情勢の特徴 - 2017年8月後半
●「国土交通省は、下水道分野のインフラ輸出を一段と加速させる。日本企業による海外の下水道施設の工事や運営などの受注に向け、海外事業の最上流段階からの案件形成などに対するコンサルティング支援を官民で強化する。法律で事業活動の範囲が国内にほぼ限定されている日本下水道事業団(JS)の参画を促し、日本企業の海外展開を後押しできるようにする。」(『建設工業新聞』2017.08.21)
●「国土交通省は、ことし3月に施行した、建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律(建設職人基本法)に基づく、基本計画(6月9日に閣議決定)の推進体制として、全国8つの『地方ブロック建設工事従事者安全健康確保推進会議』を立ち上げる方針だ。努力義務となっている都道府県における建設工事従事者の安全および健康の確保に関する計画(都道府県計画)の策定を促すことが狙い。」(『建設通信新聞』2017.08.24)
●「中小企業・小規模事業者の『働き方改革』は待ったなしの状況にある。2本柱の長時間労働の是正と同一労働同一賃金への対応が働き方改革で求められており、これに対応しないと、企業の存続が危うくなるとの指摘もある。業種に関係なく生産性向上や労働者の処遇改善などの取り組みを進める対策を検討するため、厚生労働、経済産業の両省が『中小企業・小規模事業者の働き方改革・人手不足対応に関する検討会』を設置した。検討成果をできるだけ早期にまとめ、2018年度予算の概算要求に盛り込む施策や税制改正要望などへの反映を目指す。」(『建設通信新聞』2017.08.17)
●「北海道建設部は、16年度の工事下請状況等調査の結果をまとめた。それによると、労務単価が公共工事設計労務単価を下回ったケースは303件で、前年度(276件)に比べ27件増加した。下請業者が法定保険に未加入だったケースはゼロ(前年度4件)となり、10年度以降初めて加入率100%を達成した。…労務単価の設定では、労務単価が公共工事設計労務単価と同額以上は60件で、下回っているケースが274件あった。下回っているものについては適切な水準の賃金を支払うよう要請した。発注者から前払金や部分払いの支払いを受けた場合で、下請負人に前払金や部分払いを支払っていないケースは、前年度に引き続きいずれもゼロだった。」(『建設工業新聞』2017.08.17)
●「長野市は、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)で建設業に従事していた者が長野市建設業協会の会員企業に就職した場合、市内への引っ越しに要した費用を補助する制度を創設した。インフラの整備や災害・除雪への対応などを担い、地域に不可欠な建設業の人材不足が深刻化しているため、転入超過の東京圏から人材を確保して地方創生につなげる狙いもある。このような補助制度を設けるのは全国的にも珍しい。制度の名称は『長野市建設労働者就業支援補助金』。2017年度は500万円を予算措置した。19年度までの3年間実施する。」(『建設通信新聞』2017.08.18)
●「国土交通省が設置している『建設業フォローアップ相談ダイヤル』で、社会保険加入対策に関する相談が急増している。今年1~3月に41件だった相談件数は4~6月には146件と3.5倍に増加。加入状況の確認方法や法定福利費を内訳明示した見積書の作成方法など実務的内容を問う相談が数多く寄せられた。加入対策が一段と強化される中、『今後も社会保険加入対策の相談が続くだろう』(土地・建設産業局)とみている。…建設業者からは、『「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」上の「適切な保険」とはどの保険を指すのか』『警備業者もガイドラインの対象となるのか』『事業者が4人以下(加入義務の適用除外)かどうかを確認するにはどうしたらいいのか』など実務的な相談が増えている。社会保険労務士から『未加入の会社を下請として使ったら、何かペナルティーがあるのか』との問い合わせもあったという。法定福利費については、『500万円未満の軽微な建設工事については法定福利費を含めた見積書を提出する必要はないのか』など現場に従事する建設業者の生の声が寄せられている。国交省は元請・1次下請を対象に行ってきた未加入業者の直轄工事からの排除措置を、4月から2次以下の下請業者にも拡大した。こうした政策を踏まえ、地域の専門工事業者なども対象にきめ細かな加入促進策を進めている。」(『建設工業新聞』2017.08.21)
●「国土交通省は、23日の自民党・建設技能者を支援する議員連盟(技能者議連、会長・佐田玄一郎衆議院議員)の総会で、全国建設労働組合総連合(全建総連)が求めた建設キャリアアップシステムの運用に対する助成措置を要望する声に、厚生労働省と連携して支援メニューを検討する方針を示した。田村計土地・建設産業局長が答えた。また、上昇を続けている『公共工事設計労務単価』の引き上げによる効果が、現場で働く技能労働者までしっかり行きわたっていないという指摘に対する措置として、職人への賃金の支払い状況などを探る実態調査を実施。その実態を推し量ことで適切な賃金水準の確保につなげていく考えを示した。」(『建設通信新聞』2017.08.24)
●「厚生労働省は、2018年度予算の概算要求に建設業での安全衛生対策事業として、6事業で計4億9510万円を盛り込んだ。新規に着手するのは2事業。労働安全衛生法で保護対象となっていないことから、これまで積極的な安全衛生対策が講じられなかった一人親方などの業務上災害を防ぐため、『建設業の一人親方などの安全衛生対策支援事業』を始める。『中小専門工事業者の安全衛生活動支援事業』にも着手する。いずれも、『建設工事従事者の安全および健康の確保の推進に関する法律』(建設職人基本法)と同法に基づく基本計画を踏まえた取り組みとなる。また、継続事業の一部拡充として『墜落・転落防止対策検討会』を新たに設置し、墜落・転落災害防止対策の充実・強化に向けた検討を進める。」(『建設通信新聞』2017.08.28)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、久保田俊平議長)は6月10日に実施した『統一土曜閉所運動』で、過去最高の完全閉所率55.2%、閉所率(読替閉所も含む)76.1%を達成したことを明らかにした。前年同月比では完全閉所率が3.6ポイント増、閉所率が5.8ポイント増。完全閉所率と閉所率の両分野で2年連続過去最高を更新した。日建協は調査結果に対し、組合員の意識だけでなく行政・業界団体・企業の危機感の高まりがあると分析した。」(『建設通信新聞』2017.08.29)
●「政府が官民の建設工事を対象に適正な工期設定に向けたガイドラインを策定したのを受け、国土交通省は発注機関や建設業団体にガイドラインを周知した。公共発注機関にはガイドラインに沿った工事実施の徹底と、所管する独立行政法人や民間発注団体への内容周知を要請。建設業団体には下請契約を含めた適正な工期設定などにより、担い手一人一人の働き方改革につなげるよう求めた。」(『建設工業新聞』2017.08.31)
●「大手・準大手ゼネコンの2018年3月期第1四半期決算が10日までに出そろい、26社中6割の16社が利益項目のいずれかで最高益を確保した。工事採算の大幅な改善に加え、受注環境の好転による手持ち工事の増加も利益額を押し上げている。受注も依然として好調に推移しており、第2四半期以降も高利益水準は続きそうだ。営業利益・経常利益・純利益の全利益項目で最高益を確保したのは大林組、鹿島、清水建設、大成建設、西松建設、奥村組、鉄建建設、大豊建設、東鉄工業の9社。営業利益・経常利益は長谷工コーポレーション、前田建設、三井住友建設、戸田建設、安藤ハザマの5社。このほか五洋建設は純利益、フジタは経常利益・純利益が最高額となった。」(『建設通信新聞』2017.08.17)
●「国土交通省は、現場に専任配置された技術者が技術研修への参加で一時的に現場を離れるのが可能であることを周知する文書(9日付)を、建設業団体や各公共工事発注者などに送付した。必要な資格を持った代理の技術者を立てるなどして、適切な施工体制を確保していれば認められる。建設業法上の専任制度の取り扱いを明確化することで、技術者が研さんに向けた研修に参加しやすい環境を整える。…具体的には、代理の技術者を現場に配置し、出先でも連絡が取れたり、必要に応じて現場に戻れたりするなど、適切な施工体制が確保されていれば、技術研さんのための研修、講習、試験などで短期間現場を離れても差し支えない。その場合、発注者、元請、上位の下請などにそうした体制を確保していることへの了解を得ることが前提になる。…専任技術者を兼務することも多い現場代理人について公共工事標準請負契約約款では常駐を求めているが、特段の支障がなく、発注者と連絡が取れるようにしておけば常駐を要しないことも明記されている。」(『建設工業新聞』2017.08.17)
●「6月末時点の手持ち工事高が統計開始以来、過去最高額に達し、月次出来高も2016年6月から前年同月比で増加を続けている建設市場。旺盛な建設需要は、大手元請けで構成する業界団体の受注調査や、国土交通省の建築着工や受注動態調査、さらには建設活動を出来高ベースに置き換えた建設総合統計といった建設生産側に立った統計以外でも明らかになっている。その1つが、民間建築市場で最大の発注者である『不動産業』の設備投資を目的にした資金調達額の動向だ。不動産は17年3月末時点で、この5年間に設備投資目的の新規借入額を1兆2000億円超増加させている。」(『建設通信新聞』2017.08.21)
●「国土交通省は、専門工事企業に関する評価制度の構築に乗り出す。2018年度予算の概算要求に『専門工事企業等に関する評価制度の構築に向けた検討』として5000万円を盛り込んだ。元請企業による専門工事企業の選定方法や、そのポイントを推し量る実態調査を実施。実態調査の結果から具体的な評価項目や手法といった評価制度の“ひな型”を導き出す。」(『建設通信新聞』2017.08.31)
●「JR東海は23日、2027年の東京(品川)~名古屋間開業を目指して建設中のリニア中央新幹線のうち、最難関といわれる『南アルプストンネル』の工事現場を報道機関に公開した。トンネル坑内が公開されたのは、リニア全線を通して初めて。この日公開されたのは、大成建設・佐藤工業・錢高組JVが施工する『山梨工区』の掘削現場。16年10月に早川非常口(山梨県早川町)掘削工事に着手。現在は斜坑から先進坑の掘削へと進んだところで、本年度内には本線のトンネル工事に着手する見通しだ。」(『建設工業新聞』2017.08.24)
●「2020年東京五輪に向け、都が新規に整備する競技会場整備が年度内にすべて着工する見通しとなった。都が設計・施工を担う新規恒久7施設のうち、特に規模が大きい海の森水上競技場、有明アリーナ、オリンピックアクアティクスセンターの3施設は、昨年度に工費の見直しが行われたが、工期は当初計画を維持。どの現場も決して余裕のある工期ではない中、受発注者は労務・安全管理に気を配り、施工能力を結集している。五輪の開会は20年7月だが、19年末までには会場整備をすべて終え、本番に備えたプレイベントを行わなければならない。実質的な工期はもう2年半も残っていないのが現状だ。」(『建設工業新聞』2017.08.28)