情勢の特徴 - 2018年3月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は19日、中央建設業審議会(中建審、国交相の諮問機関)と社会資本整備審議会(社整審、同)の下に設置している合同の基本問題小委員会を開き、建設業法の改正に向けた個別課題と検討の視点を示した。担い手確保・育成の観点から、社会保険未加入業者の建設業許可・更新を認めない仕組みや技能労働者の制度的位置付けを提示。働き方改革推進に向けた受発注者双方の取り組みも論点に挙げた。」(『建設工業新聞』2018.03.20)
●「社員らの健康管理を経営的視点でとらえ、戦略的に実践する『健康経営』に積極的に取り組む企業に対し、工事などの公共調達でインセンティブ(優遇措置)を与える自治体の取り組みが動き始めている。17年度は4自治体が競争入札参加資格審査や個別の建設工事で健康経営企業を加点評価している。4月からは1自治体が建設工事の総合評価落札方式で加点評価を始める。」(『建設通信新聞』2018.03.28)
●「国土交通省は、地方自治体の下水道事業の取り組みを一体的・総合的に評価する仕組みを新たに構築する。『Gレポ』(下水道事業マネジメント通信簿)と銘打ち、すべての自治体の汚水処理普及率や地震対策、安全対策、公共工事品質確保促進法(品確法)への対応などを各5段階で評価。単なる指標のランキングでなく、伸び率や見直しの予定時期などについても評価することで、自治体の意識付けによる新たな政策検討を促す。」(『建設通信新聞』2018.03.30)
●「内閣府は29日、今後約40年間で必要になる公共インフラ施設の維持補修・更新費を初めて試算した。損傷などが起きた後に対処する『事後保全』手法を採用する前提で試算したところ、2015年度から40年間の累計で必要コストが547兆円に達すると算出した。全国で老朽ストックが増えている中、施設管理者に計画的かつ効率的な対策の実施を改めて促す参考データとして提示した。」(『建設工事新聞』2018.03.30)

労働・福祉

●「勤労者退職金共済機構(水野正望理事長)・建設業退職金共済事業本部(本部長・稗田昭人理事長代理)は、証紙貼付方式の下で建設キャリアアップシステムの就業履歴から、共済契約者が元請・下請間で使用する被共済者就業状況報告書を作成できるシフトを作成する。証紙請求書類を共通化することで、共済契約者の事務の簡素化を図る。システムの運用開始が見込まれる今秋までにソフトを作成し、機構のホームページからダウンロードできる環境を整える。証紙請求書類の共通化は、今後の建退共制度の検討項目として、15日に都内で開かれた第36回運営委員会・評議員会で了承された。」(『建設通信新聞』2018.03.16)
●建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み健康被害を受けたとして、首都圏の元労働者と遺族計354人が国と建材メーカー42社に総額約120億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が14日、東京高裁であった。大段享裁判長は、国の責任を認めた一審東京地裁判決を支持し、372人に総額約22億8000万円を支払うよう国に命じた。メーカーへの請求は棄却した。全国に14ある同種訴訟で2件目の高裁判決。東京高裁の別の裁判長は昨年10月、国とメーカー4社に賠償を命じている。大段裁判長は「国は遅くとも1975年以降、事業者に防じんマスクの使用や危険性の警告表示を義務付けるべきだった」と述べ、規制権限を行使しなかったのは違法と判断した。個人事業主の「一人親方」についても、保護すべき法的義務を負っていたと指摘した。一方、メーカーの責任は、現場で使われた建材が特定されていないことなどから認めなかった。(『しんぶん赤旗』2018.03.16より抜粋。)
●「国土交通省は、土木工事・業務における積算基準を見直す。20日に改定の内容を発表した。柱となるのは、週休2日の実施など、焦点となっている働き方改革に取り組むことができる環境の整備と、i-Constructionの一層の拡大に向けた基準の新設。最新の実態を反映して一般管理費等率の改定も行う。4月1日以降に契約する工事・業務から適用を開始する。働き方改革に取り組むことができる環境の整備(必要経費の計上)として、受注者となる建設企業が着実に“ステップ”を踏みながら、週休2日の実施に踏み出せるだけの体制を敷く。2017年度から導入している週休2日(4週8休以上)を実施した場合の間接費に対する補正係数を変更。最新の施工実態を踏まえて、共通仮設費は現行の1.02から1.04、現場管理費は1.04から1.05に割り増す。」(『建設通信新聞』2018.03.22)
●「日本型枠工事業協会(三野輪賢二会長)は、『働き方改革と土木型枠に関するアンケート』の結果をまとめた。型枠技能労働者1人当たりの年間平均支給額に対する回答は、『350万円以上400万円未満』『400万円以上450万円未満』の順で多く、2年前の前回調査の傾向と変動がない。三野輪会長は『公共工事設計労務単価の上昇分の反映が見られない。なぜ技能者に回ってこないのか』と問題視した。また、法定福利費を元請けから受理していないため、社会保険料の事業主負担を『まったく賄えない』との回答も5.9%あった。」(『建設通信新聞』2018.03.27)
●「石井啓一国土交通相は27日に建設業4団体と意見交換し、建設業の働き方改革をさらに加速させる新しい施策パッケージについて、『(国交省の)本気度を示すもの』との考えを示した。業界団体に対して『積極的で具体的な取り組みをお願いしたい』と要請。施策の推進に当たり『関係者が認識を共有し密接な連携と対話の下で施策を展開していく』との方針も明らかにした。政府が昨年3月に決定した『働き方改革実行計画』を踏まえ、官民挙げて建設業の働き方改革に向けた取り組みを進めている。国交省はこうした流れを止めず、さらに加速させるため『建設業働き方改革加速化プログラム』を策定した。…意見交換の場で石井国交相は、プログラムが官民の具体的な行動や成果につながるよう、▽週休2日の確保をはじめとする長時間労働の是正▽担い手の給与引き上げや法定福利費の浸透・建設キャリアアップシステムの加入促進▽ICT(情報通信技術)活用や新技術導入による生産性向上―の3点を要請した。」(『建設工業新聞』2018.03.29)
●「全国建設労働組合総連東京都連合会(全建総連都連、菅原良和執行委員長)は29日、東京都産業労働局と東京建設業協会に前年同様、『標準賃金日額2万6000円』を求める申入書を提出した。新たな公共工事設計労務単価の反映などにより、当面、日額5000円の賃金引上げも要望した。全建総連都連は『まだまだ現場労働者の賃金の大幅な改善は見られない。このままでは入職した若者がすぐに辞めてしまう。育成する前に若者がいなくなってしまう』と現状に危機感を募らせ、『早期のさらなる賃金アップが必要だ』と強調した。」(『建設通信新聞』2018.03.30)

建設産業・経営

●全国中小建設業協会(豊田剛会長)は、会員団体の傘下企業を対象に実施した2017年度の『人材確保・育成対策等に係る実施調査』結果をまとめた。適正な工期設定、適切な設計変更については、ともに全体の約8割が適正または適切でないと回答し、公共工事発注者に対する不満が浮き彫りになった。担い手3法の浸透状況では『浸透していない』との回答が全体の5割強を占め、都道府県、市町村では『担当者まで浸透している』との回答が1-2割にとどまっている。全中建は調査結果を踏まえ、改善策を発注者に要望していく。」(『建設通信新聞』2018.03.16)
●「リニア中央新幹線の建設工事をめぐる入札談合事件で、東京地検特捜部は来週に大手ゼネコン4社の社長から任意で事情聴取する方針を固めたもようだ。不正な受注調整の認識の有無について説明を求めるとみられ、特捜部は法人としての大手ゼネコン4社と担当者の刑事責任追及に向け、詰めの捜査を進める。」(『日本経済新聞』2018.03.17)
●「ゼネコンが研究開発費を増やしていることが、日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)の17年度調査で明らかになった。回答した37社(前年度38社)の約9割に当たる33社(28社)が、前年度と同額以上の研究開発費を投じていた。社外公表値に基づく単体の研究開発費は1億円未満が13社(14社)で最も多く、20億円以上が前年度と同じ6社あった。力を入れている分野は品質・生産性向上がトップだった。…テーマ別の研究開発の比率は▽54%(44%)の品質・生産性向上▽19%(21%)の安全・安心▽15%(17%)の地球環境―の順に高く、研究開発費は品質・生産性向上が最多。品質・生産性向上の分野で意欲的に行っているのは▽施工管理(IT化施工など)▽コンクリート▽ロボット・自動化―の順(複数回答)だった。施工管理を挙げたのは13年度の10社から23社増えた。」(『建設工業新聞』2018.03.23)
●成田空港の滑走路舗装工事などで談合を繰り返したとして、公正取引委員会は28日、道路舗装大手9社に対し、独占禁止法違反(不当な取引制限)で総額約7億7000万円の課徴金納付命令を出した。対象は日本道路、NIPPO、東亜道路工業、前田道路、大成ロテック、大林道路、世紀東急工業、鹿島道路(いずれも東京)、福田道路(新潟市)の9社。このうち大林道路、世紀東急工業、鹿島道路を除く6社は再犯の恐れがあるとして、再発防止策を求める排除措置命令も出した。公取委によると、9社は遅くとも2011年9月以降、成田空港の滑走路や都道の騒音対策、東京港埠頭の整備・改修に伴う舗装工事の入札で、事前に話し合って落札者を決めるなどしていた。談合が行われた入札は60件前後、受注総額125億円に上るという。(『しんぶん赤旗』2018.03.29より抜粋。)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は21日までに、リニア中央新幹線の談合事件で幹部らが東京地検特捜部に逮捕された大手ゼネコンの大成建設と鹿島の2社に対し、競技会議の仮設工事など入札による新規発注を自粛すると明らかにした。自粛期間は未定。19日付で決定し、20日に両社に通知した。組織委は、2社が本体工事に関わっている会場については、仮設工事を別の業者に発注すると工事が遅れ、大会に間に合わない可能性があると説明。こうしたケースでは『例外的には随意契約を採用する可能性は排除していない』とした。有識者を含めて必要性を検討する。メインスタジアムの新国立競技場の本体工事は大成などの共同企業体(JV)が手掛けている。」(『日本経済新聞』2018.03.22)
●「マンションンの修繕工事に使う財源が不足する懸念が強まっている。所有者が払う修繕積立金の水準を日本経済新聞が調べたところ、全国の物件の75%が国の目安を下回っていた。適切な維持管理には引き上げが必要だが住民合意は簡単ではない。特に大都市に多い超高層住宅(タワーマンション)は増額に不安がある。管理不全予備軍の増加は周辺に悪影響を及ぼしかねない。マンションの劣化を防ぐには12~15年ごとの大規模修繕が必要だ。1回目は外壁塗装などで済むが、2回目以降は給水・配水管や昇降機の更新に移り、工事費が膨らむ。積立金が足りないと適切に修繕できず資産価値が落ちる可能性が高まる。国土交通省は2011年に修繕積立金の指針を策定。30年間の均等払いで、15階建て未満は1平方メートルあたり月178~218円、20階建て以上のタワーマンションは同206円を必要額の目安とした。新築入居時に払うことが多い修繕積立基金はゼロで試算している。」(『日本経済新聞』2018.03.27)

その他