情勢の特徴 - 2019年2月後半
●「政府は15日、中小企業強靭化法案(中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等一部改正案)を閣議決定した。自然災害の頻発化や経営者の高齢化により、多くの中小企業の事業活動の継続が危ぶまれている現状を踏まえ、中小企業の災害対応力向上と円滑な事業継承支援に関する措置を盛り込んだ。」(『建設通信新聞』2019.02.18)
●「国際協力機構(JICA)は、日本の新幹線方式を採用するインド初の高速鉄道建設事業(ムンバイ~アーメダバード間、総延長約500キロ)のうち、難工区の一つ『バドーダラ駅付近工区』のプレ・コンストラクションサービス業務の委託先に鉄建建設、IHIインフラシステム、大林組、JFEエンジニアリングの4社を選定した。プロポーザルによる選定手続きでは17年10月の公示、18年4月の再公示ともに企業の応募がなく、JICAが4社と随意契約した。鉄建建設とIHIインフラの2社が主担当となる。案件名は『インド国ムンバイ-アーメダバード間高速鉄道建設事業 バドーダラ駅付近工区におけるプレ・コンストラクションサービス(有償勘定技術支援)ステージⅠ』。契約金額は4億3557万2640円(税込み)。再公示時点の契約予定期間は21年4月下旬まで。」(『建設工業新聞』2019.02.20)
●「国土交通省は道路分野で日本企業のインフラ輸出支援策を列挙した『海外展開戦略』をまとめた。アジアで相次ぐPPPによる高速道路の新規整備計画の照準に、官民や業種の枠を超えたオールジャパン体制で大型案件の形成と受注を目指す。建設会社やメーカーなどが持つ施工時の高度な技術力に加え、資金協力や完成後の運営・維持管理に対する技術支援も包括して輸出する方針だ。」(『建設工業新聞』2019.02.20)
●「都道府県の19年度予算案が20日までに出そろった。11道県が知事選に伴う骨格編成または暫定予算となった。普通建設事業費などを含む投資的経費の総額は8兆0549億円。災害の復旧・復興に加えて、政府の国土強靭化緊急対策を受けた取り組みに力を入れる自治体が目立ち、公共事業費・災害復旧費の合計値となっている福岡県を除くと、前年度を下回るのは13道県にとどまった。」(『建設工業新聞』2019.02.21)
●「公正取引委員会(公取委)が今国会に提出する独占禁止法改正案の概要が21日までに明らかになった。入札談合などの違反行為を公取委に自主申告した場合に適用する課徴金の減免制度を見直すのが柱。減免対象の企業数の上限を撤廃し、実態解明への協力度合いに応じ減額幅も拡大する。企業が弁護士に相談した法的意見について秘密を保護する仕組みも整える。3月にも提出し、今国会での成立を目指す。」(『建設工業新聞』2019.02.22)
●「地域の建設企業を中心に影響を与えることから注目が集まる地方自治体予算のうち、自治体全体の公共事業関係分野歳出見込総額は、政府が国会に提出した自治体の歳入と歳出の見込額を示す2019年度地方財政計画によると、通常収支分と東日本大震災分を合わせて前年度比10.8%増の15兆1988億円となった。通常収支分の公共事業関係分野歳出見込額は、11.1%増の14兆3644億円。うち投資的経費は、12.0%増(1兆3973億円増)の13兆0153億円となっている。内訳は、国の直轄事業に対する自治体負担額が13.5%増の6368億円、国の予算に計上した国庫補助負担金などの額をベースに算定した公共事業費(補助事業費)が19.5%増の6兆2709億円、国庫補助負担金を伴わない単独事業費は、5.2%増の6兆1076億円となった。投資的経費とは別計上となる公共土木インフラや公共施設などの維持補修費は、3.2%増(412億円増)の1兆3491億円を計上した。投資的経費は、過去減り続けていたが、14年度に13年度の見込額を上回って増加に転じ、一部横ばいがあるものの、増加傾向にある。ただ、通常収支分歳出見込総額のうち、投資的経費の割合は、05年度には23.5%を占めていたが、11年度以降は13%程度で推移。19年度は歳出見込総額89兆5930億円の14.5%が投資的経費となった。」(『建設通信新聞』2019.02.26)
●「土木学会と国際協力機構(JICA)は26日、道路アセットマネジメントの海外展開と人材育成で覚書を交わすと発表した。道路や橋を効率的に維持管理する手法や人材育成でJICAが持つノウハウと、組織の裾野が広く、研究成果の普及・展開も得意とする土木学会の知見を生かし、途上国を支援し、若手土木技術者の人材育成に役立つ場を提供する。3月5日に東京都内で首脳が覚書を交わす。」(『建設工業新聞』2019.02.27)
●「国土交通省は、建設産業にとって最大の課題となっている担い手の確保・育成に力を入れる。切り口の1つとして、建設現場で働く人々にとっての“やりがい”を高めていく視点を重視。その延長線上に従事者にとって『魅力ある建設現場』の実現を描く。施策の融合・連携など“オール建設産業”で協働できるプラットフォームの構築を検討する方針も示す。」(『建設通信新聞』2019.02.21)
●「厚生労働省は、昨年の臨時国会で成立した改正水道法に基づく、水道コンセッション(運営権付与)の実施に向けた検討を開始した。26日に『水道施設運営等事業の実施に関する検討会』(座長・石井晴夫東洋大経営学部教授)の初会合を開催。検討会では、水道施設運営権の設定の許可基準や許可申請時の実施計画書の記載内容、事業実施の際に自治体が検討すべき事項について、ガイドラインとしてまとめ、今夏に公表する。…ガイドラインの項目は、▽水道施設と業務の範囲▽水道施設運営権の存続期間▽水道事業者によるモニタリング▽災害その他非常の場合における水道事業の継続のための措置▽経営難により水道施設運営継続の継続が困難となった場合の措置▽水道施設運営権者の経常収支▽実施契約終了時の措置▽運営権者の適格性▽利用料金(設定方法・改定)▽水道の基盤の強化――で構成する。」(『建設通信新聞』2019.02.27)
●「経団連が2021年卒の学生から『採用選考に関する指針』を廃止することを踏まえ、建設産業の各企業が採用スケジュール見直しなどの検討を進めている。日刊建設通信新聞社が大手・準大手ゼネコン、道路舗装会社、設備会社、コンサルタント会社、建築設計事務所、メーカーの計128社に実施した『人材採用調査』によると、全体の半数近い61社が採用スケジュールなどを見直す意向を示した。多くの企業が、新たに政府が作成する就活ルールや他社の動向を踏まえて新たなスケジュールをまとめる考えだが、採用活動の早期化を検討する企業も出ている。調査は、1月上旬から2月初旬にかけて、大手・準大手ゼネコン31社、道路舗装会社11社、設備会社29社、建築設計事務所18社、メーカー20社に対してアンケート形式で実施した。経団連の“就活指針”見直しへの対応について『新卒一括採用を見直す』『新卒採用活動のスケジュールを見直す』『現行どおり』の3択とした。全体では、一括採用見直しが2社、スケジュール見直しが59社、現行どおりが47社、回答なしが20社となった。…ゼネコンでは、半数以上に上る21社がスケジュールの見直しを選択。政府ルールや他社の動向を注視する企業が多いものの、『大筋では変わらないが、他社の動向によって1-2ヵ月ほどの前倒しを想定』(東急建設)、『全体的な早期化を検討』(東鉄工業)、『スケジュールを早期化』(日本国土開発)と回答する企業もあった。あわせて、鉄建建設と日本国土開発は、インターンシップを強化する意向を示した。」(『建設通信新聞』2019.02.18)
●「国土交通省は、技能実習に関する現行の受け入れ基準を見直す。焦点となるのは新たな在留資格『特定技能』の運用で、受け入れ企業などに求める『建設キャリアアップシステム』の活用。技能実習生の受け入れと、その修了者を対象とする『外国人建設就労者受入事業』という、既存の枠組みでも建設キャリアアップシステムへの登録を義務化する方針だ。」(『建設通信新聞』2019.02.19)
●「厚生労働省がまとめた2018年(1-12月)の労働災害発生状況(速報、2月7日時点)によると、建設業での死亡者数は、前年同期比(前年同時点比)0.3%減(1人減)の303人となった。1月7日時点の速報値では、286人と300人を下回っていた。16年は294人(確定値)と過去最少で、初めて300人を下回ったが、建設業での労災による死亡者数は2年連続して300人台となることが固まり、近年の確定値までの推移から、確定段階では310人台になる模様だ。17年の確定値は323人だったため、死亡者数は2年ぶりに減ることになる。」(『建設通信新聞』2019.02.19)
●「建設産業界の企業で定年延長を検討する動きが広がっている。日刊建設通信新聞社が大手・準大手ゼネコン、道路舗装会社、設備会社、コンサルタント会社、建築設計事務所、メーカーの計128社を対象に実施した『人材採用調査』によると、3割強に当たる45社が定年の延長を『検討している』と回答した。2019年度から延長実施を決めている3社と既に定年齢を60歳超に設定している15社を合わせると、定年制見直しに着手した企業は半数に上る。」(『建設通信新聞』2019.02.22)
●「東京電業協会(江川健太郎会長)、東京都電設協会(牧野光洋会長)の両団体は、『建設業の社会保険加入及び中長期的な担い手確保の取組みに係る実態調査』結果を、20日の東京都財務局とそれぞれの意見交換会で示した。東電協は会員企業128社のうち、95社が回答した。会員企業の社会保険加入状況は、前回の2016年7月時調査同様、健康、厚生年金、雇用のすべてで100%だった。1次下請けは、いずれも前回調査から微増し、健康96%、厚生年金96%、雇用95%となった。2次下請けに対する社会保険の加入指導は『1次を通じて指導』が61%と最多で、『直接指導』17%と続く。…都電設協は会員企業86社のうち40社が回答した。会員企業の社会保険加入は、前回の16年度同様、健康、厚生年金、雇用のすべてで100%だった。1次下請けはいずれも前回調査から増加し、健康76%、厚生年金74%、雇用73%となった。2次下請けに対する社会保険の加入指導は『2次下請なし』15社、『1次下請が指導』が10社と続く。」(『建設通信新聞』2019.02.22)
●「中小建設企業の採用活動で苦戦が続いている。全国中小建設業協会(全中建、豊田剛会長)が実施した会員の実態調査アンケートによると、18年度に新規に正社員を『採用していない』と回答した企業の割合は技術者が54.2%、技能者で74.3%だった。『採用した』と回答した企業のうち、採用人数が『1人』の企業は技術者が65.8%、技能者が84.2%と多くを占めている。技術者、技能者とも10~20代の若手の人材が確保できていない実態も明らかになった。…新規採用のルートについても質問した(複数回答可)。ハローワークが27.0%で最多。工業高校の新卒者は19.6%、縁故採用は18.8%、大学新卒者は12.5%、工業高校以外の新卒・第二新卒者は11.3%、専門学校新卒者は10.3%、建設業振興基金らの緊急育成事業などは0.5%と続く。新卒者と第二新卒者の合計は53.7%にとどまり、若年層の採用が進んでいない実態が浮き彫りとなった。」(『建設工業新聞』2019.02.22)
●「労務単価は、法定福利費(個人負担分)を含む基本給相当額に、基準内手当や臨時の給与、実物給与を加えた労働者(本人)が受け取るべき賃金(1日8時間当たりの日額換算値)であって、法定福利費(事業主負担分)や労務管理費、安全管理費など事業主が負担すべき賃金以外の必要経費は含まれていない。国土交通省は、労務単価が労働者の雇用に伴って必要となる賃金以外の経費(事業主が負担すべき必要経費)を含んだ金額と誤解されているケースがある点に着目。下請契約で必要経費分の値引きを強いられる、あるいはその結果として労働者に支払われる賃金が低く抑えられているとの指摘もあることから、参考値として『労務単価(賃金)+賃金以外の必要経費』の金額も示す。」(『建設通信新聞』2019.02.25)
●「国土交通省は22日、公共事業の積算に使う新しい公共工事設計労務単価と設計業務委託等技術者単価を発表した。労務単価は全国・全職種の加重平均で4.1%(単純平均3.3%)、技術者単価は全職種の単純平均で3.7%それぞれ引き上げ、3月1日から適用する。労務単価、技術者単価とも単価公表を開始した1997年度以降で最高値となった。」(『建設工業新聞』2019.02.25)
●「建設産業にとって最大の課題となっている若年層の入職者の確保。国土交通省がまとめた、最新の『建設業就業者の現状』をみても、技能労働者を中心に就業者の高齢化が進展している状況に変わりはない。労働力人口の減少に向き合う中、これからの建設産業を支えていく若年層を中心とした『担い手』の確保・育成は欠かすことができない。2018年における技能労働者数や、その年齢別の構成比といった建設業就業者の現状は、総務省の『労働力調査』(18年の平均)をベースに算出した。全体の傾向を示す、建設業就業者数は前年から5万人の増加となる503万人(前年比1.0%増)。全体としての就業者数が増加する一方で、占める割合が高い技能労働者数は前年の331万人から328万人(前年比0.9%減)に減少した。特筆すべきは、就業者の年齢構成比。就業者に占める55歳以上の割合は前年の34.1%から34.8%(前年比5万人増)に上昇。高齢化が確実に進展している状況だ。実際に就業者の約6割を占める技能労働者(328万人)の年齢構成比は、65歳以上の50.9万人を筆頭に、55-59歳の31.3万人、60-64歳が32.0万人と、55歳以上の高齢者層(114.2万人)が全体の3分の1を占めるという“高齢化の構図”は変わっていない。とりわけ60歳以上(82.8万人)が全体の4分の1を占める一方で、これからの建設産業を支える29歳以下の若年層は36.5万人と全体に占める割合はわずか11.1%に過ぎない。この数字だけみても、若年層を中心とした入職者の確保・育成はまさに喫緊の課題と言えそうだ。」(『建設通信新聞』2019.02.26)
●「新たな在留資格『特定技能』による外国人材の円滑かつ適正な受け入れを目的に、3月の立ち上げが予定される『一般社団法人』の設立に向けた準備作業が加速している。建設業界が“協働”するこの団体の設立に専門工事業16団体が参画を見込んでいることが分かった。トップリーダーとして、今後の立ち上げや団体運営でも積極的な取り組みが期待されることになる。」(『建設通信新聞』2019.02.28)
●「公共発注機関の工期設定に不満を抱えている建設企業は8割―。全国中小建設業協会(全中建、豊田剛会長)が実施した会員の実態調査アンケートによると、国と地方自治体の工事で工期が『適正でない』と考えている企業の割合は全体の80.5%だった。発注者に対し、発注の平準化や契約後速かに着工できる事前準備を求める意見が多く寄せられた。」(『建設工業新聞』2019.02.20)