情勢の特徴 - 2016年11月前半
●「経済産業省は10月31日、中小企業・小規模事業者の生産性向上と創業・承継・再生などを促進する『担い手』への取り組み、経営改善や生産性向上に取り組む中小企業などを支援する機関の環境整備についての検討に着手した。中小企業が規模や商圏に応じ身の丈にあったITやロボットの導入・活用による生産性向上、中小企業のM&A(企業の合併・買収)や業種サプライチェーン(供給網)内の事業統合支援策、事業承継を先送りしない環境づくり、人材確保に向けた働き方改革への対応などを論点に検討する。同月に中小企業政策審議会(経済産業相の諮問機関)の基本問題小委員会を再開させ、議論を始めた。今後、4回程度小委を開き、12月末までに論点を整理する。その後も審議を続け、2017年3月をめどに中間報告をまとめる。」(『建設通信新聞』2016.11.01)
●「東京都の都政改革本部(本部長・小池百合子知事)が1日開いた第3回会合で、同本部の調査チームは2015年度に都が発注した大規模工事の4割超で入札者が1グループだけだったなどとして『競争環境が不十分』と指摘した。都財務局は『適切に運用してきた』と反論しつつも、『時代に応じた不断の改革がいる』として制度の検証を進める考えを示した。」(『日本経済新聞』2016.11.02)
●「国土交通省は、2015年度における直轄工事と建設コンサルタント関係業務の契約件数や金額、落札率といった実績を『直轄工事等契約関係資料』として公表した。各部局を統合した全体の工事件数は8%減の1万3170件、契約金額は20%減となる1兆6468億円だった。過去5年間に上昇傾向が続いてきた落札率が前年度の92.43%から91.22%へと、下降に転じた点が特徴の1つとなっている。」(『建設通信新聞』2016.11.04)
●「国土交通省は2日、『国土交通省直轄工事等契約関係資料(16年度版)』を公表した。15年度に入札を行った直轄工事で落札に至らなかった不調は、全入札9351件のうち433件で発生。率にして4.6%と、14年度の6.6%(1万0492件中692件)と比べて2ポイント低下した。…工事、コンサル業務とも2年連続で発生率が低下。…契約関係資料では、低入札価格調査の実施状況も調べており、15年度の工事では、対象となる入札8867件のうち112件、率にして1.3%で調査が行われた。調査の結果、調査対象者と契約に至らなかったケースは8件だった。14年度の調査発生率は1.0%(1万0002件中100件)で、0.3ポイント上昇したことになる。」(『建設工業新聞』2016.11.04)
●「国土交通省は8日、計177の企業・団体や地方自治体などの産学官で組織する『インフラメンテナンス国民会議』の設立総会を28日に同省で開くと発表した。インフラの維持管理・更新需要の増大に合わせ、効率的・効果的にメンテナンスの技術やノウハウを総動員する体制を構築。維持管理体制がぜい弱な市町村への支援や、異業種連携による企業の技術革新にも力を入れる。」(『建設工業新聞』2016.11.09)
●「長野県は、県発注工事の低価格入札対策を強化する。予定価格の90%未満(2億円以上は85%未満)の落札者に実施している『契約後確認調査』に、技術者の追加専任配置や法定福利費を内訳明示した標準見積書を2次以下を含むすべての下請企業から提出させるなどの措置を追加する。17年4月以降の公告案件から適用する。15年度の県発注工事のうち、契約後確認調査の実施率は4.1%(1789件中、73件)だった。技術者の追加専任配置では、予定価格3500万円以上の土木工事と同7000万円以上の建築工事で契約後確認調査の対象になった場合、主任(監理)技術者と同等の要件(入札参加の基本要件)を満たす技術者を専任で別途配置することを義務付ける。現場代理人との兼務は認めない。同様に予定価格3500万円未満の土木工事と同7000万円未満の建築工事の場合は主任技術者の専任配置を義務付ける。下請を含む適正な労働賃金を確保するため、法定福利費を内訳明示した標準見積書の提出を2次以下を含むすべての下請企業に求めることにした。」(『建設工業新聞』2016.11.09)
●「ゼネコン各社の間で社員の働き方を工夫する取り組みが活発化していることが日本建設業連合会(日建連)の調査で明らかになった。育児休業や育児に伴う短時間勤務の期間、介護休業の期間を法律以上に長く設定したり、複数の短時間勤務制度を運用したりする企業が増えている。働きやすさを追求する措置が目立ち、17年1月1日の改正育児・介護休業法の施行を控え、対応がさらに加速しそうだ。」(『建設工業新聞』2016.11.04)
●「国土交通省が進める社会保険未加入対策をめぐり、ゼネコン各社の間に施工力不足に陥ることへの不安があることが、日刊建設工業新聞社のアンケートで分かった。回答した27社のうち17社が自社の施工力に少なからず影響があるとした。不安視の理由で大きいのは、国交省が検討中の『2次下請以下の未加入作業者の現場からの排除』。実行されると、工期が厳しい現場で労務確保に問題が生じる可能性が懸念されている。」(『建設工業新聞』2016.11.07)
●「発注者として直接的な契約関係にある元請業者だけでなく、その元請業者が契約する下請業者を社会保険等への加入業者に限定する、下請けを含めた未加入業者の排除への取り組みが、都道府県レベルで着実な進展をみせている。特に元請企業が未加入の1次下請けと契約することを禁じる『1次下請けの排除』が加速度的に進行。47都道府県のうち、対策の『未実施』は8団体のみというところまできている。すべての都道府県で実施済みとなっている、元請業者を社会保険等加入業者に限定する“元請排除”に続き、39団体が1次下請けの排除に対する何らかの対策に踏み切っていることが、国土交通省の調査によって分かった。」(『建設通信新聞』2016.11.14)
●「勤労者退職金共済機構(勤退共、水野正望理事長)の建設業退職金共済事業本部(建退共本部、稗田昭人本部長)が設置した有識者検討会は14日、建設業退職金共済制度(建退共制度)のあり方に関する報告書をまとめた。電子化をベースにした掛け金の新しい納付制度の導入などを盛り込んだ。新制度の導入は法改正が前提となる。建退共は『建退共制度に関する検討会』(村上正人座長)を設置し、制度のあり方を議論してきた。14日の会合で、掛け金の新納付制度の導入や制度の充実に向けた方策を盛り込んだ報告書を了承した。掛け金納付の新制度は『口座振り込み・振り替え方式』。既存の証紙貼付方式は維持し、掛け金に応じた退職金を確実に給付するツールの一つとして導入を求めた。現行の中小企業退職金共済法は建退共制度について証紙貼付を規定しており、新方式の導入には法改正が必要。建退共は『報告書の実現に最大限努力する』(稗田本部長)と意欲を見せており、17年3月に予定される運営委員会・評議員会の承認を待って、厚生労働省に対応を要請する。」(『建設工業新聞』2016.11.15)
●「建設機械メーカー大手4社(コマツ、日立建機、コベルコ建機、住友重機械工業の建設機械部門)の16年4~9月期決算が10月31日出そろい、全社が減収、営業減益(コベルコ建機は経常減益)となった。排ガス規制の強化に伴う買い換え需要が一巡した影響で、国内需要が低調に推移。各社が注力する中国市場も、底を脱したと見る社が多いものの、本格的な回復には時間がかかる見通し。今後も各社とも難しいかじ取りを迫られそうだ。 売上高は、コマツの建設機械・車両部門(外部顧客向け)が前年同期比9.3%減の6952億円、日立建機が8.3%減の3349億円。今期からクレーン事業を統合したコベルコ建機は13.9%減の1561億円。住友重機械工業の建設機械部門は9.7%減の888億円。このうち油圧ショベルを扱う住友建機の売上高は3.0%減の673億円だった。」(『建設工業新聞』2016.11.01)
●「国土交通省が10月31日発表した15年度下半期(15年10月~16年3月)の建築物リフォーム・リニューアル工事の受注総額は、前年度同期比22.8%増の5兆9562億円だった。うち住宅工事が10.0%増の1兆9770億円、非住宅工事が30.4%増の3兆9792億円。08年度に同統計調査を開始して以来、年度半期ベースでの非住宅工事の受注高は過去最高額を更新した。調査対象は、増築(別棟増築除く)や改築(全部改築除く)、改装などの元請工事。建設業許可業者の中から5000者を抽出して集計した。」(『建設工業新聞』2016.11.01)
●「2017年3月期の第2四半期決算開示を前に、ゼネコンの業績修正が相次いでいる。1日時点で大手クラスは3社、準大手クラスは7社が第2四半期決算の予想数値を修正した。採算重視の受注拡大に加え、資材や労務費の上昇に一服感もあり、工事採算性の向上による利益率好転が鮮明になり、中には最高益を確保する社もある。業績修正を開示した大手・準大手クラスの大半は、売上高予想を若干下回るものの、利益については全社が大幅に上方修正した。採算性を示す完成工事総利益(工事粗利)率は軒並み上昇し、10%以上の社が相次ぐ。資材や労務費の影響が予想より少なかったことに加え、官民ともに追加工事が認められたことも背景にある。」(『建設通信新聞』2016.11.02)
●「海外建設協会(白石達会長)が、会員企業を対象に調査した2016年度上期(4-9月累計)の海外建設工事受注実績(速報値)によると、総額は前年同期比16.8%増の8199億2800万円で、06年度に次ぐ過去2番目の高水準となった。アジアが減少したものの、中東・北アフリカ、アフリカ、北米、欧州がいずれも2桁以上増加した。北米は米国の好景気も手伝い、61.3%増の4072億5600万円と堅調に推移した。前年同期に引き続き、現地法人の受注が全体の8割近くを占めており、現地化による安定的な収益基盤の整備が進みつつある。受注総額の内訳は、本邦法人が17.0%増の1943億9100万円、現地法人が16.7%増の6255億3700万円だった。」(『建設通信新聞』2016.11.02)
●「大和ハウス工業の2017年3月期の連結純利益は前期に比べ6割以上増え、1700億円強になりそうだ。従来予想は59%増の1650億円とみていたが上振れする。不動産オーナーの相続税対策で店舗や賃貸アパートの建設が増え、自社管理の賃貸住宅の家賃収入も伸びる。退職給付債務の割引率引き下げで特別損失が膨らんだ前期の反動もあり大幅増益となる。」(『日本経済新聞』2016.11.03)
●「国土交通省は、11日に東日本大震災の復興違支えてきた復興CM(コンストラクション・マネジメント)方式の検証を進めている『東日本復興CM方式の検証と今後の活用に向けた研究会』(座長・大森文彦東洋大教授、弁護士)の第2回会合を開催する。復興の原動力となった復興CM方式の仕組みや、その内容を事業の立ち上げ段階や実施段階といったフェーズに沿って深掘りする方針だ。」(『建設通信新聞』2016.11.04)
●「全国鉄筋工事業協会(金鉄筋、内山聖会長)は4日、16年度秋季定例会(雇用改善推進会議)を福岡市内で開いた。委員会報告では、法定福利費を別枠表示した見積書の使用割合が約6割に達する中で、法定福利費を『別枠でもらっていない』とする回答が約6割となっていることが報告された。内山会長は、『結束してゼネコンに社会保険料を要求しよう』と呼び掛けた。定例会の冒頭、内山会長は、社会保険加入をめぐる国土交通省や日本建設業連合会(日建連)の取り組みが活発化していることを説明。その上で、『別枠表示の見積書を先頭を切って出した動きが日の目を見てきた。歩掛かりを説明できるのだから、別枠の見積書を出し続けることがわれわれを守ることになる』と述べ、将来を見据えた措置として加入対策を強化することの必要性を強調した。」(『建設工業新聞』2016.11.07)
●鹿島、大林組、清水建設の大手ゼネコン3社が8日、2016年4~9月期連結決算を発表した。建築事業の採算が改善し、純利益は3社とも同期として最高になった。大林組と清水建は17年3月期通期の業績予想を上方修正した。4~9月期の純利益は鹿島が前年同期比2.2倍の509億円、大林組は49%増の415億円、清水建が46%増の350億円だった。(『日本経済新聞』2016.11.09)
●「ゼネコン(総合建設会社)大手4社の株価が不振だ。2017年3月期は全社が純利益予想を上方修正し、大林組など3社が過去最高を見込む。しかし過去1年間では全社の株価が下げた。20年の東京五輪をにらんだ受注は来年にもピークを迎える。五輪後の成長戦略を打ち出せず、市場では株主還元の強化を望む声が広がっている。11日に大成建設が発表した16年4~9月期の連結決算は純利益が前年同期比12%増の352億円と過去最高だった。土木工事、建築工事ともに利益率が好転した。既に決算を発表している鹿島と大林組、清水建設も純利益が過去最高になった。各社とも利益率の改善が顕著だ。リーマン・ショック後に安値で受注した工事が一巡した。人手不足への警戒感も強くなり『無理な受注量を追わない動きが広がっている』と清水建の曽根豊次執行役員は話す。同社は今期の営業利益を2割増と見込むが、売上高は7%減の見通しだ。規模より採算重視に転換したところに五輪特需の風が吹いた。大成建の桜井滋之専務執行役員は『受注は大変好調だ。特に工期の長い大型工事が多い』と話す。国土交通省が算出し工事単価の指標となる建築着工単価は1平方メートルあたり19万円台とバブル期を超えた。ただ、株式市場の反応は鈍い。再開発など東京五輪をにらんだ受注は17年がピークになるとみられる。国内市場は遠からず伸びが鈍化し、再び過当競争が進みそうだ。期中の追加工事で利益を積み増すゼネコンは業績予想が保守的になる。相次ぐ業績の上方修正にも市場では『ゼネコン株では織り込み済み』(SMBC日興証券の川嶋宏樹氏)とみなされた。」(『日本経済新聞』2016.11.12)
●「戸建て住宅メーカー大手7社の10月の受注状況(金額ベース、速報値)が11日出そろった。前年実績を上回った会社はなく5社がマイナスだった。前年比プラスの会社がないのは、消費増税前の駆け込み購入の反動減が大きかった。2014年9月以来、2年1ヵ月ぶり。主力の注文住宅の前年同月比のマイナス幅は住友林業が2%、積水ハウスが5%で、パナホームと三井ホームはそれぞれ17%、26%と2桁減だった。戸建てとアパートの合計のみ公表する旭化成ホームズは7%減だった。大和ハウス工業とミサワホームの注文住宅は横ばいだった。」(『日本経済新聞』2016.11.12)
●「日本下水道新技術機構(江藤隆理事長)は、『熊本地震における下水道BCPの有効性と課題に関する調査―熊本県編―』と題した報告書をまとめた。熊本県内の自治体にアンケートとヒアリングを実施し、地震発生直後の下水道BCP(事業継続計画)に基づく繋急対応などの実態を調査。その結果、点検箇所の絞り込みなどは一定の効果があったものの、その後段となる緊急点検については、上位計画や業務の優先順位、担当職員数などを踏まえた実情に即したBCPの策定を求める声が多く寄せられた。」(『建設工業新聞』2016.11.01)
●「地震後に大規模火災が発生したり、建物の倒壊で避難が困難になったりするとして『地震時に著しく危険な密集市街地』に指定されている地区を会計検査院が抽出調査したところ、約6割の地区について地元の市区がハザードマップ(防災地図)を配布するなどの方法で住民に危険度を公表していなかったことが分かった。検査院は、危険な密集市街地の解消に向け、道路や公園の整備、共同建て替えや耐震・防火改修などの事業をしている10都道府県の121地区について、2015年度末時点の状況を調べた。大阪府を除く9都府県の73地区について、地元の市区が危険度を公表していなかった。また、指定地区の安全性向上のため、利害関係を調整して合意形成を図るよう、国は住民らでつくる協議会の設置を進めているが、5都府県の27地区は未設置だった。さらに、10都府県の28市区にある151の指定地区を調べたところ、4割超に当たる63地区で学校や公園などの一時避難場所が指定地区内に設置されていた。検査院は『地区外の場所よりも安全性が低く、さらに別の場所に避難する際には危険な地区内を移動することになる』と指摘している。」(『日本経済新聞』2016.11.05)