情勢の特徴 - 2018年1月前半
●「海外投資家が日本での不動産購入を加速している。2017年の海外勢の取得額は1兆1000億円と前年の約3倍の増え、3年ぶりに最高を更新した。投資マネーの流入で世界主要都市で不動産価格が上昇する中、日本は借入金利を勘案した不動産の投資利回りが相対的に高いためだ。海外マネーの流入は不動産市況に追い風だが、日銀のマイナス金利政策が後押しした側面も大きく、危うさを指摘する声もある。」(『日本経済新聞』2018.01.07)
●「政府は地方自治体が運営する公共インフラの民間への売却を促すためPFI法を改正する。上下水道や公共施設の運営権を売却する際、地方議会の議決を不要にし、国から借りたお金を前倒しで返すことも認める。公共インフラの老朽化が進む中、民間の資金を使った低コストの運営に転換し、公共料金の引き下げも視野に入れる。政府は2017年にPFIを推進する行動計画を改定し、インフラの売却額や投資額などの合計を13年度から22年度の10年間で21兆円にする目標を掲げた。…耐用年数を迎える公共インフラは増える見通しだ。国土交通省は補修の目安とする建設から50年以上の下水道が全体に占める割合が、11年度の2%から21年度に7%、31年度に23%に増えると試算する。上下水道などのインフラの維持費は、13年度の3.6兆円から23年度に最大で5.1兆円に膨らむと見込む。15年度までのPFIの実績は関西国際空港や仙台空港の売却など大型事業で9.1兆円。空港と比べて上下水道は売却があまり進んでいない。狙い通り進まない背景には、手続きの面倒さや自治体が見込む利点の乏しさなどがある。政府は自治体の売却手続きや財政負担を軽くするPFI法改正案を22日召集の通常国会に提出し、早期の成立・施行をめざす。 いまは案件ごとに議会の議決が必要だが、自治体が条例を定めれば、議決を不要にする。数カ月から年単位で時間がかかる場合があるためだ。運営権を取得した企業が利用料金を設定しやすいようにもする。いまは所有する自治体の承認が必要だが、届け出るだけで済むように改める。民間のより自由な運営を促し、サービスの効率化や質の向上につなげる。」(『日本経済新聞』2018.01.04)
●「政府は、中小企業・小規模事業者が働き方改革や生産性向上をめぐって抱えている不安と問題点を解消するため、政府一丸となって取り組む対応策をまとめた。建設産業の中小企業が働き方改革と生産性向上を進めるのに当たり、『生産性を阻害する行政手続き』の最大の問題点として、国や自治体の公共調達における『工期・納期が年度末に集中し、長時間労働となる』ことや『公共工事の工期の変更が認められない』ことが挙げられていることから、2019年度予算から、あらゆる官公需で平準化に取り組む方針を打ち出したことが明らかとなった。」(『建設通信新聞』2018.01.15)
●「建設コンサルタントや測量・地質調査業界で今年、働き方改革と業務効率化に向けた動きが一段と加速する。多くのトップがICT(情報通信技術)、IoT(モノのインターネット)、人工知能(AI)など先端技術を各種業務に積極的に取り入れる生産性向上策と両輪で長時間労働を解消すると表明。若手人材の確保につなげる時短勤務と『利益と品質の両立』を目指し、制度と技術を融合した働き方改革がいよいよ本番を迎える。」(『建設工業新聞』2018.01.09)
●「厚生労働省は違法残業の監督指導を強化するため、2018年度から労働基準監督官OBを非常勤職員として活用する。約50人の採用を想定。監督官の人手不足が問題となるなか、労使協定(36協定)を超える残業が疑われている事業所への立ち入り調査などでシニアの力を借り、社会問題になっている長時間労働の是正を図る。」(『日本経済新聞』2018.01.10)
●「国土交通省は、生産性の向上をターゲットに技能という既存の経営資源を効率的に活用する『多能工化』の推進に取り組む。中小・中堅のいわゆる地域企業で構成する企業グループによる多能工の育成と活用を支援する『多能工化モデル事業』を実施。技能者が持つ専門的な技能の“幅”を広げることで生産性の向上につなげることが狙い。2018年度予算案に地域建設産業における多能工化の推進として6000万円を計上した。17年度補正予算案でも3000万円を措置。補正予算に事業費を盛り込むことで、先行的に取り組む企業グループを積極的に後押しする方針だ。複数の企業で構成する企業グループが協働して取り組む多能工の育成と、その活用計画の策定などを支援する『多能工化モデル事業』は18年度予算における新規プロジェクトとなる。」(『建設通信新聞』2018.01.10)
●「厚生労働省は、建設労働者雇用支援事業の必要経費として、2018年度予算案に1億2900万円を計上した。若年者の建設業に対する理解や入職促進に向け、工業化の高等学校の生徒と教諭に加え、普通科高校や高等専門学校の生徒や教諭とも建設産業界がつながる機会をつくる『建設業の「見える化」・「つなぐ化」コース』を新設する。出前事業や現場見学会などを実施することで、建設企業・建設関係団体が高校などにPRする機会を提供する。」(『建設通信新聞』2018.01.10)
●「厚生労働省は18年度から建設現場で働く『一人親方』の安全衛生教育に乗りだす。同省の委託事業として、今秋ごろから全国6地域ブロックで各3回づつ開催する。建設現場の事故で最も多い墜落・転落災害の防止策などを解説する。昨年6月に閣議決定した建設職人基本法の基本計画を踏まえ、従来の労働安全衛生法で保護対象になっていない一人親方の安全と健康を確保できるようにする。」(『建設工業新聞』2018.01.10)
●「国土交通省は、建設現場の最前線で基幹的な役割を担えるだけの技能を備えた『登録基幹技能者』を、建設業法に定める主任技術者の資格要件に取り込む。5日にどの登録基幹技能者を、どの業種(専門工事)の主任技術者として認定するかといった具体的な運用を定める告示(案)をまとめた。2月の公布、4月1日からの施行を見込む。昨年11月に公布・施行した建設業法施行規則および施工技術検定規則の一部を改正する省令で、登録基幹技能者(認定講習の修了者)の主任技術者要件への認定を規定。これにより、登録基幹技能者を主任技術者の要件を満たす技能者として認定するための枠組みは整えていたが、具体的な運用は定めていない状況にあった。この告示(案)で、全33職種ある登録基幹技能者のうち、どの登録基幹技能者(登録基幹技能者講習の種目)が、どの業種(建設業の種類)に対応するかを整理。建設業の種類に応じて、それに対応する登録基幹技能者講習の種目を一覧で示す」(『建設通信新聞』2018.01.11)
●「日本建設業連合会(山内隆司会長)は、週休2日の定着に向け請負契約書の特記事項モデル作成を進めるため、2017年度内に検討組織を設置する。モデルには、適正な工期設定や必要となる費用の反映、発注者との工事進捗状況の共有などの趣旨を盛り込み、週休2日実現に向けた会員企業の取り組みを後押しする。下請契約に当たっての特記事項モデルも併せて検討し、18年度上期をめどに作成する方針だ。請負契約書の特記事項モデル作成は、日建連が17年12月に策定した『週休二日実現行動計画』に盛り込んでいる。検討組織は、週休二日推進本部(井上和幸本部長)の幹事会の下に設置する見通し。各社の法務実務者で構成し、具体的な検討を始める。」(『建設通信新聞』2018.01.12)
●「日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)は、10月に運用が始まる『建設キャリアアップシステム』の普及・推進活動に一段と力を入れる。会員企業向けの説明会を各支部ごとに2月2日から順次実施する。システム運営主体の建設業振興基金(振興基金)と共に概要や料金などを紹介。普及、推進策をまとめた日建連のロードマップに基づく会員企業の取組みも周知する。」(『建設工業新聞』2018.01.12)
●「労災による死亡と認定された外国人技能実習生が2014~16年度の3年間で計22人に上ることが14日、厚生労働省のまとめで分かった。大半が事故とみられるが、過労死も1人いた。政府統計で実習生の労災死の実態が明らかになったのは初めて。労災保険の給付対象となる休業4日以上の労災件数は3年間の平均で年475件だった。実習生が労災死する比率は日本の雇用者全体の労災死比率を大きく上回り、実習の名の下に日本人より危険で過酷な労働を負担している現実が示された。厚労省によると、死亡した実習生のうち労災認定されたのは14年度が8人、15年度が9人、16年度が5人。労働基準監督署に報告があった実習生の死亡事案の中で、労災認定されたものを集計した。実習生の国籍や都道府県別の人数は不明。」(『日本経済新聞』2018.01.15)
●「石井啓一国土交通相は日刊建設工業新聞など建設専門誌の新春共同インタビューに応じ、2018年の行政運営への抱負を語った。インフラ整備や防災・減災などで建設業が今後も期待される役割を果たしていけるよう『生産性向上と働き方改革に取り組む』と決意を表明。ストック効果の高い社会資本整備に向け、安定的・持続的な公共投資を確保することの重要性も強調した。今年を生産性革命『深化の年』と位置付け、i-Constructionなどの施策を積極展開する方針も示した。」(『建設工業新聞』2018.01.04)
●「野村不動産はマンション1棟を丸ごとリノベーションする事業に増築を組み合わせる手法を業界で初めて展開する。東京都区部の築30年超の物件を買い取り、当時の施工元の竹中工務店が改修・増築工事を担い、今秋にも売り出す。首都圏で新築向け用地の獲得競争が激化する中、既存物件のリノベ需要に着目。幅広いノウハウを蓄積して収益の柱に育てる考え。」(『日本経済新聞』2018.01.10)