情勢の特徴 - 2017年3月前半
●「東京都世田谷区の保坂展人区長は、6日の定例会見で、建設産業に対する施策を『今後、区が策定する「産業ビジョン」に位置付ける』との方針を示した。区では、2018年度からの新たな『世田谷区産業ビジョン』の策定作業を進めており、同ビジョンに建設産業が盛り込まれるのは初めて。また、区内建設企業の人材確保支援にも積極的に取り組む考えを示した。保坂区長は、災害発生時などで建設産業の果たす役割が大きいとの認識を示したうえで、『建設産業にかかわっている区民が多いにもかかわらず、あまり区の産業政策の中に位置付けられていないとの声もあった』と指摘。このような状況を踏まえ、『区としては、基本計画の産業政策の中で建設産業を初めて記載した』と説明。昨年、区議会で決議した。同区では現在、産業ビジョンの策定作業を進めており、保坂区長は『この中に建設産業を位置付けていくべきであると理解している』と述べた。これまで区の産業政策は農業、商業、工業が中心で、担当課もある。区長は『建設産業については具体的に対応できる所がなく、これは改善をしていかなくてはならない』との考えを示した。」(『建設通信新聞』2017.03.07)
●「西倉鉄也東京都建設局長は、6日に開かれた第95回都技術会議で、建設業界の担い手確保問題に触れ、『建設業界の健全な発展は不可欠であり、業界の働き方改革に都も協力していく姿勢を示すべき』との見解を示した。今後10年間に建設労働者数が100万人規模で減少するといわれている中、『この切実な問題を業界だけに任せるのではなく、都も連携して業界全体のイメージアップにつながる取り組みを展開していくべき』と強調した。都技術会議は、都政の重要かつ緊急な課題に対し、技術的な側面から意見交換するとともに、技術水準の維持向上、技術職員の確保・育成・活用のあり方などを調査・検討することを目的としており、現在は『より良い社会資本の整備と有効活用』『技術力切維持向上に向けた技術職員の確保と育成』をテーマにそれぞれ部会を設置し、検討を進めている。西倉局長の発言は、より良い社会資本の整備と有効活用部会(部会長・安部文洋建設局企画担当部長)の中間報告に対するもの。建設局が取り組んでいる『週休2日制モデル工事』『女性活躍モデル工事』『魅力発信モデル工事』に触れた上で、『これらの取り組みを全庁的に広げていったり、業界とタイアップしてイメージアップに取り組むといった新しい視点の試みが必要』と提案した。」(『建設通信新聞』2017.03.08)
●「東日本大震災の復興を支えてきた『復興CM(コンストラクション・マネジメント)方式』の検証を行う国土交通省の有識者会議が報告書(案)をまとめた。復興CM方式という仕組みが、被災地の復興や、被災した自治体の課題の解決に果たしてきた役割を“評価”として落とし込んだ形。今後の適用に対する課題は残されているが、その仕組みや効果を体系的に整理したことが、次なる大災害への備えとなる。」(『建設通信新聞』2017.03.10)
●「2016年度に公表されたPFI事業実施方針の件数が、8日時点で53件となった。集計した日本PFI・PPP協会(植田和男会長兼理事長)は『PFI法施行以来最も多い件数』としている。これまで04年度と07年度の52件が最多だった。16年度の分野別内訳をみると、賃貸住宅・宿舎が11件で最多、次いで学校給食センターが6件、義務教育施設が5件、教育・文化関連施設は4件となっている。協会の調べによると、実施方針の公表件数は累計660件、5兆7084億円の規模となっている。」(『建設通信新聞』2017.03.10)
●「環境省は、直轄で実施する除染特別地域内の除染等工事や中間貯蔵施設整備工事の積算で使う設計労務単価などを13日付で改定する。同日付で本省が福島環境再生事務所に通知する。4月1日以降に調達を行う入札などから適用する。今回の改定は、特殊勤務手当を見直したことがポイント。現在の特殊勤務手当は、作業員に対し作業場所の避難指示区域の区分に応じて、同省が独自に定めた額を労務単価に加えている。これを『直轄面的除染が今月末に終了する見込みを契機に、人事院規則で定めている額にあわせる』(環境省)ことにした。外業作業の調査設計業務従事者は、既に人事院規則の額を適用していることから、工事と外業の調査設計の区別なく、特殊勤務手当を支払うことになる。特殊勤務手当は除染開始時に人事院規則で定めた手当と同等の一律1万円と設定した経緯がある。その後、避難指示解除準備区域と居住制限区域の状況変化を踏まえ、人事院が規則で定める手当を2014年度適用分から見直したため、外業の調査設計従事者の手当は人事院規則の額にあわせたが、除染等工事の作業員の手当は、同省が独自に定めた額を手当としていた。今回の見直しによって、労務単価に加算する特殊勤務手当の額は、除染などの作業場所が帰還困難区域では1日当たり1万円が6600円、居住制限区域が1日当たり6600円が3300円とする。避難指示解除準備区域は1日当たり6600円がゼロ円となり、手当がなくなる。1日の作業時間が4時間未満の場合は、帰還困難区域が3960円、居住制限区域が1980円になる。…一方、労務単価はこれまでと同様、10職種の単価を設定した。単価は公共工事と同じ、▽所定労働時間8時間当たりの基本給相当額▽職種ごとの通常作業条件・作業内容の労働に対する手当の基準内手当▽所定労働日数1日当たりの臨時給与と実物給与――で構成。これに、特殊勤務手当を加算する。」(『建設通信新聞』2017.03.13)
●「宮城県は、道路の維持管理や冬季の除雪などを地域企業に一括発注する『地域維持型契約方式』を18年度以降に導入することを検討している。道路の維持・補修や除雪・融雪、河川管理、砂防・急傾斜対策などを地域企業らのJVに包括委託する枠組みを想定。17年度に試行案件を選定し、18年度以降に初弾工事を発注する考え。仙台市でも道路の補修や除雪などを地域企業が共同受注する動きが具体化しつつあり、担い手不足の中、道路の維持管理や除雪を円滑にこなす枠組みが来年度以降、宮城県内で一気に広がりそうだ。」(『建設工業新聞』2017.03.13)
●「日本建設業連合会(中村満義会長)は3日に開かれた石井啓一国土交通相との意見交換会で、政府が導入を検討している時間外労働の上限規制に対して、建設業の実情に配慮した段階的な導入を要請した。意見交換会後、取材に応じた中村会長は、『建設業は週休2日がままならないということで、これから覚悟を決めて対策をやっていかなければならない』と長時間労働の是正に本腰を入れる考えを示した。また、次期会長に内定している山内隆司副会長・建築本部長は『労働時間の短縮に前向きに対応していくという決意を申し上げた。簡単ではないが、このチャンスを逃すと改革の機会はしばらくない。官民一体となって取り組みを進めていきたいと考えている』と決意を新たにした。」(『建設通信新聞』2017.03.07)
●「国土交通省は、今秋の運用開始を目指す建設キャリアアップシステムを活用して、専門工事業者の施工力を客観的に評価する仕組みを検討する。同システムでは、技能者本人に交付するカードを技能のレベルに応じて色分けすることを想定。企業の施工力を、どのレベルの技能者をどれだけ抱えているかによって評価することになる。高い評価を得られた企業の受注機会が拡大することになりそうだ。」(『建設工業新聞』2017.03.08)
●「国土交通省は、2次以下を含む全下請業者を社会保険等への加入業者に限定した、未加入業者の『排除』に乗り出す。未加入対策の強化として、4月1日以降に入札契約手続きを行う工事から、その取り組みをスタートさせる。直轄工事の率先行動が全国の地方自治体に波及していけば、未加入対策が次のフェーズに移る。社会保険等の加入徹底へ大きな1歩を踏み出すことになりそうだ。建設産業の総力を挙げて取り組んできた未加入対策の“総仕上げ”に向けた手段として、2次以下を含む全下請業者を加入業者に限定する。発注者として、加入の原資となる法定福利費を適切に見積もっている業者間での公平な競争環境を築く。この取り組みは、昨年7月に改定した社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインに示す『未加入作業員の現場入場の制限』と合わせて、結果として下請企業を含む現場で働くすべての職人が社会保険に加入するためのアシストの意味合いを持つ。措置は『4月』と『10月』の2段階で実施する。4月から2次以下を含む全下請業者を加入業者に限定する対策の強化に踏み切る一方で、制裁金や指名停止、工事成績評定での減点といった元請企業に科すペナルティーについては、10月から適用を開始する。」(『建設通信新聞』2017.03.09)
●「新潟県建設専門工事業団体連合会(新潟建専連、近喜男会長)が昨年10月に実施した16年度会員企業実態調査で、若年層の入職は増えていないことが分かった。年齢構成を見ると10代、20代とも構成比は減少。人数も10代は前回調査(15年10月)の73人から71人に、20代は同512人から455人に、30代も835人から762人に減少した。」(『建設工業新聞』2017.03.09)
●「環境省は、4月1日から適用する除染特別地域内の直轄除染等工事などで使う設計労務単価が各職種で上昇することを踏まえ、技能労働者の賃金を引き上げるよう、日本建設業連合会と全国建設業協会の2団体に対し、13日に文書で要請する。両団体には、技能労働者の賃金引き上げなどの処遇改善を通じ、若年層の除染事業などへの入職促進に向けて、会員企業に対し適切な対応を講じるよう周知徹底を求める。要請文書では、労務単価の上昇を技能労働者の処遇改善につなげるためには、建設業界全体が一定の共通認識を持った上で取り組みを進める必要があると指摘する。その上で、元請企業には適切な価格での下請契約締結の徹底とともに、下請企業に対し、技能労働者への適正水準での賃金支払いを要請するなどの特段の配慮を求める。また、専門工事業者にも、雇用する技能労働者の賃金水準の引き上げを要請する。」(『建設通信新聞』2017.03.13)
●「政府が進める働き方改革の柱である残業時間の上限規制を巡り、繁忙月に例外として認める残業を『100時間未満』とすることが固まった。安倍晋三首相が13日、首相官邸で経団連の榊原定征会長、連合の神津里季生会長と会談して要請。労使ともに受け入れる方針で、政府は月内に非正規の待遇改善策なども盛り込んだ実行計画を策定する。」(『日本経済新聞』2017.03.14)
●「厚生労働省は、2017年度の建設業における安全衛生対策をまとめ、建設業関係l10団体に対し13日付で対策の推進に協力するよう文書で要請した。安全衛生対策は、厚労省が17年度に重点を置いて取り組む内容を示しており、16年度の対策から、新たに『化学物質による健康障害防止対策』と『「建設工事従事者の安全および健康の確保の推進に関する法律」(建設職人基本法)の施行』の2項目を加え、19項目となった。また、厚労省は国土交通、農林水産の両省に対し、各省直轄工事の受注者などに対策を周知するとともに、対策推進の協力も求めた。都道府県労働局には、各局管内の都道府県や市町村などの発注機関、建設業関係団体などに対し、安全衛生対策推進への協力要請を行い、建設工事関係者の自主的な安全衛生活動の促進を求めた。」(『建設通信新聞』2017.03.14)
●「厚生労働省は14日、2017年度に取り組む建設業での労働災害防止対策事業のうち 『20年東京五輪・パラリンピック競技大会の建設需要に対応した労働災害防止対策事業』と『東日本大震災および熊本地震の復旧・復興工事安全衛生確保支援事業』の2事業の事業実施者をともに建設業労働災害防止協会に決めた。事業期間は五輪事業が18年3月25日、復旧・復興事業が同年3月30日まで。4月上旬に委託契約を結ぶ。20年東京五輪・パラリンピックの建設需要に対応した労働災害防止対策では、5つの事業に取り組み、専門的で技術的な立場から労災防止対策の徹底を指導・支援する。具体的には、中小事業者が雇用する新規入職者などを対象に安全衛生専門家による安全衛生教育を実施。首都圏を会場に1-2時間の研修を行う。複数回、複数会場で計2200人以上の受講を見込む。」(『建設通信新聞』2017.03.15)
●「竹中工務店は、2016年12月期決算で連単ともに最高益を確保した。大型手持ち工事の進捗が伸びず、売上高は若干減らしたものの、工事採算の大幅な改善が利益幅を押し上げた。単体の完成工事総利益(工事粗利)率は前期比4.2ポイント増の12.8%となり、過去最高を記録。竹中土木も3期連続で10%超えを達成し、グループを挙げて採算性向上が鮮明に出た。連結の売上高は前期比5.3%減の1兆2165億円にとどまったが、営業利益と経常利益はともに900億円を超えた。設計・施工案件は単体完成工事高ベースで67%を超え、川上段階から建築プロジェクトを作り込めたことも利益の押し上げ要因となった。2月28日に会見した関谷哲也執行役員経営企画室長は『物価上昇も一段落し、損益悪化のリスクが減った』と説明した。」(『建設通信新聞』2017.03.01)
●「国土交通省は、技術者個人の資格や経験といった情報を確認できる『登録制度』を導入する。登録制度の構築によって、実務経験で主任技術者となるケースを含めて、すべての技術者の把握につなげる。登録制度に、一定期間での更新制を組み込むことで、将来的に各技術者に関する正確な情報の把握が可能となる。結果として、技術レベルの維持や向上といった効果も期待できるとみている。」(『建設通信新聞』2017.03.02)
●「帝国データバンクは1日、東日本大震災関連倒産(6年間累計、負債額1000万円以上で個人事業主含む)動向調査結果を公表した。6年間で震災関連倒産は1951件、『ホテル・旅館経営』が突出して多くサービス業が430件で最多。ただ建設業も287件と8業種中4番目に多い。震災関連倒産の累計負債総額は1兆6499億1700万円。件数は1年目に650件、2年目489件、3年目354件と発災年をピークに段階的に減少した。倒産企業所在地の都道府県別は、『東京都』が最多の456件、地域別では『東北』391件、『関東』920件と2地域で全体の約7割を占めた。建設業は、1年目の倒産件数が120件となったが、復興需要で土木・建築ともに工事が増加したことで6年目は6件と1年目の20分の1にまで減少した。」(『建設通信新聞』2017.03.02)
●「日本建設業連合会(中村満義会長)は、建築本部に参加する会員56社を対象とした設計施工率(建築工事受注額に占める設計・施工一貫受注額の割合)などの調査結果をまとめた。単独の設計施工率は前年度比1.7ポイント上昇の41.2%で過去最高を更新した。単独と共同を合わせた設計施工率は47.2%で1.2ポイント低下したが、前年度に続く過去2番目の高水準を維持した。日建連は、今回の結果に対し、『設計施工率は引き続き高水準にある。品質管理などに貢献する設計施工一貫方式による利点が発注者に伝わっている』 (建築設計委員会設計企画部会調査専門部会)との見解を示している。」(『建設通信新聞』2017.03.03)
●「国土交通省は、ICT(情報通信技術)を活用した浚渫工の導入のための新基準を取りまとめた。推進の実施方針と、要領やマニュアルなどの新基準を定め、2017年度から試行工事をスタートする。浚渫工のICT活用を皮切りに他工種にその取り組みを広げていき、最終的に港湾工事の全プロセスでi-Construction(アイ・コンストラクション)の標準化を目指す。」(『建設通信新聞』2017.03.07)
●「大成建設は、要介護者を家族に抱える社員の支援体制を強化する。介護休業などの取得希望者が上司に相談していたが、人事担当者が同席する体制にすることで、必要な初動対応や会社の支援制度などを適切に説明できるようにする。高齢化によって要介護者を抱える社員の増加が見込まれる中、適切な支援体制を構築し、介護を理由とする離職を防ぐ。塩入徹弥管理本部人事部部長兼人材いきいき推進室長は『少しでも介護と仕事を両立しやすい雰囲気をつくりたい』としている。」(『建設通信新聞』2017.03.08)
●「積水ハウスは9日、2018年1月期の連結純利益が前期比5%増の1280億円と、2期連続の最高益になると発表した。国内は賃貸アパートが堅調だが、今後は人口減少の影響が避けられない。成長の活路を見いだそうとしているのは海外だ。現地のパートナーと組み、エネルギー消費の少ない日本流の住宅を定着させようとしている。17年1月期の純利益は前の期比45%増の1218億円。9日の記者会見で阿部俊則社長は『中高級路線を目指したことが良い形になった』と述べた。国内で賃貸アパートが好調で建設請負の受注残高は1月末時点で1年前より6%多い。管理を受託する物件はほぼ満室で目先の環境は良好だ。ただ市場ではアパートの供給過剰と、好立地を巡る競争激化を気にする声が増えてきた。人口が減り続ける国内市場にとどまらず、積ハウスが成長の柱に据えるのが海外事業だ。前期は海外事業の営業損益が251億円の黒字と前の期の56億円の赤字から改善した。現地では後発だけに不利な条件に苦しんだが、連結営業利益の1割強の規模に育ちつつある。」(『日本経済新聞』2017.03.10)
●「環境省は3日、11日で東日本大震災から丸6年になることを踏まえ、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う除染、中間貯蔵施設、放射性物質汚染廃棄物処理のこれまでの取り組みや今後の見通しをまとめた。除染は3月末までに同省直轄の面的除染が完了する見込みで、市町村除染は住宅や公共施設など生活の場での除染作業がおおむね完了する。中間貯蔵施設は2月末までに16万立方メートル程度の除去土壌を施設予定地に輸送し、336ヘクタールの用地を取得した。直轄の対策地域内廃棄物は仮置き場への搬入を2015年度末までに終え、家屋解体などを進めている。」(『建設通信新聞』2017.03.06)