情勢の特徴 - 2018年11月前半
●「国土交通省は、14年6月に策定した道路橋と道路トンネルの定期点検要領を見直す。延長2メートル以上の橋(計約70万橋)とトンネル(計約1万本)の管理者に義務付けている5年ごとの近隣目視点検を効率良く進めるため、点検実施時の着目箇所を構造や損傷の発生傾向といった特性に応じて示すようにする。ロボットやセンサーなどの新技術活用も認める。」(『建設工業新聞』2018.11.05)
●「2014年9月に閣議決定した『公共工事の入札および契約の適正化を図るための措置に関する指針』(適正化指針)で『事後公表すべき』とされている予定価格。事後公表が推奨される中で、47都道府県の6割を超す30団体が事前公表していることが国の調査によって明らかになった。その8割に相当する25団体は現段階で事後公表に切り替える予定はないという。予定価格の公表時期は、国土交通省と都道府県の担当者が入札契約に関する意見を交わす『ブロック監理課長等会議』の主要テーマの1つになっている。」(『建設通信新聞』2018.11.06)
●「国土交通省は9日、2017年度における直轄工事と建設コンサルタント関係業務の契約件数や金額、落札率などの実績を示す『直轄工事等契約関係資料』を公表した。各部局を統合した全体の工事件数は前年度から7%減となる1万3568件、契約金額は4%減の1兆8665億円だった。工事全体の落札率は、前年度の92.00%から92.52%に上昇した。」(『建設通信新聞』2018.11.12)
●「総務省は13日、地方自治体の公共事業について18年度上半期(9月末時点)の予算執行状況を公表した。17年度から繰り越された予算と18年度の当初予算を合算した21兆9113億円に対し、契約率は前年度同期を0.8ポイント下回る60.6%だった。支出済み額割合も0.5ポイント減の18.6%となった。微減要因について、同省は全国で相次いだ大規模災害の影響があると見ている。契約率の内訳は、18年度予算分(16兆7098億円)が0.2ポイント低下の54.5%。繰り越し予算分(5兆2015億円)が1.3ポイント下回る80.3%だった。支出済み額割合の内訳は18年度予算分が0.1ポイント減の14.8%、繰り越し予算分が1.1ポイント低下の30.7%となった。」(『建設工業新聞』2018.11.14)
●「働き方改革の推進へ、焦点の1つとなっている『週休2日』対応が加速している。国土交通省が直轄工事の率先行動として、対象工事の拡大を打ち出すなど、国策としての推進を鮮明にする中、都道府県におけるモデル工事の実施が拡大。2019年度(予定)に、週休2日や4週8休のモデル工事に取り組む都道府県は45団体(残る2団体は実施を検討)に上る。」(『建設通信新聞』2018.11.15)
●「政府は2日、単純労働を含む外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案を閣議決定した。人手不足の分野で一定の技能を持つ人を対象に新たな在留資格『特定技能』を来年4月に創設する。経済界の要望に応じ、これまで認めてこなかった単純労働受け入れにカジを切った。日本の入国管理政策の大きな転換で、政府与党は今国会での成立をめざす。」(『日本経済新聞』2018.11.02)
●「新たな在留資格『特定技能』の創設を柱とする出入国管理法の改正によって、外国人材の受け入れを拡大していく方針が示される中で、建設産業界からの懸念もある国内人材の処遇への影響について、山下貴司法務相は『国内の労働環境には影響しない』と強調した。5日の参院・予算委員会で佐藤信秋参院議員の質問に答えた。『(建設産業界が)心配されているのは処遇改善への影響だ』と産業界の声を代弁した佐藤議員に対して、山下法務相は『(閣議決定した入管法の改正案は)必要とされる人材が確保された場合は一時的に(受け入れを)停止する措置も可能としている。(停止するかどうかの)その判断においては、国内人材の確保(に関する見通し)や生産性の向上ということが考慮される』と述べた。新たな在留資格『特定技能』は深刻化する人手不足への対応が狙い。『人手不足が深刻化しており、わが国の経済・社会基盤の持続可能性を阻害する可能性が出ているため、生産性向上や、国内人材の確保の取り組みを行ってもなお、人材を確保することが困難な分野に一定の専門性、技能を分野を持つ即戦力の外国人材を受け入れる』(山下法務相)仕組みとなる。“一時停止”という措置を用意することで、仮に国内人材によって必要とされる労働力が確保できる見通しになれば、外国人材の受け入れを停止できる。結果として、外国人材の受け入れが、国内人材の雇用を侵食するような労働環境への影響や懸念を払拭した形となる。」(『建設通信新聞』2018.11.07)
●「厚生労働省が7日まとめた18年9月分の毎月勤労統計調査結果(速報)によると、建設業で働く人たちに6~8月に支払われた今夏のボーナス(1人当たり平均)は、前年比22.7%増の52万0341円となった。1990年の統計開始以降、過去最高額を更新。50万円を超えたのも初めてとなる。同省によると給与水準が高い大手企業がけん引したとみられる。」(『建設工業新聞』2018.11.08)
●「外国人労働者の受け入れ拡大に向けた、新たな在留資格『特定技能』による業種別の受け入れ見込み数が明らかになった。建設業は初年度である2019年度に5000-6000人、5年目までの累計で3-4万人の受け入れを見込む。この“推定値”が、実質的に受け入れ人数の上限として運用されることになる見通しだ。…前提となる人材不足の見込み数(14業種の合計)は現時点で58万6400人、5年後が145万5000人。建設業は現時点で2万人、5年後が21万人と試算した。受け入れ見込み数や人材不足の見込み数はあくまでも現段階での推計値。最終的に出入国管理法改正案の成立後に、政府が策定する分野別の運用方針で確定させる。出入国管理法の改正によって創設する新たな在留資格『特定技能』は深刻化する人手不足への対応が狙い。一定水準の技能や日本語能力を持つ外国人材を受け入れる仕組みとなる。一定の日本語能力と『相当程度の知識または経験』を、対象分野の所管省庁が定める試験などで証明した場合に取得できる『特定技能1号』は、即戦力となる外国人材に付与する在留資格。在留期間は5年。家族の帯同を認めないなどの制限を付す。一方で、より熟練した外国人材に付与する『特定技能2号』は、1号で入国した外国人が移行するケースなどを想定。在留期間などの制限がある1号に対して、家族の帯同も認める。在留資格の更新を続ければ、無期限で働き続けることが可能。事実上、在留期限を撤廃する形となる。」(『建設通信新聞』2018.11.15)
●「海外建設協会(蓮輪賢治会長)は、会員50社を対象とした2018年度上期(4-9月累計)の海外工事受注実績(1件1000万円以上、速報)をまとめた。受注総額は前年同期比9.7%増の1兆0477億4900万円で、調査開始以来、初めて1兆円を超えた。北米での受注件数増加や民間建築案件の受注増などが貢献した。アジアは8.1%減の5508億9200万円と減少したものの、北米が43.5%増の3402億0200万円と大幅に伸びた。これら2地域が受注額全体の85%を占めている。受注総額のうち、本邦法人は23.3%減の3005億9500万円、現地法人は32.6%増の7471億5400万円だった。受注額が100億円以上の大型案件は前年同期の14件から18件に増加した。受注額全体に占める割合は、52.6%のアジアが最も高く、北米は前年同期の24.9%から32.4%に拡大した。アジアは受注額、件数ともに減少する一方、北米は双方とも堅調に増加している。海建協の山口悦弘専務理事は『アジアは減少したものの依然として最大のシェアがあり、工場、住宅、商業施設を中心に旺盛な需要がある』と説明する。全体としても民間の建築案件の受注が増加傾向にある。地域別の受注額は、アジア、大洋州を除く6地域で増加した。中東・北アフリカは97.1%増の32億9400万円、アフリカはODA(政府開発援助)の増加により、898.8%増の177億7900万円と大幅な伸びを示した。」(『建設通信新聞』2018.11.05)
●「大和ハウス工業の業績拡大が続いている。8日発表した2018年4~9月期の連結決算は純利益が1314億円と前年同期比6%増え、同期間で9年連続で最高を更新した。ネット通販向けの物流施設や訪日外国人向け需要が旺盛なホテルの建設が好調だった。ただ堅調だった賃貸住宅事業が苦戦し、業績のけん引役だった主力事業の一角に影が差し始めている。19年3月期通期の業績予想は売上高が7%増の4兆500億円、純利益は2%増の2400億円と従来からそれぞれ500億円、30億円増額した。年間配当は110円(従来予想は107円)と前期から3円増やす。」(『日本経済新聞』2018.11.09)
●「大林組が12日発表した2018年4~9月期連結決算は、純利益が前年同期比1%増の488億円だった。同期間として5期連続で過去最高を更新した。首都圏の再開発案件を中心に手持ち工事を順調にこなし、保有株式の売却益など特別利益の減少を補った。売上高は2%増の9371億円だった。海外建築と国内土木を中心に、建設事業の売上高が増えた。米子会社が手がける米国のオフィスや住宅関連の建築事業の売上高が伸びた。営業利益は4%増の650億円だった。工事採算を示す完成工事総利益率(単体ベース)は前年同期と同じ12.9%と高水準を維持した。建築事業は0.3ポイント減の11.6%。前年同期に比べ着工から間もなく、利益計上まで時間がかかる工事が多かった。土木事業は1.1ポイント増の17.9%。最終段階で設計変更による追加工事を獲得する案件が多く、利益率を押し上げた。小寺康雄専務執行役員は同日の記者会見で『労務費は落ちついており、施工の合理化で十分吸収できる』と説明した。」(『日本経済新聞』2018.11.13)
●「大手・準大手ゼネコン26社の2019年3月期第2四半期決算が13日、出そろった。26社中19社の営業利益が前年同期を下回った。単体完成工事総利益(工事粗利)率も前年同期をピークに低下傾向にあるものの、17社が10%超を維持。資材・労務費の上昇といった利益下押し要因がありつつも、各社とも想定の範囲内で推移しており、下期にかけての大型工事や設計変更・追加工事の確保による利益積み増しを狙うなど、今期業績に関しては楽観的な見方が強い。」(『建設通信新聞』2018.11.14)
●「建設業の7割は後継者不在――。帝国データバンクがまとめた『全国後継者不在企業動向調査』で、こうした結果が出た。全産業の66.4%を大きく上回っており、特に中小建設企業の後継者不足が顕著になっている。調査は、2018年10月時点のデータベースと信用調査報告書ファイルをもとに、16年以降の事業継承の実態を分析可能な約27万6000社を対象に後継者の決定状況などを聞いた。この結果、建設業は前年比0.2ポイント増の71.4%が後継者不在と回答し、サービス業の71.6%に次いで7業種中2番目に高かった。従業員数別では、5人以下が79.4%で最も高く、6-20人以下が71.1%、21-50人以下が64.3%、51-100人以下が58.9%、100人以上が43.0%となった。従業員数が少ない建設企業ほど後継者の不在が顕著となっている。売上高別では、5000万円未満が84.1%と突出して高く、5000万円-1億円未満も79.5%、1億円-10億円未満も72.6%と高かった。売上高が高くなるほど不在率が下がる傾向にあるが、100億-1000億円未満は38.3%、1000億円以上が11.0%と、100億円を超えると不在率が低くなっている。特に1000億円以上は、全産業で最も低かった。建設業では、特に地方中小企業での後継者不在が課題となっており、廃業やM&A(企業の合併・買収)での企業売却を選択する企業も増えている。」(『建設通信新聞』2018.11.15)
●「東京都は7日、2019年度予算の各部局の要求額をまとめた。20年の東京五輪・パラリンピックに向けた整備費が拡大。一般会計の要求額は18年度予算より4.8%多い7兆3857億円となり、要求額として歴代2番目の規模となった。翌年に迫る大会に向け、本格的な準備に入る。」(『日本経済新聞』2018.11.08)