情勢の特徴 - 2018年9月前半
●「国土交通省は19年度に建設会社の海外進出をさらに後押しする。ガーナとインドを新市場に想定し、新分野への展開を図る先導的な取り組みを支援。課題の抽出や留意点を整理し新たなビジネスモデルを検討する。中堅・中小の進出意欲が高いフィリピンとベトナムを対象に、帰国する技能実習生や留学生の活用事例を収集し広く共有。日本企業と帰国者とのマッチングを行うなど、外国人材の活用に向けた環境整備も進める。」(『建設工業新聞』2018.09.13)
●「国土交通省は、入札・契約制度に課題を抱える地方自治体を対象に、その改善を支援していく方針だ。専門家の派遣による実務的な支援事業の展開で継続的に改善・推進を促す。焦点となっている建設業の働き方改革を支える、平準化の推進や、多様な入札契約方式の導入など、マンパワーやノウハウの不足に悩む自治体を積極的にサポートしていく。2019年度予算の概算要求に『地方の入札契約改善推進事業』として9800万円を盛り込んだ。予定価格の事前・事後公表やダンピング(過度な安値受注)対策、一者応札への対応など、入札契約適正化法に基づく実態調査(入契調査)によって、入札契約の実態や運用の状況を“見える化”するとともに、専門家の派遣などを行う『入札契約改善推進事業』の実施で、取り組みに遅れがみられている自治体への後押しにつなげる。実態調査や支援事業で浮彫りになった課題や、課題に対する解決策を事例集やガイドラインに落とし込むことで、全国的な底上げを狙う。」(『建設通信新聞』2018.09.04)
●「政府は7日、官公需法に基づく『2018年度中小企業者に関する国などの契約の基本方針』を閣議決定した。これを受け経済産業省は、各府省庁に対し、基本方針に則し、中小企業・小規模事業者の受注機会増大に向けた契約方針の速やかな作成と、所管独立行政法人などに対して契約方針作成の指示を求める世耕弘成経済産業相名の要請文を同日付で通知した。すべての自治体には、基本方針に準じて中小企業の受注機会増大に努めることなどを経産相名で要請した。また、総務省には各府省庁とは別に、自治体に対して基本方針に準じた受注機会増大に努めるよう指導することも要請した。」(『建設通信新聞』2018.09.10)
●「国土交通省は、官庁施設の建築物の点検や清掃といった保全業務発注に関する技術基準類を改定した。対象は▽建築保全業務共通仕様書▽同業務積算基準▽同業務積算要領―の3種類。積算基準の改定では、現場作業員の社会保険加入などに充てる法定福利費の計上費目を、一般管理費等から業務原価(業務管理)に移行。より適正で確実な法定福利費の計上を促す。」(『建設工業新聞』2018.09.13)
●建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み肺がんなどを発症したとして京都府の元建設労働者や遺族(原告27人、被害者25人)が国と建材メーカー14社に損害賠償を求めた関西建設アスベスト京都訴訟第1陣の控訴審判決が31日、大阪高裁であり、被害者全員救済の原告側全面勝訴の判決が出された。田川直之裁判長は、2016年の一審京都地裁判決で認めた国と企業の責任に加え、「一人親方」と呼ばれる個人事業主についても国賠法上の保護範囲に含まれると認定。クボタ、日本バルカーなどメーカー10社と国に対し計約3億円の支払いを命令した。一人親方に対する責任を認めたことにより、被害者25人全員の救済が勝ち取られた。(『しんぶん赤旗』2018.09.01より抜粋。)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、久保田俊平議長)が2002年に始めた『統一土曜閉所運動』が着実に成果を挙げてきた。18年は、運動日の6月9日に作業所を閉所した『完全閉所率』と、運動日を別の土曜または平日に替えた作業所を含む『閉所率』がともに過去最高を更新。閉所率は80%に迫った。今後は毎月の土曜閉所を進めるため、『4週8閉所ステップアップ運動』を開始する。」(『建設工業新聞』2018.09.04)
●「経団連の中西宏明会長が就職・採用活動の解禁時期を縛る『就活ルール』の廃止を検討する意向を表明したことに対し、建設関連業界から先行きを懸念する声が上がっている。ルールが変われば他産業との厳しい人材獲得競争の中で、採用戦略も大きな見直しを迫られる可能性が高い。『採用の前倒しがエスカレートすることがあれば望ましくない』との危惧から、就活ルールの存続を求める声もある。今後の経団連の動きが注目される。」(『建設工業新聞』2018.09.06)
●「国土交通省は、社会保険等の加入の徹底・定着へ、継続して対策を推し進める方針だ。焦点となるのは、下請企業まで確実に加入させる『加入対策の徹底』と、加入の原資となる『法定福利費の確保』。建設業法の改正による未加入企業への対策の強化(許可・更新を認めない仕組みの構築)を打ち出す中、加入の徹底・定着に向けた一層の環境整備を狙う。建設産業における担い手の確保・育成として、2019年度予算に総額1億円を要求。重点施策の1つに『社会保険の加入の徹底・定着』(2500万円)を盛り込んだ。」(『建設通信新聞』2018.09.07)
●「国土交通省は、担い手の確保・育成に向けた取り組みの1つとして、建設業における『女性活躍』の一層の推進を狙う。2014年8月の『もっと女性が活躍できる建設業行動計画』の策定から5年が経過。19年度に計画の最終年を迎えることから、19年度予算の概算要求にこれまでの取り組みの総括と、新たな行動計画の策定に向けた検討費用を盛り込んだ。」(『建設通信新聞』2018.09.11)
●「政府は、19年4月1日に施行する『働き方改革関連法』の主要規定に関する細則や運用などを定める政令や厚生労働省令、指針を決めた。法律の柱として創設される時間外労働の罰則付き上限規制に対応した労働基準法施行規則(省令)では、法律の施行日(中小企業は20年4月1日)から5年間適用を猶予される建設業の対象範囲を明確化。労基法別表で定義された建設事業を行っている本支店などが猶予対象となる。」(『建設工業新聞』2018.09.11)
●「上場ゼネコン58社の2018年3月期の売上高(単体ベース)が合計12兆0896億円となり、2008年のリーマンショック以降で2番目の高水準を記録した。民間信用調査会社・東京商工リサーチの調査で明らかになった。同社は都市部の大型再開発や商業施設の工事の本格化、手持ち工事の順調な進捗が寄与したとみている。…18年3月期の58社の合計売上高は前年同期から3463億円増加した。前年は資材価格の高騰や人手不足による選別受注の影響もあり売上高が落ち込んだが、2年ぶりの増収となった。09年度以降の10年間で見ると、09年3月期の12兆6591億円に次ぐ高水準となった。増収は40社(前年22社)と約7割を占めた。」(『建設工業新聞』2018.09.11)
●「関西国際空港では過去にも高潮被害があり、対策として滑走路の護岸をかさ上げしたが、浸水を防げなかった。関西エアポートは『想定を超える高潮だったが、関空島自体の沈下が影響した可能性もある』と説明する。関西空港では2004年、台風16号による高潮で1期島の一部が冠水し、05年から護岸の高さを2.2メートルかさ上げした。『50年に1度の台風に備える』として、これまで最高だった1961年の第2室戸台風時の大阪市の潮位(2.93メートル)を想定して高さを設定したが、4日の高潮で大阪市の潮位は3.29メートル(速報値)を超え、第2室戸台風時を上回った。さらに、関空島は大阪湾の泉州沖約5キロの軟らかい地盤の上にあり、沈下が続いている。1期島は1994年の開港から通算で約3.4メートル沈み、今も年間約6センチのペースで沈下する。同社は『護岸が設計通りの高さを維持できていたか分からない。沈下が浸水の拡大を招いた可能性もある』と指摘する。07年に完成した2期島の滑走路は1期島より高く今回は被害を免れたが、年間約30センチの沈下が続く。同社担当者は『被害を受けないよう、浸水した原因を調査し、対策を検討したい』と話した。」(『日本経済新聞』2018.09.05)
●「最大震度7の地震が6日午前、北海道を襲った。道内全域で大規模な停電が発生し、電力や交通機関などインフラ機能がストップした。全域の電力の完全復旧には少なくとも1週間かかる見通しだ。製紙や製鉄の生産停止など経済活動にも影響が出ている。台風21号に続き、相次ぐ自然災害は国内経済への波乱リスクとなりかねない。国内で震度7の観測は2016年の熊本地震以来で6回目。気象庁は『平成30年北海胆振(いぶり)東部地震』と命名した。北海道電力によると、停電は一時、道内全ての約295万戸に上り、1995年の阪神大震災の約260万戸を超える規模だった。電力会社のエリア全域での停電は初とみられる。全域停電の要因は、震源近くにある石炭火力発電所の苫東厚真発電所(厚真町)の緊急停止で、道全域の電力需給バランスが崩れたことにある。電力はエリアの需要と供給の量が常に一致しなければ、大規模停電や発電機などの設備が損傷する可能性があり、設備の安全性の確保を目的に、発電所が相次ぎ停止した。6日昼すぎから一部の発電所が稼働。電力復旧が進み、午後9時時点で約48万5000戸で停電が解消された。安倍晋三首相は6日夕、関係閣僚会議で、道内の送電について『7日朝までに全体の3分の1にあたる100万世帯を超える皆さんへの供給再開を目指す』との考えを示した。北電は7日には通常の電力需要のピークの約7割を供給できる見通しを示し、北電の真弓明彦社長は『全面復旧には1週間程度はかかる』と話した。」(『日本経済新聞』2018.09.07)
●「6日午前3時過ぎに北海道で発生した最大震度7の地震に伴う被害への対応に建設業界が奔走している。団体では日本建設業連合会(山内隆司会長)、全国建設業協会(近藤晴貞会長)、日本道路建設業協会(西田義則会長)などが災害対策本部を設置し、現地との連絡や状況把握に努めた。全域295万戸にわたる大停電の影響で現地と連絡ができない状況が続き、各団体とも手探りでの情報収集に努めた。大手ゼネコン各社は、社員の安否や施工物件の確認などの対応に当たった。日建連は地震に伴う停電で、北海道支部事務局の固定電話が通じなかったため、現地事務職員の携帯電話や災害時優先電話を使って連絡を取り合った。鉄道の運休などにより、現地職員の出勤にも遅れが生じた。地震の発生を受け、支部には午前8時、本部には同8時15分にそれぞれ災害対策本部を設置。午後には本部が国土交通省の建築物防災対策室から応急危険度判定士の派遣に備えるよう要請を受けた。 全建は、午前8時に『(仮称)北海道地震災害対策協力本部』を設置。停電により午前の段階で北海道建設業協会との連絡が取れない状況が続いたため、建協と同じ北海道建設会館に入居する北海道建設業信用保証を通じて状況把握に努め、建物にほぼ被害がないことを確認した。東京の本部事務局によると、『午後に入っても停電の影響で建協の事務所が機能していない状況が続いている』という。道建協も本部、北海道支部に災害対策本部を設置し、各支部との連絡・調整、情報把握に当たっている。本部では6日午後に対策本部の会合を開き、今後の対応などを確認した。日本埋立浚渫協会(清水琢三会長)も本部、北海道支部に災害対策本部を設置し、被害状況の把握などに当たっている。」(『建設通信新聞』2018.09.07)
●「政府は6日、2018年7月豪雨非常災害対策本部会議を開き、災害応急復旧などに616億円を追加措置することを決めた。麻生太郎財務相が生活再建と生業の再建支援パッケージに基づく予備費第2弾として報告した。616億円のうち、593億円は岡山県倉敷市真備町の小田川合流点の付け替えなどの災害応急復旧に使用する。7日の閣議で正式決定する。 災害応急復旧の内訳は、小田川や肱川(愛媛県)などの堤防の復旧や野村ダムなどの復旧、国道2号の車道の洗掘個所の復旧などの公共土木施設の災害復旧に373億円を充てる。渓流に残存する岩や土砂などに対応した強靭ワイヤネット、砂防ダムの整備などの流路整備と監視体制の強化には204億円、河川の浚渫などへの緊急対応には16億円を措置する。」(『建設通信新聞』2018.09.07)