情勢の特徴 - 2017年10月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、地方自治体の技術者不足への支援策として、自治体の課題に応じた技術面や体制整備の支援ができる民間技術者の派遣制度を構築する。状況に適した新技術・手法の導入検討や維持管理の要求水準の設定などを適切に行える民間人材の派遣を2018年度から施行。恒常的な制度とするため、インフラメンテナンス国民会議での検討を通じて、水平展開できる運用方策をまとめる。自治体小野インフラを総合的にマネジメントできる人材を民間から補うことで、持続可能なインフラメンテナンスの実現を目指す。自治体が抱える課題に対応する新技術や制度を実装できる民間技術者(インフラメンテナンスコーディネーター)を、公募で選定した複数の自治体に派遣し、先導的なモデル事業として実施する。事例調査・導入検討や技術者派遣を支援する各ブロックの協議会などに関する検討はインフラメンテナンス国民会議で進める。」(『建設通信新聞』2017.10.04)
●「国土交通省が推進している各ICT(情報通信技術)活用工事を、地方自治体や地域の中小建設業者に普及させるためのモデル作りが進んでいる。茨城県が発注したモデル工事(宅地造成)では、ICT建機の導入で丁張り作業が削減され、土工の施工時間が3~5割短縮。熟練オペレーターと同等の施工精度があることも確認した。モデル現場で見学会などを開き、普及に向けた場としても活用した。…16年度から前倒しで支援してきた茨城県は、つくば市内の宅地造成工事2件(D街区とF街区)をモデル工事として実施した。F街区(施工者・新みらい)は、掘削土量1万8480立方メートル、路体盛り土2万2900立方メートルを施工。現場上空に高圧線があるため、起工測量には無人航空機(UAV)ではなく、地上レーザースキャナー(TLS)を採用。従来のトータルステーション(TS)による測量は6.0日を想定していたが、TLSを用いた測量は1.5日で行った。ICT建機を導入すると、丁張り設置などの待ち時間がなくなる。120平方メートル当たりの作業時間を見ると、従来施工が39分(試算値)、ICT施工が28分(実績値)となった。ICTブルドーザーを活用し施工範囲を大きく分割したり、押し土に通常ブルドーザーを用いたりした結果、当初計画で約60日だった土工事の施工が約1カ月で完了した。ICT建機の施工精度は、熟練オペレーターと大きな差がなく、丁張りがなくても従来と同等の仕上がりが確保できた。ICT建機と丁張りとがふくそうする作業がないため、安全性も高まった。」(『建設工業新聞』2017.10.05)
●「東京都は、建設工事を対象に6月から試行している入札契約制度改革の適用範囲を拡大することを決めた。これまで試行対象としてきた財務局契約案件に加え、公営企業局(交通、水道、下水道の3局)の案件でも▽予定価格の開札後公表(事後公表)▽1者入札の手続き中止▽JVと単体双方の混合入札促進▽低入札価格調査制度の適用拡大―の4方針を適用する。予定価格250万円超の工事では、すべての部局で予定価格を事後公表に切り替える。試行拡大は、30日以降に一般競争入札か希望制指名競争入札で発注する案件で実施する。」(『建設工業新聞』2017.10.10)
●「国土交通省は、コンクリート工の生産性を高める取り組みの1つとして、プレキャスト製品の利用を拡大する方針だ。仮設費など、直接工事費(本体費)以外の要素を考慮した比較によって、一定の規模までは現場打ちコンクリートよりもプレキャスト製品の採用に優位性があると判断。一定規模という“ライン”を引きながらも、直轄工事を対象にプレキャスト製品の積極的な活用に踏み出す。10日の『コンクリート生産性向上検討協議会』(会長・前川宏一東大大学院教授)に今後の取り組み方針を提示した。流動性を高めた現場打ちコンクリートの活用など、昨年度から積極的に取り組んできた現場打ちコンクリートにおける生産性を高める技術・工法の普及を継続して推し進める一方で、新たにプレキャスト製品の利用の拡大を打ち出した。」(『建設通信新聞』2017.10.12)

労働・福祉

●「建設現場の土曜閉所をはじめとする週休2日を実現しようと、労働組合の活動が拡大してきた。6団体で構成する建設産業労働組合懇談会(建設産労懇、会長・久保田俊平日本建設産業職員労働組合協議会〈日建協〉議長)は、11月11日に行う『統一土曜閉所運動』への理解を求める活動を強化。土曜を当たり前に休む環境を整えようと構成団体が対応を進める。建設産労懇は、6、11月の第2土曜を運動日にした統一土曜閉所運動を展開している。構成団体のうちゼネコンの労働組合が主体の日建協は6月の運動の全体閉所率が過去最高の76.1%に達した。久保田議長は時間外労働の罰則付き上限規制の導入に備え、『「休まなければならない」という企業が増えている』と受け止める。」(『建設工業新聞』2017.10.02)
●「環境省は、『災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアル』を改訂した。東日本大震災や熊本地震などの大規模災害経験を踏まえ、東日本大震災での大規模津波による建築物流出時への対応や石綿含有成形板など特定建築材料以外の石綿含有建築材料(レベル3建材)への対応など、改訂前のマニュアルでは想定していなかった状況に対応するため、これらに関する内容を新たに記載するとともに、記載内容を拡充した。マニュアルは、大気汚染防止法に基づく131の政令市に送付、活用を促した。また、建設業や解体工事業などにも周知し、今後の発生が想定される災害時での活用を促す。」(『建設通信新聞』2017.10.03)
●アスベスト(石綿)工場で働き中皮腫などの健康被害を受けた元労働者や遺族に対し、厚生労働省は2日、救済策として国が損害賠償金を支払うには訴訟での和解成立が必要だとして、国家賠償訴訟を起こすよう個別に呼び掛けると発表した。石綿被害の救済が思うように進まず、国が自ら国家賠償を促す異例の対応に踏み切ったもの。賠償金受け取りの可能性があるのに訴訟を起こしていない元労働者は2314人に上り、まず名前や住所が判明している756人に訴訟を促すリーフレットを発送する。(『しんぶん赤旗』2017.10.03より抜粋。)
●「全国建設業協会(近藤晴貞会長)は、各建設業協会の会員企業を対象に実施している『働き方改革の推進に向けた取り組み状況等に関するアンケート』の中間報告をまとめた。各社の取得日数が少ない職員上位3人を対象にした年間休日数についての質問では、26.2%が70日以下と回答し、有給休暇取得日数は『ゼロ』が26.4%を占めた。ともに技術者の割合が7割以上と最も多い。全建は『今後の改善に向けた具体的課題が明らかになった』とし、4日から始まる国土交通省各地方整備局などとの地域懇談会・ブロック会議での議論に活用する。調査では、47都道府県建協の会員全社を対象に8月1日現在の状況を質問。地域懇談会などの開催を前に、8月末時点で回答があった3106社の回答を中間報告としてまとめた。中間時点での回答率は16.2%。10月末に回答の提出を締め切り、11月中をめどに最終結果をまとめる。全建が働き方改革に特化したアンケートを実施するのは今回が始めて。各社の取得時間が多い上位3人を対象にした月間残業時間の状況では、69.1%が44時間以下に収まっているものの、11.0%が80時間以上と回答している。100時間以上との回答は5.4%だった。16年の年間残業時間については、71.6%が360時間未満と回答し、720時間以上との回答は6.8%あった。職種はともに技術者が7割以上を占める。勤務時間の管理方法については、『本人の申請』が61.3%を占め、タイムカードや勤怠システムの活用は31.6%にとどまっている。週休日の実施状況は『おおむね4週6休』との回答が55.1%で最も多い。」(『建設通信新聞』2017.10.04)
●「全国建設業協会(全建)は3日、働き方改革に関する初の調査結果を発表した。会員企業の残業時間が多い技術者上位3人が回答した月間残業時間は80時間超が11.7%、年間では720時間以上が7.8%だった。休日は4週6休以下が71.2%を占め、4週8休は16.3%にとどまった。時間外労働の罰則付き上限規制の導入を控えており、全建は会員企業に対応を促すと同時に発注機関の理解・協力を得る活動も進める。」(『建設工業新聞』2017.10.04)
●「全国建設業協会(全建)の会員企業による職員の賃金改善の取り組みが進んでいる。全建が会員企業に行った働き方改革関連の調査(中間報告)によると、直近1年間で『基本給・一時金とも引き上げた』が20.6%、『一時金だけ引き上げた』が8.1%、『基本給を引き上げた』が49.9%で、引き上げが全体の80%近くを占めた。15年、16年の調査でも引き上げたとの回答が70%を超えており、依然処遇改善に前向きなことがうかがえる。」(『建設工業新聞』2017.10.10)
●「新国立競技場の施工管理業務に従事していた建設会社の新人男性社員(当時23)が自殺した問題で、新宿労働基準監督署(東京・新宿)が、男性が自殺したのは極度の長時間労働が原因だとして労災認定したことが10日、分かった。労基署は自殺するまでの1カ月間の時間外労働が約190時間だったと認定した。認定は6日付。遺族側の代理人弁護士が都内で記者会見し、明らかにした。弁護士によると、男性は昨年4月に地盤改良工事などを請け負う三信建設工業(東京・台東)に入社。昨年12月に新国立競技場の施工管理業務に従事した。建設現場では、工期の遅れから深夜労働や徹夜の作業も珍しくなく、男性は業務上のストレスで精神疾患を発症。今年3月に失踪し、4月に長野県で遺体で見つかった。精神疾患の発症による労災認定の基準では、1カ月に時間外労働が160時間を超える場合などを『極度の長時間労働』とし、強い心理的負担があったとして労災認定が決まる。男性はこれに該当した。労災認定を受けて男性の両親は『このような不幸を二度と繰り返さないよう、深い反省のもと社員の労働環境の改善に力を尽くしていただきたい』とするコメントを公表した。」(『日本経済新聞』2017.10.11)
●「関東甲信地域1都8県の行政機関や建設業関係団体で組織する関東ブロック建設工事従事者安全健康確保推進会議が10日、発足した。会長の多田治樹関東地方整備局建政部長は『人材で成り立つ建設産業の生産性向上と働き方改革は、従事者の安全と健康確保が大前提になる』と強調し、『建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律』(建設職人基本法)に基づく計画の策定を各都県に促した。同会議は、国の基本計画を推進するため、国土交通省などが全国8ブロックに設置する『地方ブロック建設工事従事者安全健康確保推進会議』の1つ。関東が5カ所目。さいたま市のさいたま新都心合同庁舎2号館で開かれた初会合であいさつした多田建政部長は、建設業の労働災害による死亡者数が2002年以降の10年間でほぼ半減した一方、一人親方を含めた建設工事従事者全体では依然として年間400人程度が死亡していると説明。『労働災害は長期では改善傾向にあるが、安全性確保にはまだまだ厳しい状況だ』と指摘し、一層の実効性ある取り組みを進めるために各都県の計画策定が必要と訴えた。同法は都道府県計画を努力義務としている。」(『建設通信新聞』2017.10.11)
●「2018-22年度の5年間を期間とする『第13次労働災害防止計画』(13次防)の策定に向けた検討が労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の安全衛生分科会で始まった。厚生労働省は分科会に13次防策定に向けた論点を提示。建設業は死亡災害件数が依然として業種別で最も多いことから、引き続き重点業種に指定し、死亡災害削減目標を設定する方針を示した。分科会は今後、論点をベースに議論を重ね計画案をまとめる。13次防は17年度第4四半期に策定し、公示する。建設業の死亡災害削減目標は、12次防(13-17年)では5年間で『12年比20%以上減少』と設定している。16年は12年比19.9%減となり、厚労省は7月の時点で目標達成見込みと評価していた。17年1-8月の状況を見ても、12年同期比で20.2%減と達成しているものの、前年同期比でみた直近の死亡者数が増えていることから、目標達成に向け、現在は黄信号がともっている。」(『建設通信新聞』2017.10.12)

建設産業・経営

●「日本埋立浚渫協会(埋浚協、清水琢三会長)は、国土交通省の各地方整備局などと意見交換会を行うに当たって実施した会員アンケートの結果を明らかにした。工期について、『計画段階から不足』という回答が48%を占め、不足を発注段階で回避できると見る意見が少なくなかった。現場の完全週休2日制の実現に向け、技能者の労務賃金の改善に必要な額を調査したところ、回答の平均は『16%アップ』となった。会員企業が16年4月~17年3月に行った1億円以上の港湾・空港を対象に調査を行った。…工期が不足した要因として最も多く挙げられたのは『天候不良』だった。2番目以降は▽気象・海象条件の悪い期間が回避されていない▽関連工事との間に施工時期、場所の制約があった▽施工条件の相違▽事前協議の遅延・未了―の順となっている。2番目以降について、埋浚協は『発注段階の対処が可能』として意見交換会で現場の実態を説明し、対応を求める方針だ。『荒天リスク精算型工事』については、試行工事のすべてで精算変更が行われたが、休日取得と十分な精算変更が達成できた工事はともに全体の3分の2だった。」(『建設工業新聞』2017.10.06)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「原子力規制委員会は4日、東京電力柏崎刈羽発電所6、7号機(新潟県)の再稼働の前提となる安全審査で、事実上の合格証となる『審査書案』をまとめた。一般からの意見公募などを経て年内にも正式合格する。福島第1原発事故を起こした東電の原発が合格内定するのは初めて。福島第1原発と同じ沸騰水型の合格も初めてとなる。」(『日本経済新聞』2017.10.04)
●「国土交通省は、建築基準法の改正に向けた有識者による議論を開始した。既存ストックの有効活用や木造建築物の促進に向けた耐火規定、大規模火災対策としての安全確保措置などを柱に規制と緩和の両面からの措置を検討し、基準の合理化を図る。2017年度内に有識者による検討会で見直しの方向性を取りまとめ、18年以降に制度改正に反映させる。」(『建設通信新聞』2017.10.10)
●「熊本地震で液状化した住宅地で、再発防止工事が難航している。震災発生から14日で1年半、熊本県では被害が大きい8地域で施工を検討しているが、工法や着手時期が見通せないケースが目立つ。被災者の生活再建にも足かせとなっている。激しい揺れで水を多く含んだ砂層が流動化し、地盤が沈下したり地表に水や砂が噴出したりする液状化現象。熊本市では約3千戸が被害に遭った。同市南区の『近見地域』では約850個が傾くなどし、仮設住宅で暮らす人もいる。市は再発防止工事に向けて地盤を調査しているが、肝心の工法が決まらない。地下水を抜いて地盤を固める方法やコンクリートを埋めて地盤改良する手法などがあるが、市の担当者は『工事は技術的にも難しい。住民の同意が得られるよう、慎重に判断する必要がある』といい、施工開始まで時間を要しそうだ。『早く工法や時期を示してほしい。若い世代が出て行ってしまう』。自治会長の荒木優さん(68)は焦りといら立ちを募らせる。」(『日本経済新聞』2017.10.14)

その他