情勢の特徴 - 2017年12月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「財務省の財政制度等審議会が2018年度予算の編成等に関する建議をまとめた。インフラ整備は、整備水準の向上や近年、好調に推移する民間投資などを理由に『公共事業の安易な追加は厳に慎むべき』と明記。当初予算の編成を念頭に総額の抑制に取り組むことなどを求めている。改めて公共事業の『量』から『質』への転換を強く打ち出した形となる。(『建設通信新聞』2017.12.01)
●「政府は、経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)を1日に開き、『2018年度予算編成の基本方針』の策定に向け議論した。安倍首相は同日に決めた基本方針案を踏まえ、『「人づくり革命」や「生産性革命」などの重要な政策課題には必要な予算措置を講じる』と表明。少子高齢化に伴う財政負担が増大する課題の克服に向け、関係閣僚に対応を指示した。今週にも基本方針を閣議決定する。基本方針案は、GDP(国内総生産)600兆円の実現を目指すとともに、人づくり革命と生産性革命を『車の両輪』と位置付け、『少子高齢化という最大の壁に立ち向かっていく』と明記。保育受け皿の整備を急ぎ、幼児教育・保育の無償化にも取り組む方針を示した。さらに企業による人材や設備への投資を促し、潜在成長率の向上を目指すとした。一方、財政健全化をめぐっては、国・地方の債務残高がGDPの約2倍に膨らむなど、厳しい財政事情に改めて言及。歳出削減に関し、『聖域なき徹底した見直しを推進する』とした。」(『建設通信新聞』2017.12.05)
●「国土交通、環境両省は水分野でアジア各国への新たなインフラ輸出戦略に乗りだす。日本が主導し、アジア各国に汚水処理環境を普及させていくための共同活動体『アジア汚水管理パートナーシップ(AWaP)』を来夏ごろまでに設立。各国の優先政策課題に下水道や浄化槽の整備などが位置付けられるよう働き掛ける。中長期的に日本企業が保有する『質の高い』インフラの技術などを輸出して環境整備に貢献する狙いがある。」(『建設工業新聞』2017.12.11)
●「公正取引委員会は、入札談合など独占禁止法に違反する行為を行った事業者に対する課徴金制度を見直す。違反行為を公取委に自主申告した事業者に対する『課徴金減免制度』の見直しが柱。現在は減免を受けられる事業者数の上限と減免幅を一律に定めているが、上限は撤廃し、減免幅は実態解明への協力度合いなどに応じて決める形にする。自主申告した全事業者に申告後の継続的な調査協力も新たに義務付ける。」(『建設工業新聞』2017.12.11)
●「国土交通省は18年度からの高速道路整備に財政融資1.5兆円を投じる計画で、融資の一部を既設約700橋の耐震性能強化策に優先的に充てる。高速道路の橋梁は大規模地震が発生しても落橋・倒壊を防げる程度の耐震性能を備えているが、今回の対策では大規模地震発生後に速やかな機能回復を実現できる程度にまで性能を高める。おおむね21年度の完了を目指す。」(『建設工業新聞』2017.12.12)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、適正な下請契約の締結と、下請企業に対する適正な代金の支払いなどを求める要請文書を、1日付で建設業団体に通達した。資金需要の増大が予想される年末のタイミングに特段の配慮を求めることで、中小企業が多数を占める下請企業の経営の安定を図ることが狙い。元下間の取引の適正化によって、工事の品質の確保と労働環境の改善を促す。取引の出発点となる『見積もり』の段階での取り組みとして、例えば、明確な経費内訳による見積書の提出と、それを踏まえた元下双方の協議など適正な手順での下請代金の設定を明記。特に社会保険等への加入の徹底を念頭に、法定福利費を内訳明示した見積書の提出と尊重の徹底を求めている。実際の『契約』の段階でも、請負代金内訳書の中に法定福利費を内訳として明示することをルール化した、ことし7月の『建設工事標準下請契約約款』(下請約款)の改正に沿った対応を要請した。下請代金の支払いはできる限り現金払いとすることも明記。現金払いと手形払いを併用する場合も、労働者の雇用の安定を図る観点から、少なくとも労務費相当分(社会保険料の本人負担分を含む)は現金払いとすることも書き添えた。また、技能労働者に対する適切な賃金の支払いとして、2013年4月以降、これまで5度にわたって引き上げられてきた設計労務単価を踏まえた対応を要請。技能労働者の賃金は昨年までの4年間で約7%も上昇するなど、他産業と比較しても高い伸び率を示しているが、賃金の継続的な引き上げが求められている現状から、企業側に最大限の努力を求めている。このほか、適正な工期設定や週休2日の推進など、建設業の働き方改革に向けた取り組みも記載。ことし8月に『建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン』が策定されたことを受けて、下請企業を含めた週休2日の推進を盛り込んだ。(『建設通信新聞』2017.12.04)

労働・福祉

●「厚生労働省は、2017年の賃金引き上げなどの実態調査結果を11月29日にまとめた。ことしの賃金改定状況(予定を含む)をみると、建設業の社員1人当たりの平均月額賃金の改定額・率は、8411円、2.5%だった。前年と比べ425円、0.1ポイント引き上がった。15大産業の業種別で人材不足とされる建設業がトップだった。全産業での引き上げ幅も5627円と過去最高を更新した。調査は8月に実施。全産業で有効回答のあった従業員100人以上の1606社の回答を集計した。うち建設業は調査対象企業数の62.7%から回答があった。集計結果は復元統計処理しているため、企業数は明らかにならない。回答した建設業の企業のうち、97.1%が予定を含み賃上げを実施。賃下げと賃金改定をしないのはなかった。未定は2.9%。また、建設業で管理職の定昇を実施したのは93.7%、実施せずが6.3%。建設業の今夏の賞与支給額決定方式は、業績連動式が65.2%、労使交渉が18.7%で、そのほかが12.2%、不明が3.9%だった。」(『建設通信新聞』2017.12.01)
●「日本建設業連合会(山内隆司会長)など建設関係10団体の事務局幹部による意見交換会が4日に開かれた。各団体からは長時間労働の是正や週休2日の定着など働き方改革への取り組み状況が報告され、引き続き一丸となって改革の実現を目指すことを確認した。今後は、業界を挙げた改革の機運をさらに高めるため、10団体以外の団体にも参加の呼び掛けを検討する。10団体の事務局幹部が働き方改革を主題に意見交換するのは、9月に続いて2回目。日建連のほか、全国建設業協会、日本道路建設業協会、日本建設業経営協会、全国中小建設業協会、東京建設業協会、全国建設産業団体連合会、建設産業専門団体連合会、日本電設工業協会、日本空調衛生工事業協会の幹部が出席した。今回は、各団体から働き方改革への取り組み状況などが報告され、情報を共有した。」(『建設通信新聞』2017.12.06)
●「国土交通省の登録民間資格の保有者を、直轄事業の発注業務に活用する動きが広がってきた。16年度に契約した点検・診断業務では、全483件のうち約6割に当たる302件(15年度約130件)に登録資格者が配置された。同省は今後、直轄だけでなく地方自治体などが発注する業務でも登録資格保有者が活用されるよう、地域発注者協議会などの場を通じて呼び掛けていく。民間資格の登録制度は、改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)に基づき14年度に創設された。業務内容に応じて必要な知識や技術を保有していることを『資格』によって評価するとした規定に基づくもので、同省直轄事業の発注で評価してきた技術士やRCCM以外の資格も含めて評価しようと制度化した。国交省は登録資格を直轄事業の発注業務に活用。委託業務を発注する際に実施する総合評価方式の入札で加点対象としている。16年度に発注した維持管理分野(点検・診断)の業務では、全業務件数の63%に登録資格者が担当技術者として配置された。分野別に見ると、道路234件(15年度108件)、砂防など15件(9件)、海岸9件(0件)、港湾44件(9件)で、積極的に活用されている実態が明らかになった。同省は技術者資格登録規定を11月22日付で改正。これまでの点検・診断等業務で13分野(21業務)、計画・調査・設計業務で18分野(27業務)の計31分野に、点検・診断等業務で『舗装』(点検と診断の2業務)、『小規模付属物』(点検と診断の2業務)、計画・調査・設計業務で『宅地防災』(計画・調査・設計の1業務)の3分野を追加した。全34分野を対象に民間資格の追加公募を25日まで受け付けている。」(『建設工業新聞』2017.12.06)

建設産業・経営

●「日本建設業連合会(日建連)は、建設業の働き方改革の一環として、鉄道工事で週休2日を確保する取り組みを推進する。土木本部鉄道工事委員会(委員長・林康雄鉄建建設社長)に『働き方改革検討専門部会』を新設。鉄道工事の実態を把握した上で、国土交通省の『建設業の働き方改革に関する鉄道関係連絡会議』の動向を踏まえながら、週休2日を確保する方策を検討する。」(『建設工業新聞』2017.12.01)
●「積水ハウスが8日発表した2017年2~10月期連結決算は、営業利益が前年同期比微減の1270億円となった。前期に都心部のオフィスビルなどを販売した反動が出て、都市再開発事業が落ち込んだ。国際事業は伸びたものの、補いきれなかった。売上高は3%増の1兆4947億円と、最高となった。買収した米住宅会社を連結化したほか、中国で開発物件の売却も進み、国際事業が72%増収となった。土地購入を伴う分譲住宅の販売も伸びた。」(『日本経済新聞』2017.12.09)
●「リニア中央新幹儀の関連工事を巡り、偽計業務妨害の疑いで東京地検特捜部が大手ゼネコン大林組(東京・港)などを家宅捜索した事件で、名古屋市内での工事の入札で不正の疑いを持たれていることが9日、関係者への取材で分かった。同社などは市内で名古屋駅の一部工区と、地下トンネルからの非常口の2工事を受注しており、特捜部は入札経緯の解明を進める。」(『日本経済新聞』2017.12.10)
●「東洋ゴム工業の免震ゴム性能偽装事件で、枚方簡裁は12日、不正競争防止法違反罪に問われた子会社に求刑通り罰金1千万円を言い渡した。原司裁判官は『個々の担当者の不正にとどまらない会社ぐるみの犯行』と厳しく指摘。企業統治の健全さに疑問を投げ掛け、規範意識の徹底を強く求めた形だ。有罪判決を受けたのは、法人としての東洋ゴム化工品(東京・新宿)。2013年に東洋ゴムが製造部門を再編した後、免震ゴムの開発・製造を担っている。判決によると、2014年9月、枚方寝屋川消防組合(大阪府枚方市)新庁舎に使われる免震ゴム19基について、同社の元取締役らは性能が国の基準を満たしているとする虚偽の検査成績書を作り、出荷先の建設会社に交付した。判決は性能偽装について子会社だけでなく東洋ゴムの上層部までが認識しながら出荷を続けていたと認定。公表も15年3月まで先送りしていた。一連の問題では、性能不足の製品約2900基が全国154棟に使用されていたことが発覚。事件を通じて明らかになった経緯は免震偽装の発覚から約2年半となる9月以降、相次いで明らかになった製造業の品質管理の不正に通じる。」(『日本経済新聞』2017.12.13)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「豊洲市場の土壌汚染対策の追加工事で入札不調が続いている問題で、東京都が随意契約への切り替えを検討していることが4日、分かった。今後も不調が続く場合は競争入札を断念する。業者と一対一で価格などの条件を調整し、確実な工事契約を目指す。2018年10月中旬と想定する築地市場からの移転時期から逆算し、必要な工期を確保する狙いだ。豊洲市場の追加工事は計9件。うちこれまでに落札したのは2件にとどまっている。残り7件は17年中に業者が決まらないと、18年7月末を予定する工事完了に間に合わない可能性が大きくなる。業者と相対で交渉する特命随意契約にすれば、スケジュールが遅れるリスクを減らせる。随意契約は地方自治法に基づく仕組みで、競争入札で落札者が決まらないなどの条件を満たせば適用できる。ただ、小池百合子知事は豊洲市場の整備費用の膨張を巡り、入札契約が不透明と問題視してきた経緯がある。一連の追加工事の入札不調の一部は小池知事による制度改革が招いた面もある。随意契約は入札に比べて透明性や競争性に欠けるため、批判も呼びそうだ。」(『日本経済新聞』2017.12.04)
●「国土交通省が検討してきた所有者不明土地の円滑利用を可能にする制度の概要が明らかになった。建築物がなく、反対者もいない利用されていない土施を対象に、公共事業の場合は都道府県知事が権利取得などを裁定する土地収用法の特例措置を講じ、収用制度の対象外の公共的事業の場合は利用権を設定する。所有者探索では、行政機関か固定資産課税台帳など有益な所有者情報を利用できるようにする方向だ。」(『建設工業新聞』2017.12.04)
●福島県いわき市の東日本大震災の被災者が入居する災害公営住宅で、来年4月から実施される家賃引き上げをめぐって入居者から悲鳴があがっている。来年3月で家賃が半額にされていた市の減免期限が終わることや、公営住宅法に基づく措置で「収入超過者」には最大で11万円を超える家賃が検討されている。(『しんぶん赤旗』2017.12.04より抜粋。)
●「日本各地で地震被害が頻発する中、地域の木材や工務店を活用した木造応急仮設住宅の機動的な供給を支援することを目的とした『木造応急仮設住宅供給に係る建築士会等連絡会議』が8日発足した。同日の建築士会全国大会京都大会に合わせて日本建築士会連合会と13の単位建築士会が第1回連絡会議を開催。和歌山県建築士会など先行している取り組み事例をもとに、現状と課題について意見交換した。今後、和歌山士会を事務局に引き続き情報交流・検討を進め、各単位士会での実効ある活動につなげていく。」(『建設通信新聞』2017.12.11)
●東京電力福島第1原発事故から6年9カ月-。政府の避難指示区域外からの避難者(“自主避難者”)を、統計に計上せず、仮設住宅や公営住宅から追い出す動きが進んでいる。山形県米沢市の雇用促進住宅を管理する独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」が9月、同住宅に入居する“自主避難者”8世帯の立ち退きを求めて提訴した。福島県も同様の提訴を検討している。3月末で福島県と国が“自主避難者”への住宅無償提供を打ち切ったことに連動したもの。機構は「有償賃貸契約の入居者との公平性を考えた」という。…“自主避難者”は統計にも計上されなくなっている。避難者数は全国への避難については復興庁、県内への避難詳報については県が発表する。復興庁は“自主避難者”数を把握しない。福島県内については、県が避難元の市町村別の避難者の数をおさえているので“自主避難者”数の類推が可能。ところが、福島県は3月末の住宅提供打ち切りと合わせ、県内への避難者数から“自主避難者”を除いた。たとえば避難指示区域外である福島市民の避難者数は3月発表では377人だったのが5月発表ではゼロになった。相馬市民の避難者数は3月発表が247人だったが5月発表はゼロ。同県は「住宅支援が終わったのでカウントから外した」と説明。住宅支援が終われば避難者ではなくなるという扱いだ。福島県いわき市から東京都内に避難している「ひなん生活をまもる会」の鴨下祐也代表は「住宅提供は原発事故という東電と国の加害に対して行われる当たり前のことで『支援』という性格のものではない。きちんと賠償として対応すべきものだ」と強調している。(『しんぶん赤旗』2017.12.13より抜粋。)

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