情勢の特徴 - 2016年12月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「菅義偉官房長官は15日、英国のハモンド財務相と首相官邸で会談した。両氏は英国が国内で進める原子力発電所の建設プロジェクトで協力することで一致した。政府は日立製作所が計画する原発へ1兆円規模の資金支援と検討しており、日英間の協議が本格化する。」(『日本経済新聞』2016.12.16)
●「国土交通省の2017年度予算案は、一般会計が前年度と同水準の5兆7946億円となった。公共事業関係費は前年度比0.01%(約18億円)増の5兆1807億円。前年度に引き続き微増ではあるが、5年連続の増加となり、安定的かつ継続的に公共投資を確保する傾向が維持される形となった。一般公共事業費には5兆1273億円、災害復旧等に534億円を計上した。非公共事業費は、その他施設費に615億円を充てる。『成長と分配の好循環』による日本全体の成長力の底上げなどの実現に向け、ストック効果を重視した社会資本整備などを推進する。」(『建設通信新聞』2016.12.26)
●「国土交通省は、4-6月の第1四半期など、年度当初が閑散期となってしまう公共工事の壁を打破する『平準化』の推進に力を入れる。直轄工事における率先行動として、22日に閣議決定した2017年度予算案に約1400億円の『ゼロ国債』を設定。従来から取り組んでいる2カ年国債とのセットで約3000億円規模の“平準化措置”に踏み切る。当初予算でのゼロ国債の設定は初の試みとなる。」(『建設通信新聞』2016.12.26)
●「政府が22日決定した17年度予算案で、東日本大震災復興特別会計の総額は前年度比17.2%減の2兆6896億円となった。うち復興庁の予算額は24.5%減の1兆8153億円。福島第1原発(福島県双葉、大熊両町)の事故後に国が立ち入りを制限している原発近くの『帰還困難区域』で、飛散した放射性物質の除染作業と家屋の解体に本格着手する。復興庁予算案の内訳を見ると、原発周辺でインフラ整備などを行う『原子力災害からの復興・再生』には19.3%減の8209億円を計上。このうち、放射性物質の除染には45.6%減の2855億円、除染で出た汚染土などを最終処分するまで保管する中間貯蔵施設の建設には39.4%増の1876億円をそれぞれ計上した。さらに原発事故対応では、ほぼ手つかずだった帰還困難区域の除染や家屋の解体に着手する。いずれも『復興拠点内環境回復事業』と位置付け、国が直轄で行う。309億円を新規計上した。17年度から帰還困難区域で市町村に避難住民の帰還を促す新たな生活拠点『特定復興拠点』の形成を後押しする狙いがある。このほか、震災復興の最優先課題の一つとして岩手、宮城両県で先行する『住宅再建・復興まちづくり』には32.0%減の7698億円を計上した。」(『建設工業新聞』2016.12.26)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は20日、予定価格を算出するためのツールとなる国の統一基準『公共建築工事積算基準』を改定した。1997年以来、19年ぶりに一般管理費等率を見直す点が最大のポイント。予定価格が約9億円の中規模庁舎をモデルケースとした場合、予定価格(工事費)は約2.6%の上昇となる計算だ。17年1月以降に入札公告する営繕工事から適用を開始する。受注者にとっての適正な利潤の確保などをうたう公共工事品質確保促進法(品確法)の基本理念に沿って、発注者の責務である『適正な予定価格の設定』につなげることが狙い。積算基準の改定は年度当初に行われるのが通常だが、前倒しで改定を行う。柱となるのが、予定価格(工事費)を構成する直接工事費と共通費のうち、共通費の一部である一般管理費等率の改定。合わせて、下請企業の経費率も見直す。」(『建設通信新聞』2016.12.21)
●「政府は20日、『原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針』を閣議決定した。帰遺困難区域に設定する復興拠点の整備では、必要な措置を盛り込んだ福島復興再生特別措置法の改正法案を次期通常国会に提出するなど、制度面や財政面の措置を進める。基本方針は、▽避難指示の解除と帰還に向けた取組の拡充▽帰還困難区域の復興の取組▽新たな生活の開始に向けた取組などの拡充▽事業・生業や生活の再建・自立に向けた取組の拡充▽廃炉・汚染水対策への万全の対策▽国と東京電力が担うべき役割――の6項目で構成。このうち避難指示の解除と帰還に向けた取組では中間貯蔵施設の整備、帰還困難区域の復興への取組では特定復興拠点などの整備に関する事項が盛り込まれた。中間貯蔵施設は『福島の復興に不可欠な施設』とし、今後2020年度までに用地取得を最大限進めて、幹線道路沿いの除線土壌を中間貯蔵施設に搬入する取組を進める。また放射性物質汚染対策については、これまでの体制を抜本的に見直し、推進体制の一元化・充実を図るための組織改革を実施する。」(『建設通信新聞』2016.12.21)
●「国土交通省は17年度から、道路上の電線や通信ケーブルを地中に埋設する『無電柱化』の新たな普及策としてPFIを試行する。最初に国が直轄管理する国道で数件導入。電線などを収容する共同溝の設計・施工・維持管理を一括して民間に任せる。建設業など幅広い業種からの参入を促す。試行で得られた成果や課題を地方自治体に伝え、全国的な普及を目指す。17年度予算案で必要経費を新規計上した。直轄国道で試行する無電柱化事業のPFIは、あらかじめ設定した運営対価を公共機関が民間事業者に長期にわたって分割払いする『サービス購入型』と呼ばれる方式を採用。有料道路事業のような設備投資回収に充てる運営収入が見込めない中で、民間事業者の安定的な収入を確保する。試行に合わせ、民間事業者に払う運営権対価の担保として同事業に設定できる国庫債務負担行為の制度も拡充。設定年限を現在の5年から15年に延ばす。試行1件当たりの標準的な発注ロットは未定という。」(『建設工業新聞』2016.12.27)

労働・福祉

●「政府が22日に決定する17年度予算案のうち、厚生労働省関係の概要が明らかになった。建設業の人材確保・育成策のほぼ全般を含む施策分野『雇用管理改善による魅力ある職場づくりの促進』には前年度予算比34.9%増の170億円を計上。主に中小事業者向けに行う働きやすく定着したくなる職場づくりに向けた相談や情報提供などの取り組みを充実させる。」(『建設工業新聞』2016.12.16)
●「日本型枠工事業協会(日本型枠、三野輪賢二会長)は、型枠大工の雇用実態調査報告書(16年11月)をまとめた。1社当たりの所属技能工が過去最大の56.5人(前年51.8人)に増加。29歳以下が10%増の1923人となり、比率が15%(13%)に上昇。『若年層の雇用拡大の芽がようやく出始めた』としている。ただ社会保険加入率が低く、処遇改善に向けた方策の検討が必要と結論付けた。調査は毎年実施、16年は会員外を含む223社(245杜)が回答した。型枠大工の55歳以上の比率は32%(35%)に低下。型枠解体工の比率も29歳以下が24%(20%)に上昇し、55歳以上は24%(28%)に低下した。型枠大工の厚生年金保険加入率は44%(34%)に上昇したが、国の目標『製造業並み(90%)』には遠く、『歩みは道半ば』とした。加入率は職長が51%(46%)、技能工は36%(31%)だった。型枠大工、型枠解体工とも全国9地域別の厚生年金保険の加入率は東北が最高で関西が最低。型枠大工は東北の90%(65%)に対し関西は16%(11%)にとどまった。2次以下の下請業者の雇用・健康・厚生年金の3保険加入率は61%(41%)に上昇した。」(『建設工業新聞』2016.12.19)
●「政府は20日、首相官邸で働き方改革実現会議を開き、非正規社員の処遇改善を促す『同一労働同一賃金』のガイドライン(指針)案を示した。正社員と非正規との不合理な待遇差を例示し、基本給や賞与、手当などについて格差是正を促した。指針には、格差をつけた企業に理由を説明する責任を課す仕組みは盛り込まれず、実効性の確保が課題になる。」(『日本経済新聞』2016.12.21)
●「国土交通省は週休2日の確保に関する調査結果をまとめた。技術者、技能労働者を問わず半数以上が完全週休2日または4週8休が望ましいと考えているが、実際は15%程度しか取得できていないことが判明。下請技術者・技能労働者の休日は週休2日モデル工事と通常工事で大きな差はなかった。モデル工事の休日に他の現場で働いていると考えられるという。」(『建設工業新聞』2016.12.21)
●「技能労働者の経験や技能といった本人情報を業界統一のルールで登録・蓄積する『建設キャリアアップシステム』が実現化へ踏み出す。取り組みを先導してきた官民コンソーシアムは、システムの運営主体(発注主体)を建設業振興基金(内田俊一理事長)に決定した。システムのスペックを示す要件定義書とシステム開発業務の発注に必要となる調達仕様書を固めた。年明けからいよいよシステム開発が動き出すことになる。」(『建設通信新聞』2016.12.22)
●「国土交通省が建設業許可業者の社会保険加入率100%の達成を目指す17年度まで残り約3カ月となり、同省と84の関係団体でつくる『社会保険未加入対策推進協議会』(会長・蟹澤宏剛芝浦工大教授)は21日、ラストスパートに向けて対策徹底をあらためて申し合わせた。17年度以降も業界全体に社会保険加入を広く定着させていくことも確認した。」(『建設工業新聞』2016.12.22)
●「中小建設会社が外国人技能実習制度をリーダー育成に活用し始めた。建設需要が旺盛な東南アジアへの進出を見据え、実習生を母国の現場を率いる人材として育てる。帰国後に戦力として実習生を生かす例が増えれば、『外国人の労働力を使い捨てている』との批判の解消にもつながりそうだ。建設資材・内装施工の野原産業(東京・新宿、野原数生社長)は2017年2月にもベトナムに進出する。取引先企業とともにベトナム人技能実習生約360人を受け入れており、帰国後の就労の受け皿として現地法人を設立する。」(『日本経済新聞』2016.12.26)
●「厚生労働省は17年度から、中小建設業向けの人材確保・育成支援策を一段と強化する。現行の建設労働者確保育成助成金(建労金)の制度を拡充。技能労働者として優先的に若者(35歳未満)と女性の入職・定着を支援するため、最長3カ月間の試行雇用を行う建設会社に支給している奨励金に助成額を上乗せする特例措置を導入する。政府が22日決定した17年度予算案のうち、厚労省は中小を中心とする建設業の人材確保・育成に向けた施策に計約100億円を計上。最大の柱と位置付ける建労金には50億円を配分した。 17年度に建労金に創設するのが『若年・女性労働者向けトライアル雇用助成コース』。まず建労金とは別の人材確保・育成支援策で、職務経験がほとんどない若者や女性を試行雇用する中小企業に最長3カ月間行っている奨励金(1人当たり月4万円)の助成制度(全産業対象)を活用。次いで建労金で建設業を対象に、技能労働者として若者や女性を試行雇用する企業に1人当たり月4万円を上乗せして最長3カ月間支給する。」(『建設工業新聞』2016.12.26)
●「国土交通省は、建設分野における外国人材の活用に力を入れる。取り組みの柱は、現地の市場ニーズを組み込んだ教育・訓練プログラムの構築・実施と、帰国後の求人・求職マッチングシステム(外国人材データベース)の整備。日本式の技能を習得した外国人材の帰国後も見据えた活用サイクルを築く。結果として、労務調達の面から日本企業の海外進出を後押しする。」(『建設通信新聞』2016.12.27)

建設産業・経営

●「建設経済研究所は15日、主要建設会社40社を対象にした16年度上半期(16年4~9月)の決算分析を発表した。単体ベースの受注高は前年同期比7.3%増の6兆2259億円で、2年ぶりに6兆円台を回復。連結ベースの売上高は完成工事高の減少などが響き減少に転じたが、売り上げ総利益は受注時採算の改善などが奏功し、直近5年間で最高水準となる23.0%増の8474億円となった。単体受注高のうち、建築は4.8%増の4兆3268億円。準大手(11社)が微減となったものの、大手(5社)と中堅(24社)で増加し、4兆円台を維持した。」(『建設工業新聞』2016.12.16)
●「国土交通省は、22日に建設業関連制度の基本的な枠組みを再検討する第2回の『建設産業政策会議』(座長・石原邦夫東京海上日動火災保険相談役)を開催。検討課題となる“弾出し”を行う一方、それぞれを『法制度・許可』『企業評価』『地域建設業』の3つのテーマに分類して整理した。各テーマごとにワーキンググループ(WG)を設置して本格的な検討に乗り出す。各WGは来年1月以降に順次、立ち上がる見通し。」(『建設通信新聞』2016.12.26)
●「標準見積書の活用が着実に進んでいる。国土交通省が27日に公表した2016年度の建設工事における下請取引の実態調査(下請取引等実態調査)の結果によって明らかになった。法定福利費が内訳明示された見積書(標準見積書)の活用状況に関する問いに対して、元請企業が下請企業に、法定福利費が内訳明示された見積書の提示を『すべて』または『一部』の下請契約で働き掛けているとの回答が、昨年度の調査から5.6ポイントの増加となる38.8%に上昇。『現在は働き掛けていないが今後、締結する下請契約では働き掛けを検討している』との回答も41.4%に上っている。一方、下請企業における活用状況も『すべて』または『一部』の工事で提出しているとの回答が昨年度から10.7ポイントの増加となる46.6%に上昇した。元下双方にその活用への意識は着実に浸透していると言えそうだ。 調査は、無作為に抽出した全国約1万4000業者を対象に7月から9月にかけて実施した。調査票の回収業者数は1万2184者。回収率は86.4%だった。」(『建設通信新聞』2016.12.28)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は15日、『防災に関する市町村支援方策に関する有識者懇儀会』の第3回会合を開き、大規模災害時における市町村支援方策(案)と、提言骨子(案)を示した。 大規模災害時における市町村支援方策(案)では、激甚災害発生時の被災地域での1日も早い復旧に向けた取り組みとして、被害の把握、復旧方針の検討、災害復旧工事の3つのフェーズについて、被災自治体の活動とTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)などの国交省による支援の2方面から活動内容を示した。具体的には、自治体の活動内容のうち国交省による支援内容では、TEC-FORCEの充実強化と被災した公共土木施設の査定設計書の設計費用の補助、災害査定手続きの簡素化などを実施する。被災自治体の活動では、被災自治体の災害復旧事業の効率化に向けて災害復旧事業に関連する測量・設計、査定設計書の作成などの初期段階から、災害査定、工事発注、災害復旧工事、完成検査、成功認定までの各段階をサポートするシステムとなる『災害復旧支援業務』の実施を明記。早い段階から一貫したサポートを実施することで、自治体職員しか対応できない住民対応などにより注力できる環境を整備する。」(『建設通信新聞』2016.12.16)
●「国土交通省は空き家に入居する子育て世帯や高齢者に最大で月4万円を家賃補助する。受け入れる住宅の持ち主には住宅改修費として最大100万円配る。早ければ2017年秋に始める。子育てや高齢者の生活を住宅面から支え、深刻になりつつある空き家問題の解決にもつなげる。新たな対策で柱となるのは空き家や民間賃貸住宅の登録制度の創設だ。住宅の持ち主に呼びかけ、18歳以下の子どもがいる世帯や60歳以上の高齢者のほか、障害者や被災者などの専用物件と入居を拒まない物件を地方自治体に登録してもらう。自治体は住宅の情報を提供して入居を検討してもらう。家賃補助は専用住宅に入る子育て世帯や高齢者のうち、原則として月収38万7千円以下の人を対象とする。全世帯の7割が含まれ、おおむね月収15万8千円以下(高齢者は21万4千円以下)とされる公営住宅の入居対象者より大幅に広げる。賃貸契約の際に必要な家賃の債務保証料も最大で6万円補助する。保証料の相場は家賃の半額程度とされ、所得の低い人には大きな負担になっているためだ。耐震改修やバリアフリー化の工事も促す。専用住宅への補助は1戸あたり最大100万円。それ以外でも住宅金融支援機構の融資を受けられるようにする。一軒家の間取りを変えてシェアハウスにする工事も認める。1人あたりの面積基準なども定めて、所得が低い人に劣悪な住宅に住まわせて家賃を取るような悪質なやり方を防ぐ。」(『日本経済新聞』2016.12.25)
●「国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)は、地震などの災害発生時に設置される避難所の住環境に関する技術開発を行う。避難所の住環境をめぐっては、『トイレ』『広さ』『温熱環境』『プライバシー』『音』が特に問題視されてきた。これらを解決する技術的な手段を開発。被災者の健康と安全に貢献する。避難所の電力確保策として直流給電システムのパッケージ化技術、プライバシーと音環境を考慮したパーティションの開発も行う。避難所の使用可否判断技術も検討。建築設備の耐震改修手法も開発する。17年度予算案で、こうした課題を解決するための経費に1200万円が計上された。首都直下地震などの大規模地震が発生した場合、避難者数は数百万人規模に上ると予想されており、避難所の住環境の整備促進を図る技術の重要性が一段と高まるとみられている。」(『建設工業新聞』2016.12.27)

その他