情勢の特徴 - 2018年6月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省は1日、第12回スーパー・メガリージョン構想検討会を開催し、リニア中央新幹線開業による経済効果の試算結果をまとめた。開業しなかった場合に比べGDP(国内総生産)変化は2040年時点で0.19%の増加を見込み、年間の生産額は2兆6300億円から3兆1200億円増加すると算出した。移動時間の短縮による生産性向上や知的交流の拡大によるイノベーションの促進やそれらに伴う消費増大が、経済成長に貢献することを明らかにした。」(『建設通信新聞』2018.06.04)
●世界銀行はこのほど、世界の男女の賃金格差を放置することにより、生涯に生み出される富が、男女の格差がない場合と比べて、160兆ドル(約1京7440兆円)も失われているとする報告書を発表した。2014年時点での140カ国での調査を基にしたもので、1人当たりの損失は平均2万3620ドル(約258万円)となる。報告によると、女性の賃金は調査したすべての国で男性の賃金を下回る。将来の成人の収入を表す人的資本価値に占める割合は、男性が62%なのに対し、女性は38%にとどまっている。世銀は、女性がパートなど非正規分野で働くことが多いためだと原因を指摘している。(『しんぶん赤旗』2018.06.04より抜粋。)
●「成人年齢を現行の20歳から18歳に引き下げる改正民法が13日午前の参院本会議で可決、成立した。…2022年4月1日に施行する。若者が親の同意なくローンなどの契約を結べるようになる。既に18歳以上に引き下げられた選挙権年齢と合わせ、若者の社会参画を促す。女性が結婚できる年齢を16歳から18歳に引き上げて男女ともに18歳にする。成人年齢引き下げに合わせ、生活に関わるルールを定めた22本の法律についても『20歳未満』『未成年者』などの年齢要件を改める。健康被害やギャンブル依存症への懸念から、飲酒や喫煙、競馬や競輪などは現在の20歳の基準を維持する。」(『日本経済新聞』2018.06.13)

行政・公共事業・民営化

●「都道府県で地域維持型契約方式の活用が広がっていることが、国土交通省の調査で分かった。17年度実績で、26道府県(16年度・22道府県)が導入し、契約金額、契約件数ともに増加。契約期間は道路維持管理事業が1年以上の工期が多く、除雪事業は1年未満が大半を占めた。18年度は検討中を含め32道府県が導入・実施する見込みだ。」(『建設工業新聞』2018.06.01)
●「国土交通省は施工時期の平準化に向けた地方自治体の取り組みを後押しする。すべての自治体が参画する地域発注者協議会を通じ、全国統一指標を活用した平準化の目標値の設定や、国や自治体が公表する工事発注見通しを地域ブロック単位で統合公表する仕組みへの参加などを呼び掛ける。…具体的には、全国統一の平準化の指標(平準化率)を活用した目標値の設定を要請する。…発注者ごとに前年度を超える目標値を定め、平準化に取り組んでもらうよう求める。地域単位での発注見通しの統合公表では、国交省の全地方整備局、北海道開発局、内閣府沖縄総合事務局がホームページにコンテンツを設け、統合公表の体制を構築。すべての都道府県、政令市が参加している。国交省は協議会を通じて市町村の参加を積極的に呼び掛ける。」(『建設工業新聞』2018.06.07)
●「都道府県が発注する工事で重層下請構造の改善に向け取り組んでいる。国土交通省の調査によると、複数の自治体が『建築一式工事は3次、それ以外は2次』など下請次数を制限。違反すると是正指導や指名停止といった措置を講じるところもある。国交省は働き方改革の観点から重層下請構造の改善を検討している。」(『建設工業新聞』2018.06.12)
●「地方自治体による公共施設等運営権(コンセッション)の導入促進を目指した『改正PFI法』が13日の参院本会議で可決、成立した。コンセッションの普及で支障になっている『指定管理者制度との二重手続き』について、特例措置を設けて手順を簡素化する。コンセッションの普及が空港など他の公共施設に比べて遅れている上下水道事業で、インセンティブを設け導入を後押しする。従来規定では、国際会議場や音楽ホールといった公共施設で自治体が民間の運営権者に施設の使用許可を出す場合、指定管理者としても指定する必要がある。運営権者と指定管理者という二重適用義務が生じるため、運営権者はコンセッション事業で必要な手続きに加え、指定管理者の手続きで設定した施設利用料金の承認を自治体から受け、運営権の移転についても議決を得る必要がある。改正法では運営権者の指定管理者手続きを簡素化。新たに施設利用料金の設定は自治体への届け出だけで済むようにし、議会承認は事後報告で済むように見直した。上下水道事業へのコンセッション導入を後押しするインセンティブも設ける。自治体の財政運営負担を軽減。民間事業者から受け取る運営権対価を利用し、上下水道事業の財源として発行していた地方債の元本を繰り上げ返済すれば、残りの利息を免除できるようにした。」(『建設工業新聞』2018.06.14)

労働・福祉

●「安倍政権が今国会での最重要法案と位置づける働き方改革関連法案が31日の衆院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、参院へ送付された。今国会で成立する見通し。…残業規制、同一労働同一賃金、脱時間給制度が3本柱だ。残業規制の導入は日本の労働法制で初めて。いまは事実上、青天井で残業時間を延ばせるが、年720時間を上限にする。繁忙期は月100時間未満まで残業を認める。違反すれば企業に懲役や罰金を科す。大企業は19年4月、中小は20年4月から適用する。同一労働同一賃金の狙いは非正規の賃金や手当の拡充だ。雇用形態ではなく業務内容に応じて賃金を決め、休暇や研修も正規と同様の待遇を受けられる。脱時間給制度は年収が1075万円以上の高度専門人材が対象。金融ディーラーやコンサルタントなどの専門職が、労働時間規制に縛られず働ける。適用を受けた人が自分の意思で制度を離れる規定も盛り込んだ。」(『日本経済新聞』2018.06.01)
●「国土交通省は、直轄工事を対象に、受注者が『請負代金内訳書』に明示する法定福利費の適正化に乗り出す。内訳書に明示された法定福利費が、発注者としての概算額(予定価格に含まれる法定福利費の事業主負担額)と大きく禿離している場合に受注者に記載の内容を確認。社会保険への加入の原資となる法定福利費の確保と、下請企業への適切な支払いを促す。」(『建設通信新聞』2018.06.01)
●「厚生労働省は31日、2017年(1-12月)の職場での熱中症による死傷災害発生状況(確報)をまとめた。全産業で休業4日以上の死傷者数は544人と前年と比べ82人増加した。死傷者数のうち死亡者数は前年比2人増の14人だった。このうち建設業は、死傷者数が28人増の141人、うち死亡者数は1人増の8人となっている。」(『建設通信新聞』2018.06.01)
●「正社員と非正規社員の待遇格差を巡る2件の訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(山本庸幸裁判長)は1日、定年退職後の再雇用などで待遇に差が出ること自体は不合理ではないと判断した。…労働契約法20条は正社員と非正規社員の不合理な待遇格差を禁じており、同条の解釈を巡る最高裁の判断は初めて。労働契約の違いに基づく格差の存在を前提としつつも、企業には合理的に説明可能な賃金制度の整備を促した形だ。政府が進めている『同一労働同一賃金』の法制度の整備にもー定の影響を与えるとみられる。」(『日本経済新聞』2018.06.02)
●「政府は5日、経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)を開き、外国人材の就労を目的とした新たな在留資格を創設することを表明した。経済財政運営と改革の基本指針2018『骨太の方針』の原案の柱の1つとして、一定の専門性・技能を持つ即戦力となる外国人材に関して、幅広く受け入れていく仕組みの構築を明記。対象業種は建設や介護、農業、宿泊業などが候補として挙がっている。…外国人材に求める技能水準は業所管省庁が定める試験によって確認する。日本語能力水準はある程度日常会話ができる(日本語能力検定N4相当)を原則としつつ、受入業種ごとに必要な水準を定める。技能実習(3年)の修了者については、必要な水準を満たしている者とし、試験などを免除される。在留期間は通算5年を上限として、家族の帯同は基本的に認めない。一方で、在留中に一定の試験に合格するなど高い専門性がある者については、現行の専門的・技術的分野における在留資格への移行を認める。高いレベルの人材に対しては在留期間の上限をなくし、家族帯同を認めるなど、もう一段階上の道を用意する。」(『建設通信新聞』2018.06.07)
●「国土交通省は7日、昨年3月に施行した建設職人基本法と、そのアクションプランである基本計画の推進を目的に第1回の『建設工事における安全衛生経費の確保に関する実務者検討会』(座長・蟹澤宏剛芝浦工大教授)を開催した。焦点となるのは、安全衛生経費の確保と適切な支払い。下請けまで確実に支払われるための実効性ある仕組みの構築を狙う。…これまでも指針やガイドラインで元下間における安全衛生経費の負担者の明確化、見積書・契約書における内訳明示の取り組みを推進してきたが、安全衛生経費の内訳明示が進んでいないという現状に着目。法定福利費の内訳明示を進める社会保険の加入対策と同様に内訳明示の促進によって、安全衛生経費の確保と適切な支払いを促していく。出発点として、安全衛生経費の標準的な項目や積算方法といった定義付けを論点の1つに抽出。建設業労働災害防止協会が2013年3月にまとめた『建設工事における安全衛生経費の標準リストおよび積算明細表』の解説ならびに作成要領検討結果報告書をベースに具体的な項目(案)も提示した。今後、建設工事の受注者(元請・下請)や民間工事の発注者に対するアンケート(実態調査)を実施。安全衛生経費の積算方法や契約書・見積書における内訳明示の有無といった実態を浮き彫りにしていく中で、安全衛生経費の確保や、下請けまで確実に支払われるための施策の具体化に結び付けていく。」(『建設通信新聞』2018.06.08)

建設産業・経営

●「建設産業専門団体連合会(建専連、才賀清二郎会長)は、5月31日に東京都千代田区の東海大学校友会館で開いた総会で、技能労働者の直用化と月給制、働き方改革での週休2日制の積極的な取り組みなどを推進することを決議した。将来を担う若者が希望を持って入職できる環境を整備し、健全な建設産業を目指して全会員が決議事項に取り組む。…直用化と月給制は適正価格、適正工期で受発注し現場で働く全ての就労者の社会保険加入や安全経費の確保によって、安心して働ける環境整備を図るための取り組みとする。健全な企業経営体質を目指して適正利潤を確保し、技能や経験に見合った給与の引き上げを行うことで、処遇改善に努めることも明記した。前回決議でも示した安値受注を繰り返し、指し値をしてくる企業と契約を交わさない方針も改めて示した。国土交通省が検討を進める登録基幹技能者・技能労働者の技能の見える化に合わせて、建設キャリアアップシステムの加入促進に努めることで、専門工事業が適正に評価される体制整備にも取り組む。」(『建設工業新聞』2018.06.01)
●「国土交通省は、7日に第2回の『専門工事企業の施工能力の見える化等に関する検討会』(座長・蟹澤宏剛芝浦工大教授)を開催。専門工事企業に対する企業評価(見える化制度)として、審査・評価する項目や内容、各専門工事業団体が主体となる運営スキームを提示した。想定する基本的な枠組みから言えば、制度の具体化に各団体が果たすべき役割は大きい。専門工事企業の施工能力の見える化(企業評価)は、建設キャリアアップシステムに蓄積される登録情報を活用して行う技能者の能力評価とも連動。雇用する技能者の能力評価を、企業としての施工能力の評価に組み込むことで、人材育成や施工能力の向上に取り組む専門工事企業を積極的に評価する方針だ。…審査・評価する項目は、できるだけ客観的に把握できる点を重視。建設業許可の情報やキャリアアップシステムに登録・蓄積される情報を効果的に活用する。『必要最小限にすべき』という意見が大勢を占めていることから、業界共通の必須情報となる『共通項目』と、各業種ごとの判断で評価の中に組み込んでいく『選択項目』とに整理して分類。必須情報(共通項目)として、建設業許可の有無や財務状況、団体への加入の有無といった『基礎情報』、技能者の能力評価などを用いた『施工能力』、法令順守や社会保険への加入状況といった『法令順守・安全衛生』の3点をピックアップした。」(『建設通信新聞』2018.06.11)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「全国の道路橋梁・トンネルで市区町村管理施設の劣化が顕在化している。今後さらに経年劣化による老朽化の進行も予想される一方、定期点検で早期に措置を講ずべきと判断された施設の修繕着手率は国が5割近くとなっているのに対して地方自治体は1割前後にとどまっており、適切な維持管理を行う必要性が高まっている。土木学会が4日公表した『2018インフラ健康診断書(試行版)』の道路部門(橋梁、トンネル)で明らかになった。道路部門の健康診断書は、道路法で定義された約73万の道路橋と、約1万1000本の道路トンネルのうち、統一基準による2014年度から16年度の点検結果(累積点検実施率=橋梁54%、トンネル47%)をまとめ公表された道路メンテナンス年報などのデータを同学会独自に指標化。修繕着手率のデータも加えて施設の健康度と維持管理体制を評価した。現状の健康状態について、橋梁は『少なくない数で橋梁の劣化が進行し、早めの補修が必要な状況』として『C(要注意)』評価とした。管理者別でみると、国管理と高速道路会社管理のうち都市内道路がB(良好)、都道府県・政令市管理と高速道路会社管理の都市間道路がCだが、市区町村管理は『多くの施設で劣化が顕在化し補修・補強が必要な状況』とされる『D(要警戒)』評価となっている。維持管理体制でも早期に措置を講ずべきと判断された施設への修繕着手率は、国管理が47%に対して都道府県・政令市が9%、市区町村12%、高速道路会社16%とおしなべて低く、予防保全の観点から措置が望ましい橋梁は国で12%、そのほかは1-2%と大きく遅れている。トンネルも同様に、都道府県・政令市、市区町村の健康度がDとなっている一方、修繕着手率は国、高速道路会社に比べて遅れており、さらに努力が必要な状況としている。」(『建設通信新聞』2018.06.05)
●「所有者が分からない土地の利活用を促す特別措置法が6日の参院本会議で成立した。都道府県知事の判断で最長10年間の『利用権』を設定し、公園や仮設道路、文化施設など公益目的で利用できるようになる。…利用権を設定できるのは、建築物がなく、反対する権利者もいない土地。市町村が公園や仮設道路にしたり、公益目的であることを条件にNPO法人などが直売所や駐車場などを造れるようになる。持ち主が現れた場合は期間終了後に原状回復して返すことになるが、現れなければ期間を延長することも認める。道路や町づくりなど公共工事の妨げになっている土地について、都道府県の収用委員会の審理を経ずに取得できるようにする対策も盛り込んだ。…政府は対策の第2弾として、2020年までに国土調査法や土地基本法の改正を視野に入れた施策も進める方針だ。土地所有者の把握を進めると同席に、新たに所有者不明の土地が発生しないようにすることが狙いだ。具体的には、所有者の氏名や住所が正確に登記されていない土地について、登記官に所有者を特定する調査権限を与える。また、自治体が把握できる所有者の死亡情報と国が管理している登記情報を結び付け、誰が現在の所有者なのか迅速に調べられるようにする。…所有者が土地所有権を放棄できる制度も検討する。…放棄された土地を誰が管理するのか、管理する費用を誰が負担するのかなど具体的な制度設計を巡る調整は難航することが予想される。」(『日本経済新聞』2018.06.07)
●「国土交通省が発表した2018年版の首都圏白書で、長期不在の空き家が首都圏にも74万戸あることが分かった。市街地が拡散するなかで人口密度が薄まり、10年で43%増えた。空き家でポツポツと穴が開いて都市機能を維持できなくなる『スポンジ化』と警告。都心の30キロメートルより外側で顕著だとして対策を急ぐように促している。…長期不在の空き家とは別荘や賃貸、売却の目的がないにもかかわらず、人が3カ月以上住んでいない状態の住宅をさす。全国に318万戸あり、首都圏は2割を占める。…人口が減る地方だけでなく首都圏でも空き家が増える背景には市街地の拡散があるという。消費者の新築志向もあり中古物件を放置して新たな開発が進み続けた。首都圏の住宅数は2134万戸と10年で300万戸弱増えた。世帯数は1873万戸と250万戸弱の増加にとどまったため、供給過剰が続いて空き家の増加につながっている。」(『日本経済新聞』2018.06.12)
●「東京電力ホールディングスの小早川智明社長は14日、福島県庁で内堀雅雄知事と会い、福島第2原子力発電所を廃炉にする方向で検討すると伝えた。東電が福島第2の廃炉について方針を表明したのは初めて。第2の4基すべてが対象となる。2011年の東日本大震災で事故を起こした福島第1原発は既に廃炉作業を進めている。第1とその南側12キロメートルの太平洋沿いにある第2を合わせて、事故前に計10基が稼働していた福島県内の原発はすべて廃炉になる。」(『日本経済新聞』2018.06.14)

その他