情勢の特徴 - 2017年4月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「専門工事会社が第三者割当増資で公的機関から資金調達する事例が出始めた。土木基礎工事の春日基礎(東京都豊島区、齋藤貢司社長)は、東京中小企業投資育成(東京都渋谷区、望月晴文社長)から1100万円を調達した。10年連続で中小企業格付けを取得するなど財務内容が良好な同社は、法律に基づく公的機関を株主とすることで高まる信用力を武器に事業を展開する方針だ。」(『建設工業新聞』2017.04.06)
●「国土交通省は、トルコで日本の耐震技術の活用を促進するための調査に乗りだす。同国では、大規模な被害をもたらした1999年のイズミット地震を契機に建築基準が見直され、既存物件を含めた耐震需要の拡大が見込まれている。前田建設に委託予定の調査業務では、現地のニーズに応じてどのような耐震技術を生かせばビジネス拡大に寄与するかなどを把握。効果的な売り込み方法を模索する。」(『建設工業新聞』2017.04.07)
●「文部科学省は、大地震の直後に多くの人が身を寄せる学校や公共施設が避難所として機能するかどうかを見分けるしくみづくりを始める。1年前の熊本地震では、建物自体は大きな被害を免れながら天井の一部が落ちて使えなくなった施設があった。実物大の建物模型を揺らす実験で、天井や配管などの損傷を予測するビッグデータを収集。住民の受け入れを判断する試みや施設の耐震強化につなげる。文科省所管の防災科学技術研究所が、避難所に使える体育館や病院、コンビニのほか一般的な木造住宅やビルを対象に、建物を支える構造以外の部分の耐震性を調べる。」(『日本経済新聞』2017.04.10)
●「政府は11日の閣議で、2025年の国際博覧会(万博)の大阪開催を目指す方針を了解した。1250億円程度と見込まれる会場建設費について、国と地元自治体(大阪府と大阪市)、民間事業者で3分の1ずつ負担する方針も決定。政府は24日にも、博覧会国際事務局(BIE、本部パリ)に立候補を届け出る予定で、誘致活動を本格化させる。25年万博には、既にフランスがパリ開催を目指して立候補しており、開催国は、18年11月に開かれるBIE総会で、加盟国(168カ国)の投票により決定する。大阪に決まれば、05年の愛知万博以来、20年ぶり6回目の日本開催となる。」(『建設通信新聞』2017.04.12)
●「政府が2015年度までの5年間に計上した東日本大震災の復興予算33兆4922億円のうち、計5兆54億円(約15%)が使われていなかったことが12日、会計検査院の調べで分かった。検査院は防潮堤整備や区画整理の遅れなどが主な原因とみており、国に対し、被災自治体と緊密に連携して事業を迅速に実施するよう求めた。内訳は、事業の着工遅れなどによる翌年度以降への繰越額が約1兆4千億円、15年度末時点で使途がない状態になっている『不用額』が約5千億円だった。このほか、国から自治体への交付金や補助金のうち、約3兆円が基金として積み立てられたままになるなどして使われていなかった。防潮堤の整備状況をみると、岩手、宮城、福島3県の36市町村の576海岸で計画されている事業のうち、15年度末時点で完成したのは87海岸(完成率15.1%)にとどまった。」『日本経済新聞』2017.04.13)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、公共建築数量積算基準、公共建築設備数量積算基準、官庁施設の環境保全性基準の3つの国の府省庁統一基準を改定した。建築数量基準は2006年3月以来、設備数量基準が03年3月以来の改定で、1日以降に入札公告した工事で適用を始めた。環境保全性基準も同日以降の設計案件から適用を始めている。」(『建設通信新聞』2017.04.05)
●「都道府県の発注工事で施工時期を平準化する取り組みが広がっていることが、国土交通省の調査で分かった。2月時点で、発注した年度には支出を伴わないゼロ債務負担行為を16年度に実施し、17年度も実施予定とした都道府県は、単独事業で35団体(16年2月調査30団体)、補助事業で24団体(14団体)、交付金事業で21団体(6団体)に上った。資材や労働者の確保を目的とする余裕期間を設ける団体も増加傾向にある。」(『建設工業新聞』2017.04.05)
●「国土交通省は、市町村を中心とする下水道施設管理者が保有している管路(総延長約47万キロ)の民営化を促す。老朽ストックが増える中、民間の資金とノウハウを活用して維持管理・更新を戦略的・計画的に進められるようにする。今後、市町村の検討を支援しつつ、管路内に潜在する熱エネルギー『下水熱』の商用ポテンシャルをPRして民間事業者の参入意欲を喚起する方針だ。下水道の民営化は、政府が成長戦略として進めている公共施設等運営権(コンセッション)の普及の一環。ただ現在は、18年度に国内初の下水道コンセッション事業を始める浜松市のように、民営化の対象を処理場・ポンプ場に限定する計画が中心になっている。民間事業者が、下水道利用料金とは別に下水処理の過程で出る汚泥の再利用などで得られる収入を見込みやすいためだ。」(『建設工業新聞』2017.04.10)
●「下水道分野のコンセッション(運営権付与)方式の導入で、対象施設を管路まで拡大して検討する動きが広がっている。2017年度に神奈川県三浦市と高知県須崎市は、管路を含めたデューディリジェンス(資産評価)を実施する。結果を踏まえて、年度内に導入可能性について判断を下す。処理場や管路など一体的な公共下水道のコンセッション実現に向けて、三浦市は19年度、須崎市は18年度事業開始を目指す。」(『建設通信新聞』2017.04.13)

労働・福祉

●「厚生労働省は、2017年度の全国安全週間実施要綱をまとめた。安全週間のスローガンは『組織で進める安全管理 みんなで取り組む安全活動 未来へつなげよう安全文化』。事業場と本社による全社的な安全管理進め、労働者一人ひとりの安全意識の高揚を図って、安全な職場環境を継続的に形成するよう呼び掛けていることを表した。全国安全週間は毎年7月1日から7日までを期間とし、ことしで90回目。6月を準備期間とする。厚労省が全国安全週間について都道府県労働局に出した通知では、重点事項として、ことし発生した死亡災害の中で、基本的な安全管理の取り組みが徹底されていないことが原因とみられるものが散見されることから、実施要綱で新たに掲げた『労働者の安全作業マニュアルの遵守状況の確認』について、災害事例を活用して事業者を指導することを要請している。」(『建設通信新聞』2017.04.05)
●「外国人技能実習生への人権侵害に罰則を設け、受け入れ先企業などへの監督を強化する『外国人技能実習制度適正化法』の11月1日全面施行に向け、関係政省令が7日に公布され、新たな外国人技能実習制度の詳細が正式に決まった。制度を利用して外国人実習生を浸け入れている監理団体や実習実施者(企業)の監督を担う認可法人の『外国人技能実習機構』(東京都港区)はことし1月に設立され、立ち入り検査などの権限を持つ。技能実習生1人ごとに作成する技能実習計画は認定制に、実習実施者は届け出制に、監理団体は許可制となる。施行日以降も監理団体として活動する団体は、必ず機構に監理団体の許可申請をする必要がある。」(『建設通信新聞』2017.04.10)
●「国土交通、厚生労働両省は、建設工事従事者安全健康確保推進法(建設職人基本法)に基づき閣議決定する基本計画の骨子案を10日に開かれた専門家会議に提示した。安全と健康の確保には、労働安全衛生法に基づく最低基準の順守徹底に加え、適正な請負代金と工期の設定が前提になると明記。特に工期は、週休2日を確保した上で施工可能な日数を適切に設定することが必要だとした。両省は、骨子案を同日初会合を開いた建設工事従事者安全健康確保推進専門家会議(委員長・蟹澤宏剛芝浦工大教授)に提示した。今回の議論を踏まえた内容に対する一般からの意見募集を行った上で、関係省庁で構成する推進会議を5月下旬にも開いて基本計画案をまとめ、政府が6月に閣議決定する。」(『建設工業新聞』2017.04.11)
●「若年層の建設業への入職を後押しする取り組みとして期待される技術検定における2級学科試験の年2回化。国土交通省は、土木施工管理技術検定(種別「土木」)と、建築施工管理技術検定(種別「建築」)を対象に、2017年度から2級学科試験の年2回化に乗り出す。工業高校生を中心に、この受験機会の拡大が入職への1つのきっかけになるか、その動向に注目が集まることになる。」(『建設通信新聞』2017.04.12)
●「内閣府は、有識者研究会が企業の各種調達を活用してワーク・ライフ・バランス(WLB)推進の取り組みを加速化させるため、企業へのWLB推進やCSR(企業の社会的責任)調達の調査で聞き取りを行った13社の取り組みを『調達を活用したワーク・ライフ・バランス等推進事例集』としてまとめた。建設業では鹿島の『女性の視点を活かした職場環境改善の取り組み』と、竹中工務店の『建設業界のリーディングカンパニーとしての役割を果たすCSR調達への取り組み』を掲載した。」(『建設通信新聞』2017.04.14)

建設産業・経営

●「建設産業にとって、2017年度は『週休2日』が1つのキーワードになりそうだ。国土交通省が、直轄工事の率先行動として、建設現場の休日の確保を鮮明に打ち出す中、地方自治体の発注工事や民間工事を含めた産業全体の取り組みとしていかに根付かせていくか――。官民あるいは受発注者双方の協働と協調が問われている。建設業の働き方改革として、どこまで定着・拡大していけるか、その取り組みに注目が集まる。」(『建設通信新聞』2017.04.03)
●「国土交通省は、16年度から直轄工事で本格的に取り組み始めたICT(情報通信技術)土工で、起工測量から完成検査までに要する時間を平均で23.4%削減できたとする速報値を明らかにした。受注者への活用効果調査で回収した36件分を集計。現場へのICTの導入効果が示された。i-Constructionで16年度から先行導入したICT土工では、ドローン(小型無人機)を用いた測量やICT建機による施工などが行われている。対象工事として発注したのは約1620件で、うち3月17日時点で584件がICT土工を実施している。内訳は、大規模工事が対象の発注者指定型66件、3億円未満で土工量2万立方メートル以上が対象の施工者希望Ⅰ型220件、規模の要件がない施工者希望Ⅱ型298件。速報値では、起工測量、測量計算、施工、出来形計測、完成検査の合計時間が従来施工で68.9時間かかるところ、ICT土工では52.8時間で済んだ。」(『建設工業新聞』2017.04.03)
●「東京商工リサーチは10日、2016年度の建設業倒産(負債額1000万円以上)件数を公表した。前年度比6.4%減の1581件で、8年連続の減少となった。水準も1579件だった1990年度以来、26年ぶりの低水準だった。一方、破たん前に余力を残して撤退する『休廃業』件数は倒産件数減少が顕著な近年でも減少していない。地区別では9地区中、6.3%増の中国、5.6%増の北海道を除く7地区で減少した。特に21.5%減の九州、21.0%減の北陸の2地区は2桁減だった。負債総額も8.5%減の1652億7900万円と2年連続で2000億円を下回った。平均負債額も1.8%減の1億0400万円と小規模企業の倒産が目立った。16年度の建設業倒産件数が26年ぶりの低水準となったことについて東京商工リサーチは、『国土交通省調査でも建設業の経営課題は、小規模事業者の利益率低下割合が最も高く、規模が小さいほど後継者問題などの比重が高くなり、規模が大きいほど人手不足が課題となるなど懸念材料も多い。企業間格差や地域間格差が広がる中、今後の推移が注目される」と分析している。一方、法的・私的問わず倒産する前に、休廃業・解散の形で建設市場から撤退する件数は依然として高水準を維持している。債務超過で破たんする前、資産超過の段階で休業・廃業や清算するもの。振りだした小切手が不渡りになったり、債務超過で事業停止に追い込まれる倒産とは違うため、市場から撤退することは同じでもこうしたケースは倒産統計に含まれていない。東京商工リサーチが行った直近の建設業休廃業件数調査では、倒産件数が急減した安倍政権発足以降も、休廃業・解散企業数は7000件から8000件台で推移、15年には建設業の休廃業企業件数が、倒産件数の4倍まで達していた。」(『建設通信新聞』2017.04.11)
●「清水建設は14日、2017年3月期の連結純利益が前の期比66%増の985億円になったようだと発表した。従来予想を145億円上回り、2期連続で最高を更新した。」(『日本経済新聞』2017.04.15)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省はマンションの大規模修繕を手がける専門職人を養成する。タワーマンションを中心に2000年前後に大量に建てられた物件が10~20年後に老朽化し、築30年を超える例が2~3倍に増える見通し。外壁やベランダといった複数の工程別に分かれる職人が一貫施工できるようにし、担い手不足を防ぐ。」(『日本経済新聞』2017.04.01)
●「2016年度に東京23区内で公表された大規模建築計画(延べ床面帯1万平方メートル以上)が、前年度に比べ大幅に増えたことが日刊建設工業新聞社の集計で明らかになった。前年度比で件数は9件、延べ床面積の合計は100万平方メートル近く増加。都心部を中心に、大手デベロッパー各社の旗艦事業ともいえる巨大開発プロジェクトが相次ぎ実行段階に移行し、首都の都市機能の高度化が本格化している。…集計結果によると、提出された建設計画は前年度比9件増の104件、延べ床面積の合計は前年度(394万3870平方メートル)を99万0499平方メートル上回る493万4369平方メートルとなった。104件を23区別に分けると、最も多かったのは港区の14件(前年度比1件減)。これに12件の新宿区(6件増)、11件の千代田区(同)と江東区(4件増)、8件の品川区(1件増)、7となる『新国立競技場(仮称)』(新宿区、渋谷区)をはじめとする競技施設、『東京国際展示場増築工事』(江東区)や『ナショナルトレーニングセンター拡充棟(仮称)新営その他工事』(北区)など関連施設の件数は7件に上った。」(『建設工業新聞』2017.04.10)
●「最大震度7を記録した熊本地震の発生から14日で丸1年となる。熊本県内の建設業界は、行政や関係機関とも連携した『オール熊本』態勢で災害対応に当たってきた。自治体工事の権限代行や官民の技術力を結集する手法も取り入れたインフラの復旧・復興は、『着実に進ちょく』(石井啓一国土交通相)。工事の集中で懸念された入札不調は、積算の特例などで発生の抑制にも努めている。」(『建設工業新聞』2017.04.14)
●「全国にある8464病院のうち、すべての建物が国の耐震安全性基準を満たしているのは、2016年9月1日時点で71.5%の6050病院だったことが厚生労働省がまとめた調査結果で明らかになった。15年の前回調査と比べ、耐震化率は2.1ポイント改善したものの、いまだ耐震基準を満たしていない建物や耐震性が不明な病院施設は2割強ある。また、病院のうち地震発生時の医療拠点となる災害拠点病院や救命救急センターについても、726病院のうち12.4%が耐震基準を満たさない建物であることが判明した。」(『建設通信新聞』2017.04.15)

その他