情勢の特徴 - 2017年9月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府は日立製作所が英国に建設する原子力発電所について、日本のメガバンクが融資する建設資金を日本貿易保険(NEXI)を通じて全額補償する。先進国向け案件の貸し倒れリスクを国がすべて引き受けるのは異例の措置だ。国内の原発新増設が難しい中、国が全面的な支援に乗り出してメガバンクなどの協力を引き出す狙い。インフラ輸出は中国など新興国勢との競争が激しくなっており、国が他のインフラ案件でも支援拡充に動く公算が大きい。」(『日本経済新聞』2017.09.02)
●「国土交通省は、建設産業は不動産業の海外展開に力を入れる。『2020年に30兆円のインフラシステム受注を目指す』という目標を設定するなど、政府として企業の海外進出を後押しする中、海外展開への基盤をつくり出す『ビジネス環境の整備』と、企業が持つ独自の技術やノウハウを相手国に売り込む『ビジネス機会の創出』に力を注ぐ方針だ」(『建設通信新聞』2017.09.12)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は18年度、発注工事施工時期を平準化する取り組みが遅れている市町村の支援に乗りだす。17年度に先進的な取り組みを行っている地方自治体を調査し、平準化策に関するノウハウや工夫を抽出。取り組みが遅れている市町村への支援に役立てる。発注者支援業務などに携わる専門家を派遣し、最適な年間発注計画の策定に向けた実務的な支援を行う。」(『建設工業新聞』2017.09.08)
●「公共工事の大型化が進んでいる。内閣府が2016年度の公共工事の請負金額を調べたところ、1件当たり10億円以上の工事が全体の25.4%となった。11年から5年間で10ポイント上がった計算だ。20年の東京五輪に向けた開発のほか、高速道路など工期の長いインフラ整備が相次いでいる。10億円以上の工事は12年度から増え始めた。東日本大震災をはじめ大規模災害からの復興をめざし、道路整備などの案件が大型化している。12年12月に発足した第2次安倍政権が防災や減災へ公共投資を推進する『国土強靭化』を政策の柱に据えたことも後押ししている。」(『日本経済新聞』2017.09.13)

労働・福祉

●「企業の利益のうち労働者の取り分を示す労働分配率が下げ止まらない。財務省の4~6月の法人企業統計調査によると、資本金10億円以上の大企業の分配率は43.5%だった。高度経済成長期だった1971年1~3月以来、約46年ぶりの低水準を記録した。人件費は増えているものの、四半期ベースで最高益を記録した収益環境と比べると賃上げの勢いは鈍い。労働分配率は付加価値額に対する賃金などの割合で表す。付加価値額は人件費や経常利益、減価償却費、支払利息等を合計した。季節性をならすため過去4四半期の平均をとった。資本金10億円未満の中堅・中小企業は69.8%で、92年7~9月以来の低さとなった。…収益環境の改善と比べると賃上げのペースは緩やかだ。17年4~6月の経常利益は統計を比較できる1954年以降、四半期ベースで最高を記録した。16年度の内部留保は400兆円を突破し、過去最高を更新した。」(『日本経済新聞』2017.09.04)
●「国土交通省は、ことし3月に施行した、建設工事従事者の安全および健康の確保の推進に関する法律(建設職人基本法)に基づく、基本計画(6月9日に閣議決定)の着実な推進を図る。2018年度予算の概算要求に『建設職人の安全・健康の確保の推進』として4000万円を盛り込んだ。最大のポイントとなる『安全衛生経費』が下請けまで適正に支払われる仕組みを築く」(『建設通信新聞』2017.09.05)
●「厚生労働省が働き方改革関連法案の全体像を固めた。時間でなく成果で評価する脱時間給制度では、長時間労働の是正に向け、休日確保の義務付けなど連合が求めた修正案を全て受け入れる。残業時間の上限規制や正規と非正規の不合理な待遇差をなくす『同一労働同一賃金』の導入などとあわせ、秋の臨時国会に関連法案を一本化して提出、原則2019年4月の施行を目指す。厚労省は8日の労政策審議会(厚労相の諮問機関)で法案の要綱案を示す。脱時間給を巡っては、連合の神津里季生会長が7月、安倍晋三首相に脱時間給などの政府案の修正を要請。要請後に再び反対姿勢に転じたが、厚労省は連合案の採用を決めた。」(『日本経済新聞』2017.09.07)
●「国土交通省は、社会保険等の加入の徹底・定着へ、継続して対策を推し進める方針だ。手段の1つとして、開発作業を進めている『建設キャリアアップシステム』(2018年秋の稼働開始を予定)の活用を見据える。加入状況など、システムに蓄積される情報をどう効果的に活用するか、18年度に関係者で構成する検討会議を立ち上げる見通し。社会保険の加入徹底・定着として、18年度予算に4400万円を要求。さらなる徹底・定着を図っていくための取り組みとして、小規模事業者や現場監督を対象とする研修の実施や、社会保険労務士など専門家によるきめ細かい相談支援の体制整備、建設キャリアアップシステムの活用方法の検討などを盛り込んだ。企業別の加入率が96%まで上昇するなど、建設産業界の総力を挙げて取り組んできた“未加入対策”が一定の成果を見せる中で、その手綱を緩めることなく、継続して対策を推し進める。加入の徹底・定着で技能労働者の処遇の改善と、そもそもの目的である適正に保険料を負担する企業による公平な競争環境の構築につなげる。」(『建設通信新聞』2017.09.07)
●「福島労働局は11日、今年1~6月の半年間に東京電力福島第1原発事故の除染作業に携わった82事業者のうち、半数を超える45事業者に労働基準法や労働安全衛生法の違反があり、是正指導したと発表した。違反は73件で、作業時に必要な防じんマスクや線量計を身に着けていない安全衛生関係が58件、時間外割増賃金の不払いといった労働条件関係が15件だった。第1原発の廃炉作業でも131事業者のうち52事業者で、作業計画を作らないままフォークリフ卜を使用したなど77件の違反があった。福島労働局監督課の宍戸敦主任監察監督官は『違反率は下がってきているが、依然として高い水準にある。指導監督を続けていく』と述べた。」(『日本経済新聞』2017.09.12)
●「厚生労働省は、建設業など人材不足分野に特化したハローワークにおける就職支援の取り組みを2018年度に拡充する。雇用吸収率の高い分野へのマッチング支援を強化するため、人材確保支援の総合窓口となる『人材確保対策コーナー』を全国84カ所のハローワークに設置し、関係団体などと連携して人材確保支援策を実施する。コーナーには、求職者を支援する『就職支援ナビゲーター』と、求人者(企業)を支援する『就職支援コーディネーター』の専門相談員を配置して、求職者、求人者双方にきめ細かく対応するプロジェクトの実施を通じて、求職者の建設分野への就職につなげる。」(『建設通信新聞』2017.09.12)

建設産業・経営

●「竹中工務店の2017年12月期中間決算は、連単ともに最高益となった。単体の最高益は93年以来24年ぶり、連結の営業・経常利益は3年連続の更新となった。工事採算の大幅な上昇が利益を押し上げ、完成工事総利益(工事粗利)率は単体が前年同期比4.2ポイント増の15.4%、連結が3.1ポイント増の14.5%といずれも過去最高を記録。通期は連単ともに増収を見込み、営業利益は減少するものの、経常・純利益は最高益を更新する見込みだ。」(『建設通信新聞』2017.09.01)
●「国の関係省庁連絡会議が『建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン』を策定するなど、建設業における『働き方改革』の取り組みが着実に推し進められる中、焦点となりそうなのが、いわゆる“民民契約”における対応だ。国土交通省は『先導的モデル事業』の実施など、民間工事への対策の強化に乗り出す。建設産業における働き方改革の推進として、2018年度予算の概算要求に総額2億円を計上。重点施策の1つに『民間発注工事等における働き方改革の推進』を盛り込んだ。『週休2日』、モデル工事の実施など、直轄工事を中心とする公共分野で積極的な対応が進む中、民間工事に、その取り組みを普及させることが狙い。休日の確保(週休2日の推進)を前提とする工事発注(適正な工期設定)や施工時期の平準化、ICT化(生産性の向上)など、民間工事を含めたすべての建設工事で受発注者が取り組むべき“基本原則”を示す『適正な工期設定のためのガイドライン』の浸透を促す。出発点として、不動産や鉄道、電力、ガスといった民間工事の発注者団体や建設業団体と連携して、それぞれの業態に応じた推進体制(連絡会議の立ち上げ)を構築。各分野の発注者を対象に週休2日の確保や、それに伴う適正な工期設定、工程管理を後押しする『先導的モデル事業』を展開する。」(『建設通信新聞』2017.09.04)
●「積水ハウスが7日発表した2017年2~7月期連結決算は、純利益が前年同期比17%増の610億円と過去最高だった。不動産の取引事故で55億円を特別損失に計上したが、オーストラリアなど国際事業の大幅な増益で補った。開発物件の売却も貢献した。この期間での最終増益は8年連続となった。」(『日本経済新聞』2017.09.08)
●「東京商工リサーチは、8月の建設業倒産(負債額1000万円以上)件数が前年同月比2.0%減の142件と2カ月ぶりに前年同月を下回ったとした。負債総額も13.0%減の137億9800万円で4カ月連続の減少。平均負債額も11.0%減の9700万円となった。ただ業種別では、土木工事業が44.4%増、塗装工事業50.0%増、鉄骨・鉄筋工事業166.6%増と一部業種で増加した。また、8月の全倒産件数に占める建設業倒産の構成比率は22.2%と、2016年12月以来8カ月ぶりに全体の2割を占めた。東京商工リサーチでは、公共事業との関係が強い土木工事業の倒産が8月に急増したことも踏まえ、『今後の推移が注目される』とみている。」(『建設通信新聞』2017.09.13)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は、既設ダムの大半を管理している都道府県に効率的に治水機能を高める『ダム再生』としての再開発工事を促す。都道府県ごとに再開発を行うダムやその水系の候補、具体的な再開発の工法などを示した『ダム再生計画』の策定を進めてもらう。18年度に社会資本整備総合交付金の現行支援メニュー『堰堤改良事業』に計画策定にかかる経費を追加する。18年度予算概算要求に交付金の新メニューの経費を計上した。ダム再生はストックの有効活用策の一つ。運転を止めずに治水機能の向上や長寿命化を実現する比較的簡易な改良工事や、天候の変化に柔軟に対応して貯水容量を調節する取り組みなどで、代表的な改良手法には堤体のかさ上げと放流設備の増強がある。」(『建設工業新聞』2017.09.14)

その他