情勢の特徴 - 2016年8月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府は、24日の臨時閣議で2016年度の第2次補正予算案を決定した。国土交通省関係の予算額は、総額1兆2257億0200万円(国費)。このうち、公共事業関係費は1兆0831億8500万円(同)となっている。この大型補正は、事業規模28兆円超の経済対策の第1弾という位置付け。建設産業にとっても早期の成立と切れ目のない予算執行が期待される。」(『建設通信新聞』2016.08.25)
●「政府は16年度、ソフト対策にほぼ限定している地方自治体向けの『地方創生推進交付金』の使途を拡大する。16年度第2次補正予算案に計上した900億円の交付金積み増し分について、使途を建設事業を中心とするハード対策に限定。観光振興で街並みを整備する事業や、大都市から地方への移住者の生活を支援する施設の建設などに役立ててもらい、地域経済の浮揚につなげる。事業実施に当たっては地域企業の活用にも配慮する。」(『建設工業新聞』2016.08.26)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省はビッグデータを活用して地方自治体の公共施設の再編を促す。今年度中に鉄道やバスの運行情報などを集めたデータベースを作り、自治体が域内の人の移動を分析するソフトを開発する。住民の集まり方を調べ、人口減が進んでも公共施設を有効活用できる街づくりをめざす。」(『日本経済新聞』2016.08.17)
●「国土交通省は、『下水道事業地域活力向上計画策定事業(仮称)』を2017年度に創設する。下水道事業における汚水処理の広域化やPPP・PFI手法の活用、下水汚泥有効利用などの事業計画を策定する自治体などの下水道管理者を支援する。社会資本総合整備事業のうち、社会資本整備総合交付金の新規メニューとして、17年度予算の概算要求に同策定事業を盛り込む。」(『建設通信新聞』2016.08.18)
●「国と地方自治体が連携して官公庁施設を整備する動きが活発化している。7月に東京都世田谷区に完成した『世田谷合同庁舎』は国土交通省関東地方整備局、東京都、世田谷区の3者共同で営繕事業を実施した初の合築案件だ。社会資本整備審議会(社整蕃、国土交通相の諮問機関)建築分科会が17年度の事業採択を了承した3件のうち2件が自治体の施設との合築整備となる。今後、地域のニーズに応じて地元に貢献できる国の官庁施設整備が一段と広がっていきそうだ。」(『建設工業新聞』2016.08.18)
●「政府は地方自治体に対し、上下水道や公営住宅などインフラ運営権の民間売却を加速するよう促す。民間開放は空港や港湾など一部分野に限られているため、自治体に低利で長期に貸し出した資金の前倒し返済を認めるなどして、官から民に運営権が移りやすくする。人口減で需要の伸びが期待できないインフラも多く、民間の効率運営で存続を図る狙いだ。」(『日本経済新聞』2016.08.23)
●「国土交通省は、市町村などの各公共発注者が、公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)に基づく発注関係事務の共通ルール『運用指針』に沿った適切な発注関係事務に取り組むための環境整備として、各発注者の客観的な実施状況や相対的な“立ち位置”を把握することができる全国統一の『指標』を示す方針だ。各発注者が自らの現状を把握できる環境を整えることで、改善への意識喚起を促す狙いがある。」(『建設通信新聞』2016.08.23)
●「長野県は2016年度、週休2日(4週8休)の取り組みを促進するため、@入札参加資格付与A入札B工事――の3段階で施策を展開する。建設部の猿田吉秀技術管理室長は、7月に開催した『地域を支える建設業』検討会議の中で段階ごとに実施する施策を紹介し、『若い方、さらに女性の方が業界にいかにして入っていただくか、その1つの特効薬になるのが週休2日(の取り組み)だと思っている』と力を込めた。若手や女性入職者増加への道筋をつける3つの段階的施策をまとめた。」(『建設通信新聞』2016.08.24)
●「国土交通省は、政府が24日閣議決定した16年度補正予算案で建設産業の担い手確保・育成に向けた経費として2億5000万円を確保した。建設産業を支える国内外の建設技能人材を戦略的に確保・育成する一環で、現場で若手のけん引役となることが期待される登録基幹技能者の能力を高める特別な講習を実施する。技能実習生などとして日本の現場に従事する外国人材向けの教育プログラムも整備。日本式の施工を学んで帰国した後、海外に進出する日本企業とマッチングするシステムもつくる。」(『建設工業新聞』2016.08.25)
●「建設産業を『人材投資成長産業』とするための国土交通省の取り組みが加速している。建設業全体のイメージアップを強力に推進しようと有識者や他産業の専門家の参画も得た新たなプロジェクトが16日に始動。従来の発想にとらわれない先鋭的なプロモーションの展開を目指す。現場の最前線で働く技能労働者が、技術者や経営者に切れ目なく移行できる『シームレスなキャリアパスモデル』を構築する議論も7月末に始まった。他産業との人材獲得競争が激化する中、担い手確保・育成の新機軸にしていく。」(『建設工業新聞』2016.08.18)

労働・福祉

●「建設業の賃金上昇と雇用拡大が続いている。厚生労働省が23日発表した6月の毎月勤労統計調査結果(確報値)によると、16年上半期(1〜6月)に建設業就業者に支払われた月間平均給与は前年同期比1.9%増の36万1001円だった。6月の常用雇用労働者総数は前年同月比2.4%増の288.6万人。景気回復などに伴う建設需要の増大で、賃金上昇と雇用拡大が並行して進む実態が明らかになった。毎月勤労統計調査の対象は5人以上が働く事業所。16年上半期に建設業就業者に支払われた月額平均給与と、建設業の16年上半期の月間平均総実労働時間は、同省がまとめた6月分までの調査結果(確報値)を基に日刊建設工業新聞社が算出した。」(『建設工業新聞』2016.08.24)
●「厚生労働省は、人材不足分野に位置付けている建設分野の人材確保対策の1つである『建設人材確保プロジェクト』の実施を、2017年度から建設労働者が不足している地域に重点化する方針を決めた。ハローワークにおけるマッチングの精度を一層高めるため、現在、1カ所のハローワークに1人配置している建設分野専任の就職支援コーディネーター(専門相談員)を、建設人材の不足感が強い地域のハローワークに複数人配置し、取り組みを強化する。『特に求職者に対する働き掛けを強め、きめ細かにマッチングを支援する』 (厚労省)という。17年度予算の概算要求には、16年度とほぼ同額の1億6200万円を求めた。」(『建設通信新聞』2016.08.30)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、田中宏幸議長)は29日、6月11日に行った『16年6月統一土曜閉所運動』の結果を発表した。閉所をほかの土曜または平日に振り替えた作業所も含めた全体の『読替閉所率」は70.3%(前年同月比9.1ポイント上昇)となり、09年6月(63.1%)以来7年ぶりに過去最高を更新。初めて70%を超えた。日建協は、休日取得に対する組合員の意識が大きく変わり、『企業の取り組み姿勢も変わってきている』と受け止めている。次の運動は11月12日に行う。」(『建設工業新聞』2016.08.30)
●「国土交通省は、建設業における社会保険等への加入に関する指針『社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン』を改訂し、7月28日に建設業団体と都道府県・政令市などに通知した。この通知によってガイドラインの記載内容や取り扱いを明確化する。特に適切な保険に加入していない作業員であっても特例的に現場への入場を認める『特段の理由』の解釈を明確にした点がポイントだ。保険に加入していることを確認できない作業員でも現場への入場を認めることができる『特段の理由』を明確にしたことで、元請けも判断しやすくなり、社会保険未加入対策の目標年次である2017年度以降に現場への入場が認められない作業員が明確になる。特段の理由に対する解釈として示すのは▽当該作業員が現場入場時点に60歳以上で、厚生年金保険に未加入の場合(雇用保険に未加入の場合はこれに該当しない)▽伝統建築の修繕など当該作業員が工事の施工に必要な特殊の技能を有しており、その入場を認めなければ工事の施工が困難となる場合▽当該作業員について社会保険への加入手続き中であるなど今後、確実に加入することが見込まれる場合――の3点。」(『建設通信新聞』2016.08.31)

建設産業・経営

●「国土交通省は、重層下帯構造の発生要因分析調査に着手する。建設業団体に調査協力を依頼し、100現場程度をサンプル抽出した上で、元請け、下請けに対するアンケートを実施。下請次数や元下間の役割分担、下請けの処遇、福利厚生面などの実態を把握して、必要な施策検討の材料にする。重層下請構造は、個々の企業で工事内容の高度化などによる専門化・分業化、必要な機器や工法の多様化への対応のため、ある程度必然的・合理的な側面がある一方、施工管理や品質面など、さまざま影響や弊害が指摘されている。中央建設業審議会・社会資本整備審議会産業分科会建設部会の『基本問題小委員会』が6月に策定した中間とりまとめには重層下請構造の改善について、当面の措置として『実質的に施工に携わらない下請け企業の排除』『専門工事業者が中核的な技能労働者を雇用しやすい環境整備』を進めることなどが盛り込まれている。今回の調査は、小委員会の意見などを踏まえて、建設工事の下請構造を形成する要因や重層化によって生じる課題を明らかにする目的で実施する。」(『建設通信新聞』2016.08.24)
●「日本建設業連合会は会員企業を対象に実施した社会保険未加入対策関係の調査結果(回答89社)をまとめた。それによると、原則すべての工事で1次下請けを社会保険加入企業に限定している会員は66.2%で、『公共工事で限定している』との回答を加えると86.5%になる。いずれも前回調査(2014年度)から大きく増加しており、社会保険未加入企業排除の取り組みが進んでいる。アンケートは、2月に会員企業139社を対象に実施し、回収率は64.0%だった。1次下請けの社会保険未加入企業排除では、66.2%が『原則としてすべての工事で社会保険加入企業に限定している』と回答し、『公共工事で社会保険加入企業に限定している』の20.2%、『国土交通省直轄工事など(入札参加資格などで定められている場合)で限定している』の10.1%を加えると、96.6%が未加入企業の排除に取り組んでいることになる。一方、2次以下の下請企業に対する未加入企業排除の取り組みは、『すべての工事で加入者に限定』が39.3%、『公共工事で限定』が15.7%、『国交省直轄などで限定』が24.7%で、8割弱となっている。」(『建設通信新聞』2016.08.31)
●「建設経済研究所と経済調査会は30日、最新の建設投資見通しを発表した。16年度は、4月の前回見通しで示した前年度比0.8%減の49兆6100億円から上方修正し、1.1%増の51兆5300億円と予測した。今回初めて示した17年度の見通しは、前年度比4.3%減の49兆3000僚円とした。政府が24日に閣議決定した第2次補正予算案は今回の見通しに反映させておらず、次回10月の見通しにその数値を盛り込めば、上方修正の要素となりそうだ。今回の見通しでは、前回見通し以降に発生した熊本地震の災害復旧に向けた政府の16年度第1次補正予算、消費増税の延期とそれによる駆け込み需要の変化などを反映させた。」(『建設工業新聞』2016.08.31)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「文部科学省は、巨大地層の発生が懸念される南海トラフ全域で、海底の断層調査に着手する。南海トラフでは東側から東海、東南海、南海の3つの地震が想定されているが、最悪の場合、3つが連動してマグニチュード(M)9級の巨大地震になる恐れがある。2017年度から新たな調査船を用いて震源域の境界を重点的に調べ、連動する確率を予測して震災被害の軽減につなげる狙いだ。…今回の調査では、これまで空白になっていた震源域の境界を重点的に調査して、断層の広がりを調べる。どこかで地震が起きたときにほかの震源域が連動して動き、巨大地震となる確率を推定するのが狙いだ。」(『日本経済新聞』2016.08.16)
●「関東地方整備局は、八ッ場ダム建設事業について、公共工事関連単価の変化などの要因により事業費を約720億円増額する。これに伴い、『八ッ場ダムの建設に関する基本計画』を変更する。コストを精査した結果、現事業費約4600億円(2010年度単価)から新事業費案約5320億円(15年度単価)に改める。工期は19年度までの予定で変更はない。」(『建設通信新聞』2016.08.18)
●「不動産大手のマンション事業に不透明感が出てきた。2017年3月期に収益計上する予定のマンションの成約状況は、6月末時点で4社中3社が前年の同時期を下回った。値ごろ感が薄れた郊外の物件が苦戦している。株安などの逆資産効果で、高額物件も立地の良い一部を除き陰りが出ている。マンション事業の占める比率が高い企業を中心に、今期業績の足かせになりかねない。」(『日本経済新聞』2016.08.19)
●「環境省は、放射性物質汚染対処特措法に基づき汚染状況重点調査地域に指定された地域のうち、福島県を除く岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の7県57市町村の除染進捗をまとめた。6月末時点で、険染実施計画に基づく除染などの措置は、約9割の市町村で完了またはおおむね完了したとしている。57市町村のうち23市町村で措置が完了し、27市町村でおおむね完了とした。これ以外の7市町村では今後も除染などの措置を実施する予定で、除染実施計画における措置の完了時期は16年度中となっている。」(『建設通信新聞』2016.08.24)
●「全建総連とJBN(全国工務店協会)でつくる全国木造建設事業協会(全木協)が、熊本地震の被災地で進められている木造の応急仮設住宅の建設に貢献している。被災地では4500戸の応急仮設住宅の整備が予定され、21日現在、着手済みは4157戸。木造は全体の15%に当たる635戸で、全木協はその8割に相当する515戸を手掛けている。全木協は、災害時の応急仮設木造住宅建設に関する協定を5月6日に熊本県と締結。同12日の山都町を皮切りに順次整備を進めており、最終的には11月までに550〜600戸を建設する。 今回の被災地では、1仮設団地で20戸以上の場合、木造の談話室(40平方メートル)、50戸以上の場合には木造の集会所(60平方メートル)を建設することになっており、計71棟のうち、66%に当たる47棟を全木協が実施している。11年9月に発足した全木協は、8月までに22都県と応急仮設木造住宅建設に関する協定を締結済み。」(『建設工業新聞』2016.08.24)
●「東京都の小池百合子知事は11月7日に予定していた築地市場(中央区)の豊洲市場(江東区)への移転を当面、延期する意向を固めた。豊洲の土壌汚染を巡る安全性の検証が不十分なほか、使い勝手などでも改善の余地があると判断した。築地市場跡地には主要道の環状2号が通る。環状2号は2020年の東京五輪で選手村となる臨海部と都心部を結び、築地市場が移転後に着工する予定。現行計画でも開通は五輪直前になる見通しで、移転が遅れれば、五輪に間に合わなくなる可能性が出てくる。市場関係者の経営や生鮮品の流通への影響を抑える対策も必要になる。豊洲の用地は当初、環境基準を上回るベンゼンなどが検出され、都は約850億円を投じて対策を講じた。小池知事は環境調査の結果などを踏まえ移転を判断する。」(『日本経済新聞』2016.08.30)

その他