情勢の特徴 - 2017年6月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府は、5月30日の未来投資会議(議長・安倍晋三首相)に、従来の日本再興戦略(成長戦略)に代わる『未来投資戦略2017』(素案)を提示した。第4次産業革命による新たな技術革新を取り入れることで、社会的な課題の解決を図る『Society5.0』の実現が柱。ターゲットの1つとして、インフラ整備・維持管理の生産性向上を盛り込んでいる点が特徴だ。…インフラの老朽化に対応する点検作業や災害対応の高度化(効率化)も重視。国内の重要インフラや老朽化インフラを対象に、20年までに『20%』、30年までに『すべて』でセンサー、ロボット、非破壊検査技術を活用するというKPIを設定した。…橋梁、トンネル、水中(ダム、河川)という維持管理分野を対象にロボットの活用の手順などを示す『ロボット版点検手順』をまとめるなど、インフラ管理者と連携して、先進的技術の開発を後押ししていく方針だ。働き方改革も促進させる。労働基準法の改正によって、いわゆる『36(さぶろく)協定』でも超えることができない時間外労働の限度を定めるなど、長時間労働の是正に国を挙げて取り組む一方、外国人材の活用にも着目。建設および造船分野における外国人材の活用として、『外国人建設就労者受入事業』の運用の見直しを盛り込んだ。」(『建設通信新聞』2017.06.01)
●「国土交通省は12日、『中堅・中小建設業海外展開推進協議会』(略称=JASMOC)を発足させ、東京都内で初会合を開いた。座長には草柳俊二東京都市大客員教授が就任。2030年まで毎年1.7兆ドルに上る旺盛なインフラ需要が続くとされるアジア地域を主要ターゲットに、中堅・中小建設業の進出に必要な情報・課題を共有し、関係機関による支援施策の積極活用を図る。」(『建設工業新聞』2017.06.13)
●「国土交通省は日本企業のインフラ輸出支援策として、アジア各国に国土・地域単位の広域開発計画を提案する。同省主導で日本の企業や地方自治体、アジア各国の政府関係者らに呼び掛け、広域開発計画の策定支援策を話し合う場として国際プラットフォームを18年に設立する。計画立案段階から日本の官民が支援し、日本の技術力やノウハウなどを反映しやすくする。」(『建設工業新聞』2017.06.14)

行政・公共事業・民営化

●「政府が6月上旬にも決定する『PPP・PFI推進アクションプラン』(2017年改訂版)の全容が分かった。PPP・PFIの推進施策として、新たに『公的不動産における官民連携の推進』を明記するほか、公共施設等運営権(コンセッション事業)の重点分野に、クルーズ船向け旅客ターミナル施設とMICE(国際的な会議・展示会など)施設を追加する。 公的不動産における官民連携の推進では、▽公園における公募設置管理制度などPPP・PFI手法の拡充▽遊休文教施設の利活用▽国立大学法人資産の有効活用▽公共施設等総合管理計画、固定資産台帳整備・公表による民間事業者の参画を促す環境整備――を明記している。」(『建設通信新聞』2017.06.01)
●「国土交通省が17年度の営繕工事に導入した『入札時積算数量書活用方式』について、都道府県・政令市の約3分の1が導入を検討していることが同省の調査で分かった。既に長崎、沖縄の2県が試行導入している。公共建築工事の契約適正化につながる同方式について国交省は、公共建築相談窓口による相談対応や各種会議での説明などを通じて地方自治体にも普及促進を図る。」(『建設工業新聞』2017.06.05)
●「国土交通省は、地方自治体の工事発注・施工時期の平準化に関する取り組み状況を予算執行の観点から把握する仕組みを検討する。当初予算額のうち債務負担行為設定額の割合などを指標にし、平準化策の進ちょく状況をフォローアップ。予算執行の平準化によって発注関係事務の円滑化も図る。今後、都道府県の意見を踏まえ、指標の定義や設定方法、情報の取り扱いなどを調整していく。改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の運用指針には、発注・施工時期の平準化などが発注者の責務として明記されている。国交省は17年度上期『ブロック監理課長等会議』(入札契約担当課長会議)で、都道府県の担当者に、平準化を進めるための今後の取り組みの方向性を提示した。」(『建設工業新聞』2017.06.05)
●「建設産業における『働き方改革』の実現へ、テーマの1つとなっている休日の確保(週休2日の推進)。国土交通省が2017年度の直轄工事における発注方針として、週休2日の推進を鮮明に打ち出す中、都道府県レベルでも『週休2日』モデル工事の実施が拡大することになりそうだ。都道府県におけるモデル工事の実施件数は、16年度の318件から17年度は約3倍増となる956件に達する見込みとなっている。」(『建設通信新聞』2017.06.07)
●「建設現場の休日の確保(週休2日の推進)など、建設産業における『働き方改革』の実現に向けて、キーポイントの1つとなる発注者側の対応が加速している。直轄工事における“率先行動”として、その取り組みを先導する国土交通省は、地方自治体や道路会社といった発注機関と、推進への意識や情報を共有。週休2日の定着・拡大へ、各発注機関の連携体制の中で、取り組みの促進を狙う。5月9日の中部ブロックを皮切りに、今月6日の中国ブロックまで全国8地区で開催してきた春季『地方ブロック土木部長等会議』に続き、7日に同省が所管する独立行政法人など主要な発注機関との情報共有を目的にした第1回『公共工事等発注機関連絡会』(事務局・官房技術調査課)を開催した。…新たに立ち上げた、この連絡会に参加したのは▽都市再生機構▽水資源機構▽NEXCO東日本▽NEXCO中日本▽NEXCO西日本▽首都高速道路会社▽阪神高速道路会社▽本州四国連絡高速道路会社▽成田国際空港▽鉄道建設・運輸施設整備支援機構――の10者。」(『建設通信新聞』2017.06.09)
●「政府は、規制改革実施計画を9日の臨時閣議で決定した。労働基準監督業務の一部民間委託やホテルなどの最低客室数の規制撤廃などを盛り込んだ。労働基準監督業務の民間委託は、長時間労働是正などの働き方改革に当たり、不足する労働基準監督官を補うことが狙い。事業者の同意を前提に社会保険労務士など民間有資格者による任意の立ち入り調査を認め、監督体制を強化する。…『i-Construction』施策推進に向け、公共工事などにおける成果品のインターネットを活用した電子納品について、17年度中に検討し、結論を得ることや、都市計画基礎調査のオープン化、老朽化建築物の建て替え、駅舎や線路敷地沿い車庫、都市再生緊急整備地域内における日影規制の緩和なども進める。」(『建設通信新聞』2017.06.13)
●沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設工事をめぐる入札談合疑惑(1日付既報)で、問題の6件の本体工事を共同企業体(JV)で受注した業者の約7割に複数の防衛省・自衛隊OBが天下りしていたことが、日本共産党の笠井亮衆院議員の調べでわかった。調査は、防衛省が公表した過去15年間の再就職先の資料に加え、同省OBで構成される親睦団体の名簿をもとに実施。その結果、6件の工事をJVで受注した計16社のうち11社に、少なくとも計22人の防衛省・自衛隊OBが天下りしていた。最も人数が多かったのは、「ケーソン新設工事(1工区)」を受注した五洋建設の4人。「中仕切岸壁」や「二重締切護岸」の新設工事を受注した若築建投や前田建設工業にも、それぞれ3人が天下りしていた。JVごとにみても、政府が現在、工事を強行している「K9護岸」(傾斜堤護岸新設工事)など6件の工事全てで2~5人を受け入れていた。これら6件の工事では、入札時、沖縄防衛局が低価格入札を防ぐために設けた「調査基準価格」ぎりぎりで落札が行われた。しかも、防衛省が笠井氏に明らかにした資料によれば、いずれの工事も、契約後に「設計変更」が繰り返され、うち5件で競争入札なしの追加工事が発注された結果、契約額が当初の計405億6000万円から529億2000万円と1.3倍に増加。3月末現在、入札時に設定された予定価格を計77億6700万円も上回る契約が結ばれている。(『しんぶん赤旗』2017.06.13より抜粋。)
●「長野県は、2017・18年度競争入札参加資格で、客観点に追加した3つの評価項目の加点状況をまとめた。このうち、週休2日などの休業制度を就業規則に規定している事業者を評価する項目は、加点が853者に上り、県内に本店を置く登録者の35.1%を占めた。4週6休か年間休日94-119日で加点になった事業者が最も多かった。」(『建設通信新聞』2017.06.15)

労働・福祉

●「政府が6月上旬に開く予定の『すべての女性が輝く社会づくり本部』(本部長・安倍晋三首相)で決定する『女性活躍加速のための重点方針2017』の全容が明らかになった。女性活躍情報の『見える化』の徹底と活用促進、あらゆる分野における女性の活躍推進などを柱とし、女性活躍推進法の施行状況を踏まえた企業情報公表制度の強化策の検討、工事を始めとした公共調達など各種調達を通じたWLB(ワーク・ライフ・バランス)の推進、建設業などでの女性活躍の取り組み推進など、今後政府が進める具体的施策を示した。」(『建設通信新聞』2017.06.01)
●「労働政策審議会(労政審、厚生労働相の諮問機関)の労働条件分科会は5日、全産業の時間外労働に上限を設ける労働基準法の改正などを求める建議をまとめた。政府が3月末に決定した働き方改革実行計画を踏まえ、最短で19年度に予定される改正法施行から5年間は上限規制の適用が猶予される建設業に対し、猶予期間中も『月45時間、年360時間』と定める一般則に近づける努力を求めた。」(『建設工業新聞』2017.06.07)
●「厚生労働省は、職場における熱中症予防対策に欠かせない作業環境管理のための機器の普及に向け、機器の選定や使用方法、作業環境管理方法を分かりやすく示すリーフレットとマニュアルを作成することを決めた。熱中症による死傷者数が多い建設現場や建設工事に付随する警備の現場など20事業場(現場)を対象に、トライアル計測し、事業場から聞き取りも実施する。その上で有識者による検討会を設け、リーフレットとマニュアルに盛り込む内容などを検討する。いずれも2018年4月をめどに策定し、事業者に活用してもらう。職場での熱中症予防対策は、WBGT値(暑さ指数)を低減するなどの作業環境管理が重要になる。このため、建設現場など20事業場で7-9月に『電子式湿球黒球温度(WBGT)指数計』を使い同値をトライアル計測する。あわせて実際に計測する際の留意点や有効な作業環境管理手法などの聞き取りも実施する。」(『建設通信新聞』2017.06.08)
●「厚生労働省は、建設現場で働く『一人親方』に労災保険への特別加入を促す積極的な周知活動に乗りだす。本年度に特別加入制度に関するリーフレットを作成。未加入の一人親方の目に留まるようにするには、どのような方法が効果的か、実態調査を通じた検討も併せて行う。法律上の『労働者』には該当しない一人親方の安全と健康の確保に向け、任意の特別加入制度の周知に努め、加入促進に力を入れていく。」(『建設工業新聞』2017.06.15)

建設産業・経営

●「トンネル専門工事業協会(野崎正和会長)は、2016年度委員会活動の成果として、元・下請契約に関するアンケートの結果を報告書にまとめた。担い手の確保や育成のための適正な利益確保に向けて契約の現状を把握することを目的に調査を実施。その結果、追加・変更契約や工期変更について着工前に書面で確約されていることが少なく、下請けが負担しているケースが多いことなどが明らかとなった。6日に会見した野崎会長は『喫緊の課題である担い手の確保・育成には経営基盤の安定化が重要であり、そのためには適切な利益の確保が必要である。』と強調した。」(『建設通信新聞』2017.06.07)
●「積水ハウスが9日発表した2017年2~4月期の連結決算は、純利益が258億円と前年同期比69%増えた。都心部を中心に賃貸住宅の建設が好調で、主力の戸建て住宅は利益率が改善した。米国などで展開を加速する海外事業は2~4月期としては3期ぶりに黒字転換した。売上高は9%増の4407億円、営業利益は26%増の338億円だった。シンガポールなどの持ち分法適用会社の利益が21億円あり、純利益が大きく膨らんだ。」(『日本経済新聞』2017.06.10)
●「日本建設業連合会は、適切な工期の確保を実現するための仕組みとして、『工事工程の共同管理』を各会場で提案した。日建連のアンケートによると、休日拡大に向けた環境整備の大前提として適切な工期の確保を求める会員が多数を占める。迅速な現場対応を可能にし、円滑な施工と工程遅延の予防などに効果を発揮する工事工程の共同管理は、働き方改革を大きく前進させる強力なツールになる。国土交通省は意見交換会での議論などを踏まえ、17年度から施工当初段階で工事工程のクリティカルパス(工期を左右する作業)と関連する未解決課題の対応者や対応時期の共有化を直轄工事(港湾・空港を除く)で原則化している。日建連が実施した工程情報の共有化に関するアンケートによると、『協議などの必要な対応を早期かつ計画的に進められるようになった』『発注者にクリティカルパスに関する意識を高めてもらえた』などの回答が多く、共有化は大きな効果をもたらしている。」(『建設通信新聞』2017.06.14)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●大阪府と大阪市は誘致活動を展開している2025年国際博覧会(万博)やIR(統合型リゾート)予定地・大阪市夢洲地区(此花区)をはじめ、咲洲地区(住之江区)、舞洲地区(此花区)、天保山・築港地区(港区)などベイエリア全体のまちづくりについて関係者が意見交換する場を7月に設ける。行政に加え各地区の集客施設の事業者らが参加しそれぞれのまちづくりの現状などの情報を共有、連携を強化しベイエリアのまちづくりの底上げを目指す。」(『建設工業新聞』2017.06.05)
●「国土交通省は、都市計画決定されたまま事業が未着手になっている幹線街路の整備計画の見直しを促す。近く都市計画決定主体の地方自治体に対して、まちづくりとの整合性などに応じて計画路線の存続や変更・廃止といった判断を促すための手引を作る。国を挙げて推進しているコンパクトシティーづくりに対応し、市街地の限られた土地をより有効かつ高度に利用できるようにする。」(『建設工業新聞』2017.06.06)
●国と東京都が1兆円以上負担する東京外かく環状道路(外環道)で、大手ゼネコンによる談合疑惑が浮上し、調査がはじまっている。…関越道(東京都練馬区)~東名高速(世田谷区)の南北16キロ区間に巨大トンネルを掘る外環道。総事業費は約1.6兆円で、「1メートル1億円」の巨額公共工事である。談合疑惑で調査がおこなわれているのは、中央道との合流・分岐部をつくるための「地中拡幅工事」の4工区。「すでに本線工事を受注した大手ゼネコン4社(鹿島、大成、清水、大林組)が幹事社となり、共同企業体(JV)で受注する」との日曜版(2月26日号)報道を受け、国会で日本共産党の宮本徹衆院議員が追及。発注者の東日本・中日本の両高速道路会社が公正取引委員会と警察に通報し、ゼネコンヘの聞き取りなど調査をはじめた。現在、事業者の選定が延期されている。ゼネコン関係者によると問題の4工区の工事費は約4000億円。工事区間はのべ1400メートルなので、1メートル当たり約3億円になる計算だ。(『しんぶん赤旗(日曜版)』2017.06.11より抜粋。)
●「国土交通省は、国土形成計画に位置付けられた広域連携プロジェクトの早期の具体化を図るため、先導的なプロジェクトをまとめた。リニア中央新幹線の全線開業による東京・大阪・名古屋を一体とする巨大都市圏『スーパー・メガリージョン』を想定した首都圏の国際競争力の高度化や、地方の高速交通の高度化による地域活性化など具体的な将来像を盛り込んだ計画を公表。同省は、先行的な事例を支援することで計画を加速・効率化し、地方同士のブロックを超えた広域連携を促進する。広域連携プロジェクトは、国土形成計画の全国計画に定められた対流促進方針を踏まえて、東北から九州までの8ブロックごとに設置する広域地方計画協議会を中心に策定・推進する。国が決定するのではなく、都府県や政令市、地元経済団体などが主導して、地域の実情に応じた計画を進める。8ブロック計l16のプロジェクトがある。リニア開業を踏まえた首都圏の国際競争力高度化プロジェクトは、東京都心部に国際ビジネス拠点の集積を図るとともに、リニア中央新幹線と圏央道の結節点となる相模原市などに産業拠点や高速バスターミナルなど対流拠点の整備を検討する。」(『建設通信新聞』2017.06.12)
●「政府は全国に広がる空き家や空き地を整備するため、国や自治体がそれぞれ持つ不動産データベースを統合する。不動産登記などをもとに住所や所有者の情報をひも付け、不動産を管理する個人や法人を正確に把握する。権利者や住民、納税者が複雑に絡む不動産の情報を透明にして、企業による不動産取引や都市再開発を後押しする。不動産のデータベースは法務省が管理する不動産登記のほか、国土交通省の土地総合情報システムや自治体の固定資産課税台帳がある。農地や林地にも台帳があり、不動産会社なども独自の情報を持つ。法務省によると全国には土地の登記が2億3000万、建物の登記が5000万ある。」(『日本経済新聞』2017.06.14)

その他