情勢の特徴 - 2017年10月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の財政制度分科会が17日に開かれ、中小企業対策費のあり方について、▽中小企業の資金需要に対しては、補助金などの財政資金よりも、新たな信用補完制度の下、民間資金の活用で対応することを基本とすべき▽中小企業向け補助金は、生産性向上分野に重点化すべき▽補助金の補助率にメリハリを付け、効果的な対応を講じるべき―と提言した。」(『建設通信新聞』2017.10.20)
●「建設経済研究所と経済調査会は30日、細心の建設投資見通しを発表した。17年度は7月の前回見通しで示した前年度比1.2%増の53兆1100億円を上方修正し、1.4%増の53兆2300億円と予測。政府建設投資は修正せず、民間建設投資(住宅と非住宅)が微増となった。18年度の見通しも前回の前年度比3.9%減の51兆0200億円を上方修正し、3.2%減の51兆5500億円とした。」(『建設工業新聞』2017.10.31)

行政・公共事業・民営化

●「改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)運用指針に基づく発注関係事務について、全国統一指標で自己評価・分析した結果を地域ブロック単位で公表する取り組みが広がってきた。中部ブロックの発注者協議会が3月に公表したのに続き、全国10ブロックが公表または準備中だ。各発注者が指標に基づき自身の現状を客観的・相対的に把握。発注者の体制などに応じた目安となる水準を示し、発注関係事務の改善につなげる。」(『建設工業新聞』2017.10.16)
●「国土交通省は、地方自治体が所管する下水管の維持管理をICT(情報通信技術)を活用して効率化する。大量にある点検や修繕のデータを収集してデータベース(DB)化。ビッグデータ解析によって点検優先場所の絞り込みや、コストを最小化できる修繕・改築時期を判断できるようにする。18年度から同省の委託事業として新技術の実証を2年程度かけて行う。」(『建設工業新聞』2017.10.16)
●「国土交通省は地形・地盤情報やインフラ台帳などを使ってインフラ全体の3次元(3D)モデルを作成するためのデータ変換技術の開発に着手する。既存のさまざまなインフラデータを共通の中間データに変換して集約・共有。施工の高度化や防災・減災など目的に応じた3Dモデルを構築する。人工知能(AI)などを活用し、ロボットによる自動施工や地震倒壊被害の解析などに役立てる。国交省は経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)の国と地方のシステムワーキング・グループ(WG)が10日に開いた会合で、インフラデータのプラットフォーム構想のイメージを提示した。建設現場の生産性向上策i-Constructionによるスマートインフラ管理の取り組みの一環。地図情報や2次元(2D)データなどさまざまなデータ形式を標準化することなく変換できる『共通中間データ』(コモン・モデリング・データ=CMD)の構築を目指す。」(『建設工業新聞』2017.10.17)
●「東日本大震災を教訓に13年12月に施行された国土強靭化基本法で、すべての地方自治体に求められている『国土強靭化地域計画』の策定が、18年度までにすべての都道府県で完了する見通しとなった。大半の都道府県の計画が、今後の大規模災害に備え、防災・減災や復旧・復興の担い手となる地元建設業の支援を盛り込んでいる。」(『建設工業新聞』2017.10.18)
●「東京都財務局は23日、希望申請者がゼロで再入札を中止していた豊洲市場追加対策工事1件を『29豊洲市場7街区地下ピット床面等追加対策工事(その3)』として希望制指名競争入札で再々公告した。27日まで申請を受け付け、11月8日の指名通知を経て、同27日に開札する予定だ。3回目の公告のため、予定価格を事前公表に切り替えた。入札契約制度改革の実施方針に基づく試行で、事後公表となるケースは初めて。制度改革は小池百合子都知事肝いり。制度変更によって当初から事業進捗が遅れる可能性が指摘されていたが、現実化した形だ。」(『建設通信新聞』2017.10.24)
●「東京都世田谷区は、2018年度からスタートする区内産業の充実・発展に向けた『世田谷区産業ビジョン(素案)』をまとめた。24日の定例会見で、保坂展人区長は『商業・工業・農業といった旧来の枠組みにとらわれず、福祉、環境、建設など地域を支える産業の育成を進める』ことが特徴と説明し、人材確保の支援など建設産業全体の底上げに積極的に取り組む考えを示した。区民意見募集や、12月に区産業ビジョン懇話会を開いた上で、18年3月下旬に産業ビジョンを策定する。産業施策の指針となる産業ビジョンに、建設産業を盛り込むのは初めてとなる。」(『建設通信新聞』2017.10.25)

労働・福祉

●「建設業の労働災害における死亡者数が増え続けている。厚生労働省がまとめた2017年1-9月の労働災害発生状況(速報、10月10日時点)によると、建設業の休業4日以上の死傷者数は、前年同期と比べ0.3%減(30人減)の9845人だったものの、うち死亡者数は212人で、10.4%増(20人増)となった。死亡者数が前年同期比で増えたのは4期連続。1-9月期の増加率は1-8月期の20.0%より小さくなったものの、2桁増が3期続いている。」(『建設通信新聞』2017.10.23)
●「日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)は、官民で構築が進む『建設キャリアアップシステム』の普及と加入登録の取り組みを一段と強化する。山内会長は20日の定例記者会見で、公共工事でのシステムの積極活用と、利用企業に対する経営事項審査(経審)での加点評価を国土交通省に求めたことを明らかにした。登録目標や登録推進方策を盛り込んだロードマップを年内にまとめ、会員企業に対応を促す。」(『建設工業新聞』2017.10.23)
●「日本建設業連合会(日建連)の山内隆司会長ら首脳は20日、理事会後に記者会見し、鉄道、電力、ガス、不動産・住宅の各分野の受発注者が働き方改革について協議する場が整ったことについて、山内会長は『発注者に国土交通省などから声を掛けてくれてありがたい。やれることをやる』と述べ、工期延伸を抑える生産性向上などの自助努力に一層力を入れる考えを示した。」(『建設工業新聞』2017.10.23)
●「国土交通省は、建設現場の最前線で基幹的な役割を担っている『登録基幹技能者』を、建設業法に定める主任技術者の資格要件に取り込む。11月上旬に公布・施行を予定している建設業法の省令の改正によって、登録基幹技能者の主任技術者要件への認定を規定する。その位置付けが明確化されることで、登録基幹技能者の制度としての普及と活用に弾みがつく。」(『建設通信新聞』2017.10.24)
●「高砂熱学工業は『高砂熱学認定優秀技能者(通称・高砂マイスター)制度』を改定した。従来から認定時に贈呈していたマイスターヘルメットと報奨金10万円に加え、新たに日当を上乗せすることにした。さらに、マイスターの中でも特に優秀な技能者を位置付ける最高位ランクの『上級高砂マイスター光輝(こうき)』を創設。光輝認定者には年間100万円を上限に、建設業界全体で最高水準となる日額4000円を支給する。」(『建設通信新聞』2017.10.24)
●建設現場でアスベスト(石綿)を曝露し、肺がんなどを発症したとして、神奈川県内の元建設労働者や遺族61人が、国と建材メーカー43社に損害賠償を求めた裁判で24日、横浜地裁の大竹優子裁判長は、国と一部建材メーカーの責任を認め、合計約3億586万6000円の賠償を命じる判決を出した。アスベスト訴訟は全国6地裁でたたかわれ、国の断罪は6度目。建材メーカーの断罪は、2016年の京都地裁(比嘉一美裁判長)に次ぐ2度目。判決は、国に対して、1974年ごろまでには建設労働者がアスベスト粉じんを多量に暴露し、石綿関連疾患を発症する危険性を認識できたとして、76年1月1日時点で、防塵マスクの使用と建材への警告表示の義務付けを怠り違法だったと認めた。建材メーカーに対しては、同年1月1日までには警告義務があったと認め、ニチアスに対し2人、ノザワに対し8人の賠償責任を認めた。一人親方については国に対する責任を否定した。一方、メーカーとの関係で、一人親方であった保温工とタイル工の各1人について、ノザワの責任を認めた。(『しんぶん赤旗』2017.10.25より抜粋。)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、久保田俊平議長)は25日、日本建設業連合会(日建連)が発表した働き方改革に向けた施策に対し、『働く者が自ら納得して取り組んで行ける施策』を展開することを求める声明を発表した。同日に開いた記者会見で久保田議長は日建連の施策に対し『日建協が求める労働環境改善と方向性は同じであり、今後の改善に向けた大きな力になる』と歓迎する一方で、『「時短」の成果を獲得するには経営者目線の施策だけでなく、実際の職場を熟知した働く者からの意見の吸い上げや不安、懸念へ寄り添うことが欠かせない』と強調。継続的な働き方改革を実現するには、働く者が納得して時短に取り組む施策が不可欠とした。特にハラスメントに対する意識の低い建設産業の前近代的な体質に言及し、時短を強力に推し進める会社側の姿勢が実態を覆い隠す圧力とならないよう配慮を求めた。『トップダウンの働き掛けは職制を下る際に変容することがある。時短施策の推進が時短を阻害する本末転倒な状況とならないようにする必要がある。』(『建設通信新聞』2017.10.26)
●「建設経済研究所は、建設業に従事する技術者の2020年から30年までの将来推移を推計した。技能労働者の将来予測は、国土交通省やシンクタンクを中心に多くの調査・研究が進められているが、技術者に焦点を絞った推計値は珍しいという。建設生産の根幹とも言うべき、技術者制度の今後の方向性を導く意味でも貴重な基礎資料になりそうだ。技術者の将来推移は、25日に公表した『建設経済レポートNo.69』に収録している。テーマの1つとして取り上げた建設技術者の確保・育成の中で、総務省が5年に1度のペースで実施している国勢調査のデータから、30年までの建設業の従事する技術者数を年齢階層別に推計した。」(『建設通信新聞』2017.10.26)

建設産業・経営

●「建設業の働き方改革に向け、主導的役割を果たす日本建設業連合会(山内隆司会長)は、9月の理事会で時間外労働を段階的に削減する『自主規制』の試行や12月に策定する『週休二日実現行動計画』の試案(案)などの推進方策を決定した。16日には、会員140社の実務担当者を対象とした『働き方改革に関する会員懇談会』を開き、一丸となった取り組みを再確認した。山内会長は『産業の後進性を克服するラストチャンスだと思っている』と不退転の決意で改革を断行する構えを見せる。…日建連は、9月22日の理事会で、自主規制の試行のほか、働き方改革の中核に位置付ける『週休二日実現行動計画』の試案(案)、働き方改革推進の基本方針、労務賃金改善の推進を決め、会員会社に業界挙げての取り組みを要請した。要請文には、『4項目の対応を一挙に決議し、公表することで、建設業界の決意のほどを内外に示すこととした』との一文もあり、改革への強い決意をにじませている。」(『建設通信新聞』2017.10.26)
●「大成建設は27日、2017年4~9月期の連結純利益が前年同期比25%増の441億円だったと発表した。9%減益との従来予測から一転し、同期間としては3年連続で最高だった。新たに受注した好採算の追加工事が貢献した。工事採算を示す完成工事総利益率(個別ベース)も同期間として過去最高だった。」(『日本経済新聞』2017.10.28)
●「2018年3月期の第2四半期決算開示前に、大手・準大手ゼネコンで利益予想の上方修正が相次いでいる。30日までに大手2社、準大手8社が修正した。前期から高水準で推移する工事採算がさらに高まり、利益を大きく押し上げている。修正した10社のうち、鹿島や大成建設を始め7社が最高益を確保する見通しだ。業績予想の修正は8月の東急建設を皮切りに、9月に鹿島、10月には戸田建設、五洋建設、西松建設、鉄建建設、大豊建設、安藤ハザマ、東洋建設、大成建設が開示した。大手・準大手クラスの約3分の1に当たる。前期も工事採算の大幅改善が予想を上回り、第2四半期開示前に修正が相次いだが、今期も引き続き、期初見込みを上回る状況となった。」(『建設通信新聞』2017.10.31)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「2017年度上期(4-9月)に東京26市内で計画した延べ5000平方メートル以上の建築物は28件で、総延べ床面積は66万7500平方メートルに上ったことが日刊建設通信新聞社の調べで分かった。このうち延べ1万平方メートルを超えたのは20件、5万平方メートル超は『多摩センタービル・(仮称)多摩研修センター』など5件だった。用途別では、共同住宅が12件でトップ、以下、店舗・商業施設が8件、学校が5件と続く。前年度上期と同様に、10万平方メートルを超える大型プロジェクトや再開発事業はゼロだった。調査は、建築主が17年4月1日から9月30日までに、各自治体や東京都多摩建築指導事務所に提出した標識設置届をもとに、延べ5000平方メートル以上の建築物28件を独自に抽出・集計した。建設地を市別に見ると、多摩センタービル・(仮称)多摩研修センターなど5件の多摩市が1位だった。続いて町田、日野両市が3件となっている。」(『建設通信新聞』2017.10.18)
●「国土交通省は、相続などで土地の所有者を把握できなくなった『所有者不明土地』を円滑に利用するための新制度の方向性をまとめた。道路や河川事業など公共性が強く恒久的な土地利用を想定する収用適格事業は手続きの簡素化を図る。収用適格事業外だが、民間による公園整備など一定の公共性があるものについては、一定期間内の利用権設定など所有権の制約が小さい利用形態を検討する。」(『建設通信新聞』2017.10.26)

その他

●「第48回衆院選で自民、公明両党が憲法改正の国会発議に必要な3分の2(310議席)を再び上回り圧勝したことを受け、安倍晋三首相が23日午前、再始動した。首相官邸で『ここからが新たなスタートだ。政策を実行し、結果を出していきたい』と記者団に語った。11月1日召集予定の特別国会で第98代首相に指名され、第4次安倍内閣が正式に発足する。」(『日本経済新聞』2017.10.23)