情勢の特徴 - 2018年10月後半
●「政府は15日の臨時閣議で、18年度補正予算案を決定した。追加歳出は9356億円で、財源として建設国債を6950億円追加発行する。2018年7月豪雨や北海道胆振東部地震などの復旧・復興事業に7275億円を計上。国土交通省分は国費ベースで3395億円となり、うち公共事業関係費が3340億円。大規模災害からの復旧に充てる。24日召集の臨時国会に提出し、早期成立を目指す。」(『建設工業新聞』2018.10.16)
●「日本と欧州連合(EU)は22日、都内で日EUハイレベル産業・貿易・経済対話の初会合を開く。中東やアフリカ地域でのインフラ整備に協力する覚書を締結する。日本とEUの経済連携協定(EPA)の発効を見据え、自由で公正なルールに基づく経済協力の枠組みも話し合う。中国の広域経済圏構想『一帯一路』や米国の保護主義政策をけん制する狙いがある。」(『日本経済新聞』2018.10.17)
●「政府は、2018年度第1次補正予算案の内容をまとめた。全体の歳出9356億円のうち、災害からの復旧・復興に7275億円、学校の緊急重点安全確保対策に1081億円、今後の災害対応を勘案した予備費の追加に1000億円を充てる。24日に召集する臨時国会に提出する。18年7月豪雨の発生から既に3ヵ月以上経過していることから、早期成立による迅速な復旧・復興が急務となっている。文部科学省は、災害復旧に加え、公立小中学校などへの空調設置やブロック塀の安全対策事業として、1326億円を補正予算案に計上した。災害復旧費は、▽公立学校114億円▽国立大学等115億円▽私立学校13億円▽国指定文化財等21億円▽地震観測網10億円――の計273億円。」(『建設通信新聞』2018.10.17)
●「建設経済研究所と経済調査会は25日、最新の建設投資見通しを発表した。18年度は7月の前回見通しで示した前年度比0.8%増の56兆4800億円を上方修正し、1.2%増の56兆6700億円と予測。政府建設投資、民間建設投資(住宅と非住宅)とも微増となった。19年度の見通しも前回の前年度比2.5%減の55兆0900億円を上方修正し、2.7%減の55兆1500億円とした。今後、18年度の当初予算の執行や補正予算の編成などが進めば、次回以降の見通しで上方修正の要素になりそうだ。」(『建設工業新聞』2018.10.26)
●「国土交通省は、公共建築の発注者が果たすべき役割や責務を明確化した、社会資本整備審議会の答申『官公庁施設整備における発注者のあり方について』の解説書を改定。17日付で都道府県・政令市に通知した。週休2日の確保など、働き方改革の推進に関する新たな取り組みを追記。公共建築の発注者である自治体に働き方改革に対する一層の理解を促す。」(『建設通信新聞』2018.10.18)
●「政府は24日召集の臨時国会に計13本の法律案を提出する。このうち建設業に関連する法案は2本。一定以上の技能を持つ外国人労働者受け入れ拡大に向けた『出入国管理及び難民認定法(入管法)及び法務省設置法の一部を改正する法案』が最大の焦点となる。今年の通常国会で廃案になった『海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法案』も提出。沖合での洋上風力発電事業を後押しする。」(『建設工業新聞』2018.10.22)
●「国土交通省は22日、2030年に向けて段階的な実現を目指すインフラメンテナンスの施策案をまとめた。柱は国による市町村工事の発注業務受託と、産学官が保有するインフラメンテナンス関連データを一括検索するシステムの開発。発注業務受託では、全国的な市町村の技術者不足を補完するため、できるだけ早く全国で取り組めるようにするための指針を作る。」(『建設工業新聞』2018.10.23)
●「国土交通省は港湾工事の生産性向上策としてICT(情報通信技術)活用の対象工種を広げる。国の現場で先行する浚渫工に加え、防波堤や護岸といった構造物の基礎工やブロック据え付け工にも対象を拡大。桟橋の設計ではCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)を導入する。こうした取り組みに対応した技術基準類を20年春までに整備し、本格的な運用を後押しする。」(『建設工業新聞』2018.10.30)
●「政府は15日、17年3月に決定した『働き方改革実行計画』に基づく施策の進捗状況を初めてまとめた。今年の通常国会で同計画の内容を踏まえた働き方改革関連法が成立し、新たに時間外労働の罰則付き上限規制が規定された。建設業の長時間労働是正に向けた今後の取り組みでは、建設業法を含む関連法令の改正検討などを列挙した。施策の進捗状況は、同計画で掲げた▽非正規雇用の処遇改善▽賃金引き上げと労働生産性向上▽長時間労働是正▽柔軟な働き方がしやすい環境整備▽病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立、障害者就労の推進▽外国人材の受け入れ▽女性・若者が活躍しやすい環境整備▽雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の充実▽高齢者の就業促進―の9項目で整理した。『長時間労働是正に向けた取り組み』は建設業に特化した内容を列挙した。国土交通省が建設業法など関連法令の改正を検討。政府が7月に改定した『建設工事における適正な工期設定等のガイドライン』のさらなる改定に向けた検討も進めるため、中小企業の実態を調査する。」(『建設工業新聞』2018.10.16)
●「厚生労働省は17日、建設現場の労働災害で最も多い墜落・転落災害の防止策を話し合う官民実務者会議を開いた。足場の墜落・転落防止効果をより高める観点から、法令などに基づき組み立て直後や足場を使う現場作業の着手前に行う安全点検について、規定を厳しくする方向性を提示。現在は規定がない現場作業前の点検結果に関する記録・保存を新たに求める案も示した。」(『建設工業新聞』2018.10.18)
●「日本建設業連合会の山本徳治事務総長は、政府が打ち出す外国人材の受け入れ拡大に対する建設業界のスタンスとして、最大の課題となっている若年層入職者の確保・育成など、業界を挙げて取り組んでいる『日本人の処遇改善に水を差すということがないようにしていく必要がある』と強調した。23日の自民党・法務部会における業界団体へのヒアリングに答えた。外国人材の受け入れを拡大する動きに、国内人材の処遇改善と、若手入職者の確保が最優先という認識を示すとともに、危険性を伴う建設現場の特性から『必要な安全教育や指導ができるだけの日本語能力が必要になる。(需要が減って)建設業の仕事がなくなったときに不法滞在になった技能者にどう対処するのかを明らかにしておくべき』との注文を付した。」(『建設通信新聞』2018.10.24)
●「2015年3月卒業者で建設業に就職した3万9385人のうち、就職後3年以内に仕事を辞めたのは1万4837人で、卒業後3年以内離職率が37.7%となったことが、厚生労働省が23日にまとめた新卒者離職状況から明らかになった。前年(14年3月)の卒業者と比べ離職率は1.2ポイント低下した。このうち、高卒者は1万5187人の就職に対し、7097人が仕事を辞めたことから、3年以上離職率は1.0ポイント減の46.7%だった。前年と比べ離職率は下がったものの、2人に1人程度が離職している状況は続いている。全産業の高卒離職率39.3%と比べ、建設業の離職率は7.4ポイントも高く、担い手を確保しても、定着が困難である状況が変わっていないことを示している。一方、大卒者は1万9665人が就職し、3年以内に5682人が離職、離職率は1.6ポイント減の28.9%となった。全産業の大卒離職率31.8%と比べ、建設業の離職率は2.9ポイント低く、大卒建設業の3年以内離職率が30%を下回ったのは4年ぶりとなる。」(『建設通信新聞』2018.10.24)
●「災害時のライフライン復旧工事で労働時間の延長や休日労働を認める『33条許可等』(労働基準法第33条1項に基づく許可・届出)の対象となり得る業種として、地質調査、測量、建設コンサルタントの業務など、復旧作業に伴う一連の業務を行う事業場(企業)が対象になることが明確化された。厚生労働省が都道府県労働局に対して要請した、災害など避けることができない理由によって労働時間延長など臨時の必要がある場合での33条許可等おける取り扱いの徹底を求めた通知で示した。」(『建設通信新聞』2018.10.25)
●「国土交通省は18年度『公共事業労務費調査』の実施に当たり、賃金の実勢を正確に把握するよう調査機関に要請した。次年度の公共工事の積算に用いる『設計労務単価』改定の基礎データとなる重要な調査。職種区分の誤りや基準内手当ての記入漏れがあると、実勢よりも低い単価が設定される懸念があることから、『調査方法は変えないができる改善に取り組み、より正確な調査を実施する』(土地・建設産業局建設市場整備課)考えだ。」(『建設工業新聞』2018.10.31)
●「群馬県建設業協会の青柳剛会長は15日、前橋市の群馬建設会館で記者会見し、災害対応組織力を確保・維持するための提言を発表した。6年前に比べて、会員企業の従業員数は増加したものの、特殊運転手や普通運転手、作業員といった『災害応急対策基礎人員』が2000人以上減少しているという深刻な調査結果を提示。青柳会長は『災害対応の余力が、ほとんどなくなっていることが浮き彫りになった』と指摘した上で、今後の予算要望活動の中では『中身』を重視し、地元の企業やそこで働く人が直接携われる『地域密着型工事』の確保を求める方針を示した。」(『建設通信新聞』2018.10.16)
●「道路舗装各社によるアスファルト合材工場の更新事業がピークを迎えている。大手企業が相次いで工場のリニューアルを実施。製造能力を増強しながら、粉じんの飛散防止などの環境対策も進む。設備投資を急ぐ背景には『20年東京五輪後は今の景気は続かないのでは。今のうちに済ませる』(大手の合材担当者)という事情もある。ただ足元の合材需要が増えておらず、今後は難しい経営判断が迫られることにもなりそうだ。」(『建設工業新聞』2018.10.19)
●「災害時の緊急対応を巡って、全国建設業協会(全建)と傘下の都道府県建設業協会が補償の拡充を求めている。自然災害の被災地で、会員企業が自衛隊などに先んじて緊急活動を行っているものの、補償が労働者災害補償保険(労災保険)の範囲にとどまるケースが少なくないためだ。広域、甚大な被害になる自然災害が増えており、対応を要請する声が大きくなりそうだ。」(『建設工業新聞』2018.10.29)
●「政府は17日、2014年6月に閣議決定した『国土強靭化基本計画』の改定案をまとめた。この約5年間で発生した大規模災害の教訓や知見を最大限反映し、重点化する施策を見直す。新たに気候変動の影響を考慮した治水対策や、災害時の代替輸送手段として新幹線ネットワーク整備の推進を盛り込む。防災・減災対策、災害対応を担う建設技能労働者の確保・育成も打ち出す。」(『建設工業新聞』2018.10.18)
●「国土交通省は、直轄管理国道の路面下に『占用物件』としてライフラインを埋設した地方自治体や民間企業に対し、路面下空洞調査費の一部負担を求める方針を決めた。管路などの老朽化が要因とみられる道路陥没事故が多発している状況に対応。会計検査院からの指摘も踏まえ、今後約1年以内に占用物件設置者へ費用負担を求めるための指針を作る。国以外の道路管理者にも周知していく。路面下空洞調査では道路陥没を未然に防ぐため、路面下占用物件の老朽化や破損などが発生要因となる空洞の有無や大きさなどを確認する。道路の維持管理で不可欠な調査業務として、道路管理者が定期的に発注している。国直轄事業の地元負担金や国の交付金を除き、調査費は道路管理者が負担する。」(『建設工業新聞』2018.10.19)
●「国土交通省は、耐震基準が強化される1981年以前につくられた公共施設などの高さのあるブロック塀について、耐震改修促進法に基づく耐震診断を義務づける。11月にも政令などを改正し、2019年1月に施行する方針。6月の大阪北部地震でブロック塀の倒壊により犠牲者が出た事故を受けた措置で、災害時の避難や救助、物資輸送を妨げるのを防ぐ。」(『日本経済新聞』2018.10.27)