情勢の特徴 - 2017年6月後半
●「石井啓一国土交通相は、21、22日にイタリア・カリアリで開催されたG7交通大臣会合に出席し、各国の大臣とともに質の高いインフラ投資や自動運転技術開発の促進を盛り込んだ大臣宣言を採択した。日本からはインフラのベストプラクティスとして、ビッグデータを活用したピンポイント渋滞対策や交通安全対策、i-Construction、インフラメンテナンス革命などのICTを活用した新技術の取り組みを紹介した。会合は『インフラの社会的価値の再発見』をテーマに、▽インフラの社会的役割▽インフラの経験共有▽自動運転――の3セッションを設けて意見を交換した。各国はインフラ整備が雇用の創出や生活の質の向上にとって重要な役割を果たすという認識を共有。経済成長のためにはインフラへの投資が重要であり、民間資金の活用も重要だと強調した。社会資本の老朽化対策が先進国に共通する重要な課題であることを踏まえて、インフラプロジェクトの実施における革新的なアイデアやベストプラクティスを共有するためのワーキンググループを立ち上げることが大臣宣言文に反映された。」(『建設通信新聞』2017.06.28)
●「国が率先して取り組む建設現場の『働き方改革』が着実な広がりを見せている。2017年度に『週休2日』モデル工事を実施予定または実施を検討中とする自治体は47都道府県20政令市のうち計59団体。16年度の18団体から3倍増となっている。直轄工事で、その取り組みを先導する国土交通省は『工期設定支援システム』の無償提供など推進ツールの普及によって、各自治体の取り組みを強力に後押しする。5月9日の中部ブロックを皮切りに今月6日まで全国8地区で開催してきた春季『地方ブロック土木部長等会議』で、建設現場の休日拡大(週休2日の推進)や、そのための環境整備の必要性といった認識を共有。国と自治体の連携の中で、発注者としての取り組みを加速させていくことで一致した。国策として、その推進が求められている建設現場の『働き方改革』は、適正な工期設定や適切な賃金水準の確保など、受発注者の理解と協力が不可欠。特に産業全体で推し進めていく現場の休日拡大(週休2日の推進)にとって、公共工事の発注者である各自治体の取り組みや推進への機運醸成は欠かすことができないからだ。その意味で言えば、自治体が取り組みに積極的な姿勢を見せている現状は、週休2日の定着・拡大への大きな一歩と言えそうだ。」(『建設通信新聞』2017.06.16)
●「政府が今月、17年度の『PPP・PFI推進アクションプラン(行動計画)』を決定した。最大の柱は、成長戦略の一つとして進めている公共施設等運営権(コンセッション)の導入拡大。重点対象施設にクルーズ船旅客ターミナルとMICE(国際的イベント)関連施設を追加した。コンセッションの導入拡大を制度面でも強く後押しするため、来年の通常国会でのPFI法改正も打ち出している。行動計画は、PFI推進会議(会長・安倍晋三首相)が9日に決定した。国や地方自治体の公共施設運営で推進しているコンセッションの導入は、人口減少下でも持続的な経済成長を目指す戦略の柱の一つに当たる。政府は近年、多数あるPPP・PFIの事業手法のうち、コンセッションを民間の資金と創意工夫を最大限生かせる手法として普及に最も力を入れている。…公共施設をめぐるビジネス領域が大幅に拡大することになり、施設の設計・施工、点検・補修などの維持管理を手掛けてきた建設業界の関心も高い。コンセッションの導入は、比較的安定した料金収入を見込みやすい基幹インフラの空港や有料道路で先行。いずれも運営権者として建設会社が参画している。 政府が昨年5月に決定した16年度の行動計画では、13~22年度の10年間に2兆~3兆円としていたコンセッション事業の創出規模の目標額について、期限を変えないまま7兆円に上積みしていた。17年度の行動計画では、目標額や期限を変更せず、コンセッンヨンの重点対象施設にクルーズ船旅客ターミナルと国際展示場・会議場を中心とするMICE関連施設を追加。さらに、19年度末までに事業を具体化(実施方針の公表など)する目標件数として、クルーズ船旅客ターミナルで3件、MICE関連施設で6件をそれぞれ設定した。」(『建設工業新聞』2017.06.22)
●「国や地方自治体がそれぞれ公表する工事発注見通しを、地域ブロック単位で統合公表する取り組みが広がってきた。国土交通省東北地方整備局と内閣府沖縄総合事務局がそれぞれの管内で先行実施したのに続き、北海道開発局を含む全地方整備局が開始または準備中だ。地区ごとに各発注機関の見通しを一元化したリストが公開されれば、施工時期の平準化や、受注者の安定的・計画的な業務確保につながるとみられている。地区単位の発注見通しの統合公表は13年11月に東北整備局管内で始まった。東日本大震災の復興加速と東北全体の事業推進を図る観点から、東北地方発注者協議会に参加する国や県・市町村などの各発注機関が、個別に公表してきた情報を一元的に閲覧可能にした。沖縄総合事務局も14年8月に取り組みを始めた。14年度には全国を北海道から沖縄まで計10ブロックに分け、各地方整備局などが運営するホームページ(HP)から管内の自治体や国の発注機関のHPにリンクが張られた。国交省は施工時期の平準化策の一つとして昨秋、発注見通しの統合公表を全ブロックに要請。これを受け、各地方発注者協議会では統合公表の仕組みや地区の設定など詳細を検討し、北陸ブロックが16年12月に試行版の運用を始めた。北陸地方整備局、県(新潟・富山・石川)、16市町の発注見込みの工事を12地区に分けてリスト化しており、今後はエリアを順次拡大していくという。」(『建設工業新聞』2017.06.30)
●「厚生労働省が建設業でのメンタルヘルス対策強化に向け実施する、建設現場への介入調査の実施者が建設業労働災害防止協会に決まった。介入調査は、10現場程度を選んで実施。建設現場の元請けと下請けの労働者に対してストレスチェックを実施し、ストレスチェック結果の集団分析を行う。その上で、分析結果を踏まえた職場環境改善を、さまざまな手法によって試行的に実施する。各手法の効果を検証して好事例を集める。」(『建設通信新聞』2017.06.16)
●「日本建設業連合会(山内隆司会長)と、じん肺訴訟原告団などによる『トンネル建設工事における労働衛生協議会』が活動を開始し、トンネル工事のじん肺ゼロに向けて大きな一歩を踏み出した。活動期間は6月から2019年5月までの2年間とし、先駆的なモデル現場の視察や改善事例の展開、将来の裁判における早期和解方策などを検討する。協議会の設置は23日に開かれた日建連の理事会に報告された。理事会後の会見で宮本洋一副会長・土木本部長は、協議会の設置について、『将来、じん肺を受けないためにどうするのか。また、将来問題が起きた時にいかに早く解決するかの方策を考えるのが趣旨だ』と説明。有賀長郎事務総長は『共通の検討の場ができたことは大きな前進だと互いに評価している』とした。当面の主な検討事項は▽先駆的なモデル現場の視察、改善事例の展開など、将来を見据えたじん肺ゼロを目指した活動▽将来の裁判における早期和解への方策の検討――の2つ。年に3回程度会合を開く。協議会は、じん肺訴訟原告団とその弁護団、事務局、日建連安全委員会の衛生対策部会長と同委員会所属会社から委員長が指名する法務担当者、日建連事務局で構成する。協議会での意見交換結果を踏まえた実務的な対応は、『トンネル建設工事における労務衛生連絡会議』が担う。」(『建設通信新聞』2017.06.26)
●「勤労者退職金共済機構・建設業退職金共済事業本部は、新たな掛金納付方式を電子申請方式とし、払込方法に電子決済のペイジー(Pay-easy)を活用する方針だ。掛金は現行の日額310円に加えて、より高額の460円も設定する。2018年1月から6月まで実証試験を行う。中小企業退職金共済法の改正が必要なため、厚生労働省による検討を経て、推進が決まれば19年夏までに手続きを進め、システムの開発に着手、21年春の実施を目指す。23日の第34回運営委員会・評議員会で示した。ただし、これに先立ち開かれた財務問題・基本問題検討委員会で実施時期の前倒しを望む声が上がり、スケジュールの見直しを検討する。」(『建設通信新聞』2017.06.26)
●「国土交通省は建設現場に設置する仮設トイレで、男女とも快適に使用できる『快適トイレ』の普及を図る。NPO法人日本トイレ研究所(加藤篤代表理事)が定めた『快適トイレ認定マーク』を、快適トイレの仕様を確認するための参考指標として活用。北海道開発局と沖縄総合事務局を含む全地方整備局に快適トイレの考え方やマークの扱い方を周知し、現場への導入を後押しする。建設現場の就労環境改善を推進する一環。快適性を向上させた仮設トイレの設置を標準化することで、職場環境の改善を図り、男女ともに働きやすい建設現場の実現につなげる。レンタルが多い現場の仮設トイレが変わると、災害時に避難所などに持ち込まれる仮設トイレも変わるなど副次的効果も見込まれる。国交省は快適トイレに求める機能として、標準仕様6項目、備える付属品5項目、推奨する仕様・付属品6項目を昨年8月に設定。費用の積算基準も整え、10月から直轄土木工事の現場に原則導入した。」(『建設工業新聞』2017.06.28)
●「国土交通省は『建設キャリアアップシステム運営協議会」を設立し、30日に第1回総会を東京・虎ノ門の建設業振興基金で開く。システムの円滑かつ適正な運営と、利活用や普及の促進を図るのが目的。会長には国交省の土地・建設産業局長が就き、業界団体などがメンバーとなる。総会では、システム開発業務の調達や今後のスケジュールなどを議論する。」(『建設工業新聞』2017.06.28)
●「高止まりする有効求人倍率から人手不足業種の代表格ともいわれる建設業。日刊建設工業新聞が厚生労働省が毎月発表するデータの推移を調べたところ、問題点は求人倍率よりもむしろ求職者の激減にあることが分かった。他産業に比べ、給料や休暇取得など処遇面で劣り、魅力に欠ける実情を裏付けたともいえる。事態の改善へ業界が本気で『働き方改革』に取り組めるかが問われる。求人倍率は、ハローワークに申し込んだ求職者1人当たりの求人数を示す。全産業の直近4月は1.48倍で、バブル期に最高を記録した1990年7月の1.46倍を超えた。景気回復と人手不足によって企業の求人が増えたことが背景にあるとされる。この中で建設業の有効求人倍率は介護事業以上に高く、5月の財政制度等審議会分科会では『人手不足による供給制約が高まってくる恐れがある』と指摘された。ただ、足元では技能労働者不足の改善が国土交通省の建設労働需給調査で示されている。工事量が増加しても『施工余力はある』というのが業界の主張。紹介や縁故を含めたハローワーク経由以外の対応策も含め、現場に従事する人材を確保できる状況にある。問題は将来を担う人材の確保だ。求人数と求職数の推移を過去にさかのぼって見ると、建設業の有効求人倍率が他産業に比べ高止まりしている理由が浮き彫りになる。」(『建設工業新聞』2017.06.29)
●「大和ハウス工業は建物・設備の設計や現場監督といった技術系分野で、シニア人材の雇用を増やす。2018年3月期に50代以上の技術者を前期比4割増の70人ほど採用する。他社で定年退職した経験豊かなシニアを受け入れて施工力を高め、建設業界で課題となっている人手不足の解消にもつなげる。…他社を定年退職するなどした技術者を主に採用する。同社は65歳が定年だが、適正と判断されれば継続して働ける。現在も65歳以上の社員100人ほどが勤務。15段階で査定して賞与に反映させるなど一般社員に近い就業環境を提供する。」(『日本経済新聞』2017.06.16)
●「清水建設は2018年に建築現場にロボット一斉投入する。自ら周囲の状況を把握して動く自律型ロボットを開発。屋内で作業員が多いため導入が難しかったビルの建設現場などで、資材の搬送や鉄骨の溶接などに用いる。各工程で必要な技能労働者を約7割減らすことができる。100カ所の工事現場で8千台のロボットを管理できるシステムも開発した。」(『日本経済新聞』2017.06.22)
●「大和ハウス工業は都心でオフィスビルの開発事業に参入する。今後5年で最大2000億円を投じ、都内中心部などで年1~2棟を建設する。オフィスビル開発では後発だが、都心部のオフィス需要が今後も活況とみて参入を決めた。住居を併設する複合型のビルで、賃貸住宅や物流施設に続く新たな柱に育てる。第1弾として、7月に東京・西新宿で29階建てビルを着工する。延べ床面積は約4万平方メートル。投資額は400億円の見通しで、2020年春の完成を目指す。中層階を賃貸オフィスとし、上層には家電や家具を備える長期滞在施設『サービスアパートメント』を約120戸設ける。下層には保育所を配置。『職住一体』型のビルとする。」(『日本経済新聞』2017.06.24)
●「日本電設工業協会(電設協)の山口学会長は23日、東京・八丁堀の東京建設会館に日本建設業連合会(日建連)の山内隆司会長を訪ね、電気設備工事業の働き方改革実現への協力を要請した。工程の遅れが工期の終盤で電気設備工事にしわ寄せされ、長時間労働是正の障害になっている現状を踏まえた要望で、山内会長も、工期終盤で慌てることは施主にも心配を掛けると理解を示した。」(『建設工業新聞』2017.06.26)
●「地方や大都市郊外で増えている宅地を中心とする空き地の活用促進策を検討している国土交通省の有識者検討会は、民間需要を創出できるような空き地の暫定利用や集約化の促進を柱とする提言案をまとめた。これらの戦略も含めた空き地の活用方策の具体化に向け、市町村単位で不動産業者やまちづくり団体などの関係機関が集まって話し合う官民プラットフォームの設立も提案した。」(『建設工業新聞』2017.06.16)
●「国土交通省は27日、既設ダムの有効活用を推進する『ダム再生ビジョン』を策定した。適切に施工・維持管理されれば半永久的に健全であるダムを長期にわたって有効活用することを前提に、流域の特性や課題に応じてソフト・ハードの両面から進める取り組みをまとめた。施設改良については、2017年度内に国直轄と水資源機構の全国123ダムについて調査を実施し、18年度から順次事業化を図る。」(『建設通信新聞』2017.06.28)