情勢の特徴 - 2016年7月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府は26日、熊本地震の復旧・復興に向けた2016年度補正予算で7000億円を計上した予備費のうち、654億円の執行を閣議決定した。地震で損壊した家屋の解体やがれき処分などの災害廃棄物処理事業に340億円を使用する。このほか、地震で寸断された国道57号をはじめとする道路復旧や崖崩れ対策など公共土木関連で134億円、熊本大など国立大学法人の施設復旧事業等で123億円、被災した医療施設の復旧費用で1億7000万円などを使う。」(『建設通信新聞』2016.07.27)

行政・公共事業・民営化

●「長野県は、15年度に試行した『週休2日を確保するモデル工事』で対象現場の技術者、作業員(技能者)などを対象に実施したアンケートの第2回中間集計をまとめた。それによると、作業員は『そこまでは不要』『不要』とする意見が約63%を占め、収入減少への懸念から週休2日に否定的な意見が多いことが分かった。…導入効果については、技術者・作業員合わせ『体を休められた』が約27%、『家族との時間が増えた』が約23%。課題については、『余計なお金、光熱費(支出)が増えた』が46%、『給料が減った』が26%。作業員の回答では、132人中65人が『給与が減る』とし、収入の碓保が大きな課題になっていることが分かった。」(『建設工業新聞』2016.07.21)
●「神奈川県県土整備局は2015年度のくじ引き発生状況をまとめた。一般競争入札と『いのち貢献度指名競争入札』の計834件のうち42.4%にあたる354件が同額入札で、くじ引きとなった。工事に『かながわ電子入札共同システム』を完全導入した07年度以降、初めて40%を突破した。設計単価や歩掛りなど設計金額を算出するための情報がすべて公表されており、受注者の積算精度向上が増加要因と見られる。」(『建設通信新聞』2016.07.28)

労働・福祉

●「外国人労働者の『日本離れ』が静かに進んでいる。韓国や台湾などが受け入れを進め、獲得競争が激しくなっているためだ。日本で働く魅力だった給与などの待遇面も、差は急速に縮まる。日本の外国人労働者は今年中に100万人の大台を突破する見通しだが、今後、より一層の受け入れ拡大にカジを切っても外国人が来てくれない懸念が強まってきた。『月給30万円なんて出せない』。東京・赤坂にある老舗の中国料理店の店主は嘆く。アルバイトを募集したところ、それまでの2倍の給料を中国出身の若者に要求された。これまでの給料だと『中国で働くのと変わらない』と相手にされない。店主は『年中無休』の看板を下ろし、店も早く閉めるようになった。…日本の競争上の優位性だった賃金の差は円安も響いて縮んでいる。16年1月時点の為替レートで日本の最低賃金をドル換算すると、月額で約1060ドル。ソウルと変わらない水準だ。日本の滞在期間も3年と短い。技術が習得できれば熟練労働者に移行できる韓国や最大12年まで延長できる台湾と比べ、見劣りする。日本は外国人の単純労働者を認めていない。抜け道となってきた技能実習制度も、違法な条件で雇う業者が一部いるなど問題は多い。『日本はすばらしい国と思っていたけど…』技能実習生として、縫製工場で働く20代のベトナム人女性は言葉少なだった。残業代は最低賃金の半分以下しかもらっていない。労働契約の中身も『知らない』ので、そうした待遇が違法かどうかもわからない。出国するために100万円以上を支払っており『働き続けるしかない』。潜在成長力低下を補うための移民受け入れ論もくすぶるが『日本は海外から見たときの魅力がなくなっている』(日本総研の山田久チーフエコノミスト)のが実情だ。」(『日本経済新聞』2016.07.18)
●「厚生労働省が15日にまとめた2016年1−6月(16年上期)の労働災害発生状況(速報、7月7日時点)によると、建設業の休業4日以上の死傷者数は、前年同期と比べ1.6%減(99人減)の6001人となった。うち死亡者数は116人と、14.1%減(19人減)だった。 建設業の死傷者事故別人数は、『墜落・転落』が2139人と最も多く35.6%を占める。『転倒』が617人、『飛来・落下』が542人、『はさまれ巻き込まれ』が658人などとなっている。死亡者数の業種別は土木が37人、建築が51人、そのほかが28人。都道府県別では東京が11人、北海道が9人、千葉が6人、神奈川が5人など。月別は1月22人、2月25人、3月22人、4月22人、5月13人、6月12人。事故別では『墜落・転落』が全体のほぼ半数を占める57人、『崩壊・倒壊』が15人、『交通事故(道路)』が10人だった。建設業全体の死亡災害が減少傾向にある中で、『墜落・転落』は6人、『崩壊・倒壊』が4人それぞれ前年同期から増えている。」(『建設通信新聞』2016.07.19)
●「国土交通省は、技能労働者・技術者・経営者間のシームレスなキャリアパスモデルの構築や、多能工の育成・活用事例の水平展開などを一体的に検討するため、有識者や専門家を招いて『キャリアパスモデル見える化検討会』を設置する。就職活動を行う若手や技能労働者などにさまざまなキャリアパスの姿を示し、担い手の確保・育成につなげる。25日に初会合を開く。」(『建設工業新聞』2016.07.22)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、田中宏幸議長)は、2016年賃金交渉の中間報告をまとめた。月例賃金は回答33組合中、約7割に上る22組合がベースアップ (ベア)を獲得した。一時金も回答32組合中30組合が前年を上回り、年収ベースでは年齢加重平均で昨年比5.62%増となった。」(『建設通信新聞』2016.07.26)

建設産業・経営

●「大手ゼネコンなどの業績が好調な一方で、地域建設業者が工事量不足にあえいでいる。群馬県建設業協会が20日、自然災害が起きた時に対応する人員や機械を維持するのに最低限必要な工事量として独自に定義した『限界工事量』を会員企業の約6割が割り込んでいると窮状を訴え、地方業者には余力があるとして、工事量の確保に向けた提言・要望活動を強化する方針を発表した。多くの地方業者が同様の状況にあるとみられ、今後、地方向け工事の積み増しを求める声が全国で強まりそうだ。」(『建設工業新聞』2016.07.21)
●「北海道、東日本、西日本の公共工事前払金保証事業会社3社は20日、四半期ごとに行う建設業景況調査の16年度第1四半期(4〜6月)の結果を発表した。2415社(回答率89.7%)が回答。地元建設業界の景況感を示す景況判断指数(BSI)は、前期(1〜3月)のマイナス15.5からは1.0ポイント改善したが、7期連続で悪化傾向となった。次期(7〜9月)は悪い傾向がやや強まり、BSIはマイナス17.5と今期より3ポイント低下する。受注総額に関する4〜6月のBSIはマイナス12.0(前期比2.5ポイント改善)。うち官公庁工事がマイナス14.5(2.5ポイント改善)、民間工事がマイナス9.0(0.5ポイント改善)となった。いずれも前期よりやや改善したが、次期は再び減少傾向が強まる見通しだ。中でも官公庁工事の受注総額のBSIを見ると、政府が指示した16年度公共事業真の8割程度を9月末までに前倒し執行する影響は、現段階で次期見通しを含め限定的になりそうだ。…4〜6月の地元建設業界の景況感に関するBSIを調査対象全9地区別に見ると、最も低かったのはマイナス21.5の北陸。その主因として、昨年4月に長野〜金沢間で開業した北陸新幹線建設事業の工事が急減したことを挙げている。現在は北陸新幹線金沢以西区間の工事が進んでいるが、次期のBSIは今期よりさらに悪いマイナス24.5まで下がるとみる。」(『建設工業新聞』2016.07.21)
●「労働力が減少し続けても、生産性を向上させれば経済成長は可能―。そんな思いから、石井啓一国土交通相は今年を『生産性革命元年』と位置付け、建設現場の生産性向上策『i-Construction』に省を挙げて取り組み始めた。ICT(情報通信技術)の全面活用などで建設生産プロセス全体を効率化。生産性向上だけでなく、より創造的な業務への転換や十分な休暇の取得、賃金水準の向上など現場の働き方自体を変革する効果も期待される。全国各地で生産性革命が起き始めた。」(『建設工業新聞』2016.07.25)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「経済産業省は東京電力福島第1原子力発電所の廃炉に向けた新たな支援措置の検討に入った。原子力損害賠償・廃炉等支援機構に公的な基金をつくり、廃炉費用を一時的に援助。東京電力ホールディングス(HD)の事業者負担を原則に、長期間かけて国に資金を返す。結果的に電気料金に転嫁されないよう東電HDには徹底した経営改革を求める。福島第1原発は2011年3月の東日本大震災に伴う事故で、1〜3号機の炉心溶融(メルトダウン)が発生した。溶け落ちた核燃料の取り出しなど廃炉の完了には、数十年にわたる時間と数兆円規模に上る資金が必要とされる。ただ、東電HDがこれまで資金手当てのメドをつけたのは約2兆円にとどまり、会計上も約2500億円分しか処理が済んでいない。今後、廃炉費用が確定し、東電HDが一括して引き当てた場合、2兆円強の自己資本を上回り、債務超過に陥る恐れがある。東電HDの経営が行き詰まれば廃炉作業や被災者への賠償が滞り、福島の復興が遅れかねない。経産省は抜本的な経営改革を条件に、廃炉費用を確実に賄える枠組みづくりに乗り出す。」(『日本経済新聞』2016.07.31)

その他