情勢の特徴 - 2018年11月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「財政制度等審議会(財政審、財務相の諮問機関)は20日、19年度予算編成に関する建議をまとめた。前年度の建議と同様に、社会資本整備に充てる公共事業費の重点課題として『生産性と安全・安心の向上実現』を設定。5月にまとめた『新たな財政健全化計画等に関する建議』に続き『社会インフラは概成しつつある』との考えを示した。建設業界からは相次ぐ自然災害や地域経済の活性化を踏まえ、公共事業費の安定的な確保を求める声が上がっている。予算の編成作業で政府がどう判断するか今後の動向が注目される。」(『建設工業新聞』2018.11.21)
●「2025年国際博覧会(万博)の開催国を決める博覧会国際事務局(BIE)総会が23日、パリで開かれ、日本時間24日未明に行われた加盟各国の投票で日本(大阪)が選ばれた。大規模な万博としては05年の愛知以来で、大阪では1970年以来55年ぶりの開催となる。」(『日本経済新聞』2018.11.24)
●「一人暮らしの高齢者が大都市で急増している。日本経済新聞が国勢調査を分析したところ、三大都市圏(1都2府5県)は2000年以降の15年間で2.1倍の289万人に達し、15年に初めて世帯全体の1割を突破した。単身高齢者は介護や生活保護が必要な状態に陥りやすい。社会保障の財政運営が厳しくなる懸念が強まり、在宅を軸に自立した生活を支える『地域包括ケアシステム』の構築が急務となる。」(『日本経済新聞』2018.11.26)

行政・公共事業・民営化

●「全国市長会(会長・立谷秀清福島県相馬市長)は、国の19年度予算編成・税制改正や今後の政策に対する提言を決議した。全国で大規模災害が相次いだ状況を踏まえ、国土強靭化や防災・減災を図る施策の集中展開を訴えた。甚大な被害が予測される南海トラフ巨大地震の発生に備え、既設堤防の耐震化などを実現するための財政措置を求めた。」(『建設工業新聞』2018.11.19)

労働・福祉

●「外国人技能実習生の失踪問題に関する法務省の調査結果によると、実習先から失踪した外国人技能実習生のうち、7割弱が動機として『低賃金』を挙げている。月給についても半数以上が『10万円以下』と回答した。安価な労働力として外国人実習生に依存している実態が改めて浮き彫りになった。政府は適正な給与水準を雇用者に徹底する構えだ。」(『日本経済新聞』2018.11.18)
●「新たな在留資格『特定技能』の創設を柱とする出入国管理法改正案の審議が衆議院法務委員会で始まった。深刻化する人手不足への対応のための法改正とあって、建設業界は基本的には“歓迎”の意思を示すものの、日本技能者との処遇差や需要減少時の対応などを懸念する声も多数、挙がっている。改正法案で創設する『特定技能』では、一定の日本語能力と『相当程度の知識または経験』を対象分野の所管省庁が定める試験などで証明した場合に取得でき、5年間の在留を認める『特定技能1号』と、1号で入国した外国人が移行するなど、より熟練した外国人材に付与し、家族の帯同や在留資格の更新による無期限の就労を認める『特定技能2号』に分けられる。大手ゼネコン幹部は『労務不足で事業が遅れないようにと、政府が考えてくれることはありがたい』と基本的には歓迎の意思を示す。ただ、政府が14日までに建設業の受け入れ見込み人数を2019年度に5000-6000人、5年目までの累計で3万―4万人とした推定値を踏まえ、大手ゼネコン幹部は『そもそも建設業界が、人手が足りない・確保しなければならない人数は1桁違う。その意味で、個人的には人手不足の解消になるとは思えない』(大手ゼネコン幹部)と指摘する。」(『建設通信新聞』2018.11.19)
●「大手建設会社が作業現場で働くシニアの技能労働者の支援を拡大している。大林組は米スタートアップと提携し、ロボット技術を活用して筋肉などの動きをサポートする産業用の機能性衣料の開発に乗り出す。竹中工務店は新たに65歳以上を対象に熟練の技術を持つ労働者を表彰する制度を設ける検討に入った。高齢化で人手不足が深刻になるなか、働き続けたいシニアの活躍を促す。」(『日本経済新聞』2018.11.21)
●「東京都鉄筋業協同組合(東鉄協、新妻尚祐理事長)は、過酷な状況下での作業が余儀なくされる夏場の完全週休2日を実現するための具体的な議論を始める。傘下組合員各社の夏季繁忙期の労働実態などを調査。全ての土日を休工とするために必要な工程や職人に支払う適正な単価の在り方を考える上で裏付けデータを取り、具体的な提言をまとめる。上部団体の全国鉄筋工事業協会(全鉄筋、岩田正吾会長)は、10月26日に金沢市で開いた秋季定例会で『全ての工事現場において7月から9月の全ての土日を休工する』ことを決議した。19日に東京都内で開いた東鉄協の定例会で、新妻理事長は決議の実現に向け『発注者であるゼネコンとの調整やわれわれの経営を支える環境が整っていないとできない』と指摘。工程や職人に支払う賃金、経営資源の確保といった条件を整えることが必要だとした。」(『建設工業新聞』2018.11.21)
●自由法曹団は19日、外国労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改定案の廃案を求める声明を発表した。128万人とされている国内の外国人労働者は、不安定雇用、社会保険未加入、増加する労働災害など、劣悪な労働環境にいると指摘。とりわけ外国人技能実習制度による受け入れ企業の70.8%で法令違反が認められていると強調している。今回の改定案はこれらの外国人労働者に対する人権侵害の横行を拡大するものと批判している。また、改定案は新制度の根幹部分を明記せずに法案成立後に省令等で定めるとしていること、政府の外国人技能実習生に関する調査で改ざんがあったことを指摘し、「欠陥法案で議論の前提を欠いている」として、来年4月からの新制度実施は到底認められず、改定案は廃案にすべきだと強調している。(『しんぶん赤旗』2018.11.21より抜粋。)
●「国土交通省は、直轄工事を対象に『週休2日』の一層の推進に力を入れる。『現場閉所』によって、受注する企業単位での休日の確保を促していく、従来の考え方だけでなく、労働者単位で休日を確保する『交代制』の導入を検討すべきと判断した。工事の種類や現場の実情に応じた弾力的な仕組みを用意することで、建設現場の『働き方改革』を強力に後押しする。」(『建設通信新聞』2018.11.22)
●「飛島建設は、働き方改革の一環として、2019年7月1日から『65歳定年制』に移行する。満65歳誕生月の月末まで総合職・地域職の身分を継続し、安心して働ける場を提供することで、豊富な経験と高いスキルを持つシニア人材(定年再雇用者)が活躍できる環境を整備する。また、柔軟な働き方による労働時間短縮や生産性向上を目指し、『在宅勤務制度』をことし10月から導入したほか、『フレックスタイム勤務制度』を19年2月1日から導入する。」(『建設通信新聞』2018.11.22)
●「建設業労働災害防止協会(建災防、錢高一善会長)が構築してきた『ずい道等建設労働者健康情報管理システム』の全容が22日までに明らかになった。トンネル工事に従事する労働者の健康情報や作業従事歴を一元的に管理できるのが特徴。労働者からの要請に応じて情報提供する。建災防は支部会員向けの説明会を開始しており、システムに登録する情報の収集を19年3月から始める。」(『建設工業新聞』2018.11.26)
●「衆院は27日夜の本会議で外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案を自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、参院に送付した。これに先立ち、立憲民主党など野党6党派は山下貴司法相の不信任決議案を提出。自民、公明などの反対多数で否決した。政府・与党は28日に参院で審議入りし、12月10までの国会会期内に成立する日程を描く。」(『日本経済新聞』2018.11.28)
●「厚生労働省がまとめた18年の賃金引き上げ実態調査結果によると、建設会社の94.0%が『1人平均賃金を引き上げた・引き上げる』と回答した。1999年の調査開始以降、過去最高を記録した前年から3.1ポイント下がったものの、2008年と並び過去2番目の高水準となった。1人当たりの賃上げ幅は15年(7370円)に次いで過去4番目に高い7361円だった。」(『建設工業新聞』2018.11.29)

建設産業・経営

●「建設産業専門団体連合会(建専連、才賀清二郎会長)は15日、東京都港区のニッショーホールで18年度全国大会を開催した。通算19回目となる大会では、『働き方改革に取り組む専門工事業』をメインテーマに掲げ、働き方改革に積極的に取り組み、変化に対応した夢と希望が持てる産業を目指した建設専門業の役割をアピールした。才賀会長は、働き方改革を実現するためにも技能労働者の直用化、月給制に取り組むなどとした決議を5月の総会で行ったことを紹介。その上で『建設専門業界を代表する政策集団として、横断的課題の解決と健全な業界を目指して事業を展開する』ことを改めて訴えた。」(『建設工業新聞』2018.11.16)
●「大和ハウス工業は下請け企業など取引先への代金支払いをすべて現金に一本化する。現在、支払の約4割は手形決済だが、2019年4月から現金に切り替える。取引先の資金繰りの改善が狙い。特に人手不足に悩む中小の下請け企業の経営を支援することで取引先を囲い込み、施工品質の維持などにつなげる。」(『日本経済新聞』2018.11.21)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「地震で土地が液状化する可能性を示す『液状化マップ』を作成している全国の自治体は366市区町村で、全体の約2割にとどまることが15日、国土交通省や内閣府のまとめでわかった。マップの作成は義務づけられておらず、努力義務にとどまることが要因とみられる。専門家は『自治体は液状化の情報について積極的に発信すべきだ』と指摘する。」(『日本経済新聞』2018.11.16)
●「環境省は20日、東京電力福島第1原子力発電所事故後、放射線量が高く立ち入りが制限されている福島県葛尾村内の『帰還困難区域』に住民が再び住める区域を設けるための除染工事を始めた。これにより、区域の整備計画を定めた県内6町村すべてで除染工事が動き出した。葛尾村は2022年春をめどに避難指示の一部解除を目指す。」(『日本経済新聞』2018.11.20)
●東京電力福島第1原発事故をめぐり、避難指示区域に指定された福島県浪江町の町民約100人が、国と東電を相手に慰謝料の増額などを求め、福島地裁に提訴することが18日、分かった。この日、設立総会を開いた原告団が明らかにした。原告団らによると、27日に提訴する予定で、今後、町民約2000人が訴訟に加わる見通しという。浪江町では2013年、慰謝料の増額を東電に求めて裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てた。原発事故のADRでは最大規模となる約1万5700人の町民が参加。原子力損害賠償紛争解決センターは14年、「1人当たり月額10万円の慰謝料を、2年に限り一律15万円に増額」などの和解案を提示したが、東電が拒否。今年4月に和解仲介が打ち切りとなっていた。原告団の鈴木正一団長(68)は「東電が真摯に対応せず、国も傍観者でしかなく、裏切られた。われわれが訴える道はこれしかない」と語った。(『しんぶん赤旗』2018.11.20より抜粋。)」
●東京都が10月に開場を強行した豊洲市場(江東区、東京ガス工場跡地)の地下水から、最高で環境基準の140倍の発がん性物質ベンゼンが検出されたことが19日、都の調査で分かった。猛毒のシアンやヒ素とともに、三つの街区全域にわたって高濃度の汚染物質の検出が続き、汚染が依然として深刻な状態にあることが浮き彫りになった。(『しんぶん赤旗』2018.11.21より抜粋。)

その他