのは、運用環境が厳しさを増しているためだ。日銀が2月にマイナス金利政策を導入したことで大部分の国債の利回りがマイナス水準に低下。年明け以降の円高・株安で外国債券や日本株などでの運用も難しくなっている。高リスク高リターンの投資を増やすことで、資産の毀損リスクも高まることになる。…ゆうちょ銀の運用資産は約200兆円。今年度から海外の不動産やインフラ、未公開企業などへの直接投資を開始。中長期的に収益確保が期待できる案件を選ぶ。代替資産の具体的な構成は今後決めるが、投資先を広げて収益拡大と同時にリスク分散も進める。」(『日本経済新聞』2016.06.20)
●「英国の欧州連合からの離脱の是非を問う国民投票は24日、開票の結果、離脱支持が全体の過半数の51.9%を占め、離脱が決まった。残留を訴えてきたキャメロン首相は同日、辞任を表明した。EU加盟国の離脱は初めてで、統合と拡大を進めてきた欧州は大きな試練に直面する。英国とEUの新しい関係の行方は混沌としており、世界の政治・経済に新たなリスクとなる。…英国民投票で欧州連合(EU)離脱派が勝ったのを受け、24日の世界の金融・資本市場は大きく動揺した。日経平均株価の下げ幅は16年ぶりの大きさを記録し、主要なアジア株市場は全面安となった。欧州株も大幅に下げ、英通貨ポンドは対ドルで31年ぶりの安値を付けた。マネーは『安全資産』とされる円や金に向かい、金の国際価格は約2年ぶりの高値を付けた。日経平均の終値は前日比1286円(8%)安の1万4952円と、1年8カ月ぶりの安値を付けた。IT(情報技術)バブルが崩壊した2000年4月以来の急落で、過去8番目の大きな下げだ。東証1部で値上がりしたのは6銘柄しかなく、株価が暴落した1987年の『ブラックマンデー』の7銘柄より少なかった。」(『日本経済新聞』2016.06.25)
●「今年度の建設市場のスタートは出足好調だ。最大の建設市場である民間発注の3分の1を占める『不動産業』の2016年3月末(1−3月四半期中)設備資金新規借入金が前年同期比で5000億円超を積み増し、SPC(特別目的会社)を合わせると初めて4兆円を突破するなど、建設市場動向に直結する資金需要の旺盛さが鮮明になっているからだ。さらに公共事業も安倍政権の『前倒し発注方針』を受け、47都道府県の7割で前年同期比増加に転じている。今後本格化すると見られる大規模民間建築工事を、発注者の資金調達からも裏付けている。」(『建設通信新聞』2016.06.27)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通、総務両省は、地方自治体に建設業の社会保険未加入対策の強化を要請した。定期の競争参加資格審査などを通じて未加入の元請業者を発注工事の入札から排除。建設業許可行政庁や社会保険担当部局への通報などにより、未加入の1次下請業者も発注工事から排除するよう求めた。…国交、総務、財務の3省が公共工事入札契約適正化法(入契法)に基づき実施した調査によると、15年3月時点で、元請業者に対し社会保険未加入対策を実施していない自治体は都道府県が9団体、政令市(対象20団体)が6団体、市区町村(対象1721団体)が1124団体。下請業者に対しては都道府県が26団体、政令市が12団体、市区町村が1585団体に上った。国交省が5月に都道府県を対象に実施した調査結果を見ると、すべての都道府県が元請業者の未加入対策に取り組んでいることが判明。だが24団体が下請業者への対策を実施していなかった。こうした状況を踏まえ今回、自治体に向けて未加入の元請・下請業者を発注工事から排除する措置を講じるよう求めた。未加入の元請業者を排除するため、定期の競争参加資格審査や個別工事の競争参加資格審査で入札参加者を加入業者に限定する取り組みを要請。下請業者については、元請業者に未加入業者との下請契約を禁止し、未加入業者を許可行政庁・社会保険担当部局へ通報するなどの措置を求めた。…国交省直轄工事では、14年8月から未加入の元請業者を、15年8月からは未加入の1次下請業者も排除しており、現在こうした対策を2次下請以下にも広げることを検討している。」(『建設工業新聞』2016.06.17)
●「国土交通省は、資機材や労務調達の準備など受注者側にとっての施工体制の確保を支える『余裕期間制度』の積極的な活用を促す。受注者側の視点に立った柔軟な工期設定で直轄工事を対象に適切な工期設定や施工時期の平準化といった改正品確法に示す発注者の責務を果たす。『フレックス方式』などの余裕期間制度は、使い方次第で建設企業にとって受注戦略を支える有用なツールになりそうだ。…フレックス方式は、発注者があらかじめ設定した全体工期の中で受注者が工事の始期と終期を決定する。工事の着手時期と完了時期、すなわち実質の工事期間を受注者の裁量で決めることができる方式だ。発注者が示す余裕期間と実工期を足し合わせた全体工期の範囲内であれば、工事の始期と終期である実工事期間を受注者が自由に選択できる。発注者が示す工事の完了期限までに完了する工期設定であればいい。」(『建設通信新聞』2016.06.20)
●「国土交通省は、i-Construction(アイ・コンストラクション)の根幹となるCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の本格導入に踏み出す。推進・普及体制として建設業団体などを巻き込んだ『CIM導入推進委員会』(委員長・矢吹信喜大阪大大学院教授)を設立した。直轄工事で本格始動した『ICT(情報通信技術)土工』の成果を取り入れながら、CIM導入ガイドラインの策定につなげる。CIMの導入は、調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新に至るまで、すべての建設生産プロセスにICTを導入する『i-Construction』の推進ツールになる。各プロセスで3次元モデル(3次元データ)の受け渡しを行うことで一連の建設生産システムを効率化・高度化することができる。3次元モデルを取り入れることの効果として、住民説明会や工事説明会での合意形成の円滑化、比較・概略検討における容易さ、設計変更への対応(数量算出の自動化など)、設計の可視化や図面の整合性の確保(設計ミスや手戻りの減少)、施工計画書への反映による施工性の向上や工期短縮といったメリットが挙げられる。…『CIM導入推進委員会』は、そのCIMを推進するための新たな枠組みとなる。導入の考え方や目標・ロードマップといった導入推進に関する実施方針に加えて、入札契約制度や国際的な動向も踏まえた導入ガイドライン、基準類の整備といった役割を担う。産学官の関係団体が一体になってCIMの導入を推し進めることで、土工だけでなく、トンネルや橋梁、ダムなどの構造物の整備に3次元データを活用する環境を築く。」(『建設通信新聞』2016.06.22)
●「国土交通省は23日、道路分野の今後の新規施策案をまとめた。落橋や電柱倒壊などの被害が多発した4月の熊本地震を教訓に、防災・減災対策を全国で強化。緊急輸送道路を中心に橋梁の耐震補強や撤去・集約を加速させる。国の緊急輸送道路で原則化している電柱の新設禁止範囲を地方自治体の緊急輸送道路にも拡大する。国が地方道の応急復旧工事を代行する制度の拡充も図る。いずれも具体策を詰めた上で、本年度から順次実施していく。」(『建設工業新聞』2016.06.24)
●「国土交通省官房官庁営繕部は、公共建築の発注者たる地方自治体に発注者としてのあるべき姿を示す。検討のフィールドとして社会資本整備審議会・建築分科会『官公庁施設部会』(部会長・大森文彦東洋大教授、弁護士)で発注者のあり方≠議論する方針だ。あるべき姿を示す中で、マンパワー不足が顕在化している市町村の体制面や技術力といった課題への対応策を抽出。公共建築における発注者支援のあり方をあぶり出す。」(『建設通信新聞』2016.06.29)

労働・福祉

●「2020年東京五輪・パラリンピックの大会施設関連工事における労働災害防止の徹底に向け、関係省庁や発注機関、建設業団体で構成する『2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会 大会施設工事安全衛生対策協議会』は17日に会合を開き、大会施設工事における安全衛生対策の基本方針を決定した。施設建設工事を大会の1つのレガシー(引き継がれていく有益な遺産)として、今後の快適で安全な建設工事のモデルとすることと、安全衛生対策を元請け、下請けの別なく労使協調の下、統一的に実施することを基本的な考え方とした。対策の要点として、安全衛生対策は発注・設計段階から始める発注者による取り組みや、リスクアセスメントの実施促進など4項目を掲げた。」(『建設通信新聞』2016.06.20)
●「勤労者退職金共済機構・建設業退職金共済本部(稗田昭人本部長)は、新たな掛金納付方式の検討のたたき台として、『口座振込・振替方式』の枠組みをまとめた。現行の証紙貼付による納付に比べて、手続きの合理化や円滑化などを見込んでいる。今後、『建退共制度に関する検討会』(座長・村上正人みずほ年金研究所理事長)での検討などを踏まえ、今秋に一定の方向性をまとめる。口座振込・振替方式は、就労実績の電子申請を前提とし、事業主(共済契約者)が金融機関に掛金引き落とし口座を登録し、金融機関は事業主の掛金支払の申し出に基づき、掛金収納書を発行して建退共の口座に入金する。事業主は現場に応じた適切な方法で就労実態を把握し、建退共に労働者(被共済者)ごとの就労実績を報告する。建退共は入金された掛金から就労実績報告に応じて労働者ごとの掛金納付残高に充当する。…現行の方式を熟知している共済契約者などに対応するため、証紙貼付方式も存続させるとしている。…口座振込・振替方式では労働者の職種・職責に応じて退職金水準を充実させるため、現行の日額310円の掛金に加えて、さらに1種類、高額の掛金(例えば460円)を設定することも可能としている。新たな方式では建退共に報告された就労実績が退職金に反映されるため、労働者が共済手帳を紛失した場合などに手帳に貼付された証紙が退職金に反映されないという事態を防ぐことができる。」(『建設通信新聞』2016.06.22)
●「ここ数年、建設産業界を挙げて取り組んできた『担い手の確保』が、このまま順調に進むと仮定した最良≠フシナリオであっても、10年後の技能労働者に不足が生じる可能性があることが、国土交通省の試算で明らかになった。若手の入職促進と定着(離職の防止)を促す処遇改善に官民の総力を結集して取り組んでいかなければ、建設産業は成り立ち得ない。試算結果は、産業全体に、その危機感を投げ掛けている。…数値は、将来の人口予測(人口推計)などに用いられるコーホート法によって試算した。堅調な推移を見せている2010−15年度の変化率が、このまま続くと仮定した場合の10年後の技能労働者数は、15年度における技能労働者数(約330万人)から約44万人の減少になる約286万人と予測している。これを前提に、内閣府の『中長期の経済財政に関する試算』における経済成長率(名目GDP成長率が1.5%程度で継続するケース)をベースにした建設市場の『拡大シナリオ』と、人口減少による影響を加味した建設経済研究所の将来予測値をベースにした『横ばいシナリオ』の2つのパターンを用意。要素となる『10年後の市場規模』と『技能労働者1人当たりの市場規模(過去実績)』から、シナリオごとの技能労働者の必要数≠算出した。技能労働者の必要数は拡大シナリオが約379万人、横ばいのケースで約333万人と予測。出発点となっている10年後の技能労働者数(約286万人)と比較すると、その差は横ばいシナリオで47万人、拡大シナリオで93万人。これがいわゆる不足数≠ニして浮かび上がってくる。」(『建設通信新聞』2016.06.23)
●「国土交通省は、建設業許可や経営事項審査(経審)の申請などに合わせて実施している社会保険への加入指導の結果をまとめた。15年10月〜16年3月の半年間で許可や経審を申請した業者のうち、既に社会保険に加入していた業者の割合は89.2%。指導後に加入した業者を加えると、全体に占める割合は94.4%に達した。国交省が15年に実施した社会保険加入促進の全国キャラバンや同年11月に開始した前倒し一斉指導などの未加入対策が加入率上昇に寄与したとみられる。」(『建設工業新聞』2016.06.24)
●「国土交通省が15年4月に開始した『外国人建設就労者受け入れ事業』で、今年5月末時点の受け入れ人数が500人を超えた。特定監理団体の認定数は111団体で、各団体と受け入れ企業が共同で策定し認定された適正監理計画は252計画に達した。…受け入れ人数は5月末時点で519人(3月末401人)。国別の内訳は、中国が最も多い233人(191人)で、インドネシア101人(74人)、ベトナム88人(68人)、フィリピン78人(62人)、ミャンマー12人(5月に受け入れ)、ラオス4人(4人)、モンゴル2人(2人)、タイ1人(4月に受け入れ)と続く。職種別では、溶接が最も多い93人で、建築大工85人、鉄筋組み立て83人、とび83人と続く。受け入れ地域は関東が最も多く206人。次いで中部112人、中国82人となっている。」(『建設工業新聞』2016.06.27)

建設産業・経営

●「大林組(白石達社長)は、取引企業(専門工事業)の社会保険加入促進強化を目的に、7月1日契約分から社会保険の加入・未加入問わず、社会保険加入に必要な法定福利費(事業主負担分)を全額支払うことを決めた。これまでも全額支払いを前提に契約していたが、同社が独自に開発したシステムで未加入分は減額し加入分だけを支払っていた。7月1日以降は未加入分を減額せず、加入促進支援として原資にしてもらう。対象は全国で同社が手掛ける土木・建築すべての工事。今回の統一方針は支店に徹底済みだが今後、協力会組織の林友会にも周知する予定だ。」(『建設通信新聞』2016.06.17)
●「中央建設業審議会(中建審、国土交通相の諮問機関)と社会資本整備審議会(社整審、同)合同の基本問題小委員会(大森文彦委員長)が22日に東京都内で開かれ、今後の建設業政策の基本方向に関する中間取りまとめを行った。基礎杭工事のデータ流用問題の再発防止策として国交省の有識者会議が指摘した建設業の構造的課題を軸に審議。不要な重層下請の回避や、監理・主任技術者の役割の明確化などを盛り込み、担い手確保・定着と生産性向上による技能者減少のカバーも打ち出した。中間取りまとめは、9日に開いた会合で提示された素案をおおむね踏襲して整理された。検討の経緯と建設業を取り巻く情勢、課題に関する対応の方向性、まとめの3章で構成する。対応の方向性は『建設生産システムの最適化』『建設生産を支える技術者の担い手の確保・育成』『建設企業の持続的な活動が図れる環境整備』『重層下請構造の改善」の4本柱で整理した。」(『建設工業新聞』2016.06.23)
●「鹿島(押味至一社長)は、今年度後半から本格化する首都圏の大規模建築工事や、中長期的に確実視される職人不足への対応として、23日付でALC工事と耐火被覆工事を行う『鹿島フィット株式会社』(本社・東京都港区、永野隆彦社長)を設立した。建築工事で特に職人が足りなくなると判断した、4工種・職種について自前で職人を抱えるなどの体制強化で、短期・中長期的にも供給力を維持することが目的。自前の直接施工を通じた知見を作業効率改善などに生かし生産性向上にもつなげる。最終的には専門工事業の多能工化を実現させる狙いもある。今回の新会社はその初弾となる。」(『建設通信新聞』2016.06.24)
●「日本建設業連合会(中村満義会長)がまとめた会員97社の5月の受注総額は、前年同月比32.5%増の1兆1355億9200万円だった。大型再開発案件などの影響により大幅に増加し、2007年度(調査対象48社)以来9年ぶりに1兆円を超えた。5月の受注総額の内訳は、国内が33.5%増の1兆1093債2100万円、海外が0.5%増の262億7100万円。国内のうち、民間は51.8%増の9131億3400万円と大幅に増加した一方、官公庁は15.0%減の1944億6800万円だった。」(『建設通信新聞』2016.06.28)
●「国土交通省は28日、建設業の大企業(資本金3億円超)を対象に行ってきた下請の中小企業・小規模事業者との取引実態に関する聞き取り調査結果をまとめた。多くの企業が取引価格や単価を上方修正し、技能労働者の処遇改善や担い手確保に取り組んでいる実態を確認できたとしている。対象となる約500社の中からゼネコンを中心とする19社を抽出し、4月21日〜5月23日に調査を行った。…主な調査結果を見ると、多くの企業が取引価格や単価の見直しに取り組み、労務費は3年前と比べ5割程度上昇していることを確認。官民を挙げて推進している下請に支払う労務費や社会保険加入の原資となる法定福利費を内訳明示した見積書の活用もほぼ徹底されていることが分かった。一方、いまだに公共工事設計労務単価の見直しや官民を挙げた社会保険未加入対策を把握していない企業が一部にあることも分かった。」(『建設工業新聞』2016.06.29)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「1983年に日本国内で第1号の免震建物が建設されてから30年余。95年1月の阪神・淡路大震災、2004年の新潟県中越地震、さらには11年3月の東日本大震災とたび重なる大地震を経て、その安全性はもとより、事業継続や機能保持の観点からも免震構造の有効性に対する認識は深まり、計画件数も着実に増加している。日本免震構造協会の調査によると、14年までの免震建築物の計画棟数は累計で3942棟と4000台に迫り、年間建設延べ床面積に占める割合も07年以降、ほぼ4−5%台の水準を維持している。…90年代後半から全国各地で数次にわたる大地震が発生、その甚大な被害が免震技術の進化を促し、当初住宅系が主体だった適用用途も、病院や庁舎など災害時の拠点となる公共施設でのウエートが年々高まっている。民間施設においてもグローバル経済の進展とともに国際的なサプライチェーンを維持する上でも事務所、生産施設、物流施設などの採用が増加しており、11年の東日本大震災後はさらにその傾向が強まっている。近年、特に顕著なのが大規模建築への適用だ。00年以降の国内における年間建設延べ床面積に対する免震建築物延べ床面積の比率を見ても、00年から05年は1−2%で推移していたが、07年に4.5%、08年には初めて5%に達し、東日本大震災後の12年では5.7%を記録した。」(『建設通信新聞』2016.06.17)
●熊本地震で住まいを失った被災者むけの仮設住宅建設がすすめられている。安心して快適に生活できるよう木造の仮設住宅づくりに、汗を流しているのが熊本県建築労働阻合(熊建労、全建総連加盟)の組合員たちだ。…東日本大震災の際のプレハブ仮設では、夏の暑さや湿気、冬は寒さや結露が入居者の悩みになった。木造仮設は、その教訓を生かし、熱がこもらない工夫が施され、恒久的に住み続けられるほどのつくりになっている。…全建総連と中小工務店の業界団体『JBN』は、東日本大震災の教訓から、すばやく仮設住宅建設を行えるよう『全国木造建設事業協会』(全木協)を設立。21都県の自治体と災害協定を締結してきた。熊本県では地震直後に協定を締結し、現在、仮設住宅建設3025戸のうち280戸を全木協が受注。仮設団地の集会場や談話室も二十数件つくり、そこで熊建労の組合員たちが働いている。…建設職人は大工道具の用意や現場への移動費、保険料などをほとんど自己負担する必要があります。全木協の現場では、採算があうよう適正単価として日当2万6000円が支払われるようになっており、被災している建設職人から喜ばれている。全建総連は、熊本県近隣の組合員を仮設建設の応援に送っており、今後の状況によって全国から建設職人を派遣する予定だ。(『しんぶん赤旗』2016.06.17より抜粋。)
●「熊本地震で被害が集中した熊本県益城町にトレーラーハウスが配備され、障害者や妊産婦ら配慮を必要とする世帯向けの『福祉避難所』に活用されている。浴槽やトイレを備えたタイプもあり、被災者は『家族だけの空間がうれしい』と歓迎。ただ8月末までの期間限定で、先行きに不安を訴える人もいる。福祉避難所は本来、介護施設などが使われ、内閣府によると、トレーラーハウスを使った福祉避難所は全国で初めて。被災地で支援活動をしている一般社団法人『協働プラットフォーム』(東京)が提案。福祉避難所の不足に悩んでいた町は、移動式で素早く設置できるトレーラーハウスを日本RV輸入協会から有料で借りた。…広さは20〜35平方メートル。ロフト付きの部屋や浴槽、トイレ、キッチンを備えたものもある。入居者の支援のため保健師や看護師も巡回している。…町は仮設住宅の建設を進めており、全ての完成が見込まれる8月末にはトレーラーハウスを返却する予定だ。」(『日本経済新聞』2016.06.20)
●「東京都中央卸売市場は、築地市場(中央区築地5)の移転先として建設を進めている『豊洲市場』(江東区豊洲6)の本体施設4棟が5月中に完成し、各施工者から引き渡しを受けたことを24日の卸売市場審議会に報告した。11月7日の開業に向け、現在は施設周辺の外構整備などを施工中とした。…都は、豊洲市場を利用する業者らが行う店舗や事務所などの工事も6月から順次着工していると報告。新施設の利用に習熟するための訓練や、品質・衛生管理マニュアルに基づく講習会なども実施していくとした。」(『建設工業新聞』2016.06.27)
●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構はこのほど、1109住宅、10万7千余戸を所有している雇用促進住宅を居住者がいるまま、大手不動産、ゼネコン、投資ファンドなど大企業に一括売却することを明らかにした。…発表された『入札公告』によると、全国の機構所有の雇用促進住宅、職員住宅を東西、二つに分け一般競争入札によって一括売却するもので、東ブロックは552物件、291億6591万4000円、西ブロックは626物件、347億7825万6190円(いずれも税抜き)を最低売却価格としている。契約を付す条件として、@入居者のいる物件については引き渡し後10年間は転売できない、A入居者が契約している家賃などの賃貸条件について引き渡し後10年は変更できない、などとしている。…居住者からは、▽地方自治体に譲渡して管理することは今後行わないのか▽売却後11年目以降は居住保障があるのか▽家賃など契約条件が変更されることはないのか▽従来行ってきた災害被災者や『派遣切り』などによって住まいを失った失業者などへの緊急的な居住保障は行わないのか、などの疑問が上がっている。(『しんぶん赤旗』2016.06.28より抜粋。)

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