情勢の特徴 - 2016年10月前半
●「政府の国家戦略特区を活用した東京都内の各種事業を加速させるため、都と内閣府の担当者らで組織する『東京特区推進共同事務局』が設置される。東京を世界で一番ビジネスがしやすい都市にするための再開発事業の具体化のほか、地域が抱える待機児童問題や、女性活躍の推進などといった政策課題を解決する特区関連事業の調整機能をさらに高める狙い。2020年東京五輪などを追い風に、大規模再開発の計画が相次ぐ都内では特区活用で事業の迅速化を図る動きが活発化しており、新組織による対応強化に期待が高まりそうだ。」(『建設工業新聞』2016.10.04)
●「日本とベトナムの官民が連携し、ベトナムで河川の流域再開発に乗り出す。日越の企業でつくる企業がインフラを整備する見返りとして土地を譲り受け、高層住宅を建設する。ベトナム側は資金負担なしで治水対策ができる。第1弾として2017年をめどにホーチミン市で実施する。事業規模は220億円。洪水が頻発する東南アジアの都市河川の再開発のモデルになる可能性がある。」(『日本経済新聞』2016.10.07)
●「経済産業省は7日、中小建設企業の多くが金融機関からの借入時に使っている、信用保証協会による『信用補完制度』(信用保証制度)見直しの論点整理案をまとめた。業種別で建設業の利用が最も多い、不況業種に適用するセーフティーネット保証5号の保証割合を現行の『100%保証』から縮小する。また、一般企業に適用している『一律80%保証』は、企業のライフステージに応じて保証割合の縮小を検討したものの、制度設計が難しくなることから見送る方向となった。保証5号の保証割合縮小は、中小建設企業の資金繰りに大きな影響を与えることになるとみられる。」(『建設通信新聞』2016.10.11)
●「11日に成立した一般会計総額4兆1143億円の国の16年度第2次補正予算のうち、国土交通省分の歳出総額は国費ベースで1兆2257億円となった。政府全体の公共事業費1兆4691億円のうち、国交省分は1兆0832億円。国交省が各地方整備局や地方自治体などに配分する事業費は総額1兆3665億円となる。主に経済成長を促すインフラ整備や4月の熊本地震などを教訓に推進する防災・減災対策に充てる。16年度第2次補正予算は、8月2日に閣議決定した事業規模28.1兆円に上る『未来への投資を実現する経済対策』を具体化する予算措置の第1弾に当たる。国交省の事業費配分額の内訳を経済対策の柱に位置付けられる四つの施策分野別に見ると、公営住宅団地の耐震化や幼稚園・保育園の併設を進める『1億総活躍社会の実現の加速』に736億円を配分。外航クルーズ船の受け入れ拠点施設整備や国際空港機能の拡張を進める『21世紀型のインフラ整備』に5475億円を充てる。」(『建設工業新聞』2016.10.13)
●「国土交通省は、10月から12月にかけて稼働中の直轄工事を対象とした施工体制に関する全国一斉点検を実施する。公共工事入札契約適正化法(入契法)に基づいて毎年行っている調査により、同法や公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の趣旨の徹底を図っている。15回目となる今回は、建設業法施行令の改正で技術者専任の金額要件が引き上げられたことに伴い、契約日が6月1日の施行日よりも前か後かで点検対象工事が変わる。」(『建設工業新聞』2016.10.05)
●「国土交通省は、土木工事を対象にした『工期設定支援システム』を作成した。工種ごとの数量に応じた日数を自動集計するとともに、積算担当者が施工手順を設定すると、工事に必要な工期日数を算出。過去の事例を基に設定した工種別の工事費と工期に関する算定式で出した日数と比較し、工期の妥当性を確認する仕組み。これから入札公告する直轄工事を対象に試行運用を開始。状況を見ながら改善を加え、より適切な工期設定につなげる考えだ。」(『建設工業新聞』2016.10.11)
●「国土交通省は11日、国が管理している広島空港(広島県三原市)を民営化する方針を固めた。先行する仙台(宮城県名取、岩沼両市)、高松(高松市)、福岡(福岡市)の3空港と同様に公共施設等運営権(コンセッション)方式を採用し、滑走路などの基幹施設と旅客ターミナルビルを一体で民間に運用してもらう。広島県が来年3月にまとめる国交省への要望項目を踏まえ、民営化の目標時期や民間事業者の公募要項といった詳細なスキームを詰めていく。」(『建設工業新聞』2016.10.12)
●「国土交通省は、直轄工事を対象に、建設現場の中核として重要な役割を担う専門工事業者が持つ技術力の活用に力を入れる。下期の発注から、全体の工程を左右する受発注者における工程調整会議や3者会議への専門工事業者の参加を試行。関係者間の情報共有や密接な連携によって、建設企業の“現場力”を最大限に引き出す。有効策の1つとして、これまで以上に登録基幹技能者の積極的な活用にも取り組む方針だ。建設企業が持つ技術力や現場力を最大限に引き出そうとする、発注者としての姿勢や意思の表れがそこにある。 特に建設現場は、調査・設計を担う建設コンサルタントや施工を担うゼネコン、現場の中核として施工に携わる専門工事業者といった建設企業と発注者との密接な協力体制によって成り立つ。発注者として関係者が持つ技術力を束ねる、あるいは建設企業がその現場力を発揮できる環境を整えることで、工事の品質確保に結び付ける。」(『建設通信新聞』2016.10.13)
●「国土交通省は、建設業の社会保険未加入対策の一環として、法定福利費を内訳明示した見積書の活用状況に関する立ち入り検査を本格化させる。下請企業、労働者に法定福利費を行き渡らせることで加入促進につなげるのが目的。主に民間建築工事を対象に全国10の地域ブロックすべてで実施する。国交省が社会保険加入に特化した立ち入り検査を行うのは初めてで、『一過性ではなく次年度以降も継続する必要がある』(建設業課)としている。」(『建設工業新聞』2016.10.13)
●「国土交通省は、大規模災害で被害を受けた市町村のインフラの応急復旧に対する国の支援策を強化する。対策の柱は、地方整備局の所管エリア単位で国と複数の都道府県、市町村が連携して災害時応援協定を地域の建設業者と結ぶ『包括協定』の推進。今後おおむね1年以内に順次具体化し、2~4年以内に包括協定を結ぶ官民合同での大規模・広域訓練を行って連携体制の強化を図る。」(『建設工業新聞』2016.10.13)
●「建設産業団体や行政、職業訓棟校、教育機関などで組織する『建設産業担い手確保・育成コンソーシアム』(事務局=建設業振興基金)は9月30日、地域連携ネットワーク構築支援についての2016年度第1回意見交換会を埼玉建産連ビル(さいたま市)で開いた。埼玉県建設産業団体連合会(埼玉建産連)と建設産業専門団体関東地区連合会(関東建専連)がそれぞれ地域連携ネットワークの取り組みを報告し、アドバイザーや有識者が意見を述べた。アドバイザーから職長の訓練を重視する意見が目立った。」(『建設通信新聞』2016.10.03)
●「国土交通省は、日本で技能研修を受けた外国人材の帰国後の就業状況などの実態調査を開始する。年々増加する外国人技能実習生の帰国後の動向を把握することで、帰国後も習得した技術を活用して働ける環境の整備に向けた課題を探る。調査はタイ、フィリピン、べトナム、カンボジア、ネパールの5カ国で実施するほか、インドネシアでも調査できる可能性があるとしている。技能実習生帰国者の実態調査のほか、日本語能力と建設技能取得との因果関係に関する調査を実施する。送り出し機関、受け入れ管理組合、現地建設企業、現地の大学で調査対象者のリストアップを依頼し、メール、インターネット、電話、面談により調査を実施する。回収が見込まれるサンプルは最大1700程度を想定している。調査の実施方法などは、外部有識者を含む『東南アジア建設系技能実習生帰国者実態調査委員会』を立ち上げて決定する。」(『建設通信新聞』2016.10.04)
●「国土交通省は、17年度から運用する『建設キャリアアップシステム』について、本年度から一部で登録申請の先行受け付けを開始する。対象は登録基幹技能者で、知識のさらなる向上を図る目的で実施する特別講習の受講時に申請を受け付ける。システム運用の開始後、最上位の技能を有していることを示す色のカードが発行される。同省は6日、『登録基幹技能者を対象にした特別講習実施業務』の受託者を企画競争で決める手続きを公示した。同業務の中で、特別講習の実施と併せ、『建設キャリアアップシステムとの連携』に関する業務も担ってもらう。本年度中に実施する特別講習は、建設現場で中核的な存在となる登録基幹技能者の知識のさらなる向上を図ることで、建設技能労働者全体のレベルアップにつなげることが狙いだ。」(『建設工業新聞』2016.10.07)
●「民進党は、『建設職人の安全・地位向上推進議員連盟』を発足する。12日午後2時から、東京都千代田区の参議院議員会館で設立総会を開く。建設業の深刻な労働災害の発生状況を受け、建設工事従事者の安全と健康確保の推進が重要な課題となっており、公共・民間を問わず労災保険料を含む安全衛生経費の確保や一人親方への対処が急務となっている。これら問題を真撃に受け止め、行動しなければならないとし、同党として議員連盟を立ち上げることとした。設立発起人は、増子輝彦参院議員、泉健太衆院議員ら11人。」(『建設通信新聞』2016.10.11)
●「国土交通省は、建設産業の将来展望やあるべき姿を検討する場として、新たに『建設産業政策会議』を立ち上げる。生産性の向上や現場力の維持をキーワードに、劇的な進展を遂げるAI(人口知能)やIoT(モノのインターネット)、労働力人口の減少といった課題に真正面から向き合う。10年先の将来を見据えながら、これからの産業政策の道筋を定める方針だ。11日に東京都千代田区の法曹会館で初会合を開く。」(『建設通信新聞』2016.10.06)
●「全国建設業協会(近藤晴貞会長)は、各都道府県建設業協会と会員を対象に実施した『改正品確法(公共工事品質確保促進法)等の効果に係るアンケート』の結果をまとめた。歩切りや適切な工期設定については改善傾向がみられる一方、市区町村では改正品確法の運用指針に基づく取り組みが遅れており、改善の余地が大きい。全建は『国が市町村の発注を支援する仕組みをさらに拡大してほしい』とし、6日から始まる2016年度地域懇談会・ブロック会議で一層の取り組み推進を発注者に求める。」(『建設通信新聞』2016.10.06)
●「大林組は11日、連単ともに2017年3月期第2四半期の業績予想を修正した。海外子会社の完成工事高が減少したために売上高予想は減少するが、国内工事の採算が大幅に改善したことで、利益ベースでは連単とも過去最高額を達成する見込みだ。単体の売上高は期初予想に比べ3.0%減の6150億円(前期比6.6%増)に引き下げたが、営業利益は179億円上回る469億円(58.8%増)、経常利益は175億円上回る495億円(47.5%増)、純利益は124億円上回る384億円(66.6%増)となり、過去最高となる見通し。」(『建設通信新聞』2016.10.12)
●「11月の第2四半期決算開示を前に、ゼネコン各社が業績予想の上方修正に動きそうだ。11日には先陣を切るように鹿島と大林組が上方修正した。ともに国内建設工事の採算性が大幅に向上したことが要因。第2四半期ベースでは鹿島、大林組ともに利益が過去最高額に達する見通しだ。資材や労務費の上昇に一服感の追い風がある中で、両社は『国内工事の追加変更が認められる案件が増えている』ことを理由に挙げるように、安定した受注環境に支えられ、ゼネコンの事業環境には、本業である工事採算の改善傾向が顕著に表れている。通期に完成工事総利益(工事粗利)率で土木工事10.5%、建築工事7.4%を見込んでいた鹿島では土木が15%程度、建築が11%程度まで拡大する見通し。大林組は第2四半期の工事粗利率予想を土木で期初予想比4.3ポイント増の15.3%、建築で2.9ポイント増の11.5%に上方修正した。」(『建設通信新聞』2016.10.12)
●「国土交通省は、直轄工事における下期の発注方針として、受発注者双方の生産性の向上に乗り出す。柱となるのは『i-Construction(アイ・コンストラクション)の推進』『週休2日の推進、労働生産性の向上』『現場の技術力の活用』の3点。魅力ある建設産業の構築へ、ICT(情報通信技術)土工の推進や週休2日モデル工事の拡大、監督・検査の合理化など焦点となっている“働き方”の改善に力を入れる。11日に成立した2016年度の第2次補正予算による工事は年度内の発注を原則化。『年度内発注』によって17年度当初の稼働率を上げることで施工時期の平準化につなげる。特にトップランナー施策として、4月からスタートを切った『土工へのICTの全面的な活用(ICT土工)』を継続して推進。補正予算による追加分を含めれば、年間1000件に迫るi-Con対応型工事の発注を見込む。 各地方整備局の積極的な取り組みによって、その公告予定件数は6月の410件から、9月に740件と推移。これが補正予算による230件の積み増しで970件へと拡大する見通し。直轄工事での推進は、施工会社のノウハウの蓄積へとつながる。結果として、地方自治体の発注工事におけるICTの活用など、普及にも役立つことになりそうだ。」(『建設通信新聞』2016.10.14)
●「復興庁は、福島第1原発事故後に放射性物質を含んだ汚染土が福島県内の道路の側溝に堆積している問題で、県や市町村が行う撤去を全額国費で支援することを決めた。対象は法律に基づく市町村主体の除染対象基準よりも空間線量が低い区域の側溝に堆積した汚染土。現時点で堆積総量は推計していないが、総事業費は最低でも数百億円規模に上るとみる。今回の支援は16年度にも始め、18年度ごろまでの時限措置として進める。」(『建設工業新聞』2016.10.03)
●「熊本地震で多発した建築物の被宥原因を分析してきた国土交通省の有識者委員会は9月30日、2000年6月に強化された現行の建築基準法の耐震基準が倒壊・崩落防止に有効だったと評価する最終報告をまとめた。焦点の一つだった国交相告示で地域別に定める設計震度の補正(割引)係数『地震地域係数』の見直しは、特に大きな被害が広がった木造建築物で係数の大小が要因となって倒壊するような被害は確認されなかったとして、中長期的な検討課題に位置付けた。最終報告では震度7の揺れが2度起きた熊本県益城町にある建築物の被害状況をまとめた。1981年6月以前までの旧耐震基準で建設された建築物の91.2%(785棟)に大小何らかの被害が出たが、00年6月に強化された現行耐震基準を満たしたS造の建築物にはほとんど被害は見られず、RC造の建築物の被害はゼロだった。最終報告ではこれらの被害結果を踏まえ、旧耐震基準の木造建築物を中心に耐震化を促す必要性を指摘したが、地震地域係数の見直しは当面見送るとした。国交省は、5日に開く社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)建築分科会の建築物等事故・災害対策部会で最終報告を受けた今後の対応方針を報告する。」(『建設工業新聞』2016.10.03)
●「2016年4月の熊本地震発生からきょうで半年。応急復旧を果たした熊本は、復旧・復興の次のステージへと進む。自治体は復旧・復興計画の策定を進め、創造的復興への青写真を描き始めた。復旧工事の発注が本格化するのはこれからだ。熊本県も建設業界も『オール熊本』による復興を目指しており、受発注者による連絡会議を設置して情報共有を図り足並みをそろえる。甚大な被害を受けた阿蘇地区では国土交通省九州地方整備局が土砂災害緊急対策工事や阿蘇大橋の架け替え、バイパス道路の整備などを急ピッチで進めている。熊本県は8月、達成すべき目標や具体的な取り組みを示す復旧・復興プランを策定した。阿蘇くまもと空港を始めとした熊本都市圏東部地域のグランドデザイン構想、広域医療搬送や物資搬送の拠点を担う総合防災航空センター(仮称)の整備などを掲げた。10月にはプランを改定し、3兆7850億円とする被害総額を初めて公表した。熊本市は熊本城復旧や熊本市民病院再生を盛り込んだ復興計画を策定中だ。熊本城の復旧基本計画策定支援業務や優先させる天守閣復旧整備事業を既に発注している。被害が最も大きかった益城町では土地区画整理事業による新たな都市拠点の創出を盛り込んだ復興計画の策定が進められ、他自治体も後を追っている。」(『建設通信新聞』2016.10.14)
●「国土交通省は、10月11日に成立した平成28年度第2次補正予算の新規事業として『住宅ストック循環支援事業』を実施する。40歳未満の若年層が、インスペクションを実施して既存住宅売買瑕疵保険に加入した“良質な既存住宅”を購入する場合に、国がその費用の一部を支援する。“良質な既存住宅”の購入と併せてエコリフォームを実施した場合は最大50万円、さらに耐震改修を行う場合は最大65万円を補助する。また、耐震性のない住宅等を除却し“エコ住宅”を建替えた場合の建設費用に対しては1戸当たり30万円を補助するほか、エコリフォーム(耐震性を有すること)に関しても補助する予定。国交省は同事業によって、中古住宅流通・リフォームの活性化と併せて、既存住宅の性能向上を後押しする考え。エコリフォームに関しては、省エネ住宅ポイントなどこれまでの補助事業と同様、開口部の面積や改修方法、断熱改修工事の部位、設備の種類に応じて補助額が定められている。またエコリフォームと併せて、バリアフリー改修やエコ住宅設備の設置、劣化対策、耐震改修、リフォーム瑕疵保険への加入を行う場合にも補助される。」(『日本住宅新聞』2016.10.15)