情勢の特徴 - 2018年10月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●2020年東京五輪・パラリンピックに関連する国や自治体などによる事業の総支出が3兆円にまで膨らむ可能性が出ている。会計検査院の調査で、国は既に約8011億円を支出していることが判明。「事業と大会との関連性の区分や基準を整理することが必要だ」。検査院は大会推進本部に対し、全体像を把握して公表するよう求めている。検査院がこのほど取りまとめた調査によると、国の施策に基づく大会関連事業は13~17年度までの5年間で286あり、計約8011億円を支出していた。一部を除き額はこれまで公表されていなかった。大会経費についての直近の試算は17年12月に組織委員会が示した1兆3500億円。内訳は組織委と東京都が6000億円ずつ、国が1500億円を負担するとしており、検査院の調べに基づき単純に計算すると、国の負担はこの金額から6511億円膨らんだことになる。東京都もこの6000億円とは別にパラリンピックに向けたバリアフリー化など8100億円の関係経費を見込む。都以外の自治体も含め今後も多額の支出が見込まれることから、総コストは3兆円に達する可能性がある。また検査院は調査の中で、一部の事業の実施状況について課題が見られたとも指摘。競技力強化のため用具の機能を高める研究開発(文部科学省)では、市販品が販売され開発の必要が無くなるなどし、途中で中止となった13事業に計約1億6200万円が投じられていた。一方、ドーピング防止の体制整備事業(同省)では、約500人必要とされた検査員が17年度末で269人しか確保できていなかった。(『しんぶん赤旗』2018.10.07より抜粋。)
●「政府は、今後3年間の社会資本整備の方向性として『サステイナブルで強いインフラ』を提唱する。全国で自然災害が頻発化している現状に、国民生活を支える持続可能なインフラ管理システムの実現を目指す。『国土強靭化』の必要性が叫ばれる中で、インフラの老朽化に対応する長寿命化・更新や、効率的かつ効果的なメンテナンスの推進に力を入れる方針だ。5日の未来投資会議(議長・安倍晋三首相)に今後3年間の『成長戦略の方向性』を提示した。持続的な経済成長を実現していくためのポイントとして、国民一人ひとりの労働生産性の向上を重視。AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ロボットといった先端技術の生産現場への浸透を急ぐ。」(『建設通信新聞』2018.10.09)

行政・公共事業・民営化

●「全国建設業協会(全建、近藤晴貞会長)は、改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の運用指針を巡る調査をまとめた。回答した会員企業の60%以上が都道府県に発注・施工時期の平準化と適正な工期設定を求め、週休2日の実現をはじめ働き方改革の推進に当たっては、約90%が適正な工期設定と経費の補正を課題に挙げた。結果は国土交通省など関係機関への提言活動などに生かす。」(『建設工業新聞』2018.10.10)
●「東日本建設業保証がまとめた前払金保証工事から見た公共工事の動向によると、2018年度上期(4-9月累計)の請負金額は、前年同期比2.2%減の5兆0680億円だった。2年連続で前年同期実績を下回ったものの、5年連続で5兆円台を維持した。発注者別では都道府県、市区町村が大型工事の反動によって減少する一方、国は環境省福島地方環境事務所の中間貯蔵施設関連工事などによって増加した。」(『建設通信新聞』2018.10.11)

労働・福祉

●「日本建設業連合会(山内隆司会長)は、会員企業を対象に実施した『労働時間等実態調査』の結果をまとめた。経団連がまとめている調査への協力要請を受け、会員企業のデータを集計した。一般従業員の年間総実労働時間(2017年度平均)は、2250時間を超え、経団連調査に回答した企業全体(400社)・製造業平均を約300時間上回っている。2400時間より多く働いている一般従業員の割合は38%で経団連調査の回答企業全体の5%を大きく上回った。日建連は調査で得られたデータを時間外労働の段階的削減に向けた施策展開などに活用する。」(『建設通信新聞』2018.10.03)
●「全国建設業協会(近藤晴貞会長)は、各建設業協会の会員企業を対象に実施した『働き方改革の推進に向けた取り組み状況等に関するアンケート』の結果をまとめた。休日取得状況は、本社などの『事務所』の約4割が『おおむね4週8休』だったのに対し、現場は1割未満にとどまった、直近1年の職員賃金は、基本給などを引き上げたとの回答が8割を超えた。下請け契約時の労務単価も6割超が引き上げ、職員賃金とともに前年度の回答割合を上回った。調査結果は、31日まで全国各地で開く国土交通省各地方整備局などとの地域懇談会で資料として提示し、議論に活用する。…『おおむね4週8休』との回答は事務所が39.5%だったのに対し、現場は9.2%と大きな開きがある。『おおむね4週4休以下』は現場が9.2%と1割近くを占め、事務所の2.0%を大きく上回っている。…全建が3月の理事会で決定した『今後の働き方改革への取り組み』に盛り込んだ、公共工事設計労務単価の改定分を下請契約に適切に反映させる『単価引上げ分アップ宣言』の取り組み状況を見ると、『すでに積極的に取り組んでいる』が16.7%、『取り組みを検討している』が31.0%となっている。一方、『知らない』との回答も33.0%あったことから、各建協に対して積極的な取り組みを呼び掛ける。また、4週8休の実現を目指して会員企業が、毎月プラス1日の休日確保を努力目標とする『休日月1+(ツキイチプラス)運動』は7.8%が積極的に取り組んでおり、32.1%が取り組みを検討している。ただ、44.4%が『知らない』と回答していることから、全建は『アンケートを契機に周知を図っていきたい』(労働部)としている。」(『建設通信新聞』2018.10.05)
●「全国建設業協会(全建、近藤晴貞会長)がまとめた女性の活躍に関する調査によると、傘下の都道府県協会に加盟する企業に在籍する女性職員の割合は、技術者4.0%(前年5.3%)、技能者1.7%(2.0%)となった。4418社が8月1日時点の状況を回答しており、女性職員は技術者316人(401人)、技能者20人(17人)を含めて961人(1017人)増加した。全体に占める女性職員の割合は12.0%(12.8%)で、女性職員の職種のうち技術者は18.3%(24.9%)、技能者は2.1%(2.2%)となった。採用した女性職員のうち、技術者は23.9%(31.8%)、技能者は2.8%(7.8%)だった。女性職員の活躍を促すために行っている取り組みは、多い順に『子育て支援』(回答割合35.2%)、『積極的な採用』(26.0%)、『介護支援』(19.8%)が挙がった。」(『建設工業新聞』2018.10.12)
●「政府は、外国人労働者の受け入れ拡大に向けて、来年4月の導入を目指している新制度の概要を固めた。一定水準の技能や日本語能力を持つ外国人材に対する、新たな在留資格として『特定技能』を創設する。その熟練度によって『特定技能1号』と『特定技能2号』に分類する内容だ。12日の『外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議』に制度の概要を提示した。新たな在留資格の創設は、深刻化する人手不足への対応が狙い。政府は、24日に召集される臨時国会にこの『特定技能』創設を盛り込んだ出入国管理法などの改正案を提出。早期の成立を目指す。」(『建設通信新聞』2018.10.15)
●2018年8月31日(京都1陣訴訟)、9月20日(大阪1陣訴訟)、建設アスベスト(石綿)訴訟大阪高裁ダブル判決で、連続して原告側全面勝訴判決を勝ち取った。わが国では、輸入量の7~8割という大量のアスベストが、吹き付け、ボード、スレート等の建材に使用されてきた。そのため、大工、電工、内装工、解体工、塗装工等、あらゆる建築作業者に、肺がんや中皮腫、石綿肺等の深刻なアスベスト被害が多発している。その中には、労働者だけでなく、一人親方や個人事業主も多数含まれている。建材メーカーは、アスベストの有害性を知りながら、それを警告することなく、逆に安全性をアピールして、大量のアスベスト建材を製造販売し、利益を上げてきた。また国は、何の規制も行わないばかりか、建材メーカーの要請を受けてアスベスト建材を耐火構造等に指定・認定し、使用を促進した。今後もアスベスト建材を使った建物の解体・改修や、震災時のがれき処理などの際に、新たなアスベスト被害が発生する危険性がある。被害者の全面的な救済と被害根絶のため、全国で、建材メーカーと国の責任を追及しているのが、建設アスベスト訴訟である。(『全国商工新聞』2018.10.15より抜粋。

建設産業・経営

●「資機材価格や労務費などで構成する建築工事費がじりじりと上昇していることが、建設物価調査会の『8月の建築費指数』で浮き彫りになった。建築市場の規模を示す8月建築物着工統計は累計(4-8月)、単月ともに前年同期比、前年同期比いずれもマイナスだったものの、建設業の8月新規求人は前年同月比5.0%増と、旺盛な人材確保需要などが指数押し上げの背景にありそうだ。今後も一部資材は先高感もあり、建設産業界で本格化する週休2日など働き方改革の取り組みによって建築工事費の上昇はさらに続く可能性もある。」(『建設通信新聞』2018.10.02)
●「直近の5年間で完工高上位30社の“稼ぐ力”が向上している。日刊建設通信新聞社が毎年まとめている建設業・設備工事業ランキングをもとに、建設業の完工高上位30社(長谷工コーポレーションを除く)における直近5年間の1人当たり営業利益高をまとめたところ、30社中28社の2017年度(17年4月-18年3月単体決算業績)1人当たり営業利益高が13年度(13年4月-14年3月)を上回った。特に大手5社の1人当たり営業利益高は、13年度の130万円から17年度は1410万円で、10倍以上の上昇となった。」(『建設通信新聞』2018.10.03)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は9月28日、2018年7月豪雨で西日本を中心に発生した水害の推計被害額をまとめた。被害総額は9月18日時点の速報値で約1兆0940億円。1961年に水害統計調査を開始して以降、76年の台風17号などによる被害額(8844億円)を上回り過去最大となる見込みだ。同省は年内に全国で取り組む対策をまとめる。水害被害額の推計結果は、9月28日に東京都内で初会合を開いた社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)河川分科会の『大規模広域豪雨を踏まえた水災害対策検討小委員会』(委員長・小池俊雄土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター長)で報告した。推計結果は関係省庁や被災自治体などの報告値を参考にまとめた。内訳を見ると、家屋や事業所資産の被害額、事業所の応急対策費などに当たる『一般資産等被害額』が約6290億円。国交省の直轄・補助事業で整備された河川や道路などの被害額に当たる『公共土木施設被害額』が約4430億円、鉄道やライフラインなどの被害額に当たる『公益事業等被害額』が約220億円となった。」(『建設工業新聞』2018.10.01)
●東京都が2020年東京五輪の選手村整備の名目で、中央区晴海の都有地(約13.4ヘクタール)を大手不動産会社などに大幅値引きして売却したことは違法だとして、都民が舛添要一前知事、小池百合子知事らに値引き分を請求するよう都に求めた住民訴訟の原告と弁護団は2日、都有地の値引き額が1481億円に上ると公表した。同日、都庁で記者会見し、東京地裁に提出した土地鑑定評価書について説明した。訴訟弁護団の大住広太弁護士は、実績のある鑑定士に依頼した選手村用地の鑑定評価額は1611億1800万円で、都の値引き額が1481億5800万円に上るとし「都民の財産を不当に安く売り払うことは許されない」と強調した。会見で淵脇みどり弁護士が、都は財産価格審議会にも諮らずに都有地の譲渡契約を結んだことの違法性を指摘。中野幸則原告団長は、都が売却価格の根拠としている日本不動産研究所の報告書の数字を全て黒塗りにしていると批判した。選手村用地処分をめぐっては、都が市街地再開発制度を乱用し、都有地を三井不動産、住友不動産など11社で構成する特定建築者に129億6000万円(1平方メートルあたり約9万6700円)で売却。これに対し「晴海選手村土地投げ売りを正す会」の都民33人が17年8月、都民に損害を与えたとして東京地裁に提訴。次回弁論は10月26日に行われる。(『しんぶん赤旗』2018.10.03より抜粋。)
●東京都築地市場(中央区)の移転先として、11月に開場が迫る、豊洲新市場(江東区、東京ガス工場跡地)。しかし、築地の仲卸業者や買い出しに来る業者らから、新市場の開場を喜ぶ声は聞こえてこない。隠ぺい、ごまかしで塗り固められた豊洲新市場の問題点を改めてみた。豊洲新市場で9月、6街区水産仲卸売場棟西側バース(搬出入口)で、地盤沈下による長さ10メートル、高さ5センチのひび割れが起きていることが発覚した。しかも、都は本紙の取材に対し、この箇所を含む11ヵ所の修復や経過観察が必要なひび割れに加え、用地内に無数のひび割れがあることを昨秋から把握していたと認めた。都は、ひび割れの事実を1年間にわたって一切公表せず、都議会にも、農水省にも報告せずに開場認可申請していた。…豊洲新市場ではさらに、23日、6街区北側のマンホールから未処理の地下水が地表に噴き出すトラブルが発生。土壌汚染追加対策工事のさなかの5月には、ウェルポイント(真空ポンプによる揚水設備)から未処理の地下水が地表に流出していたことも関係者の話でわかった。地下水にはいずれも、ベンゼンなどのガス工場操業由来の有害物質が含まれる可能性がある。生鮮食品を扱う市場の「食の安全・安心」を土台から揺るがしかねない。30日から1日にかけて台風24号が東京に接近した際には、5街区の青果棟1階の飲食店2店舗の床が浸水。都は、排水溝が泥で詰まって雨水があふれたためと説明している。水産仲卸業者の和知幹夫さん(73)は「こんなことでは、向こうに行っても『明日は大丈夫か』と仕事にならない。みんな不安がっている。何か起きたら都には賠償する責任がある」と憤る。(『しんぶん赤旗』2018.10.05より抜粋。)
●「最高裁は5日、大法廷でアスベスト(石綿)が検出されたと発表した。6日に予定していた『法の日』週間のイベントを中止する。原因や健康被害の可能性などは調査中で、大法廷につながる大ホールについても念のため調査する。最高裁によると、庁舎の耐震改修工事に伴う大法廷での調査で、空気1リットル中1本を超える石綿繊維を検出した。イベントは家族連れらを対象にした法廷見学などの内容で、約200人が参加予定だった。」(『日本経済新聞』2018.10.06)
●「国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、世界の平均気温が2030年にも産業革命前と比べ1.5度上がる可能性を予測した報告書をまとめた。気温上昇を1.5度にとどめるため、30年までに二酸化炭素(CO₂)排出量を10年比で約45%減らし、50年ごろまでに実質ゼロとする必要性を指摘。建築やインフラといった分野で対策強化の必要性も訴えた。」(『建設工業新聞』2018.10.10)
●「資機材や労務費上昇基調の影響が、国家プロジェクトまで広がっている。工事最盛期を迎える新国立競技場工事でもインフレスライド条項の適用可能性が出てきた。今月末には受発注者間で協議がスタートし、12月以降に契約変更する見通しとなる。スライド適用による適正な工事採算確保は、建設業の働き方改革推進にも寄与する。また、国家プロジェクトでの適用は、民間発注者含め大規模工事にも影響を与えそうだ。建築工事費上昇の背景にあるのが、2020年東京オリンピック需要と言われる資機材価格や人材確保による労務費の高騰だ。受注者である建設各社が施設整備費に物価上昇リスク分を織り込むリスクを抱えるだけなく、発注者にとっても着実な施工を目指す上での不安要素となる。こうした市場動向に対して、新国立競技場整備工事を受注した大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JVは4月中旬、発注者である日本スポーツ振興センター(JSC)にインフレスライドの適用を申請。JSCは9月18日、『新国立競技場整備事業に係るアドバイザリー会議』第5回会議で、国のルールに従った方針で価格上昇に対応することを報告、確認した。今月末以降にスライド協議が始まり、14日以内に金額が確定する。第6回会議での確認を経て、12月以降に契約変更する。」(『建設通信新聞』2018.10.15)

その他