情勢の特徴 - 2017年8月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「帝国データバンクがまとめた東京都内の7月の企業倒産件数(負債額1千万円以上)は142件と、前年同月比9%増加した。前年を上回るのは6ヵ月連続で、建設業などが目立った。負債総額は32%増の260億3千万円となった。…建設業の倒産件数も75%増で、負債総額1億円未満の企業が目立った。同社は『小規模事業者にとって人員確保や賃金増が大きなコストとなりかねず、収益悪化を招く恐れがある』と指摘する。」(『日本経済新聞』2017.08.05)

行政・公共事業・民営化

●「石井啓一国土交通相は7月31日、不動産協会との懇談会で、建設業の働き方改革に向けた取り組みへの理解と協力を求めた。新国立競技場の建設現場で働いていた協力会社の男性社員が過労自殺したとされる問題が発生したことを重視。建設業の働き方改革の実現に向けて強い決意で臨む姿勢を改めて示し、長時間労働の是正や週休2日制導入の必要性を訴えた。」(『建設工業新聞』2017.08.01)
●「建設産業の担い手確保策の一つである社会保険加入促進への取り組みが、北関東地域の市レベルでも広がりを見せている。日刊建設工業新聞社の調査によると、埼玉、栃木、群馬、長野の4県内の85市のうち、定期の競争参加資格審査で未加入企業を排除しているのは70市と全体の82%を占めた。1次下請企業の加入を原則化しているケースも8市(9%)と増加傾向にある。85市を対象としたアンケートを行い、各市の取り組み状況をまとめた。資格審査時に社会保険加入状況を確認して指導を行っているケースなどを含め、何らかの対策を講じているのは81市(95%)に上る。」(『建設工業新聞』2017.08.01)
●「国土交通省は、庁舎の建て替えなど、地方自治体が行う大規模プロジェクトの実施に対する留意点などを示す『地方公共団体における建築事業の円滑な実施に向けた手引き』をまとめた。1日付で都道府県・政令市の契約担当課や営繕部局、建設業団体などに手引きの策定と、その活用を促す通知を発出した。手引きは、ことし3月から7月まで計4回にわたって議論を重ねてきた『地方公共団体における建築事業の円滑な実施に向けた懇談会』(座長・大森文彦東洋大教授、弁護士)の検討の成果となる。予算を措置して設計業務に必要となる発注条件をまとめる『企画』、その発注条件に基づいて設計図書を作成する『設計』、数量の算出や見積もり徴集などで工事価格の設定を行う『積算』など、工事発注に至るまでのフローに沿って、各段階で発注者に求められる対応や留意点などを示している点が特徴だ。」(『建設通信新聞』2017.08.02)
●「国土交通省は1日、資金需要が増大する盆休みを控え、下請契約と下請代金支払いの適正化を図るよう土地・建設産業局長名で建設業106団体に通知した。建設業の働き方改革に向けた適正な工期設計や週休2日の推進なども併せて要請。同日付で建設業課長名で都道府県建設業担当部長にも参考送付した。文書では、従来も求めてきた▽法定福利費を内訳明示した見積書の提出・尊重による社会保険等への加入徹底▽下請代金の適正な支払い▽技能労働者への適切な賃金の支払い▽消費税の円滑・適正な転嫁―などの10項目に、新たな要請事項として『建設業の働き方改革に向けた適正な工期設定や週休2日の推進など』を加えた。」(『建設工業新聞』2017.08.03)
●「国土交通省は、建設業など民間事業者の水防活動への参画を推進する。6月に施行された改正水防法では、水防団などにしか認めていなかった権限を、水防活動の委任を受けた民間事業者に与え、地域の水防力の強化を図ることにした。これを受けて地域の建設会社などが水防活動に参加しやすくなるよう、災害協定締結への対応などを求める文書を3日付で各地方整備局に送付した。改正水防法では、水防などにしか認められない私有地の緊急通行や、必要な土地を一時的に使用する公用負担などの権限を民間事業者に付与。大型重機を所有し、応急復旧に関する知見を持つ建設会社などが水防団の活動を補い、地域の水防力を強化する役割をこれまで以上に果たせるようにした。」(『建設工業新聞』2017.08.04)

労働・福祉

●「厚生労働、経済産業の両省は7月31日、企業関係者や労働組合、中小企業支援の専門家の13人で構成する『中小企業・小規模事業者の働き方改革・人手不足対応に関する検討会』を設置し、初会合を開いた。政府の『働き方改革実行計画』を踏まえた中小企業・小規模事業者の取り組みを進めるため、業種に関係なく働き方改革と人材確保に対する支援のあり方などを検討する。検討の成果は2018年度予算の概算要求に盛り込む施策や税制改正要望などに反映させる。」(『建設通信新聞』2017.08.01)
●2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場建設現場(東京都新宿区、渋谷区)で働いていた、現場監督の男性=当時(23)=が過労自殺した問題で、大会組織委員会が長時間労働禁止など適正な労働環境を確保する規定を定めていたことが1日、本紙の調べで分かった。安倍晋三首相、建設計画の指示にあたり「内閣で責任をもってすすめる」と表明し、関係閣僚会議で進捗状況の報告を受けており、その責任が問われる。新国立競技場の建設工事を発注しているのは独立行政法人「日本スポーツ振興センター(JSC)」。元請けは大手ゼネコンの大成建投(東京都)。過労自殺した男性は、大成の1次下請けで現場監督をしていた。遺族の労災申請などによると、残業時間を労使で取り決めた「三六協定」の月80時間に収まるよう過少申告が行われていた。自殺したと推定される失踪日3月2日まで1カ月の残業時間は、211時間56分にのぼった。組織委は、大会準備・運営にあたる事業者が順守すべき規定「持続可能性に配慮した調達コード」を策定(基本原則16年1月、第1版17年3月)。これはオリンピック憲章が、「持続可能な発展」の観点から大会開催を要請していることを受けたもの。調達コードは、「長時間労働の禁止」の項目をもうけ、違法である場合はもちろん、「健康・福祉を害する長時間労働」もさせてはならないと明記。事業者にサプライチェーン(下請けの連鎖)を含めて順守するよう要請している。組織委自身が順守状況を確認し、改善を要求して適切に取り組まない場合は契約解除があり得ると記載している。政府に対しても、調達コード尊重を求めている。(『しんぶん赤旗』2017.08.02より抜粋。)
●「2017年の1~7月に熱中症で死傷した全産業の労働者が前年同期比23人増の86人に上ることが厚生労働省の調査で3日明らかになった。産業別では屋外作業の多い建設業が24人と最多で全体の4分の1を占めている。同省は8月以降も熱中症にかかりやすい暑い日が続くとみて、2日付で労働基準局安全衛生部労働衛生課長名で日本建設業連合会(日建連)などの関係団体に予防の徹底を要請した。」(『建設工業新聞』2017.08.04)
●「建設業振興基金は、厚生労働省からの受託事業として展開している『建設労働者緊急育成支援事業』の2016年度の実施状況をまとめた。16年度に全国21ヵ所(中央拠点1ヵ所、地方拠点20ヵ所)で実施した計104コース(定員1300人)の職業訓練の受講者数は計1031人。95.8%に相当する988人が修了、修了者の76.3%となる754人が就職した。」(『建設通信新聞』2017.08.09)
●23歳の現場監督が過労自殺に追い込まれた新国立競技場(東京都新宿区、渋谷区)の建設現場。2020年の東京五輪・パラリンピックでメイン会場にするため事件発覚後も工期を優先した異常な働かせ方がまかりとおっている。現場の状況を追った。午前6時、新国立競技場の建設現場に労働者が続々と入っていく。関係者によると、安全などの現場ルールを教える新規入場者の教育が午前6時半ごろから行われるため、通常の建設現場より業務開始が早いという。早すぎる開始時刻の是正を求めている東京土建一般労働組合の松本久人賃金対策部長は指摘する。「普通の建設現場では、朝礼後の午前8時ごろから新規入場者教育が行われる。午前6時半開始では、夜明け前の4時に自宅を出ないと間に合わないと、労働者から悲鳴があがっている」。元請けの大手ゼネコン・大成建設(東京都)は、本紙の取材に、新規入場者教育は「午前7時ごろ」だと早朝の実施を認めている。他方、教育は「(最初の)1回のみ」であり、「公共交通機関の制約がある場合は、実施時間を調整するなど柔軟に対応している」としている。しかし、工事現場は駐車場の少ない都心。「同僚と車を乗り合いで来るので、1人でも新入りがいれば、全員が早出を強いられる」という不満も出ている。現場労働者から話を聞くと、「工程管理がめちゃくちゃだ。先に完成しているはずの作業が終わっておらず、仕事がすすまない」と嘆きの声が起こっている。1次下請けの現場監督の男性は、「工期が圧迫されているというのは共通認識だ。下請けはしわ寄せの圧力を受けている」と語る。「過労自殺のことはうわさになっている。自分たちもいつ犠牲になるか」と声をひそめる職人もいる。(『しんぶん赤旗』2017.08.09より抜粋。)

建設産業・経営

●「土木学会の社会インフラ健康診断特別委員会(委員長・橋本鋼太郎元会長)は、社会インフラ健康診断(試行版)を公表した。日本の社会インフラの健全状況の評価結果について、河川、下水道、道路の3部門に分け、施設の健康度と維持管理体制を指標で示した。健康度はA(健全)、B(良好)、C(要注意)、D(要警戒)、E(危機的)までの5段階、維持管理体制は『改善見込み』『現状維持見込み』『悪化見込み』の3段階で診断した。社会インフラ健康診断は、日本のインフラの健全状況を評価し、その結果を公表・解説することにより、広く国民に社会インフラの老朽化の現状と維持管理・更新や、それに対する体制・投資の必要性や課題を認識してもらうことを目的としている。2016年5月に公表した健康診断書道路部門(試行版)に続くものとなる。施設の点検結果や維持管理体制の情報を公表データや調査により収集し、同学会独自に指標化して実施。地域や管理者ごとのデータを評価した上で、全国平均としての指標で評価した。」(『建設通信新聞』2017.08.08)
●「大手ゼネコン(総合建設会社)4社の2017年4~6月期連結決算が8日出そろった。最終的なもうけを示す純利益は全社が4~6月期として過去最高を更新した。首都圏の再開発や東京五輪の関連施設などの旺盛な建設需要が追い風だ。価格交渉力が強まり工事採算が改善したほか、工事量も伸びた。18年3月期通期の業績も予想より上振れする可能性がある。8日発表した清水建設の純利益は前年同期比54%増の223億円、大林組は19%増の189億円だった。それぞれ4年連続、3年連続で過去最高を更新した。発表済みの鹿島は66%増の340億円で11年ぶり、大成建設は63%増の197億円で2年ぶり最高益だった。最大の要因は建設事業の利幅の拡大だ。工事の採算性を示す完成工事総利益率(単独ベース)は全社が前年同期を上回った。鹿島は5.6ポイント上昇の20%、大成建設が2.5ポイント上昇の13.4%と大きく伸びた。」(『日本経済新聞』2017.08.09)
●「大和ハウス工業が8日発表した2017年4~6月期連結決算は、純利益が前年同期比27%増の506億円と、同期間として最高だった。店舗や保育所など商業施設の建設が大幅に伸びた。賃貸住宅や戸建て住宅の販売も好調で、マンション事業の低迷を補った。」(『日本経済新聞』2017.08.09)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は、今後の砂防堰堤の新設で、流木を捕捉できる透過構造の採用を原則化する。大量の流木の影響で被害が拡大した7月の九州北部豪雨を教訓にした措置。水管理・国土保全局砂防部の砂防計画課砂防計画調整官と保全課土砂災害対策室長の連名で地方整備局(北海道開発局と内閣府沖縄総合事務局含む)に通知するとともに、砂防堰堤の大半を管理している都道府県にも同様の対策を要請した。石井啓一国交相が4日の閣議後の記者会見で明らかにした。石井国交相は透過構造の砂防堰堤整備の効果について、『土砂と流木を効率的に捕捉できる』と指摘した。…現時点で全国にある砂防堰堤の数は不明だが、先に実用化された不透過構造の施設の方が多いとみられる。透過・部分透過構造の施設も含め砂防堰堤の大半は都道府県が管理している。国交省は、九州北部豪雨の流木被害を教訓に、国が今後行う砂防堰堤の新設では透過構造の採用を原則化することにした。併せて、豪雨発生時に大量の流木が想定される地域にある既設の不透過構造の堰堤では流木捕捉工の設置を積極的に進めることにした。これらの対策を都道府県にも促していく。」(『建設工業新聞』2017.08.07)

その他