情勢の特徴 - 2018年8月後半
●「国土交通省は29日、19年度予算の概算要求を発表した。一般会計の国費総額は前年度比18.9%増の6兆9069億円。うち公共事業関係費は19.1%増の6兆1735億円と、15年度分から5年連続で6兆円を超える要求になった。社会資本整備を『未来への投資』とし、ストック効果を重視した公共投資で経済成長を図り、経済再生と財政健全化の双方を実現するため必要な公共事業予算の安定的・持続的確保を目指す。」(『建設工業新聞』2018.08.30)
●「地方の中小企業と建設業界が、地方自治体の公共施設発注方針転換に戦々恐々としている。これまで地域の中小建設企業が地域要件でJVの構成員として元請けになったり、最悪でも下請けとして受注可能だった案件が、PPP/PFI手法導入によって、工事そのものに参画できないケースが全国で増え始めているからだ。この傾向は、人口減少と高齢化による財政悪化懸念を理由に、規模の小さな自治体にも広がりつつあり、地方業界の不安は今後も続きそうだ。」(『建設通信新聞』2018.08.17)
●「国土交通省は、2019年度の営繕計画書に対する意見書をまとめた。各省庁から提出された計画書の内容を積み上げた所要経費(計画額)の総額は前年度比5%増となる4191億円。各省庁に対する総括意見として、適正な予定価格の設定や適切な工期設定など、焦点となっている建設業の『働き方改革』を踏まえた対応を求めている点が特徴の1つと言えそうだ。総括意見として、災害対応の拠点となる官庁施設における耐震性能の確保や津波対策の推進など、機能維持の観点でみる防災・減災対策を明記。社会的な要請となっている施設の長寿命化や計画的な老朽化対策の推進、省エネルギー化や再生可能エネルギーの活用、CLT(直交集成板)など新たな木質部材の積極的な活用を求めている。」(『建設通信新聞』2018.08.21)
●「国土交通省は、2019年度予算概算要求で道路の老朽化対策の本格実施を打ち出した。14年度から開始した橋梁とトンネルの定期点検が18年度で一巡することを踏まえ、点検の重点化や効率化に向けて、年度内に点検要領を見直す。あわせて、地方への国による技術的・財政的支援の充実や新技術導入に向けた試行を実施。道路の老朽化対策として、昨年度の要望額の2倍超となる468億円を要望した。予算、体制、技術面で課題のある地方自治体に対して、支援の強化を図る。」(『建設通信新聞』2018.08.30)
●「今秋の稼働を予定していた『建設キャリアアップシステム』が、その運用に向けたスケジュールを見直すことになった。システムの核となる技能者・事業者情報の登録に必要となる機能の設計・開発に当初の想定よりも多くの時間を要したことが背景にある。運営主体である建設業振興基金は、稼働の“延期”を決断。運用開始時期は来年4月にずれ込む。」(『建設通信新聞』2018.08.16)
●国連人権理事会に各国の人権状況などを報告する特別報告者は16日、東京電力福島第1原発事故の除染作業員について、十分な被ばく対策なしでの作業を強いられるなど「深刻なリスクがある」として、「日本政府は即刻対応しなければならない」と警告する声明を発表した。9月に、人権理に報告書を提出する。声明は「作業員には、移民や難民、ホームレスが含まれているとの情報がある」とした上で「被ばくリスクについての虚偽説明や、経済的困難から危険な作業を強いられる」などの恐れがあり、「深く懸念している」と述べている。声明はさらに、十分な経験のない下請け業者が作業を受注し、人材派遣会社を介して大量の作業員を雇用していることも「労働者の権利侵害が起きやすい状況」を作り出している可能性があると指摘した。(『しんぶん赤旗』2018.08.18より抜粋。)
●「民間使用調査会社の帝国データバンクがまとめた18年版『女性登用に対する企業の意識調査』によると、有効回答を寄せた約1万社のほぼ半数が『女性管理職がいる』と答えた。回答した企業の管理職に占める女性の割合は平均7.2%と、17年調査から0.3ポイント上昇。14年以降の調査結果の中で最も高い数値となった。業界別(9業種)の平均割合は不動産の13.4%が最も高く、建設業は4.7%と最低水準だった。」(『建設工業新聞』2018.08.20)
●「土地改良建設協会(宮本洋一会長)は、17年度の施工実態調査をまとめた。調査結果によると、対象工事49件では約3割の16件が当初の休日設定が『4週4休以下』で、平日を含めて『4週8休』を確保できたのは1割未満の4件にとどまった。4週8休を取得できない理由には、『工期・管理』が最も多く挙がり、農作業や天候に配慮した工期設計を求める意見が相次いだ。土日完全休工のモデル工事の見直しを要請する意見もあった。」(『建設工業新聞』2018.08.22)
●「帝国データバンクがまとめた『人手不足に対する企業の動向調査』(2018年7月)によると、建設業の66.3%が『正社員が不足している』と答え、前年調査より6.8ポイント上昇した。全業種平均を大きく上回った。調査は全国の10業界51業種に対して実施し、有効回答数は9979社。『正社員が不足している』との回答は、全業種が前年調査比5.5ポイント増の50.9%で06年以降、初めて50%を上回った。業種別では建設業が全業種のうちの3位となり、1位は前年調査に続き情報サービスで71.3%(前年調査比1.6ポイント増)だった。」(『建設通信新聞』2018.08.28)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(久保田俊平議長)が6月9日に実施した『統一土曜閉所運動』は、完全閉所率が前年同月比3.0ポイント増の58.2%、閉所率(読替閉所も含む)が1.1ポイント増の77.2%となり、いずれも3年連続で過去最高を更新した。一方で、業界を挙げて長時間労働是正への機運が高まる中、『閉所率の大幅な改善が期待されたが、結果として伸び悩みを見せた』(日建協)とし、11月からは新たな運動に取り組み4週8閉所の実現を目指す。」(『建設通信新聞』2018.08.29)
●「厚生労働省は、2019年度予算の概算要求に建設業での安全衛生対策事業として、5事業で計4億9600万円を盛り込んだ。いずれも継続事業だが、『2020年東京五輪・パラリンピックの建設需要に対応した労働災害防止対策』で、外国人建設就労者向けの安全衛生教育テキストを新たに作成し、ウェブ上で公開する。『建設業の一人親方などの安全衛生対策支援事業』では、一人親方が入場している現場を対象に巡回指導を19年度から始める。」(『建設通信新聞』2018.08.31)
●「大手・準大手ゼネコンの2019年3月期第1四半期決算が10日までに出そろった。多数が過去最高を記録した上昇局面が一服し、手持ち工事量と利益を高水準で維持する段階に入った。手持ち工事の消化も始まっており、26社中7社が過去最高の売上高となった。前年同期は26社中16社が利益項目のいずれかで連結の最高益を確保していたが、今期は長谷工コーポレーション、五洋建設、前田建設、奥村組、鉄建建設の5社にとどまった。営業利益と経常利益は16社、純利益は15社が前年同期を下回った。単体の完成工事総利益(工事粗利)も低下傾向にあり、特に17社は建築の工事粗利が1桁台に下がってきた。ただ、土木も含めた全体では長谷工コーポレーションの19.2%を筆頭に11社が2桁台を維持しており、利益面でも高水準を維持できている。一方、長谷工コーポレーションと前田建設、東急建設、奥村組、青木あすなろ建設、飛島建設の6社は、連結売上高が過去最高となったほか、13社は前年同期を上回り、フジタは単体売上高が過去最高となった。業績予想に対する売上達成率も、長谷工コーポレーションの25%、奥村組と錢高組の24%、大林組、前田建設、飛島建設、ナカノフドー建設の22%を始め、19社が20%を越えた。」(『建設通信新聞』2018.08.16)
●「海外建設協会(海建協、蓮輪賢治会長)がまとめた会員50社の18年度第1四半期(4~6月)の海外建設工事受注額は、前年同期比33.4%増の5208億円となった。8地域別では、東欧と大洋州を除いていずれの地域も前年同期の水準を上回った。アジアが29.2%増の2721億円で最も多く、全体の半数以上を占めた。」(『建設工業新聞』2018.08.17)
●「主要な建設資材、生コンクリートの取引価格が東京地区で4ヵ月ぶりに上昇した。特約店の販売価格は前月比で4%高い。首都圏の再開発や東京五輪向け工事の本格化など需要は堅調だ。一方、原料の骨材(砕石や砂)価格が一段と上昇。物流費も高い。生コンの需要増は今後も続く公算大で、セメント価格も秋口に上がる見通し。生コンメーカーはさらなる値上げを求める方針だ。」(『日本経済新聞』2018.08.21)
●「大成建設が海外事業を強化する。2021年3月期までに海外売上高を前期の約5倍の2000億円程度に増やす。日本の不動産大手による開発案件へ積極的な参画に加え、海外の地元建設会社との提携拡大を通じて案件を獲得する。近年は好調な国内に注力してきたものの少子化で将来の先細りは必至。海外を巡っては、過去に苦しい失敗もあるが収益化を急ぐ。」(『日本経済新聞』2018.08.28)
●「東京都江戸川区や足立区、葛飾区など都東部の5区は22日、区内を流れる荒川と江戸川が集中豪雨で氾濫した場合の被害想定をまとめた。最大で人口の9割を超す約250万人が住む地域が床上浸水する。1割の地域は2階まで浸水すると予想した。3区に墨田、江東の各区を加えた『江東5区広域避難推進協議会』が会合で公表した。荒川と江戸川の周辺で3日間の総雨量が500~600ミリメートル程度に達したという前提で、最大の浸水域を予想した。5区すべてを流れる荒川の沿岸は、ほとんどが3メートル以上浸水する。特に荒川が大きく湾曲している足立区の北千住周辺は5メートル以上浸水すると予想した。被害想定は合計100万人が住む地域で、最悪2週間以上水が引かないとのシミュレーションをも示した。」(『日本経済新聞』2018.08.22)