情勢の特徴 - 2016年12月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「三菱UFJリースと日立キャピタル、三菱東京UFJ銀行は来春にも、国内企業による海外でのインフラ整備に出資する新会社を設立する。アジアや欧米での発電所や鉄道などの案件を中心に、まず数年で1000億円規模の投融資を目指す。将来は他の金融機関などに幅広く参加を呼びかけ規模を拡大する。新会社の名称は『ジャパン・インフラストラクチャー・イニシアティブ』。資本金は100億円で、事業会社が日本企業のインフラ輸出を金融面で支援する国内初の取り組みという。三菱UFJリースと日立キャピタルが47.55%ずつ、三菱東京UFJ銀が4.9%を出資する。社長三菱東京UFJ銀出身者が就任する方向だ。インフラ輸出案件に計1000億円規模の投融資を目指し、早期に具体的な取り組み内容を詰める。日本政府はインフラ輸出を成長戦略の柱の一つに位置づけている。マイナス金利政策などの影響で預金などの利回りが低下するなか、比較的安定した収益が期待できるインフラ整備事業への関心は高まっている。」(『日本経済新聞』2016.12.01)
●「下請中小企業の取引条件改善や賃上げを目的とした、サプライチェーン(供給網)全体での取引適正化と付加価値向上に向けた自主行動計画を、建設産業でも策定することが確定した。政府が6日に開いた『下請等中小企業の取引条件改善に関する関係府省等連絡会議』で、国土交通省は『建設業に関する自主行動計画策定の要請に向けて、関係者と調整中』であることを初めて公式の場で明らかにした。早ければ年末にも国交省が建設産業界に対し、自主行動計画の策定を要請することになるとみられる。」(『建設通信新聞』2016.12.07)
●「相続税の節税目的でアパート経営に乗り出すケースが増えている。部屋の借り手が見つかれば問題ないが、首都圏や人口減の地方で空室が増える兆しが浮かんできた。地方銀行などによる関連ローンの残高も急増していることから、金融庁は融資の過熱感を懸念。節税効果が薄まり、アパート経営者の負担が増える恐れもあるため、近く金融機関を通じた実態調査に入る。」(『日本経済新聞』2016.12.14)
●「下請中小企業の取引条件の改善・適正化に向け、公正取引委員会と経済産業省は14日、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の運用基準、下請中小企業振興法(下請振興法)に基づく振興基準、下請代金支払手段通知(手形通知)を改正し、適用を始めた。建設業を含む約21万社の親事業者と約870の関係団体に対し、改正後の運用基準、振興基準、手形通知を送付し、基準などの順守を要請した。」(『建設通信新聞』2016.12.15)

行政・公共事業・民営化

●「経済産業省は1日、工業用水道(工水)事業へのコンセッション(運営権付与)方式導入に向けた環境を整備することを明らかにした。工業用水道事業法の工水事業者となる運営権者は、PFI法上、民間企業となることから、工水法上の『地方公共団体以外の者』と同等であることを明確化し、自治体以外の者に適用している事業許可・認可基準に基づき、運営権者の許可などを判断できるようにする。また、コンセッション方式導入によって、企業が事業に参入する場合の料金算定方法は、法人税などの租税課金や配当金を、総括原価に含まれる費用項目として追加する。」(『建設通信新聞』2016.12.02)
●「国土交通省は1日、資金需要の増大が予想される年末を控え、下請契約・下請代金支払いの適正化と施工管理の徹底を図るよう、土地・建設産業局長名で建設業105団体に通知した。同日付で建設業課長名で都道府県建設業担当部長にも参考送付。通知内容の徹底や技能労働者の賃金水準の確保に努めるよう求めた。文書では、政府が下請など中小企業の取引条件の改善に向けた連絡会議を設け、関係省庁が一丸となって各種検討を行っていると明記。建設業でも官民一体となり、引き続き下請取引の適正化に向けた取り組みが求められていると呼び掛けた。」(『建設工業新聞』2016.12.02)
●「内閣府は2日、コンセッション方式(運営権付与)の導入を検討する自治体として、浜松市や京都府など19件を支援対象に決めた。内訳は水道2件、水道・下水道3件、下水道3件、文教施設8件、収益型や公的不動産利活用型の事業を含む公営住宅3件となっている。各自治体は今後、コンサルタントなどの専門家に調査・検討を委託するための契約手続きに入ることになる。自治体支援事業は、『水道、下水道』の2分野と『文教施設、公営住宅』の2分野に区分して実施する。上下水道でコンセッション事業を検討している自治体には、導入の前提となるデューディリジェンス(資産評価)や官民の役割分担の検討に必要な経費を支援する。具体的には過去の施設更新投資状況などの資産資料の精査、資産に関するリスクの抽出と整理、更新投資計画の策定・更新、最適な官民のリスク分担や業務分担の検討など。また、事業導入の可能性、対象事業の範囲、官民のリスク分担、広域化などの導入可能性調査の経費も支援する。調査によって、コスト削減効果や収入増加効果などを算出することになる。」(『建設通信新聞』2016.12.05)
●「国土交通省は、プロジェクトの上流段階から施工者のノウハウを取り入れることで、手戻りの防止など施工の効率化を図るフロントローディングの実践に取り組む。有効策の1つとして技術提案・交渉方式の適用拡大を打ち出す中、北陸地方整備局が(仮称)国道157号犀川大橋橋梁補修工事に直轄工事で3件目の適用を決定。今後の適用拡大に弾みをつけることになりそうだ。・直轄工事における『技術提案・交捗方式』の適用は、近畿地方整備局の国道2号淀川大橋床版取替他工事(設計交渉・施工タイプ)、九州地方整備局が熊本地震による斜面崩壊で通行不能となっている国道57号の復旧ルートとして整備する二重峠トンネル工事(技術協力・施工タイプ)に続く3例目となる。…契約のタイプとして『設計・施工一括タイプ』『技術協力・施工タイプ』『設計交渉・施工タイプ』の3つの類型があるが、補修工事に技術協力・施工タイプを採用するのは初めて。先駆的事例としても注目が集まる。」(『建設通信新聞』2016.12.06)
●「国土交通省が、2017年度予算の概算要求に盛り込んでいる「i-Construction(アイ・コンストテクション)普及加速事業」が新たな局面を迎えている。初弾となる静岡県に続き、茨城県が2弾目のモデル自治体として名乗りを上げた。先導モデルとなる自治体の動きが活発化する中、来年4月以降の全国展開へ、各地方整備局を巻き込んだ発注者間の支援や連携体制の構築が不可欠な状況になっている。」(『建設通信新聞』2016.12.08)
●「国土交通省は、建設業の元請会社でつくる業界団体に下請取引の適正化に向けた自主行動計画の策定を要請する方針を明らかにした。6日開かれた政府の『下請等中小企業の取引条件改善に関する関係府省等連絡会議』(議長・野上浩太郎官房副長官)で報告した。現時点で具体的な要請先や要請時期は未定だが、できるだけ早く対象の団体を絞り込んだ上で要請を行いたい考えだ。元請団体への自主行動計画の策定要請は、世耕弘成経済産業相が中心となって行っている。同日の連絡会議では、先行して自主行動計画の策定を進めている業種の団体のうち、建設機械関係で日本建設機械工業会(会長・辻本雄一日立建機社長)が16年度末までに策定、公表するなどの予定が報告された。」(『建設工業新聞』2016.12.09)
●「国土交通省は9日、8月の台風で甚大な被害が出た北海道と岩手県で、緊急的な治水対策として河川施設の整備に着手すると発表した。両道県の合わせて約1000カ所で原形復旧と治水機能を高める河道掘削や堤防整備を進める。年明けにかけて設計や工事に順次着手。4~5年後の完了を目指す。北海道では国の直轄管理河川108カ所の整備に約317億円を投じる。」(『建設工業新聞』2016.12.12)
●「国土交通省らが18年度からシステムを運用する公共工事の電子契約で、総価契約単価合意方式で受発注者が取り交わす『単価合意書』も電子化されることが分かった。建設工事や建設コンサルタント業務などを対象にしたシステム開発の中で、単価合意書も電子データでやり取りできるよう一連のシステムに組み込む。これにより、契約書と併せて印紙税を負担する必要がなくなる。電子契約システムは、17年度未完成を目指し国交省、農林水産省、防衛省、内閣府(沖縄総合事務局)の4府省による開発が進んでいる。運用開始は18年度としているが、当初からすべての工事や業務を対象とするか、段階的に拡大するかは決まっていない。」(『建設工業新聞』2016.12.15)

労働・福祉

●「厚生労働省は11月30日、山岳トンネル工事に従事する作業員の粉じん障害防止策を話し合う有識者検討会を発足させた。施工機械の大型化などで粉じん発生量の増加が懸念される中、より正確で効率的な粉じん濃度の測定・評価方法を確立。適正な換気や防じんマスクの着用方法などの対策を17年度末までにまとめる。発足したのは建設関係団体などの有識者17人でつくる『トンネル建設工事の切羽付近における作業環境等の改善のための技術的事項に関する検討会』。座長には小山幸則立命館大総合科学技術研究機構客員教授が就いた。厚労省によると、山岳トンネル工事現場での粉じん測定は、1976年に整備された同省の指針や、86年に整備された建設業労働災害防止協会(建災防)の指針に基づいて行われている。いずれも最も粉じんが発生しやすい切羽付近からはやや離れた場所での測定を推奨している。リニア中央新幹線や整備新幹線などの大規模プロジェクトを中心に各地で山岳トンネル工事が相次いでいる。施工機械の大型化や掘削の高速化などの影響で粉じん障害のリスクも高まっており、厚労省は防止策を抜本的に強化することにした。検討会で話し合う主なテーマは、▽切羽付近での粉じん濃度の測定・評価方法▽切羽付近での作業方法の改善▽防じんマスク(フィルター)の管理方法▽労働者の教育訓練。」(『建設工業新聞』2016.12.01)
●「厚生労働省は1日、2016年の賃金引き上げなどの実態調査結果をまとめた。ことしの賃金改定状況(予定を含む)をみると、建設業の1カ月当たりの1人平均所定内賃金の改定額・率は、7986円、2.4%だった。前年と比べ616円、0.2ポイント引き上がった。 調査は8月に実施。全産業で有効回答のあった従業員100人以上の1709社の回答を集計した。うち建設業は調査対象企業数の67.5%から回答があった。集計結果は復元統計処理しているため、企業数は明らかにならない。」(『建設通信新聞』2016.12.02)
●「厚生労働省は2日、来年度の雇用保険制度改正の素案を公表した。倒産や解雇によって離職した30~44歳の失業給付を30~60日間延長することや、最低賃金の引き上げを受けた給付額の増額などを盛り込んだ。時限的な雇用保険料率の引き下げ幅や、国庫負担割合の圧縮幅も示した。過去最大の積立金額は大幅に減少する見通しだ。年内に結論をまとめて来年の通常国会に雇用保険法改正案を提出する。」(『日本経済新聞』2016.12.03)
●「2017年度を目標年次に、建設業界の関係者が一丸となって社会保険等の未加入対策に取り組む中、国土交通省は、建設企業などに対して、ことし7月に改訂した『社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン』に沿った適切な対応を改めて求めていく。ガイドラインに示す考え方やその取り扱いの周知を目的に、5日付で建設業団体や都道府県に事務連絡(通知)を出す。『建設業における社会保険への加入の徹底に係る注意点について』と題した通知文書は、ガイドラインに示す取り扱いや、その注意点を分かりやすく整理することで、改めて建設業界に社会保険への加入の徹底を促すことが狙い。ガイドラインに『適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、元請企業は特段の理由がない限り、現場入場を認めない取り扱いとすべき』とされていることを受けて、ここで言う法人と個人事業主の区分けあるいは規模別で異なってくる、加入すべき“適切な保険”を体系的に整理している点がポイントとなる。」(『建設通信新聞』2016.12.05)
●建設現場から社会保険業加入業者を締め出す国交省のガイドライン。ゆがんだ形で適用を迫る親会社もある。和歌山市内にある新日鉄住金和歌山製鉄所内で働く一人親方の建設業者に対し、親会社がガイドラインを示して「雇用保険に入らないと4月から仕事を出さない」と迫っている問題(本紙9月26日号)。一人親方は事業主であるため雇用保険には加入できない。しかし、一人親方同士で事業体をつくり、事業主と労働者を決めろというのだ。和歌山民主商工会(民商)は「本来、親会社が建設労働者の『身分保証』を行うことが必要。その責任を下請け業者に押し付けているのは問題」と、国土交通省と交渉もしている。(『全国商工新聞』2016.12.05より抜粋。)
●「下請中小企業の取引条件の改善・適正化に向け、公正取引委員会と経済産業省中小企業庁は、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の運用基準、下請中小企業振興法(下請振興法)に基づく振興基準、下請代金支払手段通知(手形通知)を、いずれも今月中旬に改正し、施行する。建設業を含む約21万の親事業者と約870の関係団体に対し、改正後の運用基準、振興基準などを周知する。特に、手形を使った場合の支払期日を現行の最長120日から『将来は60日以内』とするよう求め、親事業者である大企業から率先して取り組むことを要請する。今後、数年間かけてサイトの短縮状況などをフォローアップするなど、必要な措置を取る方針だ。」(『建設通信新聞』2016.12.08)
●「技能労働者(職人)の技能や経験を“見える化”し、適正で統一的な評価に応じた処遇改善を目的とする『建設キャリアアップシステム』の大枠が固まりつつある。技能者情報の閲覧については、職人本人と所属事業者(専門工事業など)の同意がなければ、システム内の技能者情報をほかの事業者が見ることができないシステムにするほか、事業者登録料は、中小零細企業や一人親方は無料または廉価にするなど最大限配慮する。また職人と事業者のシステムへの登録業務は、都道府県建設業協会などに業務委託することで調整している模様だ。地方建設業界のシステム導入への理解促進へ今後も丁寧な説明を続けるものと見られる。」(『建設通信新聞』2016.12.09)
●「公共、民間問わずすべての建設工事に従事する人たちの安全と健康の確保を推進するため、安全衛生経費の確保や一人親方問題への対処を国や自治体、企業に求める『建設工事従事者の安全及び健康の確保の促進に関する法律(建設職人基本法)』が9日、衆議院本会議で可決、成立した。同法は6日に参院先議で7日には参院本会議で可決、わずか4日のスピード成立となった。今後、同法施行に伴い国、自治体、元請けや専門工事業など企業に対しても、工事従事者の安全・健康への新たな対応を求める。新たな対応は現場経費のコストアップになる。」(『建設通信新聞』2016.12.12)
●「国土交通省は建設業許可や経営事項審査(経審)の申請などに合わせて実施している社会保険への加入指導の結果をまとめた。今年4~9月の半年間で許可や経審を申請した業者のうち、既に社会保険に加入していた業者の割合は92.7%となり、半年ベースの集計で初めて9割を超えた。指導後に加入した業者を加えると、全体に占める割合は95.9%に達した。」(『建設工業新聞』2016.12.14)

建設産業・経営

●「積水ハウスが8月発表した2016年2~10月期の連結決算は、純利益が前年同期比17%増の831億円だった。同期間では4年連続の最高益。相続税対策や人口流入を背景に都市部で土地オーナー向けの賃貸住宅販売が増加。管理代行するアパートの賃貸収入も好調だった。苦戦していた戸建て住宅も復調した。売上高は6%増の1兆4457億円だった。稼ぎ頭は賃貸住宅の建設・販売事業で部門の営業利益は397億円と22%増えた。3~4階建てで共用部をホテル風に仕上げるなど、独自の設計が人気だ。オーナーから管理を請け負う賃貸物件への入居率は10月末で96.6%と1月末に比べ0.1ポイント伸びた。戸建て住宅は販売戸数が減ったが、1棟あたり平均価格は3721万円と21万円上昇した。1億円を超える高級物件に加え、太陽光発電装置などを備えた『ゼロエネルギー住宅』の販売比率が70%まで高まるなど付加価値の高い住宅が伸びた。2~10月の受注額は9%増の1兆5743億円。賃貸住宅は9%増、戸建て住宅も0.2%増だった。通期の業績見通しは据え置いた。」(『日本経済新聞』2016.12.09)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「経済産業省は9日、東京電力福島第1原子力発電所の廃炉や事故の被災者への賠償に総額で21.5兆円の費用がかかるという新たな見積もりを発表した。2013年には11兆円と見込んでいたが、わずか3年で2倍に膨らんだ。東京電力ホールディングス(HD)など電力業界の支払いは40年に及ぶとみられ、長期にわたって電気料金が高止まりする恐れがある。」(『日本経済新聞』2016.12.10)
●「環境省は9日、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う除染で出た除去土壌と焼却灰を貯蔵管理する中間貯蔵施設(福島県双葉、大熊両町)の工程となる『2017年度の中間貯蔵施設事業の方針』をまとめた。17年度から焼却灰の輸送を開始し、除去土壌と焼却灰の17年度輸送量を50万立方メートル程度と見込んだ。用地取得に全力で取り組み、18年度の想定輸送量90万-180万立方メートルに対応する受け入れ・分別施設、土壌貯蔵施設として、現在工事中の施設とは別に、双葉町で各1施設、大熊町で各2施設に新規着工する。また、双葉町に減容化施設を新たに造る。焼却灰の輸送開始に対応して焼却灰保管場を確保しながら、双葉、大熊それぞれに整備する廃棄物貯蔵施設にも新規着工する。17年度新規着工施設の工事発注公告は、16年度内になるとみられる。」(『建設通信新聞』2016.12.12)
●「戸建て住宅メーカー大手7社の11月の受注状況(金額ベース、速報値)が12日出そろった。前年実績を上回ったのは旭化成ホームズだけだった。主力の注文住宅の前年同月比のマイナス幅は、積水ハウスや住友林業など5社が4~9%となった。バナホームは15%と2カ月連続で2桁減だった。2年1カ月ぶりに前年比プラスの会社がなかった10月に続き、消費増税の再延期で消費者が住宅の購入を急がなくなった影響が出たとみられる。『商談の長期化に加え、9月ごろに荒天で展示場の来場数が減ったのが11月の受注に響いた』(バナホーム)という。」(『日本経済新聞』2016.12.13)

その他