情勢の特徴 - 2017年2月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省はキューバで初の『官民インフラ会議』を23日に開く。日本から同省幹部やゼネコンなど約30の企業・団体が参加。15年の米国との国交回復で市場開放と経済成長が期待される現地のインフラ整備需要の取り込みを目指し、耐久性などに優れた日本の『質の高い』インフラ輸出を官民で売り込む。」(『建設工業新聞』2017.02.20)
●「47都道府県の17年度予算案が22日、出そろった。一般会計の総額は前年度比2.6%減の52兆1821億5200万円で、公共事業などに充てる投資的経費(一部自治体は普通建設事業費、建設事業費)の合計は4.8%減の7兆4514億5000万円となった。…投資的経費や普通建設事業費が前年度を上回ったのは1道11県。昨年の熊本地震からの復旧・復興に取り組む熊本県の投資的経費は38.4%増となった。…投資的経費の減少率が2桁に上った自治体は13県あった。落ち込みが大きかった干葉県(21.0%減)と秋田県(20.5%減)は、それぞれ3月と4月に知事選を控えていることから、予算案は骨格部分だけの編成となっている。千葉県は継続中の工事や年度当初の着手が必要な事業を優先的に予算案に組み入れた。11年3月の東日本大震災から6年が経過する岩手、宮城、福島各県の投資的経費も復旧・復興事業の進ちょくなどを受け、それぞれ2桁の減少率となった。」(『建設工業新聞』2017.02.23)
●「日本貿易保険(NEXI)は4月、途上国で鉄道や港湾整備などのインフラ整備を手掛ける企業が損失を被った場合、損失全額を補償する輸出保険をつくる。企業が輸出先の国で戦争や送金制限などで代金を回収できなかった場合、NEXIが代わって支払う。政府はインフラ輸出を成長戦略の柱に掲げており、貿易保険でも後押しする。今の輸出保険の補償割合は最大97.5%だが、鉄道や港湾整備などは事業規模が大きいものも多く、有事の際には大きな損失が発生してしまう可能性がある。補填割合の引き上げで、企業がリスクの高い途上国や新興国にも進出しやすくする。」(『日本経済新聞』2017.02.24)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、年度末の3月が納期となってしまうケースが多い土木設計など業務の『平準化』に力を入れる。2017年度予算案に、当初予算としては初となる『ゼロ国債』を設定するなど、省を挙げて施工時期の平準化に取り組む中、工事発注の前提となる設計業務の履行期限にも着目。業務を含めた建設生産システム全体で、単年度主義という公共工事の壁を打破する『平準化』の推進に乗り出す。取り組みのポイントとなりそうなのが、適正な履行期間の設定と、それを支える繰越制度の活用だ。年度末の3月に集中してしまうケースが多い納期の分散を図っていく一方で、その納期の集中が、結果として受注者の作業や照査時間の不足といった品質への影響を招く要因にもなりかねないことから、不測の事態が発生した場合などに繰越制度の積極的な活用を図る。」(『建設通信新聞』2017.02.20)
●「国家戦略特別区域諮問会議(議長・安倍晋三首相)は21日に開いた会合で、追加の規制改革として『コンセッション事業者に対する施設利用許可権限の付与』を明記した。実現すれば、地方自治体でPFI事業の大きな柱である『コンセッション(運営権付与)事業』適用の最大阻害要因として指摘されてきた『コンセッションと指定管理者制度の二重適用問題』が解消されることになる。二重適用問題解消によって、政府が進めるPPP/PFI推進アクションプランで盛り込んだ文教施設のコンセッション事業具体化に弾みがつきそうだ。」(『建設通信新聞』2017.02.22)
●「国土交通省は、社会保険加入の原資となる法定福利費を内訳明示した見積書(標準見積書)の活用状況の調査結果をまとめた。すべての契約で下請企業に提出を指導している元請企業が35.5%(15年度29.3%、14年度15.4%)に上昇した。一方、下請従業員が未加入の場合に『未加入のまま現場入場』は16.5%(28.7%、35.7%)と減少。同省は『未加入者の現場入場を認めない下請指導ガイドラインが浸透している』(建設市場整備課)と見ている。…標準見積書を、すべてまたは一部の下請契約で提出するよう指導している元請企業は44.7%(15年度40.6%)。内訳明示はしていないが法定福利費を含む見積書を求めた企業の割合を加えると全体の79.9%(75.0%)が法定福利費を見積書に含めるよう指導していた。一方、下請企業から標準見積書の提出を受けた割合は、『かなりある(8割以上)』が21.9%(14.8%)、『おおむねある(5~8割)』が24.8%(22.5%)で、合わせて半数を占めた。提出を受けた元請企業の反応(複数回答)は、『全額を支払う契約とした』と答えたのが54.0%(45.9%)、『見積もり総額は減額したが法定福利費は減額しない契約』を行った企業が37.1%(36.7%)で、合計すると91.1%(82.6%)に上った。」(『建設工業新聞』2017.02.24)
●「国土交通省は下請企業が技能労働者の社会保険料(法定福利費)を確保できるよう、法定福利費を内訳明示した見積書(標準見積書)の作成手順の『簡易版』をまとめた。社会保険加入の原資となる法定福利費の算出方法を詳しく分かりやすく解説。…法定福利費は、『労務費総額』に『法定保険料率』を乗じて算出する。労務費総額は工事内容などに応じて適切な方法で算出。簡易版では、▽人工数と平均的な賃金を用いて労務費を算出▽歩掛かりを用いて人工数を計算し単価に応じて労務費を算出▽平均的な労務費の比率を乗じて労務費を算出―の三つの方法を示している。」(『建設工業新聞』2017.02.28)

労働・福祉

●「市町村(政令市除く)の土木・建築部門の職員数が、調査結果が公表されている2005年4月1日時点以降、初めて増加に転じた。総務省の定員管理調査(16年4月1日時点)によると、1721市町村の土木・建築部門(一般行政部門)に所属する職員数が前年度比0.04%増の6万9299人となった。ただ、東日本大震災以降、下げ止まりつつあった都道府県と政令市では再び減少している。若年層の地元志向が強まっていると言われており、その流れを裏付けた格好だ。今後、さらに市町村が採用を増やせば、地域の建設業にとって担い手確保が厳しい道のりとなりそうだ。定員管理調査によると、都道府県の土木・建築部門の職員数は前年比0.49%減の4万8093人、政令市が0.56%減の2万0882人だった。都道府県は、東日本大震災後、職員数が下げ止まる兆しが見え始め、14年には一旦、増加した。ただ、15年には再び減少し、16年も300人近い減少となった。」(『建設通信新聞』2017.02.16)
●「社会的な関心を集める長時間労働の是正へ、規制の働きが強まっている。政府は14日の『働き方改革実現会議』に残業時間の上限を年720時間(月平均60時間)とする事務局案を提示した。時間外労働への上限規制の導入や、違反した企業への罰則が実現すれば、建設産業を含めた産業界に、これまでの“慣行”を変える、その意識改革を迫るものになりそうだ。事務局案は、労働基準法の第36条に基づく、いわゆる『36(さぶろく)協定』の見直しがポイントとなる。事実上、無制限で残業させることができる『36協定』でも超えることができない時間外労働の上限(年720時間)を設定。上限を超す時間外労働をさせた企業に罰則を課すことで、課題となっている長時間労働に実効性ある対策を施す。」(『建設通信新聞』2017.02.16)
●「厚生労働省は雇用保険の適用を受ける人の範囲を広げる。いまは1つの会社で週20時間以上働く人が対象だが、複数の会社に勤務していても失業手当をもらえるようにする。兼業や副業で仕事を掛け持ちする労働者の安全網を手厚くして、柔軟な働き方を後押しする。来年にも国会に関連法の改正案を提出する。…厚労省は複数の企業に勤めていても、合計の労働時間が週20時間を超えていれば、雇用保険に入れるように制度を改める考えだ。今夏にも雇用保険の対象を広げた場合の課題を議論する有識者の検討会を設ける。その後、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)で議論し、早ければ来年の国会に関連法の改正案を提出する考えだ。課題の一つは失業手当の支払い方法だ。…もう一つの課題は労働時間をどうやって把握するかだ。…厚労省は兼業や副業で働く人のうち、雇用保険の適用を受けない人の数を約30万人と推計している。多くはパートタイム労働者などの非正規労働者が占め、所得が少ない傾向がある。雇用保険の適用対象を広げれば、収入を増やすために安心して複数の仕事を掛け持ちでき、労働者の生活が安定するとみる。」(『日本経済新聞』2017.02.21)
●「国土交通省は、元請企業と1次下請業者を対象に2014年8月から実施してきた、直轄工事における社会保険等への未加入業者の排除(加入業者に限定する取り組み)を、2次以下を含めたすべての下請業者に拡大する。未加入対策の強化として、4月1日以降に入札契約手続きに行う工事から、その取り組みをスタートさせる。対象を広げることで、社会保険等への加入の徹底につなげる。」(『建設通信新聞』2017.02.27)
●「ゼネコンではいま、足元の需要増への対応のため多くの技術者が求められている。一方で、いまの市場環境だけを基準に採用枠を急拡大すれば、将来、再び年齢構成の不均衡が生じかねないというジレンマも抱える。そんな中、2017年4月の採用では、大手・準大手31社中68%に当たる21社が採用予定数を前年度より増やした。特に大手5社は、すべて採用人数が200人を超え、いずれも予定枠を確保できた。5社の合計数は、前年比2.8%増の1341人で、前年度実績より36人増えた。このうち技術系は、3.7%増の1103人で82.2%を占める。準大手26社では、採用枠を拡大した企業が多く、合計の採用人数が2.7%増の2100人となった。このうち技術系は、4.3%増の1813人で、86.3%を占めた。」(『建設通信新聞』2017.02.28)
●「ゼネコン、設備工事会社とも技術者不足の課題が表面化してきた。日刊建設通信新聞社が、大手・準大手ゼネコン31社に人材確保に関するアンケートを実施したところ、前年より4社多い27社が、現在技術者の不足感があると回答した。今後の見通しについても28社が不足するとみており、工事量の増大に伴う慢性的な技術者不足が改めて浮き彫りになった。建築、土木とも8割以上の企業が施工部門の技術者不足を感じており、建築設計部門も4割弱が不足していると答えた。また、設備工事会社はより深刻で、既存技術者の過不足について回答のあった26社すべてが、現在不足感を抱えている。」(『建設通信新聞』2017.02.28)

建設産業・経営

●「コマツは人工知能(AI)を活用して、建設現場の作業を効率化するサービスを始める。現場監督に対し、雨天などで施工計画に遅れが生じた場合に、過去のデータを基に、効率的な工期短縮方法などを指示する。建設業界では作業員の高齢化や人手不足が問題となっている。AIを活用して熟練のノウハウを容易に再現できるようにして、生産性を高める。」(『日本経済新聞』2017.02.16)
●「建設業情報管理センター(CIIC、糸川昌志理事長)は16日、5万社を超える企業のデータを集計した『建設業の経営分析(15年度)』を公表した。企業の経営の健全性を示す自己資本比率は前年度を2.63ポイント上回る25.89%となり、4年連続で数値が上昇。各社が将来の備えとして内部留保を進めた効果が出た形だ。過去最高だった07年度(25.95%)に次ぐ高い数値となった。」(『建設工業新聞』2017.02.17)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は15日、都市計画制度を約10年ぶりに抜本的に見直す作業に入った。最優先課題は人口の減少に対応する都市づくりの誘導。今後、5年程度かけてすべての課題を洗い出し、来年から段階的に都市計画法など関連法令の改正を進める。当面は全国で増え続け、良好な都市形成に支障を来す空き家(店舗)・空き地の対策を優先。発生の抑制やストックの有効活用につながる制度への改正を急ぐ。」(『建設工業新聞』2017.02.16)
●「深さ40メートルを超す大深度地下に、国内最大規模(外径約16メートル)のシールドマシンを用いて本線トンネルを構築する東京外かく環状道路(外環道)の都内区間で、掘進作業が始まった。先行する東名ジャンクション(JCT、仮称)側の立坑でマシンの組み立てが完了し、19日に現地で発進式が開かれた。首都圏3環状道路の中でも特に注目度の高い外環道都内区間。多くの曲折を経て本線工事がいよいよ本格化する。」(『建設工業新聞』2017.02.20)
●19日におこなわれた外環道本線トンネルを掘り進むシールドマシン(掘削機)の発進式。東京都世田谷区の会場周辺では沿線住民らが「博多の二の舞いはゴメンだ」などの横断幕を持ち、抗議の声をあげた。外環道(関越~東名)は、東京都練馬区から世田谷区間の大深産地下(40メートル以深)に、16.2キロにわたって外径約16メートルの巨大な本線トンネルを2本作る計画。昨年11月には、JR博多駅前の道路が直径30メートルも陥没する事故が発生しただけに、国土交通省などが各地で開いた住民説明会では参加者から不安の声が上がった。外環道工事の中でも「世界でも類を見ない規模の、技術的困難さ(国土交通省資料)」といわれているのが、現在、入札中の中央ジャンクション(JCT)地中拡幅工事。本線トンネルとジャンクション、インターチェンジを結ぶため地中を拡幅する工事。…この地中拡幅工事について、シールドトンネル工事に詳しい大手ゼネコンの関係者は、「とにかく大変なのが、水とのたたかいだ」と指摘する。「山岳での工事なら、水が出たら流れるに任せる手もある。しかし、市街地の真下の工事なので、それはできない。出水を許せば、地表部が地盤沈下してしまうからだ。この現場にも、博多の事故現場と同じく砂の地層がある。そうした場所では、さらに危険性が高まる」。世界最大級の難工事といわれる中央ジャンクション地中拡幅工事。国から委託を受けた中日本高速、東日本高速の高速道路会社が4件を発注している。その入札をめぐりゼネコン関係者からこんな情報が編集部に寄せられた。「実は4工事とも、本線トンネル受注の大手ゼネコン4社が幹事社の共同企業体(JⅤ)がそれぞれ受注することになっている」。今回の入札は、技術提案・交渉方式(設計交渉・施工タイプ)。4月下旬に技術提案で選ばれた優先交渉権者が発注者と契約し、価格交渉する予定。先のゼネコン関係者は「発注者の意向がはたらきにくい価格競争でなく、なぜ技術提案競争なのか。大手ゼネコンにとらせるため。最難関工事だからこそ技術提案は、発注者が責任を持って出すべき。しかも価格交渉ということは、大手ゼネコンの言い値ということ」。本体トンネル4工事の入札も大手ゼネコン4社が独占できるよう、1社につき1工事しかとれない仕阻みだった。今回の4地中拡幅工事でも、優先交渉権を得ると、別の工事は受注できない仕組み。本体トンネル工事と同じく大手ゼネコン4社がもれなく受注するカラクリだ。ゼネコン関係者は「巧妙なのは、中堅ゼネコンも入札に参加させ、1社入札にならないようにしたことだ」と証言する。「大手ゼネコンで工事を分け、技術は工事を進めながら考えようよという発想だ。これでは安全軽視といわれてもしかたない」。編集部の取材に国交省や両高速会社は回答しなかった。(『しんぶん赤旗(日曜版)』2017.02.26より抜粋。)
●「東日本大震災で深刻な液状化被害が出た千葉県や茨城県で、地盤改良工事を断念したり縮小したりする自治体が目立ち始めた。住民の自己負担の大きさや、工事に伴う地盤沈下の危険などが背景にある。国の復興交付金を使った補助事業の期限が迫るなか、各自治体は難しい対応を迫られている。…東京湾に面し、埋め立て地が8割以上を占める浦安市は地盤が弱く、震災では全国で最も多い8700戸が液状化の被害に遭った。液状化現象は地震などで地面から地下水や土砂が噴き出し、建物が傾いたり沈んだりする現象。市は昨年12月、2018年年春までの計画でようやく対策工事に着手したが、合意にこぎ着けたのは工事対象の16地区4103戸の1割にあたる3区471戸のみ。合意形成を難しくしたのは高額な自己負担だ。住宅と周辺の道路を一体で整備する場合、国の復興交付金が活用できるが、敷地面積に応じて住民負担も100万~400万円程度発生する。市は住民全員の合意を着工条件とし、13年以降約450回の説明会を行ったが高齢者を中心に理解が得られなかった。市の担当者は『復興交付金を使った液状化対策事業は来年度が期限。残る地区では工事を諦めざるを得ない』と話す。」(『日本経済新聞』2017.02.27)

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