情勢の特徴 - 2016年8月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府は、官公需法に基づく2016度の国などの契約の基本方針を固めた。国や独立行政法人などが中小企業・小規模事業者に発注する契約目標率は、15年度目標率を0.4ポイント上回る55.1%とする模様だ。7兆0400億円強の16年度官公需総額に占める中小企業・小規模事業者向け契約目標額は、3兆8800億円程度になるとみられる。このうち、工事の総予算額は3兆0800億円強で、中小の契約目標額が1兆6900億円程度、契約目標率は55%を若干下回ることになりそうだ。」(『建設通信新聞』2016.08.02)
●「政府は2日、事業規模28.1兆円の経済対策を閣議決定した。財政措置は13.5兆円で、国と地方を合わせた歳出規模は7.5兆円程度、うち国費は6.2兆円となる。秋に編成する補正予算での追加歳出は4.5兆円(一般会計4兆円、特別会計0.5兆円)で、国庫債務負担も0.1兆円追加する。補正予算による公共工事の追加について、石井啓一国土交通相は同日の記者会見で『人材や資材の状況は安定しており、執行に特段の支障は見当たらない』との認識を示した。」(『建設工業新聞』2016.08.03)
●「国土交通省は、アフリカ各国向けに官民で推進する新たなインフラ輸出戦略の一環として、『アフリカ・インフラ協議会』を9月下旬に発足させる。アフリカ進出への意欲や関心のある企業・団体に参加してもらい、現地のニーズや課題に関する情報交換を行う。日本企業の受注を売り込む場としてアフリカ各国で実績がある『官民インフラ会議』の開催案内も行う。協議会に参加する企業・団体には、年明けにザンビアとウガンダで開く官民インフラ会議への参加を呼び掛ける。」(『建設工業新聞』2016.08.09)
●「国土交通省は12日、建設中の八ツ場ダム(群馬県長野原町)の基本計画を変更する手続きを始めると発表した。事業費を現行の約4600億円から720億円積み増し、5320億円とする。2019年度までの工期は変えない。事業費は当初計画の2110億円の2.5倍に膨らむ。計画のずさんさが改めて浮き彫りになった。」(『日本経済新聞』2016.08.13)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省官房官庁営繕部は、地方自治体など公共建築工事の発注者が果たすべき役割を示す考えだ。人口が少ない市町村を中心に、発注者側のマンパワー不足が顕在化する中、その体制面や技術力といった課題への対応策を探る。4日に検討のフィールドとなる社会資本整備審議会・建築分科会『官公庁施設部会』(部会長・大森文彦東洋大教授、弁護士)を開催。本格的な検討をスタートさせた。論点となるテーマは『公共建築工事の特徴を踏まえた発注者の役割』と『公共建築工事の多様な発注者が役割を果たしていくための方策』の2点。発注者の役割、すなわち発注者の“あるべき姿”を示すことで、市区町村などの自治体が、いかにして発注者としての役割を果たしていくのか、その方策を導き出す。」(『建設通信新聞』2016.08.05)
●「国土交通省は、建設現場に設置する仮設トイレで、男女とも快適に使用できる『快適トイレ』の標準仕様を策定した。費用の積算基準も整え、10月1日以降に入札手続きを開始する直轄土木工事から導入。快適トイレの設置を原則化する。標準仕様を満たすトイレの事例集も作成する。レンタルが多い現場の仮設トイレが変わると、災害時に避難所などに持ち込まれる仮設トイレも変わるなどの副次的効果も期待している。」(『建設工業新聞』2016.08.05)
●「関東地方整備局は、15年度に試行した『週休2日確保モデル工事』を対象に行った受注者アンケー卜の結果をまとめた。対象となった15件の工事うち12件について回答が寄せられ、このうち8件が週休2日を『確保できた』と回答。2件では7〜9割程度確保できたと答えた。一方で、『全く確保できなかった』との回答も1件であった。発注者への要望は『余裕を持った工期の設定』が11件で最も多く、『業界全体の意識改革』が10件、『工事費のアップ』が4件と続いた。半強制的に週休2日にすることや、休むことによる経費増加への対応を求める声も上がった。…自由意見では、『当初工程より若干遅れが出たが、リフレッシュなどにつながり、より効率のよい作業が実施できた』といった意見が出された。日給制で働く技能労働者の収入減や、雇用形態を確立する必要性などを指摘する声も上がった。…回答があった工事の工種別内訳は、河川(築堤・護岸)が7件、道路改良が2件、コンクリート上部と共同溝、舗装がそれぞれ1件ずつ。工期は、1年以上が2件、半年〜1年未満が10件となっている。」(『建設工業新聞』2016.08.10)

労働・福祉

●「日本建設業職員労働組合協議会(日建協、田中宏幸議長)の第93回定期大会が1日、東京都荒川区のホテルで始まった。1日は、15年度活動報告、役員改選、16年度活動方針案の説明を実施。人事では、地濃健治政策企画局次長(飛島建設労働組合)が副議長兼政策企画局長に、組織局組織・広報担当の大曽根直紀氏(フジタ職員組合)が事務局長にそれぞれ就任した。16年度活動方針案は、4週8休の実現といった産業政策活動と加盟組合支援が柱。2日の全体会議で決定する。」(『建設工業新聞』2016.08.02)
●「日刊建設通信新聞社がゼネコン31社に夏季休暇の状況を調査したところ、13日から21日を9連休(土日含む)とする企業が大手5社を含めほぼ半数の15社となった。土日を除く平均休暇日数は前年度と同数の4.1日で、15と16の両日はすべての社が休暇となる。12日を有給休暇取得促進日に設定する社や、外勤者を対象とした休暇取得促進日を設定する社が複数ある。土日を除く休暇日数は、5日間が最多の16社で、次いで3日間が11社、4日間が2社、6日間と2日間がそれぞれ1社となっている。4日間以下の企業では2日間以上の有給休暇取得促進日を定めている社が多く、連休を取りやすいようにしている。」(『建設通信新聞』2016.08.03)

建設産業・経営

●「国土交通省は7月29日、2016年度の建設投資見通しを公表した。総額(名目値)は前年度見込額と比べ、1.6%増の51兆7700億円と推計した。民間設備投資の回復基調もあって、民間投資は08年度以来、30兆円を上回ると見込み、リーマン・ショック前の水準に戻りつつある。政府投資は微増にとどまる。」(『建設通信新聞』2016.08.01)
●「北関東3県の建設業協会が業界の課題を話し合う第35回『茨城・群馬・栃木三県建設業協会合同会議』が7月28日、茨城県大洗町の大洗パークホテルで開かれた。災害時の緊急対応などに当たる地域建設業を維持するために必要な工事量の確保や、受注者の適正利潤確保などをうたった改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)運用指針の白治体への徹底などを求める意見が各協会から上がり、これらを決議として採択した。…公共工事品確法など担い手3法への市町村の対応状況に関する情報交換も行われ、群馬建協が7月に県内35市町に行った改正公共工事品確法運用指針の適用状況調査の概要を報告。歩切りの根絶などで前進が見られる一方、『発注や施工時期の平準化』など未達成の自治体が多い項目もあることなどが示された。茨城建協は『運用指針で未達成項目がある市町村が71%(44市町村中、31市町村)ある』などと報告した。」(『建設工業新聞』2016.08.01)
●「大和ハウス工業はマンションの大規模修繕事業に参入する。グループで管理する約25万戸の管理組合のほか、外部のマンションからの受注も目指す。新築マンションの価格高騰に伴い中古物件の需要が高まっている。物件の売りっぱなしではなく、販売後も収益を上げる事業を育成。2026年度に売上高200億円を計画する。グループ会社3社で新会社『大和コスモスコンストラクション』(東京・港)を設立した。資本金は4億9000万円で、マンション管理を手掛ける大和ライフネクストが51%、コスモスイニシアが40%、大和ハウスが9%を出資。8月中旬から営業を始める。マンションの建設から販売、管理までを一貫して手掛ける強みを生かし、18年度に年25件の施工を目指す。」(『日本経済新聞』2016.08.09)
●「大和ハウス工業が9日発表した2016年4〜6月期連結決算は経常利益が前年同期比1%増の600億円と、同期間では最高だった。物流施設などで大規模な竣工が相次ぎ収益をけん引した。17年3月期通期も増収増益を見込むが、マンションなど一部事業の受注には減速感も漂う。」(『日本経済新聞』2016.08.10)
●「大手・準大手ゼネコンの2017年3月期第1四半期決算が10日までに出そろった。業績の先行指標となる単体受注高は好調だった前期の反動もあり、26社中ほぼ半数の12社が減少に転じたものの、工事採算指標の完成工事総利益(工事粗利)率は開示21社中18社が改善し、安定した受注環境を背景に採算重視の受注が鮮明になってきた。受注増は、大手クラスが鹿島、準大手クラスでは長谷工コーポレーション、五洋建設、前田建設、フジタ、奥村組、鉄建、淺沼組、大豊建設、東鉄工業、飛島建設、錢高組、ナカノフドー建設、ピーエス三菱の14社に上った。期初の受注目標に対する達成率が25%を超えたのは、44%の鹿島を筆頭に、42%の淺沼組、38%の大豊建設、31%の前田建設と長谷工と続く。 鹿島は土・建ともに大型受注が相次ぎ、淺沼は民間建築、前田は官公庁土木と民間建築が押し上げた。受注減の企業も手持ち工事が一定量あるため、自ら施工能力を加味しつつ、採算重視の受注に切り換えており、それが工事採算の向上に結びついている。ただ、民間建築分野では年間受注目標が上ぶれする可能性もあるとの声も聞こえてくる。工事粗利率は21社中、18社が前年同期実績を上回った。大手4社が揃って10%台に引き上げたように、準大手クラスも11社が10%台の高水準となった。土木と建築ともに10%を超えた戸田建設は『受注量が豊富で生産性の高い案件の受注ができている』とし、前年同期比2.2ポイント増の10.9%とした奥村組が『環境は劇的に変わっている』というように、各社を取り巻く事業環境は良好だ。」(『建設通信新聞』2016.08.12)
●「道路舗装上場8社の2017年3月期第1四半期決算が10日に出そろった。東日本高速道路東北支社発注工事を巡る指名停止などの影響もあり、受注高は7社が前年同期実績を下回った。製造販売は佐藤渡辺、三井住建道路が微増となったが、地方自治体向けの数量が落ち込んだことなどにより6社が減少した。公共投資の減少に伴い、官公庁工事の下落分を民間工事でカバーする動きも表れており、今後激しい競争が懸念される。」(『建設通信新聞』2016.08.12)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●東京電力福島第1原発の放射能汚染水対策として1〜4号機周囲の地盤を凍らせる「凍土壁」(陸側速遮水壁)は、運用開始から4カ月半がたった。汚染水発生量の抑制という期待された効果は表れず、その見通しも立っていない。計画通りに凍っていない部分の凍結を促進する補助工事が、凍土壁の海側に続いて山側でも始まった。…凍土壁の効果をめぐり、東電はこれまで、地下水がせき止められることにより、凍土壁の上流と下流で地下水位差が生じているとして「効果は表れ始めている」と繰り返してきた。一方、規制委は、期待していた地下水くみ上げ量の変化がないと指摘。議論の前進が見られなかった。規制委と東電は7月19日の検討会でようやく、建屋海側の護岸に設置した井戸(地下水ドレン、ウェルポイント)からの地下水くみ上げ量が1日当たり70〜100トンに減少することを数値目標として確認した。凍土壁の海側が完全閉会して地下水を100%遮断できると仮定すると、その下流にある護岸の井戸からのくみ上げ量が1日当たり約70トンになると予測しているからだ。6月のくみ上げ量は、平均同約320トンだった。目標達成まで、かなりの期間がかかる見込みだ。ただ、凍土壁の効果を評価するのが難しい理由の一つとして、降雨の影響がある。東電によると、地下水は降雨に大きく左右されるため、雨の影響を除いた地下水位の変化を算出するのが困難という。大雨が続くと1カ月以上、原発構内の地下水位も上昇する傾向がある。規制委と東電はともに「様子見」だとしている。(『しんぶん赤旗』2016.08.14より抜粋。)

その他