情勢の特徴 - 2017年3月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省は、『インフラシステム海外展開行動計画』を改定した。新たに強化する取り組みとして、マスタープラン段階からの積極的な関与などを盛り込んだほか、今後3-4年間注視する海外の主要プロジェクトとして新たに22事業を追加した。取り組みを強化するポイントを明確化し、それぞれの施策を具体化させていく。」(『建設通信新聞』2017.03.27)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通、総務両省は、地方自治体に発注工事のダンピング受注対策の強化を文書で要請した。低入札価格調査基準に関する中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)モデルと国土交通省の基準が見直されたのを受け、低入札価格調査制度や最低制限価格制度の適切な活用を徹底することで、ダンピング受注を排除するよう改めて求めた。」(『建設工業新聞』2017.03.16)
●「国土交通省は、直轄工事を対象に工事目的物の品質を確保する監督・検査の方法を見直す。不正の抑止を目的に施工データの自動計測やクラウド管理といったICT(情報通信技術)の導入を見据える一方、監督業務の効率化として、品質管理マネジメントの認証資格(ISO9001)の活用に踏み出す。2017年度に行う試行によって、その効果を検証して、将来的な本格運用につなげる。」(『建設通信新聞』2017.03.17)
●「国土交通省は下請取引条件の改善に向け、『建設業法令順守ガイドライン』を年度内に改定する。下請代金の支払い手段に関する項目を追加。できる限り現金払いとし、手形サイトは『将来的に60日以内とするよう努める』などと明記する。建設業者と金属加工業者との取引適正化に向け、指針に取引事例を追加するとともに、経済産業省と連名で取引改善を要請する文書を建設業団体に送る。」(『建設工業新聞』2017.03.17)
●「国土交通省は、建設業における社会保険等への未加入対策として、ディベロッパーなど、いわゆる民間発注者に、必要な経費を見込んだ適正な価格での発注を促す。加入の原資となる法定福利費の確保へ、16日付で不動産協会など民間発注者団体に要請文書を発出した。元下間だけでなく、民間発注者に対策への理解と協力を求めることで、未加入対策の徹底につなげる。」(『建設通信新聞』2017.03.21)
●「国土交通省が一般管理費等率を見直して16年12月に改定した公共建築工事積算基準を、4月中に適用または適用予定の都道府県・政令市が約8割に上ることが同省の調査で分かっだ。時期は未定ながら適用を検討中の都道府県・政令市も約1割あった。市区町村の中には既に適用を始めた団体もあり、適正な予定価格の設定に向けた積算上の対応が地方自治体にも着実に浸透しているようだ。」(『建設工業新聞』2017.03.21)
●「浜松市上下水道部は21日、下水道施設の維持・運営にコンセッション(運営権付与)方式を導入する全国初の事業『公共下水道終末処理場(西遠処理区)運営事業』の優先交渉権者をヴェオリア・ジャパン(代表企業)、ヴェオリア・ジェネッツ、JFEエンジニアリング、オリックス、東急建設、須山建設で構成するグループに決めた。運営権対価額は25億円(税別)。月内に協定を結ぶ。」(『建設通信新聞』2017.03.22)
●「地方自治体の多くが技術職員の減少で発注体制の維持が困難になると危惧していることが、国土交通省の調査で分かった。職員だけでは発注事務か困難とする都道府県は現在14団体だが、10年後は22団体に上昇。小規模市町村で発注量が増加する災害時対応が困難との回答もあった。体制補完や共同発注など実情に応じたきめ細かな対応策の検討が求められている。国交省は地域インフラの維持管理状況や公共工事の発注体制など自治体の実態を把握するアンケートを2月に実施した。対象は都道府県と地方部の10道県管内の49市町村。市町村は、大規模(人口約5万人以上)、中規模(約5000人~約4万人)、小規模(約500人~約2万人)に区分して分析した。…今後の職員減に伴い民間活用の必要性は高まるとの意見もあるが、『インフラの維持管理の責任の重大さを考えると民間委託は最小限にとどめるべき』『技術職員に専門性が身につかない』などと指摘する声も少なくない。」(『建設工業新聞』2017.03.27)
●「国土交通省は24日、19年4月に民営化する福岡空港(福岡市)の事業実施方針を決めた。公共施設等運営権(コンセッション)方式を採用し、滑走路などの基幹施設と旅客ビルを一体的に運営してもらう。事業期間は原則30年間(最長35年間)。運営権者の選定手続きで設定する国に支払う運営権対価の提案条件を見ると、運営権の取得には総額1500億円以上の資金が必要になる見通しだ。」(『建設工業新聞』2017.03.27)

労働・福祉

●「建設産業団体や行政、職業訓練校、教育機関などで組織する『建設産業敵い手確保・育成コンソーシアム』(事務局・建設業振興基金)は、15日のプログラム・教材等ワーキンググループ(座長・蟹澤宏剛芝浦工大教授)で内装仕上げ、電気、機械土工、管の4職種における職業能力基準を固めた。対象の職業能力基準は、技能者の到達度やレベルを推し量る1つの目安となる。技能者の能力を『レベル1=初級技能者』(経験年数3年まで)、『レベル2=中堅技能者』(同4-10年)、『レベル3=職長・熟練技能者』(同5-15年)、『レベル4=登録基幹技能者』(同10-15年以上)の4つに分類。各職種ごとに、そのレベル区分に求められる職務の内容や知識、資格などを示す。」(『建設通信新聞』2017.03.16)
●「『建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律』(建設職人基本法)が16日施行される。公共・民間を問わずすべての工事を対象に、一人親方を含む職人の安全や健康に関する施策を総合的・計画的に推進するのが目的。政府は近く、関係行政機関が参画する建設工事従事者安全健康確保推進会議を設置。法律に基づき閣議決定する基本計画づくりを本格始動させる。同法は昨年の臨時国会に議員立法として提出され、衆参両院とも全会一致で可決。12月9日に成立した。目的は、建設工事従事者の安全と健康に関する施策の推進による建設業の健全な発展。労働者の安全・衛生に関する基準を定めた労働安全衛生法に対し、労働者に当たらない一人親方を含むすべての建設工事従事者を対象に安全衛生経費を確保するなど目的にかなった施策を推進する。基本理念では、適正な請負代金による契約や工期の設定、安全・健康に必要な措置を設計・施工の各段階で適切に講じるとした。厚生労働、国土交通両省で策定作業を進める基本計画には、こうした目的や理念に沿って国などの責務を盛り込む。」(『建設工業新聞』2017.03.16)
●「建設産業にとって最重要課題となっている担い手の確保・育成へ、21日の自民党・公共工事品質確保に関する議員連盟(品確議連、会長・根本匠衆院議員)の総会に出席した複数の議員から、それを支える適切な賃金水準の確保の重要性を説く声が相次いだ。労務単価の引き上げによる効果が『現場を支える技能労働者まできちんと行き渡らなければ意味がない』『法定福朴費を別枠にするくらいの心構えで取り組んでほしい』といった指摘に、国土交通省の谷脇暁土地・建設産業局長は『新年度から公共工事だけでなく民間工事を含めた賃金(の支払い状況)や法定福利費(の流れ)を明らかにする実態調査に入る』と述べた。『処遇の改善や休日の確保、あるいは法定福利費が行き渡る仕組みづくりに取り組んではいるが、(実態を把握することで)さらなる具体的な対応を検討していきたい』と強調。『法定福利費あるいは賃金が全国に浸透していくように取り組んでいきたい』と力を込めた。」(『建設通信新聞』2017.03.23)
●「富山県建設業協会の会員企業に入社した新卒者の離職率が全国の建設業平均に比べて低いことが、同協会のアンケート結果で分かった。14年度採用者の15年度離職率は13.4%。全国建設業平均の30.3%を16.9ポイントも下回っているほか、全国全産業平均の26.2%と比較しても12.8ポイント低い。各社が注力する若年人材の離職防止策が、一定の成果を上げていることを示す結果となっている。」(『建設工業新聞』2017.03.23)
●「国土交通省は、建設業における『働き方改革』の推進へ、建設現場の週休2日制の実現に取り組む。石井啓一国土交通相は24日の閣議後会見で、週休2日を前提にした適切な工期設定を支える『工期設定支援システム』など、推進ツールを使って『直轄工事から率先して取り組む』と表明した。直轄工事での率先行動を推進力にして、地方自治体の発注工事や民間工事を含めた建設現場の週休2日の拡大を狙う。」(『建設通信新聞』2017.03.27)
●建設会社での過重労働と上司のパワハラで息子を亡くした長野・上伊那民主商工会(民商)の小池幹雄さん(65)=建築=と宣子さん(65)夫妻。自死しなければならなかった雄志さん(当時31歳)の無念を晴らしたいと立ち上がり、労災を申請した。伊那労働基準監督署は1月20日、訴えを認めて労災と認定。民商や働く仲間、友人、地域の人たちが「支援する会」を結成し、全力で応援したことが労基署を動かした。…地元の建設会社に勤め、現場監督をしていた雄志さん。仕事は手を抜かず、真面目に取り組み、性格は楽天的でマイペース。面白いこと言って周囲をよく笑わせていた。そんな雄志さんの様子が変わったのは2014年12月、会社が国土交通省のダム工事を受注してからだ。初めての受注で、工事方法も関係書類もマニュアルも何もない中で雄志さんが担当になり、帰宅時間が毎日22時に。休日出勤は当たり前、亡くなる1カ月ほど前から口数が減り、朝起きられないこともあり、「会社を辞めたい」と口にするようになった。…職場にはタイムカードはなく、労働実態は闇の中。それを知る手がかりになったのは、デジカメに残されていた650枚もの写真データだった。雄志さんが3カ月にわたって日付入りで現場を撮影したものだ。幹雄さんはその1枚1枚を分析したほか、メモ帳や財布の申にあったレシートをかき集め、労働実態をできるだけ丹念に再現。画像分析とメモに基づいて幹雄さんが「実行程表」を作成したところ、4カ月の工期を1カ月半で仕上げなければならなかった実態が浮かび上がった。「必死で現場を間に合わせようとしていたのに、上司が攻め立てていた」と幹雄さんは心の底から怒りが込み上げてきた。(『全国商工新聞』2017.03.27より抜粋。)
●「政府は28日、働き方改革の実現に向けた基本的な考え方や、その道筋を示す『働き方改革実行計画』をまとめた。長時間労働の是正へ、最大の焦点となっていた時間外労働(残業時間)に、いわゆる『36(さぶろく)協定』でも超えることができない上限(年720時間)を設定。事業の特殊性から、これまで上限規制の適用除外とされてきた建設業も『5年』の猶予期間を経て、上限規制の対象に組み込む。…ポイントとなるのは、労働基準法に基づく、限度基準告示の取り扱いの見直しだ。これまで事実上、無制限で残業させることが可能となっていた『36協定』でも超えることができない時間外労働の上限(年720時間)を設定。休日労働を含んで100時間未満など、一時的に事務量が増加する場合であっても最低限、上回ることができない単月の上限も設ける。この上限を超す時間外労働をさせた企業に罰則を科すことで、課題となっている長時間労働の是正に実効性ある対策を施す。」(『建設通信新聞』2017.03.29)
●「国土交通省は30日、16年10月の公共事業労務費調査に基づく建設業者の社会保険加入状況調査結果を発表した。3保険(雇用保険、健康保険、厚生年金)にすべて加入している割合は、企業が96%(前年調査95%)、労働者が76%(72%)となった。企業、労働者とも、下請次数が多くなるほど加入率が低下する傾向にあるが、今回は3次下請企業の加入率が90.1%と初めて90%台に達した。…地域別で最も低いとされる関東の3保険加入率は、企業が94.8%と前回に続き90%台。労働者は63.1%と前回の55.3%から初めて60%台に乗せた。」(『建設工業新聞』2017.03.31)

建設産業・経営

●「日本建設業連合会(日建連)は27日、17年度の事業計画を決めた。新規の『働き方改革』を含め10の重点事項を設定。長時間労働の是正や工事現場の週休2日の定着を目指し、工期延長とコストアップへの理解を求める。技能者の資格や経験を登録・管理する『建設キャリアアップシステム』の普及、適正工期算定ブログラムの改良にも取り組む。市民現場見学会は500万人の目標を設定して積極的に行う。」(『建設工業新聞』2017.03.28)
●「東京五輪の開催まで、あと3年に迫る2017年度があすから始まる。首都圏を中心に大型プロジェクトの建設工事が本格化するなど、国内マーケットの需要増に建設産業界の企業各社はどう対応するか。追い風の吹く今を、“ポスト五輪”を見据えた成長への準備期間に定める企業も少なくない。4月1日からのトップ交代は例年にも増して多く、新たな経営計画に移行する企業も目立つ。17年度から中期経営計画をスタートさせる大手・準大手ゼネコンは10社ほどに達し、全体の約3割を占める。足元は国内マーケットの好転に加え、悩ましかった資材や労務の価格が安定したことで、各社の工事採算は大幅に改善されており、新計画では利益重視を推し進め、盤石な体制でポスト五輪を迎えようとする流れが強まりそうだ。3月30日時点では、1年前倒しで5カ年計画を打ち出した大林組、社長交代に合わせた飛島建設、全6カ年計画の後半3カ年を示した長谷工コーポレーションが発表済み。今期の決算開示までには既に1年前倒しを表明している戸田建設を始め、五洋建設、東洋建設、日本国土開発、大豊建設、青木あすなろ建設などが発表する見通し。」(『建設通信新聞』2017.03.31)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「福島第1原子力発電所事故後に福島県から避難した住民らが国と東京電力に損害賠償を求めた集団訴訟の判決で、前橋地裁(原道子裁判長)は17日、『津波の到来を予見でき、事故を防ぐことができた』としてそれぞれの賠償責任を認めた。原発事故で国の賠償責任を認めた判決は初。東電に適切な安全対策を取らせなかった点を違法とした。原発事故の集団訴訟は18都道府県で約1万2千人が争っている。判決は前橋地裁が初めて。」(『日本経済新聞』2017.03.18)
●「国土交通省は、既存ダムの活用に向け『ダム再生ビジョン』の骨子案をまとめた。ダム再生の候補個所を全国的に調査し、実施に向けた諸元の検討などに着手する。5月に案を示し、今夏にビジョンを策定する。また、“ダム再生”ついて、改称の検討も開始。単なる再生でなく機能向上の意味合いを含む、より適切な名称を決定する。…ダム再生ビジョンは、良好な建設地が国内では有限である一方、ダムの堤体は半永久的に健全であることから、長期に渡る有効・持続的な活用を基本的な考え方とする。今後の方策として、新たにダム再生の候補個所の全国的な調査と、具体的な個所での実施のための諸元の検討を盛り込んだ。ダムの建設に当たっては、将来の再開発が容易にできる柔軟性を持った構造などの研究もスタートする。」(『建設通信新聞』2017.03.23)

その他