情勢の特徴 - 2018年1月後半
●「政府が22日招集の通常国会に2018年度予算案を提出したことで、一般会計の公共事業費は、土木分野の『公共事業関係費』が5兆9789億円、船舶建造費なども含む建築分野の『その他施設費』が6581億円で、土木分野と建築分野を合わせた『公共事業費』の総額が6兆6370億円となることが分かった。また、同時に提出した17年度補正予算案は、公共事業関係費1兆0003億円、その他施設費4544億円の計1兆4547億円となった。これにより、2つの予算成立後に執行する公共事業費は、公共事業関係費の6兆9792億円、その他施設費の1兆1125億円を合わせた8兆0917億円になる。」(『建設通信新聞』2018.01.23)
●「国土交通省は、社会保険への加入の促進、徹底に向けた取り組みとして、未加入企業に対する一層の対策に乗り出す。焦点となるのは、建設業許可における対応の強化だ。建設業法の改正によって、社会保険への加入を許可要件として付加。未加入企業に対する許可や更新を認めない仕組みを築く。結果として、許可業者からの未加入企業の全面的な排除に踏み出す。」(『建設通信新聞』2018.01.16)
●「地方自治体が管理する公共施設などに対する2018年度予算における国の支援策が、大規模事業以外にも広がりを見せている。国土交通省は、18年度予算で自治体管理の橋梁などの大規模修繕・更新の補助制度の対象事業の要件を緩和。総務省は18年度地方財政対策として、長寿命化事業の対象に河川管理施設や砂防関係施設、港湾施設などを新たに追加する。公共施設等総合管理計画の策定などが進み、実態が明らかになってきた個別施設の老朽化対策を適切に支援していく。」(『建設通信新聞』2018.01.17)
●「WTO(世界貿易機関)政府調達協定の対象金額が4月1日から引き下がる。財務省と総務省は22日、2020年3月31日までの2年間に適用する新たな邦貨換算額を告示した。建設工事(建設サービス)の対象金額は、国が予定価格(税込み)6億8000万円以上、地方公共団体は22億9000万円以上となる。新たな邦貨換算額によると、国の建設工事(建設サービス)の基準額は、現行の『7億4000万円以上』から『6億8000万円以上』、地方公共団体は『24億7000万円以上』から『22億9000万円以上』に引き下がる。…国土交通省の直轄工事のうち、一般土木工事と建築工事は、7億2000万円以上がA等級、3億円以上7億2000万円未満がB等級、6000万円以上3億円未満がC等級に区分されている。従前の基準額は7億4000万円以上であったことから、B等級の工事はすべてWTOの対象外になっていたが、今回の変更に伴ってB等級の一部にWTOの適用ラインが食い込む形となる。」(『建設通信新聞』2018.01.23)
●「国土交通省は、2017年度に発注した約1900件(昨年11月時点)の『週休2日』対応工事を対象に現場の状況や、携わる技術者・技能者の実情をあぶり出す方針だ。対象工事の元請企業と下請企業の技術者や技能者に対するアンケートを実施。週休2日の推進に向けた課題や本音の意見を吸い上げる中で、今後の取り組みに生かす。」(『建設通信新聞』2018.01.24)
●「東京都入札契約制度改革について東京都入札監視委員会制度部会は、業界5団体と意見交換会を29日に終えた。予定価格の事後公表については、設備系の団体が一定の理解を示す一方、東京建設業協会と東京都中小建設業協会は事前公表に戻すように強く要望した。JV結成義務の撤廃は、設備系の団体が総合評価の件数増大や、加点の引き上げなどの要望にとどめたのに対し、東建は『結成が必要な案件は結成義務を復活してほしい』、都中建は『撤回を要望する』と訴えた。1者入札の中止は、否定的な意見が強かった。」(『建設通信新聞』2018.01.31)
●「厚生労働省は、22日招集の通常国会に提出予定の働き方改革関連法案によって、猶予期間後に残業上限規制の適用対象となる建設業の働き方改革を助成金によって支援する。現行の『職場意識改善助成金』で建設業は支給対象外だったが、2018年度から、時間外労働の上限設定や週休2日制の導入、有給休暇の取得促進、残業時間の削減などを進める中小建設企業に助成金を支給する。いまの助成金は中小企業が支給対象だが、18年度から新たに中小事業主団体が取り組む働き方改革に対しても助成金の支給を始める」(『建設通信新聞』2018.01.19)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、久保田俊平議長)は、2017年11月11日に実施した『統一土曜閉所運動』の結果を公表した。閉所率(平日への読み替え閉所を含む)は前年同月比4.6%増の72.2%となり、3年連続で過去最高を更新したことが明らかになった。運動日当日に閉所した完全閉所率も4.1%増の51.3%で過去最高を2年連続で更新した。11月統一土曜閉所運動で完全閉所率が50%を超えるのは今回が初めて。組合員の土曜閉所の意識の高まりに加え、各社のトップダウンによる働き掛けなど企業側の積極的な取り組みが閉所率改善に貢献した。運動に参加したのは5194作業所で、内訳は土木2507作業所、建築2687作業所。」(『建設通信新聞』2018.01.23)
●「国土交通省は、社会保険等への加入対策として、15日の『建設業社会保険推進連絡協議会』に提示した、民間工事における『誓約書』の活用と、『社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン』に示す適切な保険を確認するためのフローチャートの活用を開始する。26日付でその活用の促進を建設業団体に通知した。対象の民間工事における誓約書の活用は、受注者に当該工事で未加入企業を下請けとしないことを誓約させる取り組み。社会保険の加入企業に限定する具体的な取り組みが行われていない民間工事や、地方自治体の発注工事などを念頭に活用を促す。」(『建設通信新聞』2018.01.29)
●「厚生労働省が26日にまとめた2017年10月末時点の外国人雇用状況によると、国内の外国人労働者数は前年同月末比18.0%増の127万8670人だった。2年続けて100万人を突破し、5年連続で過去最高を更新した。外国人労働者を雇用する事業所数も過去最高で、12.6%増の19万4595ヵ所だった。このうち建設業の外国人労働者数は34.2%増の5万5168人。事業所数も29.4%増の1万6711ヵ所となった。増加率は人材不足を反映しており、建設業とともに人材不足とされる『医療・福祉』や『卸売り・小売り』などと比べても、建設業の増加率は高かった。」(『建設通信新聞』2018.01.30)
●「型枠工事の就労工数が3年ぶりに大幅に減少も、社会保険加入率は急上昇――。工事量の大幅な減少と、社会保険加入に伴う費用増などから雇用を維持できるのか、危惧されていたことが現実となった格好だ。日本型枠工事業協会(日本型枠、三野輪賢二会長)がまとめた『型枠大工雇用実態調査報告書(2017年11月)』で明らかになった。…調査によると、1社当たりの型枠大工の就労工数は前年の56.5人から49.6人と約12%の減少。総数では、前年の223社1万2598人から213社で1万0567人と、2000人超減少している。今回の調査で回答を得た企業数も10社減少しているから単純に比較はできないが、型枠大工を200人以上稼働させている企業は数えるほどしかないことから、2000人が減少10社の型枠大工とは考えられない。確実に業界を離れたということだ。」(『建設通信新聞』2018.01.31)
●「国土交通省は、建設キャリアアップシステムを活用した政策展開の1つとして、技能者に対する評価制度を築く。29日の『建設技能者の能力評価のあり方に関する検討会』(座長・蟹沢宏剛芝浦工大教授)に年度内に予定している中間報告の骨子を提示した。評価の仕組みや、評価基準といった制度の“大枠”としての方向性が徐々に見え始めている。」(『建設通信新聞』2018.01.31)
●「建設業への就業者が増えている。総務省が30日まとめた労働力調査(基本集計)結果によると、建設業就業者数は17年(1~12月)時点の平均で498万人に上り、前年時点の平均より3万人増(増減率0.6%増)となった。今後の人口減少で産業間の人材獲得競争が厳しさを増す中、国土交通省や建設関係企業・団体が最優先に取り組んでいる担い手確保策が一定の成果を出したもようだ。労働力調査の結果によると、17年平均で全体の労働力人口は47万人増(0.7%増)の6720万人となり、うち就業者は65万人増(1.0%増)の6530万人に上る。総務省はこれらの結果について、政府が『1億総活躍社会』と銘打って推進する女性や高齢者を中心とした就業者の確保策が一因になっていると分析している。」(『建設工業新聞』2018.01.31)
●「建設業界で週休2日導入の取り組みが広がっている。大和ハウス工業は4月から全国の工事現場で日曜日以外に月1日、土曜日に休めるようにして、2021年4月をメドに原則、週休2日とする。竹中工務店は21年度末までの週休2日実現を目指し、計画を3月までにまとめる。戸建て住宅やオフィスビルなどの建設現場では工事を止めるのは日曜日だけなのが一般的で建設業は全産業平均に比べて年間労働時間が約2割長い。人手不足が深刻化する中、労働環境を改善し、若手の建設技能者の確保につなげる。大和ハウスは4月から新規に着工する現場に完全な休業日の『休工日』を導入する。原則、土・日曜と連続で休めるようにする。19年4月からは日曜日以外の休みを月2日に増やし、21年4月には完全週休2日とする方針だ。休みを増やすと施工期間が延びる可能性もあるが、出資先のサイバーダインの装着型ロボットのほか、補助ロボットなどを積極的に導入し、作業効率を高め、期間の延びを抑える。戸建て住宅や賃貸住宅、商業施設など全国1万カ所規模で導入する。人手不足に伸び悩む地場の工務店など協力会社が人材を確保しやすくする。」(『日本経済新聞』2018.01.17)
●「東京商工リサーチは16日、2017年(1-12月)の建設業倒産(負債額1000万円以上)が前年比1.6%減の1579件にとどまったことを発表した。9年連続で前年水準を下回り、1469件だった1990年以来の低水準。バブル期だった90年は建設投資額が初めて80兆円の大台を突破、これに対し17年度の投資額は55兆円。建設市場が3割以上縮小しても、倒産件数の抑制が可能なほど、建設産業界の環境変化に対する耐性力が付き始めたとも言えそうだ。」(『建設通信新聞』2018.01.17)
●「より下位の下請企業ほど法定福利費が十分に受け取れていない実態が、国土交通省の調査で明らかになった。公共工事と比べ民間工事で法定福利費を確保できている工事の割合が低いことも判明。3次以下の下請企業では技能者の賃金水準が低い傾向にあり、賃金の引き上げも3~4割にとどまる。調査結果を踏まえ、今後ターゲットを絞った効果的な対策の検討が求められそうだ。調査は建設業許可業者の中から無作為に抽出した2万8000社を対象に17年9~11月に実施し、6888社の回答を得た(回収率24.6%)。公共工事と民間工事、団体の所属の有無などを問わず幅広く、社会保険の加入状況や、雇用する技能者に支払った賃金や法定福利費の実態を把握し、担い手確保に向けたさらなる取り組みを検討するのが目的。それによると、直近の一現場で法定福利費100%受け取れた公共工事の割合は元請が59.2%と約6割に上ったのに対し、1次下請は49.1%、2次が43.7%、3次以下が41.7%と徐々に減少した。民間工事でも元請44.1%、1次43.3%、2次38.5%、3次以下25.6%と同様の傾向が見られた。官民問わず、下請の下位になるほど法定福利費が行き渡っていないことが分かった。民間工事は公共工事と比べて、法定福利費を80%以上受け取れた工事の割合が低い。さらに20%未満しか受け取れなかった工事の割合は元請18.3%(公共工事5.8%)、1次13.9%(9.9%)、2次19.9%(8.4%)、3次以下17.9%(16.7%)と高まる傾向となった。」(『建設工業新聞』2018.01.17)
●「日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)は、会員企業に職員の賃金を引き上げるよう要請する方向で最終調整に入った。これまで協力会社の建設技能者については処遇改善を要請してきたが、会員企業の職員の賃上げを求めるのは初めて。施工管理に携わる技術者をはじめとする担い手確保に、より前向きに取り組むよう促すことなどが狙い。3%の賃上げを呼びかける経団連の判断も踏まえた。引き上げの最終的な対応は各社に委ねる。日建連はこれまで、給与体系や労使の問題への言及を避けてきており、賃上げ要請は『異例の取り組み』(首脳)となる。要請を巡っては、山内会長に方法や内容は一任することを決定済みで、中身の詰めを急ぐ。早ければ2月の理事会で会員企業に伝える見通し。」(『建設工業新聞』2018.01.24)
●「東京都台東区は24日、空き家対策特別措置法に基づき、老朽化で倒壊の恐れがある空き家の解体を始める。所有者不明時に使う略式代執行の手続きで実施する。都内では町田市が2017年10月に、空き家のアンテナやトタン板の撤去時に略式代執行を実施したケースがあったが、建物全体で適用するのは同区が初めて。台東区が取り壊す空き家は木造2階建てで、延べ床面積は約40平方メートル。家屋が傾いており、隣接する建物に被害が及ぶ恐れがある。区は12年に通報を受けてから、不動産登記などの調査や近隣住民への聞き取りを続けたが、建物所有者を突き止められなかった。解体費用は約150万円で、持ち主が今後も見つからなければ区の負担になる。区が把握している空き家は455棟で、倒壊の恐れや景観上の問題がある『特定空き家』は今回解体する1棟。」(『日本経済新聞』2018.01.23)
●「国土交通省は、2017年に実施した全国の住宅団地の実態調査の結果を明らかにした。面積が5ヘクタール以上の住宅団地は全国で約3000団地あり、面積ベースでおおむね半数が3大都市圏に立地していることが分かった。また100ヘクタール以上の大規模住宅団地の7割が公的賃貸住宅を含まないという結果となった。市町村の半数は、団地に対する高齢化などの問題意識を持っており、今後さらなる高齢化率の上昇などが危惧される。100ヘクタール以上の住宅団地を対象とした推計によると、15年時点では昭和50年代に入居開始した団地の高齢化率は全国平均と同程度だが、30年には全国平均を10%程度上回る見通しとなっている。自治体を対象としたアンケートでも現状で半数の自治体が問題意識を持っていると回答。具体的には『高齢者が多い』『非住宅用途の導入が困難』『生活利便機能の低下』などが挙げられた。」(『建設通信新聞』2018.01.24)
●「国土交通省は、東京など大都市にある低未利用地の有効活用に乗り出す。都市再生特別地区制度の活用時に求められる公共貢献で整備した公共公益施設の用途変更を誘導し、ニーズが高い託児所などへの転用を促す。大規模ビルの増改築時、床面積に応じた台数分の設置を求める駐車場の付置義務も合理化。設置義務台数を減らし、駐車場の余剰スペースを防災倉庫などに転用しやすくする。」(『建設工業新聞』2018.01.26)