情勢の特徴 - 2018年8月前半
●「国土交通省は、2019年度予算の概算要求に関する主要課題として、全国で頻発している自然災害への防災・減災、インフラの老朽化対策、働き方改革の推進などを抽出。『被災地の復旧・復興』『国民の安全・安心の確保』『力強く持続的な経済成長の実現』『豊かな暮らしの礎となる地域づくり』の4つのテーマに沿って、必要な予算の安定的・持続的な確保に取り組む」(『建設通信新聞』2018.08.03)
●「内閣府は3日、18年度の年次経済財政報告(経済財政白書)を公表した。主にインフラ整備に充てる公共投資が多くの地域で経済を押し上げたり、下支えしたりする効果をもたらしていると分析。近年、重点的な公共投資が行われている整備新幹線や高速道路、港湾といった大規模事業の効果を『今後の日本経済の成長力の押し上げにつながることが期待される』とも指摘している。茂木敏充経済財政政策担当相が同日の閣議で報告した。白書では公共投資が高水準でおおむね横ばいに推移している状況を説明。東日本大震災の復興事業や第2次安倍政権発足後の機動的な財政政策、2020年束京五輪・パラリンピック関連建設事業などの影響を列挙した。国土交通省の建設総合統計を根拠に、『一部地域を除き(南関東など)多くの地域の経済を押し上げるもしくは下支えする効果をもたらしている』と明記した。」(『建設工業新聞』2018.08.06)
●「基礎自治体の一部が公共事業発注者として、自らの発注者能力の不足を自覚していることが土木学会調査で浮き彫りになった。これまで地方建設業界から、働き方改革や生産性向上を進める上で『最大の問題は基礎自治体の発注能力不足』『このままでは中小企業は破たんしかねない』との指摘と不安の声が相次いでいた。調査対象数が少ないため全体のトレンドとは言えないが、建設業界のこれまでの指摘を一部基礎自治体が認めた格好だ。調査は、建設マネジメント委員会(木下誠也委員長)が設置した『公共事業における技術力結集に関する研究小委員会』が今後行う本格的なアンケートの前段として実施した、副市長や市役所幹部への聞き取り結果をまとめた。1日開かれた建設マネジメント委員会研究成果発表会の一環で中間発表した。」(『建設通信新聞』2018.08.03)
●「国土交通省は、本省や各地方整備局などに設置している『公共建築相談窓口』の2018年度第1四半期(4-6月)の対応状況をまとめた。3カ月間の相談件数は625件。働き方改革の推進に関連して、週休2日の実施に伴う積算の考え方(労務単価の週休2日補正)や適正な工期設定に関する相談も寄せられているという。相談者の内訳は、国が52%、都道府県が15%、政令市が6%、市区町村が10%、独立行政法人等が2%、設計事務所や建設会社などの民間等が15%。国や自治体といった公共機関からの相談が全体の約8割を占める傾向は変わっていない。傾向として、週休2日の実施など働き方改革の推進に関連する相談や問い合わせが増加。特に営繕工事で4月から適用している週休2日(現場閉所)の実施に伴う労務費の補正(試行)に対する考え方や、法定福利費の確保など、適正な予定価格の設定に関する相談が目立つ。」(『建設通信新聞』2018.08.07)
●「国土交通省は1日、下請企業に対する適正な代金の支払いなどを求める要請文書を建設業団体に送付した。中小企業が多数を占める下請企業の経営の安定を図ることが狙い。元下間の取引の適正化によって、工事の品質の確保と労働環境の改善を促す。この要請文書は、資金需要の増大が予想される夏期・冬期に発出している、いわゆる“盆暮通達”となる。取引の出発点となる『見積もり』の段階から、実際の『契約』や『検査・引き渡し』『下請代金の支払い』といった一連の流れに沿って、建設企業が留意すべき事項などを明示。特に労働者の雇用の安定を図る上で重要となる下請代金の支払いは、『手形等による支払いは慎むこと』と明記。少なくとも労務費相当分(社会保険料の本人負担分を含む)を現金払いとすることを求めている。また、6月29日に『働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)』が成立したことを受けて、建設業の働き方改革を支える適正な工期設定や適切な賃金水準の確保、週休2日の推進を明記。7月に改訂した『建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン』に沿って、適正な請負代金による下請契約の締結を促す。」(『建設通信新聞』2018.08.02)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、久保田俊平議長)は2日、時短活動の取り組みを示す『中期時短方針2018』を決めた。従来の時短方針2013で平均45時間以内としてきた毎月の所定外労働時間の目標を平均30時間以内に改めた。統一土曜閉所運動に代わる『4週8閉所ステップアップ運動』を開始する。働き方改革法の成立を踏まえ、長時間労働を是正する『時短推進活動』に一段と力を入れる。」(『建設工業新聞』2018.08.03)
●大手ゼネコン大成建設が元請けとなった東京・丸の内のオフィスビル建設現場前で、2日、全国建設労働組合総連合(全建総連)の首都圏の加盟組合が、猛暑の熱中症対策やパワハラ防止を求めて宣伝した。この日の東京は、宣伝を開始した午前9時に32度を超え、午後に36.5度を記録する猛暑日。東京土建、埼玉土建、千葉土建、神奈川建連の組合員たちが「クーラーつけろ」「NOパワハラ」などと書いたプラカードを手にアピールした。地上30階、地下4階、高さ150メートルの超高層ビルを建てる「丸の内3-2計画」は、三菱地所、東京商工会議所、東京會舘の共同開発事業で、大成建設が施工の元請け。東京土建などには、「休憩所に冷房がない」「熱中症で何人も倒れている」と、過酷な労働実態の告発が相次ぎ、7月13日、大成建設に対して熱中症対策など労働環境改善の申し入れを行った。これまでに建設現場前宣伝に5回取り組んだ。最近になって、休憩所ヘクーラーが設置されるなどの改善もあり、さらなる対応を求めている。しかし、10月の竣工予定が迫り、下請け業者に対して「工期が遅れている」「休むな」とパワハラが横行。「(同じ大成建設が元請けの)新国立競技場のように自殺者が出なければ良いけど」と心配する声も起こっている。昨年8月には祝日返上の作業中、足場の鉄板が落ちて3人が亡くなっている。この日、現場視察に訪れた村田誉之大成社長に向けてパワハラをなくすよう訴えた。(『しんぶん赤旗』2018.08.03より抜粋。)
●「中小建設企業の間で働き方改革に対する関心が急速に広がっている。罰則付きの残業時間上限規制の建設業への適用は2024年4月と、猶予はあるものの現状のままでは上限規制がクリアできないほか、コストアップで企業存続も危うい可能性が高まっていることを認識し始めたからだ。政府は経済界も巻き込んで、建設業界の働き方改革と生産性向上支援に全力を挙げる。ただ支援効果は当初、発注体制が整っている機関や企業に限定される可能性が高い。その結果、中小建設企業が支援効果の対象からこぼれ落ちてしまうことに危機感を募らせているという構図だ。」(『建設通信新聞』2018.08.06)
●「2018年3月期決算の上場企業1893社の業種別平均年間給与で、建設業(124社)が全業種中トップの728万4000円だったことが、東京商工リサーチが3日公表した『上場企業平均年間給与』調査で分かった。建設業のトップは2年連続。…東京商工リサーチは、業種別でトップの建設業について、『活発な建設投資を背景に、好決算が続出した上場ゼネコンがけん引した』と分析している。」(『建設通信新聞』2018.08.06)
●「国土交通省が7月31日に公表した建設大手50社の建設工事受注動態統計調査によると、18年度4~6月期の受注総額は前年同期比7.4%減の3兆1556億円となった。製造業からの発注が堅調に推移し、民間工事は前年同期と同水準を維持。一方、公共工事は、国の機関、地方の機関とも2桁の大幅減となった。受注総額の内訳は、国内の民間からの受注が2兆2570億円(前年同期比1.3%増)、国内の公共機関からの受注が6512億円(29.9%減)。海外受注が1218億円(0.6%減)だった。」(『建設工業新聞』2018.08.01)
●「東京商工リサーチがまとめた18年上半期(1~6月)の建設業の倒産件数は720件(前年同期比8.1%減)だった。上半期としては10年連続で前年同期を下回った。負債総額は672億6400万円(6.4%減)。5年連続の減少となり、上半期としては過去30年間で最少となった。負債10億円以上の大型倒産件数は5件(2件減)にとどまった。」(『建設工業新聞』2018.08.02)
●「関東鉄筋工事業団体連合会(関東鉄筋連、館岡正一会長)は、鉄筋組み立て時に行う結束の作業時間などについて、調査結果をまとめた。組み立て工程の中で『結束に時間がかかっている』ことが学術論文で指摘されていることを踏まえ、結束数の標準を示す規定の妥当性を含め、実態を探る狙い。7月30日に東京都内で開かれた関東鉄筋連青年部(工藤桂一部会長)総会で調査結果の一部が報告された。」(『建設工業新聞』2018.08.02)
●「大和ハウス工業は鉄道を利用した住宅建材の長距離輸送を進める。運転手不足で運資が高騰するトラック輸送から切り替え、コストを抑える。積水ハウスも海上輸送を始めた。人手不足による運賃高を背景に、住宅業界でトラックから鉄道や船舶に輸送手段を切り替える『モーダルシフト』が広がってきた。大和ハウスは栃木二宮工場(栃木県真岡市)や岡山工場(岡山県赤磐市)など、大都市圏に近い工場から遠隔地に鉄骨や外壁を出荷する際、トラックから鉄道に順次切り替える。工場の最寄り駅から、施工現場の最寄り駅まで鉄道を使う。2017年度に栃木二宮工場から北海道の施工現場までJR貨物で試験輸送したところ、輸送費を年約1000万円削減できた。18年度中に本格導入し、1億~2億円のコスト減を目指す。大和ハウスは住宅の完成までの約4割にあたる工程を自社工場で進めてから出荷している。最近は大都市圏の工場の生産能力を高めており、戸建ての需要が高い地方に建材を輸送する必要性が増している。同社によると、500キロメートル以上の長距離で、鉄道輸送がとくに割安になるという。積水ハウスは鈴与と組み、静岡工場(静岡県掛川市)と山口工場(山口市)の間で住宅建材を運ぶ際、内航船を利用している。」(『日本経済新聞』2018.08.04)
●「建築に使う鋼材の流通価格が一段と上昇した。中小建造物の柱に使う大径角形鋼管(コラム)は前月に比べ4%高い。2020年の東京五輪が2年後に迫り、オフィスビルやホテルなどの工事が急ピッチで進む。大型ビル向けの品種が不足し、中小ビル向けの製品にも需要が波及した。はりなどの鉄骨に使うH形鋼や平鋼も2%高く、建築コストを押し上げたそうだ。」(『日本経済新聞』2018.08.07)
●「ゼネコン(総合建設会社)の業績に変調の兆しが見え始めた。7日までに発表を終えた大手3社の2018年4~6月期の連結決算では最終減益が相次いだ。好調だった前年同期の反動だとの見方はできる。ただ、市場には2つの側面から、下期以降に中長期での採算悪化を懸念する声も出始めた。鹿島の純利益は前年同期比19%減の275億円だった。前年同期は引当金の取り崩しで利益が押し上げられており、その反動が出た。市場予想の平均は216億円程度だったため、株価は発表後に大きく上昇した。大林組も純利益は179億円と6%減った。主力の国内建築事業で前年同期に比べ着工間際の工事が多かった。経営環境に大きな変化がないとして、鹿島、大林組ともに19年3月期の業績予想は据え置いた。純利益は大林組は前期比6%増の980億円、鹿島は35%減の820億円を見込む。ただ下期にかけては2つの懸念が頭をもたげ始めている。ひとつは受注だ。鹿島と大成建設は6月末の単独ベースの受注残高が減少に転じた。鹿島は18年4~6月期の受注高は前年同期比19%減の2101億円にとどまったため、6月末の受注残高は1%減った。大成建設も6月末の受注残高が2兆1947億円と微減になった。4~6月期の受注高が1660億円と48%も減ったためだ。」(『日本経済新聞』2018.08.08)
●「厚生労働省は建築物の解体工事の際に事前に実施するアスベスト(石綿)使用の調査結果の届け出を厳格化する。現在は使用していた場合のみ届け出る必要があるが、使用していなくても義務付け、不自然な場合は立ち入り調査をする。石綿の存在を十分に把握しないまま解体していた事例が頻発。解体工事の増加が見込まれる中、監視を強め現場の安全対策を促す。労働基準監督署への届け出対象とする解体工事の規模は、延べ床面積80平方メートル以上とする方向で検討。飛散リスクが高い石綿が使われている可能性がある吹き付け材や保温材、断熱材などの使用の有無を届け出る。使用が判明した場合は建材の面積や個数なども記入するが、使用していなかった場合でも届け出るよう義務付ける。建築物の過去の石綿の除去歴も明記する。」(『日本経済新聞』2018.08.08)