情勢の特徴 - 2018年7月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「建設経済研究所と経済調査会は26日、最新の建設投資見通しを発表した。18年度は、4月の前回見通しで示した53兆8600億円(前年度比1.0%増)を上方修正し、56兆4800億円(0.8%増)と予測した。今回初めて示した19年度の見通しは、前年度比2.5%減の55兆0900億円。今後、18年度予算の執行や補正予算の編成などが進めば、次回以降の見通しで上方修正の要素となりそうだ。政府建設投資は、18年度が前年度比1.2%減の22兆7600億円、19年度が5.8%減の21兆4300億円と予測した。民間住宅投資は、18年度が1.3%増の16兆2000億円、19年度が0.9%減の16兆0500億円。民間非住宅投資(建築+土木)は、18年度が3.1%増の17兆5200億円、19年度が0.5%増の17兆6100億円と見込む。住宅着工戸数は18年度が1.6%増の96.2万戸、19年度が3.4%減の92.8万戸とした。19年10月の消費増税前の駆け込み需要によって持ち家(注文住宅)と分譲一戸建て住宅の着工が増加するものの、19年度は反動減が発生すると予測。一方、相続税の節税対策による着工が一服した貸家は、状況が大きく変化せずに減少傾向が続く見通しだ。」(『建設工業新聞』2018.07.27)

行政・公共事業・民営化

●「関東地方整備局は、週休2日制モデル工事の施工実績を、総合評価で加点する独自の取り組みを検討している。週休2日の『履行実績取組証』の発行基準も4週『8休』から『6休』以上に緩和し、これを取得している場合に1点を加点する。総合評価での加点は、8月1日以降に公告する工事から適用開始する見通しだ。関東整備局は2017年7月から週休2日制モデル工事を試行し、週休2日相当の8割(現場閉所率22.8%)以上を達成した場合に、履行実績取組証を受注者に発行している。試行工事は、17年度に受注者希望型で222件を公告し、このうち98件で手が上がった。また施工中の案件もあるが、18年7月末時点の見込みで、条件を満たした27件に対して取組証を発行する予定という。8月からは、週休2日の取り組みをさらに推進するため、対象工事の拡大と併せて、取組証取得企業を、その後の発注工事の総合評価で加点評価する試みを始める。」(『建設通信新聞』2018.07.17)
●「政府は23日、大規模災害が発生した場合の国土の弱点を初めて定量評価した『脆弱性評価』の素案をまとめた。防災・減災目的のインフラ整備は当初設定した目標通りにおおむね進んでいる一方、目標値も含め全体的な整備水準はまだ低いと指摘。最大の課題には全国の想定河川氾濫区域に総人口の約半数が集まる現状を挙げた。」(『建設工業新聞』2018.07.24)
●「橋梁の点検・診断など、いわゆるインフラメンテナンスに対するAI(人工知能)の活用が加速する。国土交通省は、近接目視を原則とする点検作業の効率化を目的にAI技術の活用に踏み出す。ベースとなる技術者の正しい判断を蓄積した『教師データ』の整備によって、民間企業における点検・診断AIの開発を促していく方針だ。AIのシステム開発を行うIT企業や点検・診断の実績を持つ建設企業との『AIを活用した道路橋メンテナンスの効率化に関する共同研究』に乗り出す土木研究所と連携して、推進母体となる『AI開発支援プラットフォーム』の設立を目指す。その前段としてAI開発支援プラットフォーム開設準備ワーキンググループを設置。AI技術のベースとなる教師データの整備や、画像などの点検データを取得・保存・分析・活用するためのデータ基盤の検討に入る方針だ。AI技術を組み込んだ点検技術の構築へ、官民連携の検討体制を敷く。」(『建設通信新聞』2018.07.30)

労働・福祉

●「日本建設業連合会(山内隆司会長)の公共工事委員会は、委員会に所属する43社を対象にした土木技術者の年齢構成実態調査結果をまとめた。土木技術者(自社社員)のうち、46-50歳の割合が19%と突出して多い一方、31-35歳、36-40歳は66歳以上を除く全年齢層の中で最も少ない。監理技術者は41歳以上が8割超を占め、40歳以下は15%にとどまっている。公共工事では入札段階での配置技術者評価などがあり、若手が責任のある立場に配置される機会が少ないため、同委員会は『このまま技術者の高齢化・固定化が進めば若手の育成、キャリアパスの形成に大きな影響を及ぼす』と懸念している。」(『建設通信新聞』2018.07.18)
●「厚生労働省が18日にまとめた2018年上期(1-6月)の労働災害発生状況(速報、7月9日時点)によると、建設業の休業4日以上の死傷者数は、前年同期と比べ0.7%減(40人減)の5942人となった。うち死亡者数は151人で4.2%減(5人減)だった。…18年上期の建設業の死傷者事故別人数は『墜落・転落』が2103人と最も多く35.3%を占める。『転倒』は701人、『はさまれ・巻き込まれ』が686人、『飛来・落下』が555人、『切れ・こすれ』は432人などとなっている。前年同期と比べ『切れ・こすれ』は86人、『飛来・落下』が51人それぞれ減っているものの、『墜落・転落』が66人増、『転倒』も55人増と、災害防止に注力している事故種での死傷者が増えている。死亡者数の業種別は土木が50人、建築が45人、そのほかが20人。都道府県別では茨城と大阪が各7人と最も多く、千葉、東京、新潟、広島、福岡の5都県が各5人、岩手、埼玉、神奈川、愛知、徳島、愛媛の6県が各4人となっている。」(『建設通信新聞』2018.07.19)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、久保田俊平議長)は18日、18年の賃金交渉結果を明らかにした。従業員数を考慮した加重平均で見ると、回答した29組合のうち、基本給の水準を底上げするベースアップ(ベア)を獲得したのは7割に当たる24組合で、ベアは6528円(前年比1.63%増)。ベアと定期昇給を合わせた月例賃金の増加額は1万3796円(3.51%増)。28組合が妥結している一時金は5.38ヵ月だった。」(『建設工業新聞』2018.07.19)
●「建設業振興基金は19日、厚生労働省からの受託事業として展開している『建設労働者緊急育成支援事業』の2017年度の実施状況をまとめた。全国24ヵ所(中央拠点1ヵ所、地方拠点など23ヵ所)で実施した計104コース(定員1341人)の職業訓練の受講者数は計1060人。96.6%に相当する1024人が修了、修了者の74.6%となる764人が就職した。同事業は、建設業への入職促進を目的に、離職者などの未就職者をターゲットに受講者の募集から職業訓練の実施、修了者の就職(就職のあっせん)までを一貫して支援する“パッケージ型”のプロジェクトとなる。」(『建設通信新聞』2018.07.20)
●「積水ハウスは9月から男性社員が1ヵ月以上の育休を必ず取る制度を導入する。3歳未満の子供を持つ約1400人が対象。男性社員を対象に長期間の育休取得を必須とするのは珍しい。仕事と家庭の両立を後押しすることで優秀な若手社員を確保し、企業としての競争力を高める。」(『日本経済新聞』2018.07.26)
●「26日午後1時50分ごろ、東京都多摩区唐木田1のビル建設現場で火災が発生したと東京消防庁に119番があった。同庁や警視庁によると、これまでに5人が死亡、約40人けがをしており、このうち約30人は重傷という。警視庁捜査1課は業務上過失致死傷の疑いも視野に調べている。東京消防庁などによると、建設中の建物はオフィスビルの『多摩テクノロジービルディング(仮称)』。地上3階、地下4階建て。地下3階床下の断熱材約5千平方メートルを焼き、付近は一時激しい黒煙に包まれた。火は約6時間後にほぼ消し止められた。施工会社の安藤ハザマによると、ビルは延べ床面積約1万7500平方メートル。2016年10月に着工し、今秋に完成予定で、工事は9割程度終わっていたという。地下で配線作業をしていた男性(24)は『火事を伝える大声に気づいて階段を駆け上がったが、煙で何も見えない状態でどこから外に出たらいいかわからなかった』と声を震わせた。火が燃え始めるところを目撃した男性(23)は『はじけるような音がして、炎が見えたが、すぐに灰色の煙が一直線に上がった』と振り返った。現場は小田急電鉄の唐木田駅から西に約1キロの住宅街。」(『日本経済新聞』2018.07.27)
●「国土交通省がまとめた6月の建設労働需給調査によると、全国における6職種の過不足率は1.6%(プラス数値が大きいほど技能労働者が不足)の不足となった。5月の調査と比較すると、その不足幅は0.6ポイントの拡大となっている。職種別の過不足率は、型枠工(土木)が0.6%(前月比0.1ポイント減)、同(建築)が1.4%(同0.1ポイント減)、左官が0.5%(同0.5ポイント減)、とび工が0.8%(同0.4ポイント増)、鉄筋工(土木)が2.3%(同1.5ポイント増)、同(建築)が3.6%(同2.1ポイント増)。特に鉄筋工(建築)の不足率が大きくなっている。」(『建設通信新聞』2018.07.27)
●「建設業退職金共済制度(建退共制度)に関し、日本建設業連合会(日建連、山内隆司)と全国建設業協会(全建、近藤晴貞会長)は30日までに、厚生労働省と国土交通省に要望書を提出した。日建連は、電子申請方式の速やかな導入や建設キャリアアップシステムとの連携強化を要請。全建は、電子申請方式に賛意を示しながらも、電子機器に不慣れな企業と労働者に配慮し、証紙を手帳に貼る現行方式の存続を強く求めた。建退共制度を巡っては退職金の着実な支払いを促す措置などとして、証紙購入や就労実績報告の手続きを電子化する電子申請方式や、退職金が増える『特別掛け金』の導入、民間工事への普及策などが検討されている。電子申請方式の導入に法改正が必要。現在実証実験が進んでいる。建設キャリアアップシステムは、今秋稼働する予定で、技能者の就労履歴を統一ルールで管理する機能を生かし、証紙管理の手続きを簡素化できるとみられている。」(『建設工業新聞』2018.07.31)

建設産業・経営

●「日本建設業連合会(山内隆司会長)は、法人会員を対象とした2017年度の決算(単体)状況調査結果をまとめた。回答があった102社の売上高総額は前年度比2.7%増の15兆2070億0100万円で4年連続14兆円を超えた。完成工事総利益(工事粗利)の総額は採算重視の受注戦略の定着などにより、8.0%増の1兆8883億8600万円で過去5年の最高値を更新した。工事粗利率(総額ベース)は0.6ポイント上昇の13.0%となり、61社が10%以上を確保している。」(『建設通信新聞』2018.07.25)
●「連日の猛暑が続く中、現場の最前線で暑さと格闘している専門工事業から、ゼネコンや発注者に対して具体的な対策を求める意見が上がっている。27日に都内のホテルで開かれた東京都鉄筋業協同組合(東鉄協、新妻尚祐理事長)の定例会では、会員企業が『この暑さは政府も1つの災害と認めている。災害工程への見直しを強く発信してもらいたい』と呼びかける場面もあった。新妻理事長は、『夏場に作業のピークが来る現場は単価を上げるなどの取り組みが必要と考えている』とし、『夏工程』『夏価格』の必要性を強調した。」(『建設通信新聞』2018.07.31)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「2018年7月豪雨の被災地で建設関係団体の会員企業の対応が続いている。13日までの活動を見ると、全国建設業協会(全建)は各府県の協会の会員企業が復旧作業などを行っており、新潟県建設業協会、栃木県建設業協会は被災地に資機材を提供する広域支援を行った。全国中小建設業協会(全中建)は近く災害対策本部を設置する。日本建設業連合会(日建連)は支部ベースでも対応に乗り出している。京都府建設業協会によると、桂川が氾濫する危険が高まっていた京都・嵐山では、国土交通省近畿地方整備局淀川河川事務所から京都支部61社に、7~8日にかけて土のう積みの要請があった。当時は約50人が作業を行ったという。全建傘下では、愛媛県建設業協会のように、県からの要請を受け200社以上が応急復旧を行っている協会がある。道路の啓開、排水、河川からの支障物の撤去、ドローン(小型無人機)による河川の状況撮影などを進めている。」(『建設工業新聞』2018.07.17)
●「環境省は27日、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う除染で出た除去土壌などを貯蔵する中間貯蔵施設(福島県大熊、双葉両町)のうち、大熊町の受け入れ・分別施設と土壌貯蔵施設の整備・稼働状況を公開した。両町には、受け入れ・分別施設を9ヵ所、土壌貯蔵施設は10ヵ所それぞれ整備する計画。このうち、2017年度に第1期整備分の両施設2ヵ所、今月からは第2期の受け入れ・分別施設が3ヵ所、土壌貯蔵施設は2ヵ所の稼働を開始した。」(『建設通信新聞』2018.07.31)

その他