情勢の特徴 - 2016年11月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「ベトナム政府は22日、同国南部での原子力発電所の建設計画の中止を決めた。ロシアと日本がそれぞれ受注して2028年にも稼働する予定だったが、資金不足に加え、福島第1原発の事故で住民の反発が強まり、計画を断念した。インフラ輸出を成長戦略に掲げる安倍政権にとって逆風となる。」(『日本経済新聞』2016.11.23)
●「政府・与党は29月、2017年度税制改正で住宅リフォーム減税を拡充する方針を固めた。これまでは省エネや耐震性を高める工事が減税対象だったが新たに耐久性向上のための工事を加える。確定定拠出年金は60歳以降にほかの年金制度から移った場合に退職所得控除を受けやすくし利便性を高める。」(『日本経済新聞』2016.11.29)

行政・公共事業・民営化

●「2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は15日、体操とボッチャの競技会場となる『有明体操競技場』(江東区)の設計・施工の落札者は清水建設と発表した。落札額は約205億円で、予定価格に対する落札率は79%。建設物価の上昇や地盤の対策費などを盛り込んでいなかった立候補時点での試算は約89億円で、試算時から2倍強の落札となった。同競技場は大会後、10年程度は都が中小企業などの展示場として使用することが決まっており、整備費は組織委と都が分担することで合意している。今後、組織委と都が分担割合を協議する。入札には鹿島も名乗りを上げていたが、清水建設が入札金額で下回り、技術提案の評価も高かった。来秋をめどに着工し、19年10月に完成する予定。」(『日本経済新聞』2016.11.16)
●「総務省は15日、2016年度上期(4-9月)の自治体における公共事業などの執行状況をまとめた。15年度からの繰り越し予算分と、16年度当初予算で計上した予算額を合わせた総額21兆8604億円のうち、契約済み額は13兆2885億円、支出済み額が4兆1968億円だった。全体の契約率は60.8%。前年同期値の58.8%から2.0ポイント上昇したものの、上期『8割』の早期執行目標を大きく下回った。ただ、前年度の繰り越し分は、予算計上額4兆4693億円のうち契約済み額が3兆6243億円と、契約率は81.1%となり、80%台に乗った。一方で、16年度当初予算分は、17兆3911億円の予算計上額に対し、契約済み額は9兆6642億円で契約率は55.6%にとどまった。前年同期値からは2.6ポイント上昇している。」(『建設通信新聞』2016.11.16)
●「福島県郡山市は、東北の市町村では秋田市に続き2例目となる公契約条例の案をまとめた。震災復興工事や福島第1原発事故に伴う除染事業の発注量が今後減少することを見据え、労働者の適正な労働条件確保を柱とする条例を敷くこととした。企業が不利益を被ることがないよう、適切な設計変更実施や予定価格の設定、企業の社会保険加入促進などを明示している。12月議会に条例案を諮り、承認されれば来年4月に施行する。市は条例施行に合わせ、震災後休止してきた工事の総合評価方式を再開する。」(『建設工業新聞』2016.11.16)
●「国土交通省は18日、全国にある港湾施設の老朽化対策で中長期的にかかる費用の試算結果を初めて明らかにした。維持管理や更新・修繕にかかる年間の費用は、2013年度(約1400億円)と比べ、23年度には約1.6倍の最大約2200億円に増えると予測している。港湾施設を管理する地方自治体の予算や技術者が減る中、国交省は新技術の開発などを通じ老朽化対策の生産性向上を図る。」(『建設工業新聞』2016.11.21)
●「文部科学省は17年度から、文教施設にコンセッション(公共施設等運営権)の導入を検討する地方自治体や独立行政法人向けの新たな財政支援策に乗りだす。18年度までに3件の具体化を目指す政府目標の達成に向けた一環。地元の企業や学識者らと連携してアイデアや課題の抽出などを行う協議会を設置することを条件に、構想・立案段階で助言を受けるためのコンサルタントの外注費を補助する。」(『建設工業新聞』2016.11.22)
●「国土交通省は官公庁施設を整備する発注者のあり方(素案)をまとめた。発注部局と事業部局が異なるなど公共建築工事の特徴を踏まえ、発注者(発注部局)の役割を事業部局との連携、工事の発注と実施、説明責任の履行の3点に整理。役割を適切に果たすための方策、当面実施すべき施策を示し、解説の作成や情報共有サイトの開設なども盛り込んだ。発注者のあり方は、社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)の建築分科会官公庁施設部会(部会長・大森文彦東洋大教授)が12月中旬をめどに答申としてまとめる。」(『建設工業新聞』2016.11.28)
●「既存の下水道施設の再構築などを進めている東京都下水道局の工事の入札で、参加企業らが将来の受注量確保を見据えたさまざまな戦略を展開している。事業の初弾となる工事が発注されれば、その分野をリードする最重要案件と捉え、積極的に入札に参加。既に施工実績を積み上げている工種の案件では、若手技術者の育成を図る場として受注を目指す動きも活発だ。…本年度、汚泥焼却設備を再構築する工事を低入札価格調査を経て落札したある業者は、都のヒアリングに対し、『エネルギー自立型焼却炉を下水道局が発注する初の案件であることから、今後の汚泥焼却分野をリードする最重要案件と位置付けた』と応札に踏み切った理由を説明。施工に必要な機器の購入に当たっては、長年の取引実績がある協力会社との関係を生かしてコストを下げているという。…一般的に行き過ぎた低価格入札には、工事の品質や安全が十分に確保されない懸念もあり、コスト縮減に取り組む際は、施工体制や現場の安全の確保で一層の企業努力が求められる。低入札価格調査を経てあるシールド工事を落札した業者は、対策として、配置予定技術者とは別に支店内で経験を有する技術者を施工検討会に参加させる体制を構築。同じく低入札価格調査を受け、ポンプ所の再構築工事を受注した別の業者は、エリアや工種に応じて統括所長を置く社内制度を通じ、会社全体で不測の事態に備えているという。発注者の予定価格に対し、どの程度の割合の応札額を提示するのかは各企業の自由だが、低入札価格調査の基準額を下回る落札は本来推奨されない。こうした応札があった場合、下水道局では過去の契約実績や財務状況も加味し、契約の履行に適正な技術力、経営、意欲などを備えていると判断できれば、落札者として認めている。」(『建設工業新聞』2016.11.28)

労働・福祉

●「建設産業団体や行政、職業訓練校、教育機関などで組織する『建設産業担い手確保・育成コンソーシアム』(事務局=建設業振興基金)は21日、『地域で技能者を養成するための施設および教育訓練体系の構築』をテーマに意見交換会を開催した。建設産業にとって喫緊の課題である人材の確保・育成、離職の防止へ、実例をベースに関係者が意見を交わした。意見交換会は、教育訓練体系の整備を目的に進めている地域連携ネットワークの構築支援に関するこれまでの成果を評価することで、今後の進め方の参考とすることが大きな狙い。」(『建設通信新聞』2016.11.22)
●「建設産業にとって将来的な懸念として浮かび上がっている技能労働者の不足。大前提となる若手人材の確保・育成(入職や定着)に取り組む一方で、注目が集まっているのが複数の技能を併せ持つ、いわゆる複合工(多能工)の存在だ。しかし、この多能工化に対するニーズや受け止めは業界内でもさまざま。これからの建設産業界が求める技能者像に多能工はどう位置付けられるべきなのか――。…建設産業担い手確保・育成コンソーシアム(事務局=建設業振興基金)が昨年11月からことし3月にかけて、総合工事業と専門工事業のそれぞれを対象に実施した『求める人物像』に関するアンケート調査がそれだ。 調査の結果によると、技能労働者の不足に対する危機感から、複数の工種を一括して担うことができる多能工への高い期待がある一方で、発注側である総合工事業と請け負う専門工事業とでは、その必要性への認識や意識に差が生じている。実際に専門工事会社などに仕事を出す総合工事業や、技能者を抱える専門工事会社から見れば、複数の技能を持つ複合工は、その工種の専門工に比べると、技能の質やレベルが“中途半端”であるイメージが拭い切れていない。多能工を必要としない理由として、総合工事業が『作業効率が低い』といった点を挙げているのは、そのことを示す一例だろう。技能者からみても、複数の工種を担えるだけの技能を高いレベルで身に付けたとしても、それによって給料が上昇するといった具体的なメリットがなければ、苦労して多能工になる意味がないというのが実情だ。生産性の向上や供給力の維持にとって、多能工化が有効な手段であるという認識は業界全体として一致しているが、それぞれの職種や技能にプライドを持つ技能者側は『総論は賛成だが各論は反対』というのが本音。比較的、取り組みやすいとされる内装系の職種が、その取り組みやすさに反して後工程であるが故に思ったほどの効果が得られないといった懐疑的な声は、多能工の曖昧(あいまい)な現状を端的に映し出す。生産性や供給力だけでなく、専門工事会社がいかに請負契約の中で利益を上げることができるか、そのための手段としての多能工化という前向きなアプローチがいま必要になっていると言える。」(『建設通信新聞』2016.11.25)
●「協同組合束京鉄筋工業協会(鉄工協、知念辰昇理事長)は25日、東京都内で16年度第3回定例会を開いた。組合員が社会保険や仕事量について意見交換し、法定福利費について土木の元請業者からは確保できている一方、建築工事の元請業者や地場ゼネコンからの確保が難しいという意見が相次いだ。工事単価の下落を指椅する意見も出た。冒頭、知念理事長は、『各委員会の活動が活発になっており、水平展開したい。委員会活動に参加し、会を盛り上げてほしい』とあいさつした。意見交換は、西潟善七郎経営情報委員会委員長の進行で行われた。西潟委員長は、鉄筋工事の受注単価の幅が広がっている状況に懸念を表明し、法定福利費を別枠計上した見積書の活用をあらためて要請した。この見積書に関し、ある組合員は『ゼネコンから「ほかの業者は法定福利費のことを言ってこない」と指摘された』と述べ、法定福利費の支給をめぐるゼネコンの対応にばらつきがある現状を報告した。『地場ゼネコンは法定福利費込みの見積もりに応じない』という意見もあった。会社を設立し、未加入者を社会保険に加入させる動きが出ていることを報告した組合員もいた。」(『建設工業新聞』2016.11.29)

建設産業・経営

●「国土交通省がまとめた建設大手50社の16年度上半期(4~9月)の工事受注総額は、前年度同期比4.5%増の7兆0057億円だった。主に国内の公共工事がけん引した。国の15年度補正予算の繰り越しや16年度予算の前倒し執行などが増加要因とみられる。受注総額のうち国内受注高は6.4%増の6兆9353億円で、内訳は民間工事が0.2%増の4兆7073億円、公共工事が25.7%増の1兆9570億円。公共工事のうち国の機関からの受注高は28.4%増の1兆3489億円だった。」(『建設工業新聞』2016.11.18)
●「建設業就業者の月額給与が、全産業平均の伸び率を超えて増え続けている。厚生労働省が22日発表した16年度上半期(4~9月)の毎月勤労統計調査結果(確報)から日刊建設工業新聞が集計したところ、4~9月の全産業の平均月額給与額(1人当たり)は前年同期比0.6%増の31万3900円だったのに対し、建設業は金額・伸び率とも上回る1.7%増の38万4962円だった。…4~9月に支払われた建設業の月額平均給与額の内訳を見ると、主に基本給や家族手当、残業手当に当たる『決まって支給する給与』が0.3%増の32万2515円。主にボーナスなどの一時金に当たる『特別に支払われた給与』が9.9%増の6万2446円。」(『建設工業新聞』2016.11.24)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「道路の陥没が全国で多発している。JR博多駅(福岡市)付近で起きた陥没事故は地下鉄工事が原因だったが、下水管の劣化が原因とみられる陥没事故は全国で年間約3300件発生。東京都23区だけで約600件に上った。都心では下水管の老朽化が深刻で陥没事故の危険も高い。自治体には管の交換や修繕工事などの対策が求められでいる。11月中旬の深夜、建設コンサルタント会社『ジオ・サーチ』(東京・大田)のトラック型探査車『スケルカー』が都内の幹線道路を走り抜けた。路面に向けられた電波が捉えたのは陥没の原因となる地下の空洞。パソコン画面には電波を解析して白色で表示された空洞がくっきりと浮かび上がった。同社が国や自治体から請け負う空洞調査は年100件程度。担当者は『20年ほど前の調査なら空洞の数は1キロあたり平均1カ所。だが最近は1キロに2カ所は見つかる』。直径50センチ以上の空洞の位置を報告することが多いが『至急対策が必要な数メートルの穴が見つかることも少なくない』と話す。国土交通省によると、下水管の老朽化などに起因した道路陥没は2014年度、全国で約3300件起きている。2割の約600件が集中するのが東京都23区だ。下水道は高度経済成長期の1960年代以降、都心部で整備が本格化し、その後地方に普及した。全国には現在約46万キロが整備されているが耐用年数とされる50年を超えた下水管が1万キロある。陥没原因の多くは老朽化した下水管に穴が開いたり、位置がずれたりして下水管内部に土砂が入り込み地下に空洞ができるケースだ。国交省によると、道路が数センチへこむ程度の軽微な事例が大半だが、物損事故や通行人が転倒してケガする事例もある。50年超の下水管は10年後に5万キロ、20年後に13万キロまで膨らむ見通しで、同省下水道部は『陥没リスクは今後さらに高まる』と警戒する。国は陥没につながる不具合を見つけるため、昨年11月に改正下水道法を施行。下水管の5年ごとの定期点検を自治体に義務付けた。」(『日本経済新聞』2016.11.18)
●「経済産業省が東京電力福島第1原子力発電所で起きた事故の賠償や廃炉費用の合計が20兆円を超えると推計していることがわかった。11兆円としてきたこれまでの想定の約2倍に膨らむ。東電の財務を支えるため、無利子融資枠を9兆円から広げる方向で財務省などと協議する。原発の事故処理費用の一部はほかの電力会社も含めて電気料金に上乗せするため、国民負担の増大が避けられない。…費用の大幅な上振れは、前回見積もった2013年末には想定しなかった賠償対象件数の増加や、除染作業の難しさが主な理由だ。廃炉は溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しが始まる20年代前半を控え、原発内部の状況が徐々に明らかになるにつれて2兆円では到底収まらないことが確実になった。廃炉費以外は原子力損害賠償・廃炉等支援機構が政府から交付国債を受け、必要なときに現金化して東電に無利子で貸し付けている。当初5兆円だった国債の発行枠を13年度に9兆円に広げており、再び拡大する。廃炉費は来電が利益を積み立てて負担する。原賠機構と東電は費用の膨張も踏まえて年明けに再建計画を改定し、政府が認定する。東電や他社の電気料金への上乗せをなるべく抑えるには東電が収益力を高め資金を捻出する必要がある。すでに火力発電・燃料調達事業は中部電と全面統合を視野に提携しているが、今回の改定で送配電や原子力事業でも再編・統合の方針を盛り込む。他社から広く提案を受け、収益力の向上につながる統合相手を選ぶ。」(『日本経済新聞』2016.11.27)

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