情勢の特徴 - 2017年11月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「厚生労働省が20日にまとめた2017年1-10月の労働災害発生状況(速報、11月7日時点)によると、建設業の休業4日以上の死傷者数は、前年同期と比べ1.0%減(115人減)の1万1089人だったものの、うち死亡者数は235人で、6.8%増(15人増)となった。建設業の労災による死亡者数は、前年同期比で5期連続して増え続けているものの、1-10月期の増加率は4期ぶりに1桁台となり、増加幅が縮小した。」(『建設通信新聞』2017.11.21)
●「国土交通省は海外の建設事業での優れた実績や取り組みを表彰する制度を創設する。建設プロジェクトと中堅・中小建設企業の2部門で構成。それぞれ最優秀賞を選定するほか、大臣賞と審査委員長賞も設ける。部門ごとに評価基準を設定するが、質の高いインフラの実現や戦略的・持続的な海外展開などの視点は共通して重視する。12月上旬に募集要項の公表と同時に受け付けも開始する予定だ。表彰制度の創設は、中堅・中小建設企業の海外展開を後押しする新たな取り組みの一環。海外での優れた実績や取り組みの内容を広く紹介して海外展開に一段と弾みをつけるとともに、若者にも海外で活動する日本企業に興味を持ってもらい、入職を促すきっかけにするのが狙い。」(『建設工業新聞』2017.11.30)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、これからの社会資本整備の方向性として、ストック効果の最大化を狙う。インフラ整備は、日本の経済成長や国民生活の安全・安心の礎を築く『未来への投資』と強調。実践への手段として、社会全体の生産性を飛躍的に高める生産性革命を加速させる。特に日本経済を支える基盤となる全国の物流ネットワークの重点的かつ戦略的な整備に取り組む方針だ。16日の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)で、今後の社会資本整備に向けた取り組みをプレゼンテーションした石井啓一国交相は『未来を切り拓く社会資本整備の推進』を提起した。具体的な取り組みとして、『地域の生産性向上に直結するインフラの重点整備』『三大都市圏の環状道路等への重点投資』『建設現場の生産性向上』『建設分野などの人づくり革命・働き方改革の推進』に取り組む考えを示した。…最大のポイントとなりそうなのが、ストック効果を重視した社会資本整備の推進だ。地域経済をけん引する産業の立地と発展をもたらすインフラ整備への重点化を図るとともに、日本経済のエンジンである3大都市圏における環状道路の整備や4車線化といった機能強化を加速。社会全体の生産性を高めていく、ストック効果の最大化を推し進める中で、日本の経済成長につなげていく。」(『建設通信新聞』2017.11.20)
●「国土交通省は、官庁営繕事業でのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用状況をまとめた。17年度は9月末時点で、設計業務では2件に導入されたが、工事はゼロ。BIMの適用を始めた14年度からの累計は設計業務の20件に対し、工事は5件にとどまる。同省は活用事例での効果などを引き続き蓄積するとともに、必要に応じてガイドラインの改善を検討。工事に関する内容を充実させる考えだ。」(『建設工業新聞』2017.11.20)
●「国土交通省は、2017年度の当初予算に設定した『ゼロ国債』を活用して発注するゼロ国債工事を対象に、保証事業会社の『ゼロ債金融保証』を適用する。事業の適切かつ円滑な執行を目的に、当該工事を受注した建設企業の年度末における資金調達を後押しすることが狙い。20日付で保証事業会社や銀行協会、建設業団体などに通知した。保証事業会社による『ゼロ債金融保証』は、当該年度(初年度)の支出がゼロとなる『ゼロ国債』を活用して発注する工事など、17年度に契約を締結するが、当該年度に発注者からの前払金の支出がない工事に対する債務保証の仕組み。」(『建設通信新聞』2017.11.21)
●「国土交通省が進める港湾工事へのICT導入で、施工段階での技術提案が活発化している。2017年度から標準化した浚渫工のマルチナロービームによる3次元測量だけでなく、さらに進んで施工段階の自動化や可視化に役立つ技術が相次いで提案・導入されている。浚渫工以外の浅場造成工や本体工などの工種でも実施。有用な技術提案を積極的に採用することで、港湾工事の全プロセスで早期のi-Constructionの標準化実現を目指す。…10月20日に同省が開いた『港湾におけるICT導入検討委員会』では、標準化に向けた課題などが議論された。委員からは施工者に対するICT対応可能な技術者の状況、人材育成、発注者への要望などの調査や、生産性向上、コスト削減などの効果に関する官民の意見交換の必要性が言及された。ICT導入の中長期のロードマップを示すことで、民間事業者は取り組みやすくなることや新技術の特許などの権利関係の整理、ISOなどの国際標準化、CIM活用による維持管理段階へのデータの引き渡しなど具体的に対応すべき課題についても指摘された。同委員会で示されたICT活用拡大方針(案)では18年度から、新たに基礎工とブロック据付工でモデル工事を実施し、基準整備に着手する。浚渫工は対象工事の件数を増やすとともに、水中音響ソナーなどを採り入れる。CIMの活用も進める考えで、桟橋の設計・施工でモデル工事を実施し、ガイドラインを作成する。」(『建設通信新聞』2017.11.22)
●「建設産業界が長年にわたって、改善を訴えてきた予定価格の『歩切り』。2016年4月にすべての地方自治体で、慣例や予算の節約などを理由とする“明らかな歩切り”が根絶されるなど、発注者責務に予定価格の適正な設定をうたう『担い手3法』が全国に広く浸透する中で、グレーゾーンとなっている『端数処理』も着実に減少していることが、国土交通省の調査で分かった。発注者が適正な積算に基づく、設計書金額の一部を控除する『歩切り』は、14年6月の公共工事品質確保促進法の改正によって、その趣旨に反することが明確化された行為。昨年4月までにすべての地方自治体で、慣例や予算の節約などを理由とする“明らかな歩切り”の廃止を決定した。一方で、予定価格の漏えいを防止することを目的にしたランダム係数による減額や設計書金額の端数を切り下げる『端数処理』はいまだに根強く残っているというのが実態。実際に昨年12月の時点で端数処理を行っている自治体は190団体あった。そのフォローアップを目的に、国交省が10月に実施した調査によると、端数処理を行っている団体は昨年12月の190団体から142団体に減少。担い手3法の浸透が歩切りの根絶という明らかな成果となって表れる中で、端数処理の実施も着実に減少傾向にあることが分かった。」(『建設通信新聞』2017.11.22)
●「国土交通省は、地方自治体が管理している下水管の点検結果や今後の改修予定時期などをまとめた『メンテナンス年報』を初めて作った。2015年施行の改正下水道法で定期点検が義務付けられた腐食リスクの大きい既設管に絞って調べたところ、実質的な対策初年度に当たる16年度の点検実施率は約1割にとどまった。国交省は速やかで計画的な点検や改修・更新を促す。」(『建設工業新聞』2017.11.28)
●「都道府県の工事発注で施工時期を平準化する取り組みが広がっていることが、国土交通省の調査で分かった。発注した年度には支出を伴わず、前倒し発注に役立つゼロ債務負担行為を、10月時点では単独事業で37団体(3月時点=35団体)、交付金事業で41団体(21団体)が活用するなど、平準化に向けた債務負担行為の活用は増加傾向。ただ、前倒し発注による翌年度の予算確保の不透明さを危慎する声もある。」(『建設工業新聞』2017.11.29)

労働・福祉

●「国土交通省は、円滑な施工を確保する観点から、直轄工事の受注者(元請企業)と、その下請企業を対象に、従事する技能労働者の確保や求人の方法に関するアンケートを実施した。求人方法で多いのはスカウト(27%)や、縁故(22%)、協力関係にある会社からの紹介(18%)など。こうしたいわゆる“自力”での採用活動が約7割と大勢を占める。ハローワーク(27%)を活用しているとの回答は全体の3割ほどだった。特にスカウトや縁故、協力関係にある会社を通じた紹介といった自力での採用活動は、9割を超す確率で採用(確保)までこぎつけることができている。ハローワークや民間の求人誌が人材を確保するための手段の1つとして認識されている一方で、それぞれの企業にとって、縁故や協力関係にある会社からの紹介は『人材に対する信用度が高い』『技能を持った人材を確保できる』という利点もあるようだ。」(『建設通信新聞』2017.11.17)

建設産業・経営

●「国土交通省は中小建設企業の生産性向上を支える人材・システム作りに取り組む。来年秋の運用開始に向け官民で検討中の建設キャリアアップシステムを技能者の適正評価につなげるとともに、現場管理の効率化や書類作成の負担軽減にも役立てる。仮想現実(VR)などの最新技術を活用した研修プログラムの作成を支援。各地で効率的・効果的に研修を受けられる環境を整備する。」(『建設工業新聞』2017.11.16)
●「総合建設会社(ゼネコン)でつくる日本建設業連合会(日建連)は2022年3月期までに、施工現場を週休2日制に移行する方針を囲めた。工事原価の7%以上の増加につながるとみる建設会社が多い。施主側に一定負担を求める考えだが、不動産会社は反発している。建設需要が一段落するとされる東京五輪後をにらみ、両者のさや当てが激しくなりそうだ。『週休2日なんて無理と認めてきたタブーに業界の命運をかけてチャレンジする』。建設業界の人手不足を受け、日建連はこのほど『週休2日実現行動計画試案』を取りまとめた。施工現場はこれまで週休1日が多かった。会員各社に週休2日制へ移行を働きかける。」(『日本経済新聞』2017.11.17)
●「全国建設業協会(近藤晴貞会長)は24日、東京都千代田区の経団連会館で全国会長会議を開き、10月に全国9カ所で開いた国土交通省などとの地域懇談会・ブロック会議を踏まえた意見・要望書を報告した。地域建設業の健全で安定的な経営基盤構築に必要な事業量の確保や大型補正予算の早期編成など10項目を盛り込んでいる。設計労務単価については、全国統一の単価による地域間格差の解消を念頭に入れた調査、決定方法の抜本的な見直しや、さらなる引き上げを要望している。」(『建設通信新聞』2017.11.27)
●「西松建設は27日、シンガポールで進む『大深度下水道トンネルシステム(DTSS)』の2期事業で、T-10工区を単独受注したと発表した。トンネル総延長は約7.5キロ。設計・施工一括で受注金額は273億円。12月に着工し、2024年1月末の完成を目指す。シンガポール公益事業庁からの受注で、同庁からの工事受注は初めてという。…受注したのは、スリランカ高等教育高速道路省道路開発庁発注の『ケラニ河新橋建設事業パッケージ1鋼製橋梁工区』。設計・施工管理をオリエンタルコンサルタンツグローバル・片平エンジニアリングJVが担当する。本邦技術活用条件(STEP)が付いた円借款が適用される。」(『建設工業新聞』2017.11.28)
●「日本建設業連合会(山内隆司会長)がまとめた会員96社の10月の受注総額は、前年同月比4.7%増の1兆0413億5800万円となった。民間、官公庁ともに増加し2014年度以来3年ぶりに1兆円を超えた。受注総額の内訳は、国内が5.8%増の1兆0131億8600万円、海外は25%減の281億7200万円。国内合計も3年ぶりに1兆円を上回った。国内民間は1.6%増の7136億0600万円。うち、製造業では工場の受注が多く28.8%増の1149億8400万円となった。…地方の機関は、都道府県が関東の約90億円の文化施設や庁舎などの受注で10.3%増の544億0800万円、地方公営も上下水道工事や病院の受注により116.8%増の266億4800万円と大幅に伸びた。地域ブロック別受注額は北海道、東北、関東、中部、近畿の5地区で増加した。」(『建設通信新聞』2017.11.29)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「2020年東京五輪・パラリンビック大会組織委員会は15日、大会時に競技会場などとして使う仮設施設の入札を来年4月から始めると発表した。工事規模は総額約2800億円で、大会に向けた準備が本格化する。入札を始めるのは、既存の競技会場を大会期間中、五輪仕様にするための設備や機器などで、大会後には撤去する。国内の業者にとどまらず、海外の業者も入札に参加できる。入札後、来年8月ごろから実施設計に入り、20年1月ごろから工事に着手。仮設施設は20年9月のパラリンピック終了後に撤去する。」(『日本経済新聞』2017.11.16)
●「文部科学省は15日、私立学校施設の耐震改修状況調査結果(確定値)をまとめた。大学・短期大学・高等専門学校の施設の耐震化率は、2017年4月1日時点で90.3%だった。また、非木造の2階建て以上か延べ200平方メートル以上の幼稚園・幼保連携型認定こども園・小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校の施設の耐震化率は、同時点で88.4%となった。」(『建設通信新聞』2017.11.16)
●「国土交通省は、道路上の電線を地中に埋設する『無電柱化』をさらに普及させるため、電柱の設置を制限している制度の適用範囲を広げる。現在は災害時の緊急輸送道路で電柱の新設を禁止しているが、新たに歩行者や自転車の走行も多く幅員が狭い生活道路に対象を広げ、既設電柱にも制限をかけて撤去と無電柱化を一気に進める。年内に作る無電柱化推進計画で制度拡大のおおよその時期を打ち出す方針だ。」(『建設工業新聞』2017.11.16)
●「東京都は20日、豊洲市場の土壌汚染対策で追加工事3件の再入札の手続きを始めた。3件とも予定価格(工事の上限価格)を初回の入札より4割程度引き上げた。再入札への参加希望業者は24日までに申請する必要がある。対象は市場の主要建物3棟の地下水管理システムの機能強化工事。初回の入札は3件とも参加業者が入札を辞退し、不調になっていた。都は業者が受注しやすいように、予定価格を引き上げた。これまで追加工事9件のうち、業者が落札したのは2件にとどまっている。都は2018年7月末までに、工事の確認作業も含め追加工事を終える予定。追加工事を完了した後、18年10月中旬に築地市場から移転する方針だ。ただ、入札の不調や中止が続けば、移転日程に影響する可能性もある。」(『日本経済新聞』2017.11.21)

その他