情勢の特徴 - 2017年11月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省は、鉄道分野を対象にして日本企業のインフラ輸出支援策を列挙した『海外展開戦略』をまとめた。世界各国で高速鉄道の新設計画が相次ぐ中、日本の新幹線システムを官民で確実かつ効果的に売り込めるよう、川上の案件形成段階からのコンサルティングに注力する戦略を展開する。新たに鉄道建設・運輸施設整備支援機構を中心に組成する官民JVが参画できるように法制度も整える。鉄道分野に特化した海外展開戦略は10月、政府が5月にまとめた2017年度版インフラシステム輸出戦略を踏まえて策定した。国交省によると、鉄道は今後の世界のインフラ市場の中でも特に有望な分野の一つに位置付けられている。欧州鉄道産業連盟(UNIFE)が推計した世界の鉄道産業の市場規模を見ると、11~13年に年間平均で約19.5兆円だった市場規模は、19~21年にはアジアや西欧、北米の各地域の市場を中心として約24兆円にまで拡大する見通しだ。うち約4.6兆円分を土木・電力などの施設整備関係が占める。中でも世界各国で今後相次ぐとみられているのが、高速鉄道の新設計画だ。そこで国交省は、1964年に開業してから現在まで事故による乗客の死亡ゼロを継続し、平均遅延時間が1分未満など、高い安全性と定時運行性を備える新幹線システムの優位性を官民で効果的に売り込む戦略を展開することにした。」(『建設工業新聞』2017.11.15)

行政・公共事業・民営化

●「建設経済研究所は、『建設経済レポートNo.69』で、国内のPPP・PFIなどコンセッション(運営権付与)事業の動向を発表した。空港分野を中心に5事業で運営が始まったほか、下水道分野では外資系企業が代表のコンセッションもスタートする。施設新設を中心とする従来型のPFI事業を積極的に進めてきた国内建設企業は多いものの、運営を軸としたコンセッション事業への参入は緒についたばかりだ。競争激化が予想されるコンセッション事業のメリットとデメリットを分析し、今後の対応策をまとめた。」(『建設通信新聞』2017.11.02)
●「国土交通省は公共事業評価手法の改善に向けた今後の方針案をまとめた。再評価は予定・予算通りに事業が進ちょくしているかどうかを確認し、変更か生じた場合は再評価を実施。事後評価は多面的なストック効果を把握しアーカイブ化(整理・保存)する。新規事業採択時評価では便益の計算手法を改善する方法と、貨幣換算できない価値も含め総合的に評価する方法の両面を継続的に検討するとした。7日に『公共事業評価手法研究委員会』(委員長・家田仁政策研究大学院大学教授)の第2回会合を開催。新規事業採択時評価、再評価、事後評価の各段階での現状と今後の方針などを盛り込んだ中間取りまとめ(方針案)を提示した。新規事業採択時評価については、透明性を向上させるための取り組みを引き続き検討。現行の評価指標となる費用便益分析の計算方法の改善と、貨幣換算できない多様な効果を総合的に評価する仕組みを継続的に検討する。再評価は、予定通り・予算通りに事業が進ちょくしているかどうかを確認した上で、事業スケジュールや総事業費の大幅な変更や、社会経済情勢の急激な変化が生じた場合に再評価を実施。3~5年の間を目安に再評価を行う。日程の集中にも配慮する。18年度からの運用を目指し、手続きの改正を行う。」(『建設工業新聞』2017.11.08)
●「国土交通省は9日、下水道関連の工事で死亡事故が相次いでいることを受け、都道府県や指定都市の首長、日本下水道事業団と都市再生機構の理事長に対して、安全管理を徹底する旨の非常事態宣言を送付した。8日時点で、死亡事故は過去5年間で最多の8件となっている。発注機関を通じた元請け・下請けへの安全に関する講習会や研修会、安全パトロールを臨時で実施するなどの対策を要請した。死亡事故を含む全体の事故発生件数も58件と過去5年間で、既に最多となるペースだ。維持管理における人身事故は例年の倍程度の発生件数となっている。年度末に向けて工事が本格化すると、事故は増加傾向を見せるため、安全衛生活動の総点検などを緊急的に求める。」(『建設通信新聞』2017.11.10)
●「国土交通省は公共工事の発注機関でつくる『国土交通省公共工事等発注機関連絡会』の第2回会合を9日に同省で開いた。政府が策定した適正な工期設定ガイドラインや新技術の研究開発・導入といった働き方改革、生産性向上に関する取り組みについて情報を共有。各発注機関も最近の取り組みを紹介した。…政府が8月に策定したガイドラインを各発注機関で活用していくことを確認。週休2日の確保が難しい工事・工種があることを踏まえ、各機関で情報を共有しなから週休2日の実現を目指す。国交省では週休2日の確保に向けた同省の取り組みなどを紹介する『働き方改革・建設現場の週休2日応援サイト』の利用を呼び掛けた。」(『建設工業新聞』2017.11.10)
●「国土交通省は『建設業フォローアップ相談ダイヤル』の最新受け付け状況をまとめた。7~9月に寄せられた相談は93件。うち社会保険未加入対策に関する相談が69件で、加入状況の確認方法や作業員の現場入場など実務的内容に関する相談が数多く寄せられた。加入対策が一段と強化される中、『今後も社会保険未加入対策の相談が続くだろう』(土地・建設産業局)とみている。…7~9月の93件の地区別内訳は、東北22件、関東9件、中部3件、近畿41件、九州18件。社会保険未加入対策のほか、公共工事設計労務単価が1件、建設業法全般が14件、元・下請負関係が4件、その他が5件だった。」(『建設工業新聞』2017.11.13)
●「国土交通省は14日、2016年度における直轄工事と建設コンサルタント関係業務の契約件数や金額、落札率といった実績をまとめた『直轄工事等契約関係資料』を公表した。各部局を統合した全体の工事件数は前年度から10%増となる1万4567件、契約金額は18%増加の1兆9446億円だった。工事全体の落札率は、前年度の91.22%から92.00%に上昇している。」(『建設通信新聞』2017.11.15)
●「国土交通省は直轄土木工事の監督業務で、ISO9001(品質マネジメントシステム)を活用するモデル工事を試行する。ISO認証を取得した受注者の品質マネジメントシステムを適用するとともに、ISO認証の審査登録を行う第三者機関による監査を取り入れる。受注者のシステムに基づく検査記録を監督業務の確認などに置き換え、工事の品質向上と監督業務の効率化を図る。」(『建設工業新聞』2017.11.15)

労働・福祉

●「厚生労働、法務の両省は、『外国人の技能実習の適正な実施および技能実習生の保護に関する法律』(技能実習法)が1日に全面施行することに伴い、許可制となった外国人技能実習生を受け入れる『監理団体』として、1日付で292団体を許可する。許可を受ける監理団体には許可証を交付する。」(『建設通信新聞』2017.11.01)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(久保田俊平議長)は1日、東京都中央区の東京建設会館で、日本建設業連合会(山内隆司会長)に対し、日建連が発表した働き方改革に向けた施策について、労使がともに取り組むことを求める要望書を提出した。日建協の久保田議長が、日建連の渡辺博司常務執行役に要望書を手渡した。要望は、働く者が納得し継続して取り組んでいける時短施策の推進や、強力な時短施策の推進が裏目に出ないように求めたほか、進捗状況の見える化、企業間の好事例の水平展開を要請している。久保田議長は『労使だけでなく、業界団体、国、企業が一緒にならないといけない。みんなが納得できるように、働く者の意見を吸い上げて取り組んでほしい』と求めた。渡辺常務執行役は『今後もいろいろなチャンネルを通じて協力していきたい』と応じた。」(『建設通信新聞』2017.11.02)
●「厚生労働省は2日、2018-22年度の5年間を期間とする『第13次労働災害防止計画』(13次防)案をまとめた。建設業は、死亡災害件数が依然として全体の3分の1を占めることから、引き続き重点業種に位置付けて労災防止対策に取り組む。設定する建設業の目標は、『死亡災害を17年と比較して22年までに15%以上減少』(現行の12次防は20%以上減少)とした。建設業の重点対策としては、墜落・転落災害防止対策の充実強化や解体工事に特化した安全対策などを、計画期間中に新たに検討し実行することを打ち出した。また、建築物の解体工事などにおける石綿ばく露防止対策で、解体工事の届け出対象を拡大するなどの対策強化も新たに検討する。」(『建設通信新聞』2017.11.06)
●「建設キャリアアップシステムの運営主体である建設業振興基金は、6日の運営協議会の総会にシステム開発の進捗状況などを報告した。2018年4月のインターネットや郵送による技能者・事業者情報の登録(窓口による登録は6月ごろから開始)と、同年秋の運用開始へ、システムの開発作業を進める。並行して、国土交通省と連携しながら、官民が一体になってシステムの周知・普及に取り組む方針だ。関係団体向けに個別の説明会やシンポジウムを開催するとともに、来年2月をめどにeラーニングの開設・稼働も予定。インターネットを活用して、システムの登録手続きや利用方法に関する周知、システムヘの理解の浸透に工夫を凝らす。運営協議会に参画する各団体からも導入・活用に向けた考え方などが示された。日本建設業連合会の村田誉之建設キャリアアップシステム推進本部長は『(システムへの登録・利用は)建設業が直面している働き方改革の実現にもつながっていく。前提となっているすべての技能者、事業者の登録という目標の達成に向けて、(日建連として)来年3月をめどに普及へのロードマップをとりまとめる』と述べた。」(『建設通信新聞』2017.11.07)
●「日本橋梁建設協会(橋建協、坂本眞会長)は、働き方改革に関する基本方針をまとめた。橋梁の架設や保全工事の現場での長時間労働是正や休日の確保が目的。労働時間短縮に向けたロードマップの作成と着実な達成、週休2日制の導入と定着など4項目の基本方針を設定した。22年度から時間外労働の上限を720時間とするほか、23年度までに土日閉所の週休2日制を目指す。基本方針は月末の理事会で正式決定する。基本方針は、▽労働時間短縮に向けたロードマップの作成と着実な達成▽週休2日制の導入と定着の推進▽担い手確保・育成と建設技能者の処遇改善▽生産性と安全性の向上の総合的取り組み―の4点。」(『建設工業新聞』2017.11.08)
●「国土交通省は、技能者が持つ資格や就業履歴を業界統一のルールで蓄積する『建設キヤリアアップシステム』を活用した政策展開の1つとして、技能者の『能力評価基準』を策定する。13日に検討のフィールドとなる『建設技能者の能力評価のあり方に関する検討会』(座長・蟹澤宏剛芝浦工大教授)を立ち上げた。年度内をめどに一定の方向性をまとめる見通しだ。能力評価基準の策定は、ことし7月にまとめた『建設産業政策2017+10』に盛り込まれた取り組みの1つ。システムに蓄積される保有資格や就業履歴といった登録データと、それぞれの技能者が持つ知識や経験を組み合わせた客観的な『基準』をつくることで、技能や経験に見合った賃金の支払いなど処遇の改善に結び付ける。特に個々の技能者の能力や力量の評価は、技能者を雇用する専門工事企業の施工力を見える化することにもつながる。結果として、優秀な職人を多く抱える専門工事業者がより高く評価される仕組みを築くことになる。検討会は、評価の客観性をいかに確保していくかといった点や、評価基準としてのレベル分けをどう行うか、あるいはそれぞれの業種ごとに異なる特殊性をどう制度設計の中で反映させていくかといった点を軸に、英国のNVQ(全国職業資格)制度など、公的な関与によって成り立っている海外の事例も参考にしながら検討を進める。」(『建設通信新聞』2017.11.14)

建設産業・経営

●「台風による大雨や暴風、地震など近年の自然災害は、これまでたない規模で日本列島を襲う。激甚化・集中化という言葉に集約されるように激しさを増す自然災害と常に隣り合わせにある。わが国にとって、建設業は行政と連携して災害対応にあたる重要な存在だ。その役割と責務は大きい。特に地方自治体などが『地域の守り手』である建設業に寄せる期待は、これまで以上に高まりを見せている。そのことを裏付けるデータがある。建設経済研究所がことし7月から8月にかけて、全国115の自治体(43都道府県、17指定都市、55市)を対象に実施した『災害時応援協定等に関するアンケート調査』(10月25日に公表した建設経済レポートに収録)がそれだ。特に興味深いのは、建設業団体の地域防災計画への位置付けの有無。都道府県や市町村は政府の中央防災会議が作成する防災基本計画をベースに、地域の実情を反映した地域防災計画を定めることになっているが、アンケートに回答した90の自治体のうち、実に76%の自治体が当該計画に建設業団体などを何らかの形で『位置付けている』という。その内容は『防災協定の相手先として協力』が85%で最多。この結果だけを見ても行政が災害対応におけるカウンターパートとして、あるいは応急復旧を率先して担う組織として、建設業や建設業団体に大きな期待を寄せていることが分かる。」(『建設通信新聞』2017.11.02)
●「大和ハウス工業の2017年4~9月期は、連結純利益が前年同期比15%増の1100億円程度だったようだ。同期間で1000億円台に乗せるのは初めて。物流センターなどの建設に加え、住宅と保育所やコンビニエンスストアなどを組み合わせた比較的小規模な複合開発の引き渡しが進んだ。賃貸住宅の建設・管理も堅調だった。」(『日本経済新聞』2017.11.07)
●「大手・準大手ゼネコンの2018年3月期決算で、最高益が相次いでいる。8日までに開示した6社中、既に5社が最高益を確保した。良好な受注環境を背景に工事入手段階の受注時採算が高い上、労務費や資材価格が安定し、本業の工事採算が利益を着実に押し上げている。ゼネコンの開示は10日にピークを迎えるが、最高益の企業は半数以上にも達する見通しだ。大手クラスでは、8日に開示した大林組が営業利益、経常利益、純利益の最高額を4期連続で更新した。完成工事総利益(工事粗利)率は土木が前年同期比1.5ポイント増の16.8%、建築が0.4ポイント増の11.9%に高まったことが下支えした。」(『建設通信新聞』2017.11.09)
●「熊谷組は9日、住友林業との業務・資本提携を発表した。両社が第三者割当増資を実施し、住友林業が熊谷組の普通株式936万1200株を取得し、発行済み株式総数の20%を保有する筆頭株主になる。熊谷組は住友林業の519万7500株を取得し、持株比率は2.85%となる。熊谷組の土木・建築技術と住友林業の木材・建材事業の知見を融合し、中大規模木造建築物を始めとする木化・緑化関連建設事業、バイオマス発電などの再生可能エネルギー事業、海外事業、ヘルスケア施設事業へ進出する。2018年から20年までの3年間で木化・緑化関連建設事業を絡めた再開発資金、台湾を中心とする海外事業の工事・開発資金、木材を利用した建築物の建設を目的とする各設計・デザイン・施工会社のM&Aなどに約387億円投資する計画で、うち約347億円を今回の第三者割当増資で調達する。バイオマス発電事業に当たっては両社で新会社を設立し、総事業費約300億円の案件の組成を目指す。住友林業が案件の組成と燃料の供給・発電所運営、熊谷組が関連施設の施工を担う。」(『建設通信新聞』2017.11.10)
●「全国建設業協会(全建)は、会員企業に行った除雪に関するアンケートの結果をまとめた。除雪機械(保有・貸与・サイス)が『不足』との回答が4割を超え、市町村に除雪のパトロール経費や待機料の支払いを求める意見が多い。除雪業務を継続するための課題には『担い手確保・育成』『企業維持のための公共事業量の確保』が挙がった。全建は除雪シーズンの到来を前に発注機関などにアピールしていく。豪雪・特別豪雪地帯などにある22道府県建設業協会の390社が主に16年の除雪について回答した。契約の状況では、除雪と維持工事の合併が国土交通省では68%だったのに対し、道府県は88%、市町村は94%が除雪単独。国交省はシーズン全般の総価契約、道府県と市町村は1出動当たりの単価契約が主体だった。契約期間は国交省は複数年度と単年度がほぼ同数で、道府県と市町村はほぼ単年度だった。契約に『問題あり』との回答は国交省8%、道府県16%、市町村17%で、保有機械に応じた最低保証料を単価契約に設定したり、体制の安定化や業務の効率化のために維持工事を含めた複数年契約の実施を望む意見が多かった。」(『建設工業新聞』2017.11.14)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「住宅に使う輸入木材の流通価格が上昇している。北米や東南アジアから輸入する木材の不足感が強まり、米国産丸太の商社販売価格は20年ぶりの高値水準だ。内装材に使う東南アジア産合板の卸価格も過去30年で最高値圏。木造住宅の建築費にも波及しつつあり、政府が旗を振る国産材への切り替え機運が高まりそうだ。…木材価格の上昇を受け、住宅の建築コストも上昇基調だ。建設物価調査会(東京・中央)の調べによると、木造住宅の工事原価指数は今年9月に105.7と前月比0.15ポイント増。前年同月比では0.59ポイント高い。木材価格高に加えて、『人手不足に伴う人件費高もあり、コストは確実に上がっている」(住友林業の細谷洋一国際流通営業部長)という。」(『日本経済新聞』2017.11.10)
●「9人が死亡した中央自動車道笹子トンネル(山梨県)の天井板崩落事故で、山梨県警が11月中にも、中日本高速道路(名古屋市)の金子剛一前社長(74)ら当時の同社や子会社の役員4人を業務上過失致死傷の疑いで書類送検する方針を固めたことが9日、分かった。県警は同日までに、前社長ら役員4人の聴取を終了。2012年12月の事故発生から5年近くにわたる捜査は、大詰めを迎えた。ほかに、点検計画作成に関与した中日本高速の支社や子会社の責任者ら少なくとも3人が書類送検されるとみられる。」(『日本経済新聞』2017.11.10)

その他