情勢の特徴 - 2017年12月後半
●「国土交通省の2017年度補正予算案の概要が明らかになった。予算額(総額)は8337億円となる。柱となる災害復旧や防災・減災事業への対応に7271億円を措置。ことし7月の九州北部豪雨など大規模な自然災害からの復旧と、その九州北部豪雨を受けて、全国のすべての中小河川で実施した緊急点検の結果に基づく防災・減災対策に力を入れる。」(『建設通信新聞』2017.12.19)
●「政府は22日、2018年度当初予算案を閣議決定した。政府全体の公共事業関係費は、前年度から26億円の増額となる5兆9789億円。伸び率にして『0.04%増』の微増ながら、6年連続での増加となっている。安定的かつ持続的な公共投資の必要性が叫ばれる中で、当初予算ベースでの持続的な“増額確保”という近年の流れを堅持した格好だ。政府の基本的なスタンスとして、公共事業関係費の安定的な確保を前面に押し出す。中核となっている生産性の向上につながるインフラ整備と激甚化・集中化する自然災害に対する防災・減災対策に重点を置く。…6年連続での増額という事実が示すように、近年の推移を見れば、長らく続いてきた公共投資の減少に歯止めをかけるだけでなく、緩やかに増加していく1つの流れを確実なものにしつつある。」(『建設通信新聞』2017.12.25)
●「東京都は下水道施設の運営権の民間事業者への売却(コンセッション)を検討する。人口減少をにらみ、包括的な民間委託も含め、経営効率の改善策を探る。災害対応などの課題を点検したうえで3~4年後をめどに新しい運営手法に移行する。下水道のコンセッションは26日の都政改革本部(本部長・小池百合子知事)の会議で検討課題として報告した。今後、老朽化した施設の更新などで事業費が膨らむ一方、人口減少で収入は落ち込む見通し。施設の維持管理など個別業務の委託にとどまらず、幅広く民間のノウハウを取り入れて経営基盤を安定させたい考えだ。」(『日本経済新聞』2017.12.27)
●「国土交通省が、2017年度の当初予算に設定した約1400億円の『ゼロ国債』を活用して発注する、いわゆる“当初ゼロ国”の対象工事が18年1月に発注のピークを迎える。年内に約480件、18年2月まで全体で900件を超す対象工事が発注される見込み。閑散期となってしまう年度当初(18年4-6月)の現場の稼働を押し上げる効果が期待される。 17年度予算に当初予算として初めて設定した、この“当初ゼロ国”は、年度当初(閑散期)と年度末(繁忙期)の繁閑の波が大きい公共工事の特性や、その背景にある単年度主義の原則という既成概念を打破する取り組みとなる。従来は補正予算に活用されてきた『ゼロ国債』を当初予算に用いることで、翌年度となる18年4-6月の事業量の落ち込みを緩和。建設企業にとって閑散期の現場の稼働率を押し上げる効果が期待できるからだ。」(『建設通信新聞』2017.12.28)
●「厚生労働省が20日にまとめた2017年1-11月の労働災害発生状況(速報、12月7計時点)によると、建設業の休業4日以上の死傷者数は、前年同期と比べ0.8%減(102人減)の1万2434人だったものの、うち死亡者数は265人で、5.2%増(13人増)となった。建設業の労災による死亡者数は、前年同期比で6期連続して増え続けているものの、1-11月期の増加率は2期続けて1桁台となり、増加幅が縮小している。」(『建設通信新聞』2017.12.21)
●「勤労者退職金共済機構・建設業退職金共済事業本部は、証紙の取り扱いを不要にする新たな掛金納付方式として検討している『電子申請方式』の実証実験概要をまとめた。…。実証実験の結果は、18年秋以降にまとめる。電子申請方式は、共済証紙の貼付が不要になることから、掛金納付に関連する事務負担の軽減が期待されている。電子申請方式の導入には、中小企業退職金共済法の改正が必要なため、建退共は具体的な導入時期について明言していない。」(『建設通信新聞』2017.12.21)
●「日本建設業連合会(山内隆司会長)は、建設キャリアアップシステムの普及・推進に向け、技能者登録などの目標数値と達成時期を盛り込んだロードマップを策定した。登録が始まる2018年4月から5年後の23年3月までを3期に分けて事業者、技能者、現場登録を推進する。19年9月までの前期期間の目標として50万人の技能者登録、売上高ベースの現場登録率60%以上を設定。23年3月までに会員企業の現場登録率を100%とし、登録現場に入場するすべての事業者、技能者の登録を目指す。」(『建設通信新聞』2017.12.25)
●「国土交通省は、29歳以下の若手技能者を対象に特別講習の実施に乗り出す。2017年度補正予算案に『新規入職人材の効果的な育成』として1億円を計上。将来の建設産業を支えていく若手技能者の育成に力を入れる。特別講習によって一層のスキルアップを促す一方で、修了者(受講者)に対する建設キャリアアップシステムへの登録支援も行う。特別講習は、これからの建設産業を支えていく若手技能者育成が狙い。中長期的に高齢者(熟練技能者)の大量離職が見込まれる中で、29歳以下の若手技能者に一層のスキルアップを促す。特に補正予算のターゲットである『中小企業の生産性革命への支援』を念頭に、人材育成への投資余力に乏しい中小企業のこれからを担う若手技能者に対する重点支援に取り組む。」(『建設通信新聞』2017.12.27)
●「国土交通省が実施した17年度下請取引等実態調査で、技能労働者の賃金水準を引き上げる傾向が顕著に表れた。『引き上げた(予定含む)』との回答が前年度比10.2ポイント上昇して80.0%。調査を始めた13年度から4年連続で高まった。引き上げ理由では『周りの実勢価格が上がり、引き上げなければ必要な労働者が確保できない』『若者の入職促進など業界全体の発展に必要』などの回答が寄せられた。…『引き上げていない』との回答も19.6%(29.7%)に上る。その理由(複数回答可)としては、『経営の先行きが不透明で引き上げに踏み切れない』(42.1%)や『受注者の立場では発注者(施主)や元請負人に賃金引き上げの費用を求めづらい』(34.7%)との声が寄せられた。」(『建設工業新聞』2017.12.27)
●「リニア中央新幹線関連工事の入札で不正が疑われている名城非常口(名古屋市)新設以外の複数の工事で、大手ゼネコン各社が受注調整していた疑いのあることが18日、関係者への取材で分かった。東京地検特捜部は各社の幹部が会合を開いて、入札などに関する情報交換を繰り返していたとみている。」(『日本経済新聞』2017.12.18)
●「リニア中央新幹線関連工事の入札にからみ、東京地検特捜部が近く、大林組のほか、鹿島、大成建設、清水建設の大手ゼネコン計4社を独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで家宅捜索する方針を固めたことが17日、関係者への取材で分かった。特捜部はすでに大林組を偽計業務妨害容疑で捜索しているが、各社が話し合いで受注調整をしていた疑いが強いと判断した。…リニア関連工事では、これまでに22工事について、発注元のJR東海とゼネコン各社の契約が済んでいる。このうち約7割に当たる15件を大林組、鹿島、大成建設、清水建設の大手4社がほぼ均等に受注している。複数の業者が入札の前に話し合い、受注予定者を決める談合行為があれば独禁法違反に当たる可能性がある。」(『日本経済新聞』2017.12.18)
●「リニア中央新幹線の建設工事を巡る入札談合事件で、大手ゼネコン4社の担当者が各工事の受注予定企業をまとめた一覧表を作成していたことが18日、関係者への取材で分かった。4社は一覧表に沿って入札前に協議し、受注予定者を決めようとしたとみられる。東京地検特捜部と公正取引委員会は、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で受注調整の実態解明を目指す。」(『日本経済新聞』2017.12.19)
●東京都は19日、大手ゼネコンの大成建設に対し、2カ月間の指名停止処分を発表した。しかし、豊洲新市場(江東区、東京ガス工場跡地)の土壌汚染追加対策で、入札不調となった7街区(水産卸売場棟)の地下空間床面にコンクリートを敷設する追加工事は例外として、同社と特命随意契約を行う方針を変えていないことに、批判が上がっている。都財務局は同日、8月に千代田区内の民間ビルの建設工事現場で3人が死亡する事故を起こした大成建設に対し、2月18日までの2カ月間、指名停止処分にしたと発表した。しかし、都は同社を指名停止したにもかかわらず、豊洲の7街区の地下空間の追加工事については、引き続き大成建設を特命随意契約の交渉相手として強行する方針。(『しんぶん赤旗』2017.12.20より抜粋。)
●東京(品川)-大阪間を約1時間で結ぶリニア中央新幹線。これまでに契約した22件の工事の約7割、15件を大手4社が幹事社の共同企業体(JV)が3~4件ずつ受注している。「工事が発注されるよりも前に、大成の役員が『リニアの業界の窓口はうちがやる』とゼネコンにあいさつに回っていた」ゼネコン関係者が明かす。大成がリニアの事業者であるJR東海に強いことは業界の“常識”。4社の中で最も多くのJR東海株を持っている。4社が受注を狙ったのは、①南アルブスの下を通す山岳トンネル、②新幹線を運行させたまま地下に駅を作る品川・名古屋両駅、③今後契約が予定される東京・愛知両都市圏の大深度シールドトンネル―。「これらは難工事で、受注すると企業の『看板』になり、利益率も高い。JRはエ事費に渋いが、難工事は設計変更で金額を増やしやすい。要は、もうかる工事を大手が山分けした」とゼネコン関係者は解説する。4社の幹部が受注希望を他社やJR東海に伝えるなかで「入札前には“本命”業者が決まっていた」という。「大林組は、本社の近くだからと品川駅南工区を要求し、本命となり受注した。大成建投は、旧大倉財閥傘下の企業が南アルブスに広大な土地を所有していることをあげ、南アルブストンネル2工区の本命となり受注した」(ゼネコン関係者)。談合疑惑が指摘されている4社だけでなく、JR東海も談合に深くかかわっていた疑いが出ている。難工事の一つ、名古屋駅中央西工区。本命業者は、工区の上に建つ名古屋駅新駅ビルを施工した大成だった。しかしJR東海が入札価格引き下げを求めても大成が応じなかったため「JR東海が大成に“お灸をすえる”ため、大林組に受注させた」(ゼネコン関係者)という。工事を受注したJVのいくつかには、JR東海の100%子会社「ジェイアール東海建設」やJR東海が大株主の「名工建設」が入っている。これらは「JR東海の意向だった」とゼネコン関係者。「100%子会社が工事をとることで、JR東海が連結決算で利益をあげようとしている」と解脱する。なぜJR東海のリニア事業に安倍政権は、財政投融資という公的資金を3兆円も投入したのか―。同社の財務だけでは、延伸区間(名古屋-大阪間)の早期着工ができません。そのため財界の早期着工要求を受けた安倍政権が16年6月、国が資金を調達して低利で貸し出す「財政投融資」の仕組みを活用し約3兆円を貸し付け、JR東海の負担を減らすことを決めた。(『しんぶん赤旗』2017.12.24より抜粋。)
●「日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)は22日の理事会で、『週休二日実現行動計画』(17~21年度)を決めた。土日が原則の週休2日(4週8閉所)を21年度末までに実現する目標を掲げ、9項目の基本方針と8項目の行動を列記。技術者・技能者の担い手を確保するために『業界の命運を懸けてチャレンジする』と決意を示した。」(『建設工業新聞』2017.12.25)
●「リニア中央新幹線の建設工事を巡る入札談合事件で、東京地検特捜部の捜査は年明け以降本格化する。特捜部は、大手ゼネコン4社がいったん決別した談合の仕組みを復活させ、巨大プロジェクトによる利益を分け合ったとみている。具体的な調整の経緯や仕組みの解明が、今後の捜査の焦点となる。…関係者によると、4社の担当者が定期的に集まるようになったのは14年に工事実施計画が国に認可された前後。JR東海は工事費を極力抑えるよう各社に要請していた。価格面の競争になれば収益が確保できなくなる恐れもある。そこで大成建設元幹部が窓口役となって各社の希望を集約する形で、受注を調整するようになったという。かつて談合を取り仕切っていたのは、各社で業務担当と呼ぼれる専門家だった。営業畑を中心に談合の調整が主な仕事だったという。しかし05年に業界全体で決別を宣言し、以降、業務担当は姿を消したとされる。今回受注調整を担ったのは技術部門を中心とした理系の専門家らだ。学会や会合などで日常的に顔を合わせる関係で、同じ大学の同窓生もいたという。『過去の業担は調整を裏付けるメモを残さないなど徹底していた』(ゼネコン関係者)が、今回は受注予定企業を割り振った一覧表を作成し、特捜部に押収された。業界関係者は『民間同士の取引ということもあり不正との認識が甘かったのではないか』とみる。」(『日本経済新聞』2017.12.30)
●「国土交通省は、密集市街地にある建築物の建て替え支援策を強化する。地方自治体が指定する防火地域で耐火構造建築物に建て替える際に適用している建ペい率を10%引き上げる特例措置の対象範囲を拡大。市街地の大部分を占める準防火地域で準耐火構造建築物に建て替える際にも広げ、市街地全体の建て替えを促す。新たな規制緩和措置を定める建築基準法改正案を来年の通常国会に提出する。」(『建設工業新聞』2017.12.21)
●「急増したアパート建設に歯止めがかかり、家賃下落や空室増への懸念が強まってきた。国土交通省が27日発表した11月の貸家着工戸数は6カ月連続で前年同月の実績を下回った。金融庁の監視強化で地銀の積極融資が止まり、相続税の節税対策も一巡。過剰供給が住宅市況を揺さぶる。相続対策と日銀のマイナス金利導入を受けて急増したアパート建設。貸家着工は5月まで19カ月連続のプラスを記録したが一転、マイナス基調が定着した。11月は前年同月比2.9%減の3万7508戸。貸家減で全体の新設住宅着工戸数も5カ月連続のマイナスだ。国交省の建設経済統計調査室は『個人向けアパートローンの減少が着工に影響した。都市部の需要は底堅いが、地方は下がっている』とする。」(『日本経済新聞』2017.12.28)
●「厚生労働省は27日、2016年度の全国の水道施設耐震化状況をまとめた。導水管や送水管などの基幹管路の耐震化率は前年度から1.5ポイント増の38.7%、浄水施設は2.1ポイント増の27.9%、配水池は1.8ポイント増の53.3%となった。耐震化率は上昇しているものの、依然として低水準にある。基幹管路は総延長9万908キロメートルのうち、耐震基準を満たす管路が3万8392キロメートル。耐震化率を都道府県別にみると、神奈川県が67.2%と最も高く、東京都が63.0%、愛知県が59.7%、千葉県が55.1%など。一方、鹿児島県の23.3%、和歌山県の23.8%、沖縄県の24.7%などが低い。また、自治体や一部事務組合などの水道事業体別でも耐震化進捗の程度に大きな差がある。実際に耐震化率100%の事業体がある一方で、1%に満たない事業体もある。」(『建設通信新聞』2017.12.28)
●東京都が築地市場(中央区)の移転先に決めた豊洲新市場予定地(江棄区、東京ガス工場跡地)の土壌汚染の追加対策としている9件の工事がようやく年内発注にこぎ着けた。入札不調を繰り返し、大手ゼネコン3社の要望を受け入れて予定価格を大幅に上乗せし、3社への発注額は当初の予定価格を計5億7600万円余も上回った。入札不調騒ぎを取材する中で、大手ゼネコンの強気の姿勢と、自ら定めたルールを破ってまで発注を急ごうとする都の異常な譲歩の実態が浮き彫りになった。(『しんぶん赤旗』2017.12.29より抜粋。)