情勢の特徴 - 2016年7月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「東京商工リサーチが6日発表した2016年上半期人(1〜6月)の東京都内の倒産件数(負債額1000万円以上)は、前年同期比4.8%減の821件だった。上半期の倒産件数の減少は13年から4年連続で、1990年上半期(590件)以来の少なさだった。」(『日本経済新聞』2016.07.07)
●2015年度中に内部留保を増やした上位100社の内部留保を合計すると、14年度の165.6兆円から15年度の179.8兆円へと1年間に14.2兆円も増やしていることが本紙集計で分かった。15年度の有価証券報告書から各企業の連結内部留保を集計した。…内部留保が増加した企業の多くで、資産中の現金預金が急増している。ただ、金融機関の現金預金の増加については、日銀が大量に国債などを購入してマネーを供給した結果だ。(『しんぶん赤旗』2016.07.08より抜粋。)
●安倍晋三首相は11日、参院選を受けて自民党本部で記者会見し、デフレ脱却に向け『内需を下支えできる総合的かつ大胆な経済対策を実施したい』と表明した。年金受給資格を得るのに必要な保険料の納付期間を、来年度から短縮する意向を示した。現在の25年から10年に縮める。融資などを含め事業規模10兆円を超える大型対策で自らの経済政策『アベノミクス』を進める。…経済対策では『成長の果実を必要な分配政策に大胆に投入する』と強調。その柱の一つとして納付期間が足りずに年金を受け取れない無年金者の問題をあげ、納付期間の短縮を『来年度からスタートできるよう準備を進める』と表明した。現行法は消費税率を10%に引き上げるのにあわせて導入すると定めているが、財務、厚生労働両省は首相の意向を受けて消費増税を待たずに先行導入する。来年の通常国会に関連の予算案や法案を提出する。年金は20歳以上から60歳未満の聞、すべての人が保険料の納付を義務付けられている。納付済み期間に免除期間などを合計した期間が25年以上に達すると、年金を受け取れる。非正規労働者の増加などを背景に、納付期間が25年に達しない人が増えている。受給資格の10年間への短縮で、約42万人いる無年金者のうち約17万人が新たに年金を受給できるようになる見通しだ。(『日本経済新聞』2016.07.12)
●「不動産投資信託(REIT)市場で、住宅や物流施設を運用するREITの投資口価格(株価に相当)上昇が目立っている。景気の先行き警戒感が根強く、賃料収入が安定している点が投資家に評価されているためだ。オフィスやホテルなど景気の影響を受けやすい物件で運用するREITから資金が移っている。…個別のREITでみると上昇度合いには運用内容で差が付いている。上げが大きいのが住宅だ。…一方、ホテルやオフィスの戻りは鈍く、下落したREITもある。景気減速への警戒感が背景にある。円高進行で企業業績の下振れリスクが高まっており、訪日外国人需要も伸び悩み気味だ。こうした状況はREITの収益悪化に跳ね返り、分配金の減少につながりかねない。住宅や物流はオフィスに比べて賃料や入居率が景気動向に左右されにくいとされる。…日銀がマイナス金利政策を決めた1月末以降、REIT市場ではオフィス系が上昇のけん引役だった。金利低下で景気が上向き、賃料上昇に弾みがつくと期待されたからだ。だがオフィス市況の改善ピッチは鈍く、住宅・物流に主役を取って代わられつつある。」(『日本経済新聞』2016.07.13)
●「総務省が13日発表した住民基本台帳に基づく今年1月1日時点の人口動態調査によると、国内に住む日本人の人口は1億2589万1742人で7年続けて減少した。前年から27万1834人減り、調査を始めた1968年以降で最大の減少数だった。生まれる人より亡くなる人の伸びが大きかったためだ。総人口が減るなか、東京への一極集中は進んでいる。…総人口は減っているにもかかわらず、東京を中心とする首都圏に住む人は増えた。東京、千葉、埼玉、神奈川の各都県を合わせた人口は前年に比べて11万人近い増加となった。特に東京は8.6万人増の約1297万人に達し、初の1300万人台が目前だ。都市部に人が集まる傾向は年々強まっている。働く場や商業施設が多く、住みやすい環境を求めて人が集まってくるためだ。…都道府県別で人口減少が最も多かったのは、北海道の3.2万人だった。市区町村別では、市区の77%、町村の88%で人口が減った。」(『日本経済新聞』2016.07.14)

行政・公共事業・民営化

●「社会保険未加入対策の強化へ、その姿勢を鮮明にしている国土交通省は、加入の原資となる法定福利費が現場の職人にきちんと行き渡る環境整備に力を注ぐ。焦点は法定福利費を内訳明示した見積書、いわゆる標準見積書の活用徹底だ。対策の目標年次が迫る中、元請企業に下請企業への指導責任を問う、新たな取り組みがスタートを切る。足掛かりとなる元請企業へのアンケートと立ち入り検査で、対策にかける本気度を示す。…ポイントになるのは、元請けが下請けに対して示す『見積もり条件書(見積もり依頼)』に適正な法定福利費を内訳明示した見積書を提示するよう明記しているか(元請けとして下請けに働き掛けているか)、あるいは下請けから提出された見積書を尊重して下請負契約を締結しているか(適切に請負金額に反映しているか)といった点だ。」(『建設通信新聞』2016.07.01)
●「1次下請業者を社会保険等加入業者に限定する取り組みが、都道府県レベルで加速度的な進展をみせている。既に都道府県の過半が1次下請業者の排除措置など、何らかの対策を実施していることが分かった。発注工事における未加入業者の排除措置が元請業者への取り組みから『下請業者』へと移行する。…元請企業が未加入の1次下請けと契約することを禁じる『1次下請けの排除』に取り組んでいる団体は、15年3月の7団体から20団体に増加。この1年強で加速度的な進展を見せている。」(『建設通信新聞』2016.07.06)
●「国土交通省は、直轄事業で初めて設計段階から施工者が関与するECI(アーリー・コントラクター・インボルブメント)方式を導入する。熊本地震の被災地で行うトンネル工事で、早期に事業を進めるのが狙い。受注者選定には、最も優れた技術提案を行った参加者と価格や施工方法を交渉して契約相手を決定する『技術提案・交渉方式』を取り入れた入札契約方式を採用する。」(『建設工業新聞』2016.07.13)
●「関東地方整備局は、15年度に発注した工事の入札契約の実施状況をまとめた。発注件数はl149件で、契約金額の総額は3308億1900万円。落札率は前年度より1.3ポイント低い91.3%だった。落札率は09年度以降は横ばいが上昇が続いていたが、6年ぶりに低下した。低入札の発生率は2.0%。不調・不落の発生率は13.5%と前年度より7.6ポイント低下した。不調・不落発生率を工種別で見ると、建築が47.4%で最も高く、暖冷房が45.5%、通信設備が22.1%、塗装が16.7%と続いている。」(『建設工業新聞』2016.07.14)
●「東日本建設業保証(東保証)がまとめた6月の公共工事の動向によると、16年度第1四半期(4〜6月)に前払金保証を扱った工事などの総請負金額は前年同期比3.6%増の2兆8506億円となった。増加は5年連続。国の放射能除染工事は減ったものの、除染以外の直轄工事、鉄道や高速道路関連の工事、東京都の五輪関連大型工事などが全体を押し上げた。」(『建設工業新聞』2016.07.14)

労働・福祉

●「厚生労働省が1日発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は前月と比べて0.02ポイント上昇の1.36倍だった。上昇は3カ月連続で、1991年10月以来、24年7カ月ぶりの高水準だった。宿泊・飲食や卸売業・小売業などを中心に深刻な人手不足が続き、求人倍率を押し上げている。」(『日本経済新聞』2016.07.01)
●「国士交通省は建設業の社会保険未加入対策の一環として、加入率の低い2次以下の下請業者に対する取り組みを推進する。法定福利費を内訳明示した見積書の活用に関する調査で2次下請の状況も把握。その結果を踏まえ、7月下旬にも現場の立ち入り検査を始める。下請指導ガイドライン改正案では内訳明示の見積書の法的位置付けを明確化し、1次・2次下請間でも見積もり条件にするなど、『2次以下の業者、労働者への法定福利費の流れを作り、加入促進につなげる』(建設業課)考えだ。国交省は社会保険加入の目標として『17年度をめどに許可業者単位でl00%、労働者単位で製造業並み』を設定。期限まで1年を切り、依然低い加入率にとどまっている2次以下や都市部の下請業者に対する取り組みを柱に未加入対策の強化を打ち出している。法定福利費を内訳明示した見積書の活用を徹底するため、許可部局による立ち入り検査を実施。公共・民間、土木・建築を問わず規模の大きな工事を対象に、各地方整備局を通じて6月にアンケートを開始し、これまでに全都道府県で1000社弱の元請業者に調査票を送付。今後もアンケートを続ける可能性もある。調査票では1次・2次下請の社会保険加入状況の把握を実施しているかどうかを確認。1次・2次下請間での内訳明示の見積書の活用状況を把握するため、元請と1次下請の注文書などに2次下請に対し『加入指導』『内訳明示見積書の提出』『内訳明示見積書の尊重、法定福利費を適正確保した契約締結』『適用除外を除く未加入業者と契約を締結しない』について記載の有無を確認。注文書のサンプルの提出も要請し、未加入対策を実施していない場合は、いつまでに措置する予定か回答を求める。」(『建設工業新聞』2016.07.01)
●「四国の専門工事業者らが共同で職人を育成する取り組みが本格的に始まる。高松市を拠点とする内装工事の異業種10社(9職種)が集まって昨年11月に立ち上げた一般社団法人の『職人育成塾』(代表理事・岡村真史新日本建工社長)が、市から借り受けた廃校を利用した養成施設を10月に開校する。未就業の若者に現場施工の技能と建設業の魅力を伝えることで入職を促進する。新入社員を対象にした研修も手掛けるなど、業界に入った貴重な人材の離職防止に役立つ事業も展開する。…岡村代表は、職人育成塾を立ち上げた狙いについて『ものづくりに触れる場をつくり、建設業の素晴らしさを伝えることができれば、入職する動機付けになると考えた』と話す。ネーミングについては『現場で苦労する職人に日を当てる分かりやすいものとし、職人そのものをブランドにしていけるようにしたかった』という。」(『建設工業新聞』2016.07.06)
●「日本建設業連合会(中村満義会長)のけんせつ小町委員会(則久芳行委員長)は、会員企業31社の協力会社を対象に実施した『女性技能者の現況等に関するアンケート調査結果』をまとめた。今後の女性技能者の雇用については『消極的』が46.4%で『積極的』の43.3%を上回り、人手不足で女性の雇用を増やしたいものの、受け入れ環境が整備されていなことがネックとなり、積極雇用に踏み出せない状況が浮き彫りになった。雇用に消極的な理由では、『力仕事なので女性には無理』などが上位を占め、“体力差”を指摘する回答が目立った。調査は、同委員会の構成会社31社の協力会社を対象に、2015年11月から16年1月にかけて実施し、321社から回答を得た。…321社が常用する技能労働者計2万7608人のうち、女性は519人で全体に占める割合は1.9%にとどまっている。職種別の女性技能者数は交通誘導警備員が最多の132人で、以下、建具工の41人、CADオペレーターと内装工の37人、鉄筋工の26人と続く。一方、職種別に女性が占める割合をみると、軽作業員の60.0%、CADオペの44.0%、建具工の21.8%の順で高い。逆に最も少なかったのはトンネル工の0.1%で、とび工の0.4%、タイル・れんが工とボーリング工の0.6%がこれに続く。…女性技能者の入職を促進するために、元請けに期待する支援策については、『女性用トイレなど、女性が働きやすい現場環境の整備』(108社)、『雇い入れ時の助成金』(49社)、『女性技能者を就労させる場合の優遇措置』(39社)が上位を占め、インセンティブに対するニーズも高い。女性技能者の活躍推進に向けては、働きやすい現場環境の整備とともに、建設業への理解促進とイメージアップが必要という意見も多かった。」(『建設通信新聞』2016.07.07)

建設産業・経営

●「住友不動産など住宅関連各社が『定額制』や『小規模』をうたい文句にリフォーム需要の獲得に動き始めた。消費増税が延期され、単価が大きい大規模工事の駆け込み需要への期待が外れた。必要な部分だけ補修したり、割安な中古住宅を買って改修したりする消費者の節約志向に対応し、定額のパック商品など明瞭な料金設定で需要を開拓しようとしている。住友不動産は戸建て向けに部屋単位の定額制リフォーム『内装パック』の販売を始めた。天井と壁のクロスを張り替え、壁と床の継ぎ目の保護材も交換。フローリングは新品を重ねて取り付ける。料金は洋室で1畳相当(約1.65平方メートル)の面積あたり税別2万円。…東急リバブルは自社が伸介した中古マンションの購入客を対象にした定額プランを6月から始めた。LIXILの台所や風呂、トイレ、洗面化粧台をセットにしてリフォームする。壁紙や水回りの床の張り替え、清掃もする。価格は70平方メートル台までなら工事費込みで250万円。同種工事では相場より50万〜100万円ほど安いという。価格を抑えた一括提案で、改修を伴う中古物件が選ばれるようにする。…リフォーム業界では間取り変更を伴うような大規模改修の提案に力を入れてきた。リフォームローンは新築の住宅ローンより金利などの条件が厳しい。消費者の節約志向や増税延期もあって大規模工事の大幅な増加は見込みづらくなってきた。一方、小規模工事の需要は底堅い。国土交通省の2014年度の住宅市場動向調査によると、模様替えなど比較的小規模な工事が83.6%とl8年度より3.1ポイント増えた。増築や改築を伴う大規模工事は3.4ポイント減った。これまでリフォームは見積もりになかった費用を工事業者が途中で追加するなど、料金の不明瞭さでトラブルになることも珍しくなかった。各社は定額の安心感を打ち出して小規模な需要を掘り起こし、将来の大規模工事にもつなげる考えだ。」(『日本経済新聞』2016.07.02)
●「国士交通省は建設業の生産性について、『付加価値労働生産性』を指標とする方向で検討に入る。完成工事総利益(粗利益)や労務費などを合算した『付加価値』を、従業員数または技能労働者数の『労働投入量』で割った値を付加価値労働生産性と定義。担い手確保の観点から、人件費の増加をプラスの評価にするのが特徴だ。生産性を定量化することで、付加価値を増大させる効果的なアプローチを検討。産業全体や企業単位での中長期的な生産性の指標として活用する。」(『建設工業新聞』2016.07.04)
●「生産性の向上を軸に中小企業の経営力強化を後押しする『中小企業等経営強化法』が施行されたことを受けて、国土交通省が建設業に特化した『事業分野別指針』の検討に入った。中小企業庁がまとめた全体の基本方針に沿って、今秋にも建設業が取り組むべき事項や目標値といった推奨プランを打ち出す方針だ。中小企業等経営強化法は生産性の向上に取り組む中小企業や小規模事業者を積極的に支援することが狙い。支援を求める企業は、経済産業相が定める基本方針や各分野の主務大臣が定める事業分野別指針に沿って、人材育成や財務管理、設備投資など経営課題に対応した『経営力向上計画』を策定して国に申請。それが認定されると、固定資産税の軽減措置や政府系金融機関からの金融支援を受けられる。対象は生産性の向上を目的に新規に取得する機械装置など。建設業で言えば、固定資産税の対象となる建機(自走できないもの)の購入がメーンとなる見込み。特例措置として固定資産税の課税標準が3年間にわたって2分の1に軽減される。固定資産税での設備投資減税は政府として初めて。赤字企業にとっても大きな減税効果が期待されるという。」(『建設通信新聞』2016.07.07)
●「国土交通省は7日、地盤改良工事の施工不良を受けた再発防止策などを検討する『地盤改良工事の施工不良等の問題に関する有識者委員会』(委員長=大森文彦東洋大教授・弁護士)の第2回会合を開催。発注者における今後の対応として監督・検査体制の見直しを進める方針を明らかにした。見直しの方向性として提示するのは、放き打ちでの現場立ち会いや偽装ができないような計測機器の使用、施工完了後の材料メーカーへの返品状況の確認など。従来は発注工事の枠内で行われてきた事後ボーリングによる確認を、別枠で第3者に発注することなども有効になるとしている。」(『建設通信新聞』2016.07.08)
●「東京商工リサーチは8日、2016年上期(1月−6月)の建設業倒産(負債額1000万円以上)件数を公表した。前年同期比2.7%減の825件。上期で8年連続で前年周期比減少となった。ただ、都道府県射では24道県、地区別でも9地区中5地区が前年同期比で増加するなど、全体としては倒産抑制傾向が続いているが、建設市場動向に連動する形で、倒産傾向の地域間格差も明暗がはっきり分かれた格好だ。」(『建設通信新聞』2016.07.11)
●「日本建設業連合会(中村満義会長)と国土交通省、建設コンサルタンツ協会(長谷川伸一会長)などが設置した『機械式鉄筋定着工法技術検討委員会』(委員長・久田真東北大大学院工学研究科土木工学専攻教授)は8日、コンクリート工の生産性革命の第1弾となる同工法の配筋設計ガイドラインを策定した。同工法が適切に使われるよう、適用範囲を明確化し、用途に応じた設計時の留意点を盛り込んだ。同省は速やかに各地方整備局に通達を出し、2016年度から直轄土木工事の設計にガイドラインを適用する。あわせて各都道府県、政令市にも参考送付し、活用を促す。」(『建設通信新聞』2016.07.12)
●「鉄筋を組み立てる鉄筋工や型枠工の工事単価が下がっている。ゼネコンが専門業者に発注する価格は直近ピークの2014年と比べて5〜10%程度安い。マンション需要の減少に加え、都心の大型物件の工期延長で人手不足が緩和した。建設現場で鉄筋コンクリートの基礎を作る型枠工の工事単価は東京のマンションで1平方メートルあたり4000円程度。直近ピークの14年に比べ5%程度安い。鉄筋工も1トン4万円台後半と同1割程度下がった。…ピーク時にはフルに近かった型枠工の稼働率は現在、全国で8〜9割程度だ。鉄筋工も全国で7割程度にとどまる。人手不足で外国人労働者の雇用を増やした業者もいるが『工事の減少で経験を積む機会がなく、技能継承が進んでいない』(全国鉄筋工事業協会の内山聖会長)という。工事単価の上昇で、コンクリートの使用量が少ない鉄骨造りへ工法の切り替えが進んだ影響もある。」(『日本経済新聞』2016.07.15)
●「国土交通省は、民間工事における請負契約の適正化を図る基本的な枠組みとして『民間建設工事の適正な品質を確保するための指針(民間工事指針)』を策定した。契約を結ぶ前段階で受発注者が行う事前協議の徹底を推奨、そのベースとなる協議項目(12項目)を見える化した点が最大のポイントだ。発注者となるディベロッパーや、受注者であるゼネコン、それぞれの業界団体にとって、この“共通基盤”が整備された意味は大きい。」(『建設通信新聞』2016.07.15)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「文部科学省は6月30日、『熊本地震の被害を踏まえた学校施設の整備に関する検討会』を開き、中間報告作成に向けた論点整理案をまとめた。児童生徒の安全確保では、熊本地震で経年劣化や古い構法の非構造部材での被害が大きかったことを踏まえ、老朽化対策を早急に実施することが必要とした。また、施設の設計を進める上で、校舎などを避難所として継続使用する場合、柱脚のコンクリート破損など構造部材の損傷に伴って耐震性能が低下しないよう注意することが重要とした。体育館の鉄骨屋根の定着部や屋根横面は、重量物の落下がないよう設計することも求めている。避難所機能確保に必要な施設整備の整備では、地震や洪水、津波など災害種ごとに、必要な施設整備を明確にした上で、発災前と発災後一定期間経過後までに調達すべきものに分けて検討することが重要などとした。優先的に備えるべき施設設備は、学校施設予算だけでなく、防災関連や下水道関連など多様な予算を使い整備することが適当とした。このほか、避難所に指定されていない学校で避難者を受け入れている事例を踏まえ、自治体の防災部局が地域防災計画で位置付けを明確にすることや、学校施設の管理・運営、避難所の運営についても今後取り組むべき課題を指摘している。」(『建設通信新聞』2016.07.01)
●「不動産市場に『アパートバブル』の懸念が出ている。団塊世代による相続対策を背景に、新設住宅着工はアパートなど貸家が2桁増と急増。マイナス金利の導入も背中を押し、銀行は資産家に向けたアパートローンに力を入れつつある。ただ地方は人口減少の加速が避けられず、将来危うい空室リスクもはらむ。…アパートが伸びた理由は2つある。1つば団塊世代の相続対策だ。15年1月施行の税制改正を受け、相続税は非課税枠だった基礎控除の引き下げや税率構造が見直された。相続税制では現金よりも不動産の方が評価額が低くなり、賃貸に回すとさらに下がる。即効性のある節税策として、資産家がアパートに飛びついた面がある。2つめは日銀のマイナス金利政策。利ざやが縮んだ銀行がアパートローンに活路を見いだそうとしている。拠点を置く自治体で人口減少が進む西日本のある地銀も『市内中心部で閉鎖した店舗や老朽化した建物の跡地をいかしたアパート建設を提案している』と話す。節税したい個人と融資を伸ばしたい銀行側の思惑の一致。問題は人口減少社会の日本で、アパート着工が適正水準かということだ。」(『日本経済新聞』2016.07.04)
●「熊本地震で震度7の揺れが2度起きた熊本県益威町にある建築物のうち、1981年に導入された新耐震基準を満たした木造建築物(800棟)の約1割(73棟)が倒壊・崩壊したことが、被害の原因究明を行っている国土交通省の有識者会議『熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会』の調査で明らかになった。一方、新耐震基準を満たしたRC造(20棟)やS造(101棟)の建築物に大きな被害はほとんど見られず、RC造の倒壊・崩壊はゼロだった。」(『建設工業新聞』2016.07.04)
●「もうすぐ梅雨明けだが首都圏の水不足が深刻だ。市民の水がめ、利根川水系のダム貯水率は5割程度。7月としては過去最低水準が続き、農家は稲などの生育を心配する。公園の噴水を止めるなど節水対策を始めた地域も。今後もまとまった雨は少ないとみられ、真夏の生活に影響が出る恐れもある。利根川水系のダム8カ所で最大規模の矢木沢ダム(群馬県みなかみ町)。例年はなみなみと水をたたえる湖面は低く、白い岩肌があらわだ。貯水率は12日時点で25%と平年の3割以下。8ダム合計でも平年の半分程度にとどまる。利根川水系では10%、渡良瀬川では20%の取水制限を実施中だ。…ダムを管理する関東地方整備局利根川ダム統合管理事務所の担当者は『観測開始以来、7月として貯水率は過去最低。さらに減ればすぐに制限を引き上げざるをえない』と危機感を隠さない。節水対策を強化する自治体もある。かつての渇水で3万戸が断水した干葉県は水道の給水圧力を下げる『減圧』を実施。広報車やポスターで節水を呼びかけている。千葉市は稲毛海浜公園など7カ所の公園で水道水を使う噴水を止めた。…全国で深刻な水不足に陥った94年、断水などで約1600万人が影響を受けた。東京都内では日比谷公園など都立公園の噴水や流水施設計50カ所がストップ。各地でプールが営業を中止した。学校給食では米飯からパン食への切り替えが相次ぎ、使い捨ての紙製食器を使った学校もあった。病院では大量の水を使う人工透析の時間を見直し、雨乞いの神事を行った地域もあった。今年の水不足は暖冬で関東甲信越の降雪量が平年の6割程度にとどまったことが主因。5月は高気圧に覆われ、梅雨時期も水源地への降雨は少ない。気象庁によると7〜9月の降水量はほぼ平年並みとみられ、貯水量の大幅回復は見込みにくいという。」(『日本経済新聞』2016.07.13)

その他