情勢の特徴 - 2016年9月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「東京商工リサーチは8日、『2016年8月の建設業倒産(負債額1000万円以上)』状況を公表した。倒産件数は、前年同月比15.0%増の145件と3カ月ぶりに増加した。42.8%増の建築工事業や、4倍近くまで増加した電気通信・信号装置工事業などが倒産件数を押し上げた。東京商工リサーチは今年度上期(4−9月)件数について、『今後の推移によっては8年ぶりに前年同期比で上回る可能性がある』と指摘している。」(『建設通信新聞』2016.09.09)
●「経済産業省は、中小企業・小規模事業者の『活力ある担い手』の拡大に向け、創業・事業再生・事業承継の支援体制を強化・高度化する。地域での創業を促進するとともに、経営者の高齢化や債務超過など財務上の課題を抱える中小企業の世代交代、再活性化を進めることが急務になっていることを踏まえ、『創業・事業再生・事業承継促進支援事業』を創設する。抜本再生に取り組む中小企業に対する設備投資補助金を始めるなどのメニューを用意する。」(『建設通信新聞』2016.09.12)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、大規模な自然災害が発生した場合など、非常時を念頭にした『災害復旧における入札契約方式の適用ガイドライン』を策定する方針だ。8月31日の『総合評価方式の活用・改善等による品質確保に関する懇談会』で明らかにした。各地方整備局など発注者が適切な入札契約方式を選択するためのツールを整備することで、災害対応の迅速化につなげる。ガイドラインは、発注者にとって随意契約、指名競争入札、一般競争入札といった各方式を的確に選択するための参考資料という位置付けになる。短期間に多くの工事を発注するなど、早期かつ確実に施工できる企業を、現地の被害状況に応じて確保していくことが求められる中、その手法や工夫といった入札契約方式の選択に関する考え方を記す。」(『建設通信新聞』2016.09.01)
●「国土交通省が推し進める『i-Construction(アイ・コンストラクション)が加速している。先行的に取り組むICT(情報通信技術)土工は年間で約720件以上の公告を予定(8月19日時点)。補正予算による積み増しも加味すれば、その件数はさらに拡大する見込みだ。今後の取り組みとして河川(樋門、樋管)、橋梁、トンネル、ダム、港湾など土工以外の分野へ対象を広げる。特にICT導入へ調査・設計段階から施工、維持管理の各プロセスで3次元モデルを導入・活用するための基準類の整備に着手する。基準類の整備に係る検討経費を2017年度予算の概算要求に盛り込んでいる。」(『建設通信新聞』2016.09.01)
●「国土交通省は、東日本大震災の復興を支えてきた『復興CM(コンストラクション・マネジメント)方式』の検証に乗り出す。その効果や課題を検証することで次なる大災害の発生に備えることが狙い。契約方式の1つの“枠組み”として、その延長線上にマンパワー不足に悩む発注者の課題解決ツールあるいはCMR(コンストラクション・マネジャー)を担うゼネコンの新たなフィービジネスとしての可能性も見据える。」(『建設通信新聞』2016.09.02)
●「国土交通省は、担い手3法の趣旨を浸透させる推進サイクルを築く。都道府県や市区町村など地方自治体における新たな入札契約方式の導入を支援する『多様な入札契約方式モデル事業』を軸に、現場の改善や担い手の確保・育成といった目的の達成へとつなげる。特に市町村など地域レベルで、施工時期の平準化を強力に後押しする方針だ。2017年度予算の概算要求に、多様な入札契約方式の導入・活用促進などの『担い手3法推進サイクル』の強化として8100万円を盛り込んだ。14年度から実施している『多様な入札契約方式モデル事業』を継続して展開するほか、新たな支援策として専門家を派遣する出張相談や研修の実施などにより、その取り組みの推進が求められる施工時期の平準化を後押しする。特に都道府県に対して、取り組みに遅れが見られる市町村への支援に力を入れてもらう方針だ。」(『建設通信新聞』2016.09.05)
●「国土交通省は、空港、下水道、道路といった公共インフラにおけるコンセッション(運営権付与)事業の導入を推進する。地域の活性化にもつながるPPP・PFIの推進によって民間資金やノウハウの積極的な活用を図る。いわゆる骨太方針でも社会資本整備の基本的な考え方にPPP・PFI手法の活用を明記している。インフラの整備・運営やサービスの向上、民間投資の喚起による経済成長を実現するため、コンセッションや公的不動産の利活用、公共施設の集約化と複合利用、包括的民間委託や上下水道など複数分野における一体的な管理委託などPPP・PFI手法の飛躍的な拡大を掲げている。ベースとなってきた『PPP/PFI』の抜本改革に向けたアクションプラン」でも集中強化期間とする2014−16年度の空港、水道・下水道、道路といった重点分野におけるコンセッション方式の導入目標を、これまでの2兆−3兆円規模から7兆円に拡充。14−16年度の3カ年における分野別の事業件数として空港6件、水道6件、下水道6件、道路1件の目標を打ち出している。」(『建設通信新聞』2016.09.15)

労働・福祉

●「国土交通省と厚生労働省は2日、両省と関連施策をまとめた『建設業の人材確保・育成に向けて(2017年度予算概算要求の概要)』を公表した。推進する施策を相互に連携させることで、技能労働者の3分の1が55歳以上となるなど、高齢化を背景に中長期的に不足が懸念される技能労働者の確保・育成に取り組む。」(『建設通信新聞』2016.09.05)
●「建設業振興基金(内田俊一理事長)は5日、厚生労働省から受託した建設労働者緊急育成支援事業で15年度、400人を超える未就業者が建設会社などに就職したことを明らかにした。17拠点(中央1拠点、地方16拠点)で合計600人を目標にした技能訓練と就職支援をセットにした活動を展開。厚労省が設定した初年度目標をクリアした。16年度はさらに高い目標に向けて拠点や訓練コースを増やし、女性限定で重機オペレーターを育成するコースも新設する。」(『建設工業新聞』2016.09.06)
●「厚生労働省がまとめたハローワークにおける2017年3月卒業予定の高校生・中学生の求人・求職状況(7月末時点)によると、建設業の高校新卒者の求人は、前年同時点と比べ、13.3%増(5121人増)の4万3493人となっていることが分かった。全産業の高卒求人数は前年同期比13.3%増の32万3873人。求職者数は0.6%減の18万4957人のため、求人倍率は1.75倍となる。また、ハローワークと学校が扱った、ことし3月の高卒者の求人・就職状況は、建設業の求人数が前年比10.3%増の4万8389人だったのに対し、就職したのは3.6%減の1万3294人にとどまり、充足率は27.4%に過ぎなかった。前年と比べ4.0ポイント下がっている。これらの数値からは、17年3月高卒の建設業の求人は伸びているものの、計画した採用者数の確保は厳しくなるとみられる。」(『建設通信新聞』2016.09.15)

建設産業・経営

●「国や地方自治体、インフラ管理者と建設関係団体による災害協定締結の動きが活発化している。日本建設業連合会(日建連)では、中国支部が3月に国土交通省中国地方整備局と広島県など5県2政令市と包括的な災害協定を締結したのに続き、関東支部と関西支部が地方整備局、自治体などとの包括協定の締結に向けて最終調整に入っている。全国建設業協会(全建)でも、傘下の都道府県建設業協会が15年度以降に少なくとも5件の協定を新たに結んだ。日建連は、関東支部が関東整備局・1都8県5政令市・高速道路会社3社(東日本、中日本、首都)・水資源機構と、関西支部が近畿整備局・7府県4政令市・複数の道路会社とそれぞれ包括協定を結ぶための最終協議を行っており、一部の自治体などは既に内容を了承している。東北、中部、四国の各支部は整備局などと既に包括協定を締結している。」(『建設工業新聞』2016.09.01)
●「日本建設業連合会(中村満義会長)は5日の会計・税制委員会で、2017年度の税制改正要望をまとめた。重点要望項目として『建設業の担い手確保・生産性向上促進税制の創設』を盛り込み、東北や熊本の震災復興や2020年東京五輪により繁忙になる地域で、遠隔地から技能労働者を期間限定で単身赴任させる場合などに、宿舎の整備や別居手当、帰宅旅費などに対する税制上の優遇措置を求めている。生産性の向上に対しては、無人化施工機械の購入費用やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の普及展開に必要なタブレット端末、ソフトウエアの購入費に優遇措置を要望。税制改正要望は21日に開く理事会で正式決定する。重点要望項目には建設業の担い手確保・生産性向上促進税制の創設のほか、印紙税の廃止、納税制度の簡素化を始めとする法人地方税の抜本改革、都市・住宅対策促進税制の恒久化、延長などを盛り込んだ。」(『建設通信新聞』2016.09.06)
●「住友林業は中古マンションを買い取って大規模改修(リノベーション)する事業で、デザインに強みを持つ設計事務所やリノベ専業会社など6社と提携した。デザインや間取りなどに対するニーズにオーダーメードのようにきめ細かく応えることで、こだわりが強い消費者を取り込む。住友林業はマンションを1棟単位で購入し、屋上や外壁、廊下など共用部を修繕。部屋も大幅に改修して販売するリノベーション事業を手がけてきた。部屋の壁や設備を取り払った状態で販売し、購入者が好みの改修プランを選べるようにする事業を新たに始める。都心部で新築マンション価格が上昇し、消費者の間では割安な中古マンションヘの関心が高まっている。新築市場の苦戦を受け、改修事業に乗り出す企業が増え、競争が激化している。…住友林業は大規模改修・再販売事業の売上高が2016年3月期に50億円だった。新たな手法でリノベーション物件の販売を伸ばし、3年後に100億円を目指す。他の住宅大手も社外の事業者などと連携し、リノベーション事業に注力している。積水ハウスグループは著名デザイナーが監修するマンション改修プラン『リノベッタ』の販売を始めた。大和ハウス工業子会社のコスモスイニシアも専門業者とデザイナーズホテルのように改修した中古マンションを販売する。各社のサービスや品ぞろえが拡充して住宅のリノベーションが広がれば、中古市場の活性化や空き家の減少にもつながりそうだ。」(『日本経済新聞』2016.09.08)
●「東日本大震災で被災した高速道路の復旧工事を巡る談合事件で、独占禁止法違反(不当な取引制限)罪に問われた道路舗装会社のうち、前田道路と当時の営業担当者の判決公判が7日東京地裁であった。水上周裁判長は法人としての同社に罰金1億8千万円(求刑罰金2億円)、担当者に懲役1年6月、執行猶予3年(同懲役1年6月)を言い渡した。判決理由で『極めて公共性の高い事業で公正かつ自由な競争を阻害され、社会経済に与えた影響は大きい』と指摘した。」(『日本経済新聞』2016.09.08)
●「積水ハウスは8日、2017年1月期の連結営業利益が前期比17%増の1750億円になる見通しだと発表した。最高益を見込んでいた従来予想をさらに50億円上回る。賃貸住宅の建設や管理事業が好調に推移しており、戸建て住宅の受注も伸びる。賃貸、戸建てとも中高級路線に注力してきた効果で収益性が高まっている。」(『日本経済新聞』2016.09.09)
●「国土交通省がまとめた15年度末(16年3月31日)時点の外国企業(外国法人と外資50%以上の日本法人)の建設業許可取得状況によると、許可業者は137社で前年度末と比べて6社増えた。前年度末以降、新規13社と外国建設業者の要件を満たした4社の計17社が増加。一方、全廃業6社と失効5社の計11社が減った。」(『建設工業新聞』2016.09.14)
●「地域建設会社が業務の採算改善を強く求めていることが全国建設業協会(全建、近藤晴貞会長)の調査で明らかになった。発注者が設定している除雪の稼働時の費用(巡回含む)について、『不足している』との回答が国土交通省と道府県の発注業務では50%以上、市町村では60%以上に達した。採算性は、『利益なし』または『赤字』が全発注機関で39〜59%となっており、待機費用や維持費と合わせて除雪業務全般の費用の改善を求める意見が大勢を占めた。全建が除雪業務に関する調査を実施したのは初めて。除雪業務の適正利潤の確保を目的とした提言活動などに役立てるために行った。5月18日〜7月1日に豪雪地帯対策特別措置法に基づく豪雪・特別豪雪地帯がある24道府県の建設業協会と、その一部の会員企業に依頼し、22協会、434社が回答した。国交省、道府県、市町村それぞれの状況について回答を求めたところ、除雪の採算性が『黒字』だったのは、国交省が49%、道府県が43%、市町村は30%にとどまった。おおむね半数は利益なし・赤字で、主な要因は出動回数と稼働時間の不足だった。」(『建設工業新聞』2016.09.15)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「台風10号による大雨災害で、岩手県岩泉町の高齢者施設に暮らす9人が犠牲になった。自力での避難が難しい災害弱者への対応は施設任せが実情で、特に人手が少ない夜間は避難が難しくなる。専門家は『行政や地域と連携して避難対応すべきだ』と指摘している。」(『日本経済新聞』2016.09.01)
●「東京都は、老朽化が顕著な中央卸売市場築地市場(中央区築地5)の移転を17年1月以降に延期する。移転先となる11月7日開場予定の豊洲市場(江東区豊洲6)の安全性などに一部の市場関係者が懸念を示していることが理由。築地市場の解体工事を受注済みの施工者には、工期遅延に伴う負担が発生する可能性が出てきた。12月には築地市場跡地を通過する都道環状2号の未開通区間の暫定開通も予定されていたが、こちらも延期となる見通しだ。」(『建設工業新聞』2016.09.01)
●「今年の通常国会で成立した都市再生特別措置法と都市再開発法の一括改正法が1日に全面施行される。改正特措法では東京などの大都市で国際的なビジネス拠点となる大規模ビルの開発支援策を強化。改正再開発法では地方都市のコンパクトシティーづくりへの活用を想定して市街地再開発事業の施行要件を緩和する。国土交通省は両改正法の運用で大都市の国際競争力強化と地方創生の両立を目指す。改正特措法では、まず大都市で国際的なビジネス拠点となる大規模ビル開発に手厚い融資を講じる大臣認定制度の適用申請期限(16年度末)を21年度末まで5年延ばす。」(『建設工業新聞』2016.09.01)
●「JR東海が建設中のリニア中央新幹線のうち名古屋〜大阪間の前倒し開業に必要な建設資金の調達を支援する鉄道建設・運輸施設整備支援機構法改正案の概要が7日、明らかになった。国が民間の大規模インフラプロジェクトに行っている財政投融資(財投)の運用を拡大。リニアの建設資金に限定し、機構の新たな業務としてJR束海への融資を担当する財投機関としての役割を加える。従来の政府系金融機関からの借り入れよりも返済負担を減らせるようにする。」(『建設工業新聞』2016.09.08)
●「国土交通省は、熊本地震で陥没などの大きな被害を受けた盛り土造成宅地の復旧・耐震化への支援策を強化する。社会資本整備総合交付金の宅地耐震化推進事業を拡充。16〜17年度は現行の支援スキームを継続しつつ、被災地限定の特別支援枠として、盛り土造成宅地の耐震化調査・工事費に対する補助率のかさ上げや補助対象工事の追加を行う。16年度第2次補正予算案と17年度予算概算要求にそれぞれ必要経費を計上した。熊本県の集計によると、熊本地震で盛り土や擁壁の崩落などにあった宅地は約1.5万件。このうち周辺の道路など公共施設の機能に支障を来す可能性のある宅地は約4000件に上るという。」(『建設工業新聞』2016.09.08)
●「土木学会の地震工学委員会は8日、仙台市で開いている全国大会の特別セッションとして仙台国際センターで熊本地震報告会を開き、橋梁構造物被害についての現地調査結果と研究成果を報告した。耐震設計・補強の意図と異なる壊れ方や地盤変状による被災も目立ったことから、設計や地盤調査、下部構造設置方法の見直しが必要とした。学会は特別ワーキンググループで被災した橋梁の被害分析を進めており、2017年7月をめどに耐震設計などについて見直しの方向性をまとめる。」(『建設通信新聞』2016.09.09)
●「政府は、地方都市の中心市街地に職住機能を集約する『コンパクトシティー』づくりで、市町村や民間事業者に講じる施設整備などへの支援策を相次ぎ強化する。14日に開かれた国土交通省など関係10省庁でつくる『コンパクトシティー形成支援チーム会議』で各省庁が17年度の新規計画を報告。国交省は厚生労働省と連携して子育て施設設置で地域住民との合意形成を後押しするほか、クラウドファンディングを活用した空き屋・空き店舗などの再生推進などに取り組む。」(『建設工業新聞』2016.09.15)
●「国土交通省の『熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会』は9月12日の会議で、最終的な報告書案について誰論した。建築研究所・国土技術政策総合研究所や建築学会が実施した建物被害調査に関する分析結果によると、悉皆調査エリア内にあった、住宅性能表示制度の構造躯体の耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)3の木造住宅16棟のうち、14棟が無被害、2棟が軽微・小破の被害だったことなどから、報告書案では木造住宅に関して、より高い耐書性能の住宅を整備するために『住宅性能表示制度の活用が有効』と提言した。」(『日本住宅新聞』2016.09.15)

その他