情勢の特徴 - 2017年9月後半
●2018年度予算概算要求で総務省は、地方の一般財源総額(地方税や地方交付税など自治体の裁量で使える財源)を「仮置き」の数字として、17年度予算比で0.4兆円増の62.5兆円程度と見込んだ。実質的な地方交付税は同0.6%増の20.5兆円(このうち交付税の振り替えの臨時財政対策債は4.6兆円)としている。…この間、安倍政権が自治体に迫ってきた行政サービスや公共施設などの集約化・民間委託などをさらに進める内容となっている。総務省は、中心都市が近隣自治体と連携し、圏域全体の都市機能の集約や行政サービス行う「連携中枢都市圏」など「新たな圏域づくり」を推進するため6.3億円(17年度比1億円増)を盛り込んだ。国交省は公共施設などを中心地域に集約するコンパクトシティ推進のため182億円を要求している。いずれも中心以外の周辺地域の衰退や大企業本位の大型開発につながりかねない危険を抱えるものである。公共施設の建設、管理運営を民間に委ねる「PPP/PFI」推進のためとして国交省は17年度比1.5倍の409億円、内閣府も同2倍の3.3億円を盛り込んだ。政府は6月の法改正で公権力の行使を含む自治体の窓口業務を独立行政法人に委託することを可能とし、そのモデル事業などに1億円を計上。独立行政法人であっても違法な業務請負の恐れが伴い、窓口業務を後退させる危険がある。(『しんぶん赤旗』2017.09.21より抜粋。)
●「政府は、成長戦略の柱となるインフラ輸出を促進するため、迅速化に向けた施策を強化する。上流段階から建設会社と発注者、コンサルタントが協働する『包括的建設サービス(WCS)』の導入などを今後の円借款事業に適用する。すべての円借款案件について、早期段階から迅速化策の適用を検討し、可能なものから実施していく。21日に東京都千代田区の経団連会館で開かれたインフラ輸出施策に関する説明会で和泉洋人内閣総理大臣補佐官がさらなる迅速化に向けた追加策を提示した。和泉補佐官は『相手国から日本は確実だが遅いと言われることがこれまで多かった。発展途上国のリーダーは自身の政権中に開発案件を成功させることが至上命題であり、リーダーシップが強いので意思決定も早い。首脳レベルでの意思決定をうまく活用することで、さらなる迅速化が図れる』と説明した。」(『建設通信新聞』2017.09.22)
●「横浜市は18年4月1日以降に契約する委託業務から、賃金変動を反映した契約変更に応じる制度を取り入れる。工事契約で導入している『全体スライド条項』を準用。複数年度にわたる労働集約型の委託契約で賃金などの変動が一定水準を超えた場合、契約金額の変更を可能にする。契約変更は契約から1年経過以降となるため、実施は19年度からとなる。適用対象となるのは、委託期間が複数年度にわたり、人件費の割合が高い業務の契約で、『横浜市長期継続契約を締結することができる契約を定める条約』第2条第2号のイ、ウに該当する契約(複写サービス、熱供給サービスを除く)などとしている。」(『建設工業新聞』2017.09.21)
●「東京都が豊洲新中央卸売市場(江東区)の安全性向上に向け発注した追加対策工事4件の入札手続きが、参加申請者が集まらず中止となった。小池百合子知事は、20日に開会した定例都議会の所信表明で『市場移転に向けたステップを着実に踏んでいく』と強調したが、移転のプロセスは出はなをくじかれた形。都は発注条件などを精査した上で速やかに再公告の手続きに移る。中止したのは、財務局が19日に入札公告した▽29豊洲市場5街区地下ピット床面等追加対策工事▽同6街区地下ピット床面等追加対策工事▽同7街区地下ピット床面等追加対策工事▽同6街区地下ピット換気設備等追加対策工事―の4件。…中止された4件のうち3件は、豊洲市場の地下空間(地下ピット)の床面へのコンクリート打設などがメインとなる工事だった。財務局は各工事の申請者数を明らかにしていないが、この床面の追加対策は業者側から特に敬遠された可能性がある。同時に発注された別の換気設備工事2件と、地下水管理システムの機能強化工事3件はいずれも1者入札ではなかったからだ。」(『建設工業新聞』2017.09.26)
●「ことし4月から、直轄工事を対象にすべての下請業者を社会保険等への加入業者に限定する、未加入業者の『排除』に乗り出した国土交通省。1次下請業者までを対象にしてきた従来の対応からすべての下請業者へと、その対象を拡大して6カ月が経過した。10月からは対策の“本丸”とも言える制裁金や指名停止、工事成績評定での減点といった元請企業に対するペナルティーが適用されることになる。直轄工事における取り組みは『4月』と『10月』の2段階で実施。実質的な“措置”となる制裁金や指名停止、工事成績評定での減点といったペナルティーは10月1日以降に入札契約手続きを行う工事から適用する。」(『建設通信新聞』2017.09.29)
●「建設現場で墜落・転落による死亡災害が相次ぎ発生したことを受け、国土交通省は14日に建設業団体に対し安全確保に関する注意喚起を行った。各団体は今後、会員企業にそれぞれの工事現場で安全対策を徹底するよう改めて周知する。厚生労働省がまとめた労働災害発生状況によると、1~7月の建設業の死亡者数(速報値)は前年同期と比べて10.3%増の150人と大幅に増えている。8月にはビルの新築工事現場で、今月に入ってからも高速道路の橋梁の建設現場でそれぞれ転落による死亡事故が起きた。事態を重く見た国交省では、田村計土地・建設産業局長から日本建設業連合会(日建連)、全国建設業協会(全建)、全国中小建設業協会(全中建)、建設産業専門団体連合会(建専連)の4団体に、石川雄一道路局長から日本橋梁建設協会(橋建協)、プレストレスト・コンクリート建設業協会(PC建協)の2団体にそれぞれ安全対策の徹底を要請した。」(『建設工業新聞』2017.09.19)
●「2014年3月卒業者で建設業に就職した3万8862人のうち。就職後3年以内に仕事を辞めたのは1万5119人で、卒業後3年以内離職率が38.9%となったことが、厚生労働省が15日にまとめた新卒者離職状況から明らかになった。前年(13年3月)の卒業者と比べ離職率はわずかだが0.6ポイント低下した。このうち高卒者は1万4958人の就職に対し、7140人が仕事を辞め、3年以内離職率は0.6ポイント減の47.7%となった。前年と比べ離職率は下がったものの、ほぼ2人に1人が離職している状況は変わっていないといえる。全産業の高卒離職率40.8%と比べ、建設業の離職率は6.9ポイントも高く、担い手を確保しても、定着が困難であることを改めて浮き彫りにしている。」(『建設通信新聞』2017.09.20)
●「建設産業専門団体連合会(建専連)の才賀清二郎会長が日刊建設工業新聞のインタビューに応じ、建設現場の週休2日実現に向けて『オールジャパンで取り組むべきだ』と強調した。政府の働き方改革を受けて日本建設業連合会(日建連)や全国建設業協会(全建)などゼネコン側が対応に乗りだしていることに賛同。現場で働く技能者を抱える専門工事業側も『月給制に移行するなど対応したい』と前向きな姿勢を示した。」(『建設工業新聞』2017.09.20)
●「経団連は19日、働き方改革を進めるに当たり、長時間労働につながる商慣行を是正するための共同宣言をまとめた。契約時の適正な納期の設定、仕様変更や追加発注の場合の納期の見直しなどをうたっており、消費者や取引先の理解を得ながら、経済界として対応を進める考えを打ち出している。宣言には、日本商工会議所など主要経済団体に加えて、日本建設業連合会(日建連)、全国建設業協会(全建)、不動産協会といった業種別経済団体など110団体が参加している。宣言は、長時間労働が前提の企業風土や職場環境を改善するのが狙い。見直しに取り組む企業が増えているものの、推進には商慣行の是正が必要と判断し、参加した団体が配慮したり、対応したりする事項を列挙している。」(『建設工業新聞』2017.09.21)
●「建設業の労働災害における死亡者数が大幅に増えている。厚生労働省がまとめた2017年1-8月の労働災害発生状況(速報、9月7日時点)によると、建設業の休業4日以上の死傷者数は、前年同期と比べ0.1%減(10人減)の8566人だったものの、うち死亡者数は186人で、20.0%増(31人増)となった。死亡者数が前年同期比で増えたのは3期連続で、その増加率も3.4%(1-6月)、10.3%(1-7月)、20.0%(1-8月)と大きくなっている。…1-8月の建設業の死傷者事故別人数は、『墜落・転落』が33.7%を占める2891人、『はさまれ・巻き込まれ』が946人、『転倒』が869人、『飛来・落下』が864人、『切れ・こすれ』が785人などとなっている。…『飛来・落下』は54人、『動作の反動・無理な動作』が45人、『はさまれ・巻き込まれ』が29人、それぞれ増えている。」(『建設通信新聞』2017.09.22)
●「日本建設業連合会(山内隆司会長)は22日の理事会で、働き方改革の実現に向けた諸施策を業界全体で総合的に推進するための基本的な考えを提示した『働き方改革推進の基本方針』を決めた。10分野、計26の推進方策を、日建連が具体策や施策展開を定め、会員企業を挙げて推進すべき事項など3つに区分して整理している。会員企業を挙げて推進すべき事項には、週休2日の推進や総労働時間の削減、建設キャリアアップシステムの活用などを位置付けた。基本方針では働き方改革に向けた推進方策を、▽推進の具体策や施策展開を日建連が定め、会員企業挙げて推進すべき事項(A)▽日建連が示す方向に従い、それぞれの会員企業が取り組むべき事項(B)▽会員企業がそれぞれの企業展開として独自に取り組むべき事項(C)――に区分して整理し、各方策の取り組み方針を示している。週休2日の推進では、12月に策定する『週休二日実現行動計画』に基づき、会員一丸となって土日閉所を原則とした休日拡大に会員が一丸となって取り組む。請負契約の締結に当たっては政府が策定した『建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン』に沿って、工期の考え方を発注者に適切に説明し、適正な工期設定に努める。技能労働者の処遇改善に向けては、賃金水準の向上、社会保険加入促進を引き続き推進する。建退共制度の適用促進や雇用の安定化(社員化)、重層下請構造の改善にも力を入れる。建設キャリアアップシステムについては、18年秋の先行運用、19年度からの本運用に向けてシステムの周知や協力会社と連携した技能労働者の登録推進、会員企業のシステム導入・活用の促進に向けた取り組みを進める。」(『建設通信新聞』2017.09.25)
●「新国立競技場の工事現場で管理業務に従事していた入社1年目の建設会社の男性社員(当時23)が自殺した問題で、東京労働局は29日、工事現場で業務にあたった762事業所のうち37事業所が労使協定の上限を超えるなどの違法な時間外労働を従業員にさせていたと発表した。管轄する新宿労働基準監督署が同日までに是正勧告した。東京労働局によると、昨年12月~今年7月に工事現場に入った762事業所に、従業員の労働時間を書面で報告するよう求めた。1カ月の時間外労働が80時間を超えていたのは41事業所で、元請けや一次下請けの長時間労働が目立った。」(『日本経済新聞』2017.09.30)
●「全国建設業協会(近藤晴貞会長)は21日の理事会で、地方建設業が目指すべき働き方の指針となる『働き方改革行動憲章』を策定した。長時間労働の抑制や生産性向上、適正価格・工期による受注の徹底など10項目を改革実現に向けて実現すべき取り組みとして盛り込んでいる。今後、全建、各都道府県建設業協会、会員企業は改革の実現に向けて検証を最大限尊重した取り組みを積極的に展開する。同日の協議員会で近藤会長は『人材獲得競争に勝ち抜き、将来にわたって地域に貢献していくための指針として策定した。改革に一丸となって取り組む』と決意を表明した。」(『建設通信新聞』2017.09.22)
●「国土交通省が19日に発表した7月分の建設総合統計によると、国内建設工事の手持ち工事高が前月に続いて、2009年1月の調査開始以来の最高を更新した。7月末時点の手持ち工事高は前年同月比11.3%増の33兆8432億円。6月末時点と比べても、3000億円以上の増加となっている。」(『建設通信新聞』2017.09.22)
●「日本建設業連合会(山内隆司会長)は、適切な労務賃金水準の確保に向けた今後の取り組みを22日の理事会で決めた。一部の調査で建設技能者の平均賃金が下降傾向にあるとの結果が出ていることなどを踏まえ、労務賃金の改善を改めて会員企業に要請する。下請発注に当たっては、法定福利費など処遇改善に必要な経費が適切に反映された請負代金の見積もり提出を求め、会員企業はこれを尊重する。公共工事については、2次以下の下請けに対しても1次を通じて見積り依頼時に公共工事設計労務単価を交付し、労務賃金の改善を図る。適切な賃金確保に向けた取り組みは、▽下請発注での合理的な請負代金の決定▽公共工事での適切な労務賃金の支払い要請▽優良技能者認定制度の推進▽適正な受注活動の徹底▽労務賃金の状況調査の実施――の5つ。」(『建設通信新聞』2017.09.25)
●東京都は16日、築地市場(中央区)の豊洲新市場(江東区、東京ガス工場跡地)への移転計画をめぐる築地市場業界団体代表との協議会を開いた。あいさつした村松明典都中央卸売市場長は、新市場の売場棟など96店舗でカビが多量発生した問題を陳謝し「清掃が難しい場合は(備品の)交換などについて個別に相談し対応する。空調運転で湿度管理を徹底し再発防止に努める」と表明。土壌と地下水を環境基準以下にする「無害化」方針を撤回して行う、地下空間のコンクリート敷設などの「追加対策」が来年6月上旬に完了の見込みだとして、「6月上旬から秋にかけて、移転に向けた環境を整え、移転時期の協議を進めたい」と述べた。水産仲卸業者でつくる東京魚市場卸協同組合の早山豊理事長は「仲卸として『(築地に)帰ってきたい』という人もたくさんいる」と強調し、築地「再開発」の「全体像がなかなか見えない」と述べ情報を明らかにするよう要望。予定地で土壌汚染対策後最大となる環境基準の120倍のベンゼンが検出されたことにふれ、「多くの方が豊洲市場の環境問題に非常に不安を持っているのは事実。都は真摯な対応を」と話した。豊洲移転を推進してきた都水産物卸売業者協会の伊藤裕康会長は、以前から要望書を出しても都から返答がなく、追加対策の補正予算にも反映もされていないとして「全く憤慨に堪えない。もう少し真面目に考えて、扱ってほしい」と要望。「誠意ある返事がなければ、実際に豊洲へ移転することもできかねることになるかもしれない」と訴えた。(『しんぶん赤旗』2017.09.18より抜粋。)
●「政府は15日、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う期間困難区域に設ける特定復興再生拠点区域について、福島県双葉町の申請計画を認定した。特定復興再生拠点の人手は同町が第1号となる。認定を受けた約560ヘクタールについて、国、県、町が一体的に道路、上下水道などのインフラ復旧や除染・家屋解体、新たなまちづくりなどを進め、2020年春までに避難指示解除を目指す。事業費は未定としている。既存市街地である街中再生ゾーン(約210ヘクタール)を中心に、新たな生活の場となる新市街地ゾーン(約60ヘクタール)を創設する。隣接する避難指示解除準備区域で進めている産業・雇用創出の取り組みと連携する産業創出ゾーン(約55ヘクタール)や再生可能エネルギー活用・農業再生ゾーン(約90ヘクタール)のほか、常磐自動車道双葉IC方面から訪れる人に、まちの復興を示す耕作再開モデルゾーン(約140ヘクタール)などの土地利用を想定する。」(『建設通信新聞』2017.09.19)
●「環境省は、2011年3月の東日本大震災で起きた福島第1原発事故で福島県内に飛散した放射性物質の除染廃棄物を最終処分するまで保管する中間貯蔵施設(福島県双葉町、大熊町両工区)の建設計画で、年度内に双葉町工区で着工する可燃性除染廃棄物の『減容化施設』の施工者を決める入札手続きを10月中旬に公告する。詳細設計も工事と一括して発注する。双葉町工区は減容化施設を造るのは今回が初めてとなる。双葉町工区の減容化施設は、同町細谷地区の敷地約13ヘクタールに建設する。減容化施設は、草木などの可燃性除染廃棄物の仮設焼却施設(処理能力1日当たり約150トン)と、焼却過程で出る灰などの仮設灰処理施設(同)で構成する。可燃性除染廃棄物や、その焼却過程で出る灰の受け入れヤードをそれぞれ設置するほか、いずれも焼却炉や排ガス処理設備、管理棟などを設ける。」(『建設工業新聞』2017.09.20)