情勢の特徴 - 2018年6月後半
●「18~21年の4年間に世界で行われる空港建設の事業規模が総額3833億ドル(約42兆円)に達することが、オーストラリアの航空コンサルティング会社・CAPAの推計で明らかになった。新空港の建設費は1671億ドル(約18兆円)。2161億ドル(約24兆円)は既設空港の増築や改修などに充てられる見込み。日本の建設関連会社にとって大きなビジネスチャンスとなりそうだ。」(『建設工業新聞』2018.06.21)
●「高速道路6社による2018年度の道路整備事業で、05年の民営化以降初めて修繕更新費用が新規建設費用を上回る見通しとなった。首都圏の三環状道路など大規模な新規建設工事が峠を越えたことに加え、開通から50年近く経過した路線が増え老朽化対策が急務となっていることがある。各社は今後、修繕更新に比重を移していく方針だ。6社の18年度の事業計画を集計したところ、整備事業全体の費用は前年度から横ばいの総額3兆4134億円を見込む。うち新設が14%減の1兆6022億円と10年ぶりに減少する一方、修繕更新は1兆8112億円と17%増加する。整備費全体に占める修繕更新の割合は8ポイント上昇して53%となる見通しだ。」(『日本経済新聞』2018.06.30)
●「国土交通省は、建設産業政策会議が昨年7月にまとめた提言『建設産業政策2017+10』における“制度的な対応”の具体化に乗り出す。18日の中央建設業審議会・社会資本整備審議会産業分科会建設部会『基本問題小委員会』に中間とりまとめ(案)を提示。制定から約70年が経過している建設業法の改正など、関連する制度インフラの再構築に踏み出すことになる。中間とりまとめ(案)は、建設産業にとって最大の課題となっている『担い手の確保・育成』を重視。取り組みを支える処方箋として、働き方改革の推進を目的とする『長時間労働の是正』や、従事者の『処遇の改善』、限りある人材を効率的かつ効果的に活用する『生産催の向上』など、4つのテーマに沿って、施策の方向性を示す。許可制度や技術者制度など、建設業に関連する制度インフラ基本的枠組みの見直しを提起。特に建設業が許可制に移行して初めてとなる許可制度の本格的な見直しや、これまでの建設業法にない『工期』へのアプローチを盛り込んでいる点が特徴だ。」(『建設通信新聞』2018.06.19)
●「国土交通省は19日、18年度に発注行政として検討する重要課題を示した。工期と連動した積算基準の構築や、マネジメントに関する資格制度の創設、修繕工事に関する工種の新設などを列挙。同省有識者会議に置く部会で検討を進める予定だ。受発注者が協働してさまざまなデータを利活用することで、建設生産・管理システムを改善していく方向性も打ち出した。土木学会建設マネジメント委員会が19日に開いた公共調達シンポジウムで、国交省の石原康弘官房技術調査課長が『働き方改革と建設生産・管理システム』をテーマに基調講演。建設生産・管理システムの重要課題(案)を提示した。」(『建設工業新聞』2018.06.20)
●「国土交通省と都道府県・政令市による18年度春季『地方ブロック土木部長等会議』が終了した。会議では建設現場の働き方改革、生産性革命の取り組みを地域に浸透・拡大させることで意見が一致。適切な設計変更や発注・施工時期の平準化などの取り組みが遅れている市町村への支援についても、取り組みが必要との方向で共通認識を持った。今後、市町村の発注行政レベルを底上げする具体策を検討していくことになりそうだ。」(『建設工業新聞』2018.06.26)
●「公共施設の建設や運営などを民間事業者に任せるPFIについて、全地方自治体(都道府県47、市区町村1741)の86%が実施経験のないことが政府の調査で明らかになった。PFIの導入事例は着実に増えてきているが、667の自治体は『今後も予定がない』という。政府は調査結果も踏まえ、自治体のPFI導入を支援していく。」(『建設工業新聞』2018.06.28)
●「技能者の資格や経験を業界統一のルールで蓄積していく『建設キャリアアップシステム』の構築が進む一方で、技術者にとっての受け皿となる『技術人材データベース』の必要性が叫ばれている。技術者が持つスキルや現場での経験値を蓄積・評価するこのデータベースは、技術人材の確保・育成だけでなく、絶対数に限りがある技術者の効率的かつ計画的な活用にも役立つ。早期の構想具体化が期待される。」(『建設通信新聞』2018.06.18)
●「日本建設業連合会(日建連)の山内隆司会長ら幹部は18日に記者会見し、外国人労働者の受け入れを拡大する方針を示した政府に、慣重な対応を求めた。山内会長は、建設需要が堅調なことで『対策は効果がある』と賛意を表した。その上で『仕事が減ったらどうなるか。外国でもアレルギーがある問題だ。建設業だけでなく、国民、経済として考え、官民を挙げて解決策を講じる必要がある』と指摘した。」(『建設工業新聞』2018.06.19)
●「東京都内の零細企業で就業規則を整備していない企業が6割に上ることが分かった。東京中小企業家同友会(東京・千代田)が19日発表した。政府の進める働き方改革関連法案が成立を控えるなか、中小の働く環境の整備が追いついていない実態を浮き彫りにした。…背景には10人未満の企業には就業規制や賃金規定の労働基準監督署への届け出義務がなく、個人事業主が多いことがある。藤浦隆英・特定社会保険労務士は『働き方改革関連法案の整備で中小も法令順守を迫られ、今後対応が必要だ』と指摘する。法案では従業員の全労働時間の把握も義務化される。中小には環境整備が負担となりそうだ。」(『日本経済新聞』2018.06.20)
●「建設業振興基金(振興基金、内田俊一理事長)は19日、建設キャリアアップシステムの受付窓口と認定登録機関の設置について全建総連(吉田三男中央執行委員長)と業務委託契約を締結した。全建総連は7月以降、全国300カ所ほどの窓口を順次開設し、申請対応などに当たる。」(『建設工業新聞』2018.06.20)
●「勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済事業本部(建退共本部、稗田昭人本部長)は22日、東京都内で開いた運営委員会・評議員会で、建設業退職金共済(建退共)制度の普及を民間工事でも一層促す方策を検討する考えを明らかにした。検討中の付加退職金について導入を見送る考えや、電子申請方式の特別掛け金は現行掛け金(日額310円)を上回る日額460円が妥当との見解も示した。」(『建設工業新聞』2018.06.25)
●「厚生労働省は28日、建築物解体・改修工事などでの石綿ばく露防止対策の充実・強化に向けた検討を本格的に始めることを明らかにした。専門家や関係団体など11人で構成する有識者険討会を設置。7月9日に初会合を開き、石綿障害予防規則(石綿則)の改正を視野に議論する。石綿使用建築物の解体工事の増加が予想されていることから、解体工事届け出対象の拡大、石綿事前調査を適切に実施するための石綿使用有無調査者の専門性確保、必要な対策を怠る施工者への対応強化などが論点になるとみられる。」(『建設通信新聞』2018.06.29)
●「建設産業専門団体連合会(才賀清二郎会長)は5月31日、東京都千代田区の東海大学校友会館で第17回通常総会を開き、『安値受注を繰り返し、指値をしてくる企業とは契約しない』など5項目を第17回総会決議として採択した。将来を担う若者が希望をもって入職できる環境整備、健全な建設産業を目指し、全会員一致して取り組む。また、日本経済団体連合会、日本商工会議所、日本自動車工業会、電気事業連合会、日本民営鉄道協会、不動産協会、日本ビルヂング協会連合会など30団体に決議文を送付した。」(『建設通信新聞』2018.06.20)
●「全国建設産業団体連合会(渡邉勇雄会長)は、25日に開いた通常総会に、工期、価格ダンピングとの決別など5項目を盛り込んだ働き方改革の行動目標を提示した。担い手の確保に向けて適正な元下関係の構築を図り、働き方改革に伴うコスト増大が見込まれる中で、適正利益の確保を目指す。また、一般社団法人移行からことしで30周年を迎えるのを機にまとめる『将来ビジョン2018』の骨子も提示した。『業種間の連携強化』『建設生産システムの向上』『地域建設産業の育成・強化』を13本柱に、i-Construction、働き方改革への取り組みなどを盛り込んでいる。」(『建設通信新聞』2018.06.26)
●「震度6弱を観測した地震が18日午前、大都市、大阪を襲った。大規模な火災や道路の損壊などがない一方で、水道管損傷に伴う断水やガスの供給停止などライフラインや交通網は大混乱。都市機能のもろさを露呈した。今後、南海トラフ地震や首都直下地震が想定される中、今回の地震を踏まえ、老朽化した水道管というインフラの更新など震災対策の見直しが急務だ。断水は大阪府吹田市と高槻市など幅広い地域で発生しており、地震に伴う水道管損傷が原因とみられる。高槻市では水道管の修繕のため断水し、今後、14万人近くに影響が出る見通し。過去の地震でも断水被害が頻発している。1995年の阪神大震災では最大3カ月の断水が発生。130万戸に影響が出た。2016年の熊本地震でもほぼ同期間の断水となり、水道管の耐震化率の低さと老朽化という課題が浮かび上がった。厚生労働省によると、水道管のうち、耐震性のある割合(耐震適合率)は被災した大阪府で39.7%。首都圏の耐震化の状況(東京都63%、神奈川県67.2%)に比べ低い水準だった。国は22年度末までに全国の耐震適合率を50%以上に引き上げる目標を設定、耐震化を促している。」(『日本経済新聞』2018.06.19)
●「国土交通省が設置している『津波防災地域づくりと砂浜保全に関する懇談会』は19日、海岸における津波対策で講ずべき施策をまとめ、同省に提言した。懇談会の座長を務める佐藤愼司東大大学院教授は『いずれも速やかに検討すべき事項で、(対策は)待ったなしだ』と強調。基本の高さよりも低い段階的な堤防かさ上げについても、必要な要件を具体的に整理した上で財政支援の重点配分を提案した。提言を受けた国交省は、関係者と連携を図りながら具体的に対策を進めていく方針を示し、財政支援に関しても来年度予算の概算要求に反映する考えを明らかにした。」(『建設通信新聞』2018.06.20)
●「既存ストックの有効活用や木造建築物の促進などを中心に、安全性が確保できる部分に関して防火規制などを合理化する改正建築基準法が、20日の衆院本会議で可決され、成立した。▽大規模長屋などに関して条例による接道の規制強化を可能とする仕組み▽老人ホームなどで現行の共同住宅と同様に共用廊下などを容積率に不算入とする仕組み▽建築審査会の同意を得て仮設建築物の1年以上の存続を認める制度――などは今秋に施行予定。それ以外は公布から1年以内に施行する。既存ストックの活用に向けては、既存不適格建築物を用途変更する際に、計画的・段階的に現行基準に適合させていくことを可能とする制度を導入する。建築物・市街地の安全性確保に関して、維持保全計画の作成を求める建築物の範囲を大規模倉庫などに拡大する。」(『建設通信新聞』2018.06.21)
●大阪北部地震で倒壊した高槻市立小学校のプールのブロック塀は、建築基準法上、基礎から塀の頂点まで1本で通さなければならない内部の縦の鉄筋(縦筋)が、基礎部分で2本を継ぎ足す工法が使用されていた疑いが出てきた。違法な工法で強度が不足した基礎と塀の接合部分で、壁全体が脱落し道路側に倒れた可能性がある。同市が19日に発表した事故後の市内の学校施設調査で、新たに建築基準法に違反するブロック塀が複数見つかっている。(『しんぶん赤旗』2018.06.21より抜粋。)
●「大阪府北部で起きた震度6弱の地震で、高槻市立寿栄小4年の三宅璃奈さん(9)が倒壊したブロック塀の下敷きになり死亡した事故で、市教育委員会は22日、専門家の指摘を受けて点検した職員が建築士などの資格を持っていなかったことを明らかにした。簡易検査のみで安全性を判断し、建築基準法に違反している状況も把握できなかったという。」(『日本経済新聞』2018.06.22)
●「大阪府北部で震度6弱を観測した地震で、家屋の被害調査を求める住民らが自治体の窓口に長い列を作っている。『罹災証明』の発行に必要なだけでなく、余震が続くなか倒壊を免れてもひびや亀裂が入った自宅での暮らしに不安が強いという。自治体の人員は限られ調査は長期化する可能性がある。震度6弱を観測した大阪府茨木市役所の2階。調査の申請を受け付ける資産税課の窓口には22日、約30人が列をなしていた。同市の女性(70)は窓口で『早く調査に来てほしい』と伝えたが、市職員の返答は『ご自宅に伺うのは相当先になります』。市によると申請は既に2千件以上に上り、順次対応するため時間がかかるという。」(『日本経済新聞』2018.06.23)
●「大都市に空き家の『予備軍』が大量に潜んでいる。65歳以上の高齢者だけが住む戸建てとマンションの持ち家が東京、大阪、名古屋の三大都市圏に合計336万戸あり、同圏内の持ち家全体の2割強に達することがわかった。現在の空き家比率は7%。家主の死後も相続人が入居しないことが多く、古い家屋は買い手がつきにくい。中古住宅の流通を促進しないと空き家が大都市であふれてくる。総務省の住宅・土地統計調査(2013年)から65歳以上だけが住む戸建てを抽出し、空き家予備軍とみなした。賃貸が多いマンションは高齢者のみの住戸数に自治体別の持ち家比率をかけて試算した。すべて空き家になるわけではないが、高齢者の住宅は潜在リスクが大きい。全国の持ち家3179万戸に対し、空き家予備軍は22%にあたる705万戸。三大都市圏はこの48%を占め、世帯数の全国比に匹敵する。単身高齢者が急増しており、高齢化で空き家問題が先行した地方の実情と似てきた。三大都市圏の賃貸などを除く空き家は107万戸で、割合は7%にとどまっていた。予備軍が最も多いのは東京都の67万戸で、持ち家の21%。現在の空き家は15万戸で5%だ。空き家数でトップの大阪府も予備軍は51万戸で、その比率は東京都を上回る22%。神奈川、千葉も2割を超す。三大都市圏は住居の密集度が高く、空き家発生の影響は大きい。」(『日本経済新聞』2018.06.23)