情勢の特徴 - 2019年3月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●経済協力開発機構(OECD)がこのほど明らかにした調査結果で、先進国の多数が富裕層への課税を強めて福祉国家をつくることを支持していることが分かった。…調査した21カ国すべてで、「政府は貧困層を支援するために富裕層にいま以上に課税すべきか」との問いに、過半数の人が「はい」と答えた。「はい」は平均で68%。ポルトガルとギリシャがほぼ80%で最高だった。2万2000人に調査した今回の結果は、政府の社会福祉政策への大きな不満も示した。「必要な場合に公的手当を容易に受けられる」という人は20%にとどまる一方、56%が「公的手当を受けるのは難しい」と考えている。(『しんぶん赤旗』2019.03.22より抜粋。)
●国民が納めた年金保険料の運用で過去最大の14兆8039億円の損失―。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2月1日に発表した2018年10~12月期の運用実績。 GPIFは厚生年金と国民年金の積立金150兆円を運用している。損失は時価評価によるもので、売却によって確定したものではないが、厚生年金の給付総額41兆円(17年度)の36%にあたる規模。もともとGPIFは損失の危険性が低い債券(国債)を中心に積立金を運用していた。しかし、…14年10月から株式の比率を倍増した。国内債券の比率を60%から35%に大幅に引き下げ、国内株式と外国株式をそれぞれ12%から25%に上げて内外株式の合計で24%から50%に、外国債券を11%から15%に引き上げた。低リスクの資産を大きく減らして株式投資を倍増したことが、米中貿易摩擦や英国のEU(欧州連合)離脱問題による株価下落で損失を膨張させた。(『しんぶん赤旗(日曜版)』2019.03.24より抜粋。)
●「2019年10月の消費増税を前提とした19年度予算が27日の参院本会議で成立した。一般会計総額は過去最大の101兆4571億円で、ポイント還元制度など個人消費を下支えする2兆280億円の増税対策を盛った。…2兆円の増税対策はクレジットカードや電子マネーなど現金を使わずに買い物をした人に最大5%のポイントを還元する制度が柱。システム改修支援なども含め2798億円の国費を確保した。2歳以下の子どもがいる世帯と低所得層向けのプレミアム付き商品券に1723億円、住宅購入支援に2085億円をそれぞれ計上。景気の押し上げ効果が高いとされる防災・減災対策に1兆3475億円を充てる。」(『日本経済新聞』2019.03.28)
●「国土交通省は、10月1日の消費税率の引き上げに伴う直轄工事等における取り扱いを決めた。指定日となる4月1日を前に、26日付で各地方整備局に通知した。契約書に付則として付け足すことで、受注者に対する周知も促していく方針だ。原則として、施行日となる10月1日より前に引き渡しが行われる工事であれば、消費税率は現行の8%となる。引き渡しが施行日より後であっても、指定日である4月1日より前に契約していれば、従前の消費税率(8%)を適用する。一方で、指定日である4月1日より後に契約して、施行日である10月1日より後に引渡しが行われるケースは消費税率10%を適用。指定日である4月1日より前に契約した工事や業務でも、4月1日以降に設計変更(増額)が行われた場合は、設計変更に伴う“増額分”にのみ10%を適用する。4月1日より後に契約して、施行日である10月1日より前に引き渡しを迎える工事や業務は従前の8%が適用されるが、仮に工期の延伸などで引き渡しが10月1日より後になった場合は、その工事や業務の全額に対して10%が適用されることになる。4月1日より後に契約して、施行日の10月1日より後に引き渡しを行う工事や業務(10%を適用)のうち、10月1日より前に支払われる前金払いや部分払いは従前の8%で支払う。ただ、施行日である10月1日以降の部分払いや完成時の支払いで、その差額(2%分)を足して支払う。」(『建設通信新聞』2019.03.28)

行政・公共事業・民営化

●「政府は15日、建設業法等の改正案を閣議決定した。働き方改革を支える『工期』へのアプローチや、社会保険の未加入企業に許可や更新を認めない踏み込んだ対応を盛り込んでいる点が特徴となる。1971年に建設業が許可制に移行して以降、許可制度の本格的な見直しを行うのは初めて。まさに建設業に関連する制度インフラの“再構築”ということになりそうだ。…最大の課題となっている『担い手の確保・育成』を重視。5年後に適用される建設業への時間外労働の上限規制を見据える中で、適正な工期の設定の推進など、懸案となっている長時間労働の是正に対する制度的な対応を打ち出す。…再構築を象徴する仕組みが、これまでの建設業法にない『工期』へのアプローチを盛り込んでいる点だ。現行の建設業法に『不当に低い請負代金の禁止』が規定されていることを参考に、注文者(発注者)の責務として『著しく短い工期の禁止』を新たに追加。中央建設業審議会が作成・勧告する『工期に関する基準』を前提に直接的な規制に乗り出す。…社会保険への加入の徹底として、第7条に規定する建設業の『許可の基準』を見直す。省令で定める基準に社会保険への加入を組み込む(要件化)ことで、未加入企業に建設業の許可・更新を認めない仕組みを構築。許可業者からの未加入企業(不良・不適格業者)の排除に踏み出す。限られた人材の効率的な活用を促す、技術者制度の見直しも行う。現場ごとに専任が求められる監理技術者の『兼任』を可能とする仕組みや、一定の要件を満たす場合に主任技術者の配置を不要とすることができる『専門工事一括施工制度』の創設など、現場の生産性を高めるための規制の合理化にも取り組む。第7条の許可の基準にあった経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者としての要件(許可を受けようとする業種に関する5年以上の経営業務の管理責任者としての経験=経営業務管理責任者要求)も撤廃。経営層の高齢化に対する中小企業の課題を解消することで、地域建設業の持続性を確保していく。」(『建設通信新聞』2019.03.18)
●「国土交通省は激甚な自然災害が頻発していることを踏まえ、応急対応力を強化する。4月1日付で全地方整備局に防災専属の組織を設置。部長級の新職『統括防災官』をヘッドに約20人規模の体制を敷く。災害時に緊急災害対策派遣隊(テックフォース)の派遣調整や指揮命令だけでなく、平常時には自衛隊など関係機関との連携体制の構築などを行う。万が一の災害に備え、全国どこでも迅速かつ円滑な応急対応が可能な体制を整える。」(『建設工業新聞』2019.03.22)
●「国土交通省は、直轄工事における低入札価格調査基準(調査基準価格)を見直す。4月1日以降に入札公告する案件から、予定価格の70-90%となっていた従来の設定範囲を変更。設定範囲の幅を『75-92%』に引き上げる。…会計法の下にある予算決算および会計令第85条に規定される低入札価格調査は、応札者の入札価格が一定の基準を下回る場合に、その履行可能性を確認する仕組み。現行は工事が予定価格の90%、測量業務が80%となっている設定範囲の上限値を引き上げることで、従来の算定式による“上限拘束”を打破。…『直接工事費×0.97』『共通仮設費×0.90』『現場管理費×0.90』『一般管理費等×0.55』の合計額に1.08を乗じる調査基準価格の算定式は変えない。17年4月の直接工事費の引き上げ(0.95から0.97に変更)など、経年的に算入率の引き上げを行ってきた結果として、この算定式で導き出す調査基準価格の約4割が設定範囲の上限値である予定価格の90%を越えていることが判明。相当数の案件が設定範囲の上限に拘束されている現状から、上限値の引き上げが必要と判断した。」(『建設通信新聞』2019.03.27)

労働・福祉

●「政府は15日、外国人労働者の受け入れを4月から拡大することに合わせて政省令を公布した。4月から導入する新たな在留資格で働く外国人については、原則として預貯金口座に報酬を支払い、定期的な報告を地方出入国在留管理局にするよう企業に義務付ける。従来の制度に比べて政府が雇用実態を監視しやすくなるため、外国人労働者の保護につながる。…賃金が適切に支払われていない場合の政府の対応は従来の技能実習制度と同じだ。地方出入国在留管理局と労働基準監督署が企業に指導・助言をして、それでも守らない場合は企業に罰金を科し、外国人の受け入れを5年間停止する。ただ、新たに口座振り込みや賃金台帳の提出などを求めたことで、政府のチェック機能は高まる。企業が監視の目を意識して不適切な行為を抑えると期待している。外国人の生活支援も強化した。政省令では外国人労働者の生活や仕事、日本語の習得などをどう支援するかの計画づくりを企業に求めた。外国人の相談に乗ったり手続きを手助けしたりする『支援担当者』と、支援計画の実施状況を確認し指導する『支援責任者』を企業は選任する。現場の監督者や外国人と定期的に面談する。…自治体の受け入れ体制の整備も急務だ。政府は全国100カ所の自治体で外国人労働者の一元的な相談窓口を設置する計画だ。しかし法務省によると、15日時点で窓口の設置のための交付金を応募した自治体は全国で37にとどまる。4月の制度開始時点で対応できる人材を用意できない自治体が多いとみられている。」(『日本経済新聞』2019.03.16)
●「日本の賃金が世界で大きく取り残されている。ここ数年は一律のベースアップが復活しているとはいえ、過去20年間の時給をみると日本は9%減り、主要国で唯一のマイナス。国際競争力の維持を理由に賃金を抑えてきたため、欧米に劣後した。低賃金を温存するから生産性の低い仕事の効率化が進まない。付加価値の高い仕事への転換も遅れ、賃金が上がらない。『貧者のサイクル』を抜け出せるか。…デフレ不況と円高、過剰な設備と人――。1990年代後半から、製造業などは賃下げを含めた賃金抑制に動き、気がつけば日本の賃金は世界から大きく取り残された。経済協力開発機構(OECD)は残業代を含めた民間部門の総収入について、働き手1人の1時間あたりの金額をはじいた。国際比較が可能な17年と97年とを比べると20年間で日本は9%下落した。主要国で唯一のマイナスだ。英国は87%、米国は76%、フランスは66%、ドイツは55%も増えた。韓国は2.5倍。日本の平均年収は米国を3割も下回っている。日本は金融危機に直面した97年をピークに減り始め、12年までに12%減。大企業は定期昇給などで1%台の賃上げを続けたが、非正規社員も増え、1人あたりの時給は減った。時給の最低水準を定めた『最低賃金』はこの3年間で3%台の上げが続く。ただ、対象はパート労働者ら一部にとどまり、全体を押し上げるには至らない。その背景には労働生産性(付加価値)の低迷がある。1人の働き手による1時間当たりの成果を示す生産性の上昇が賃上げには必要とされる。長時間労働がはびこった日本はこの半世紀、先進7カ国のなかで最下位。OECDによると17年は47.5ドルと前年から1%ほど増えたが、加盟国36カ国で20位という低位置は変わらない。米国(72ドル)、ドイツ(69ドル)に水をあけられている。…小西美術工芸社のデービッド・アトキンソン社長は…低賃金を温存するから生産性の低い仕事の自動化・効率化が実施されず、付加価値の高い仕事へのシフトが進まない。その結果、生産性が上がらずに賃金も上がらない。いわば貧者のサイクルに日本は陥っているというわけだ。」(『日本経済新聞』2019.03.19)
●「勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済事業本部(建退共、稗田昭人本部長)は、18日に東京都内で開いた運営委員会・評議員会で財務状況を報告した。2019年度は、中小企業退職金共済法で定められた5年に1度の財政検証の年に当たる。財務状況報告では、今後5年間で毎年約81億円の赤字が見込まれると試算した。安定的な収入源である自家運用と国内債券の運用収入が金利の低下に伴い減少するのが要因で、予定運用利回りと資産構成の見直しが必要とした。…現在の予定運用利回りは3.0%、掛け金日額は310円。過去2回の利回り引き下げ時にはいずれも掛け金日額の引き上げを同時に実施している。6月の運営委員会・評議員会でたたき台を示す。財務検証は労働政策審議会(労政審、厚生労働相の諮問機関)で審議され、予定利回りなども議論を経て決定される。1月末時点の建退共制度の概況は、共済契約者が17万2032カ所(前年比0.5%増)、被共済者は223万5456人(0.7%減)となった。18年4月~19年1月の掛け金収納額は457億7100万円(前年同期比1.6%増)、退職金支払総額は416億3700万円(0.3%増)で収納が支払いを上回る。資産の運用残高は1兆0127億円(0.0%減)となっている。18年4月~19年1月に退職金を支払ったのは4万6153人(1.0%減)、平均額は90万2000円(1.3%増)。最高支給額は昨年4月の1264万7000円で、過去最高だった11年10月の1099万円を上回った。」(『建設工業新聞』2019.03.19)
●「国土交通省は、18日に日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会の建設業4団体との意見交換会を実施した。最大の課題となっている働き方改革の推進へ、各団体に率先的な対応を求めた。…石井啓一国交相は、全国平均(単純平均値)で3.3%の上昇となった、新たな公共工事設計労務単価に言及。各団体のトップに直接、技能労働者の賃金水準の確保に向けた積極的な対応を要請した。…これまでも労務単価の引き上げを行うたびに技能労働者に対する適切な賃金水準の確保を要請してきたが、技能労働者の賃金はいわば元下の“民民契約”に委ねられているというのが実情。仮に公共工事の発注者が引き上げられた労務単価を用いて、適正な予定価格を設定したとしても、その効果が労働者にまで行き渡るかどうかは、受注者の対応次第という側面もある。だからこそ、発注者から元請けに支払われた対価が、元請けから1次下請け、1次下請けから2次下請けにきちんと染み渡っていく“好循環の仕組み”を建設産業が自らの手で取り戻していく必要がある。」(『建設通信新聞』2019.03.20)
●「日本型枠工事業協会(三野輪賢二会長)は26日、4月から本格運用がスタートする『建設キャリアアップシステム』についての会員アンケートの結果をまとめた。事業者・技能者登録を済ませた企業・技能者が多数いた一方、会員の協力会社(2次下請け)を含め約1万人の技能者が今後、登録を始める予定だ。…アンケートは、会員660社に対し2月末時点の事業者・技能者の登録状況を聞いた。有効回答数は、37都道府県の257社だった。 会員(1次下請け)の事業者ID取得済みは45%に上る116社で、申請済みや申請書類作成中、これから申請開姶を含めると86%が申請する意思を示した。技能者情報登録は、会員直用の技能者で970人が登録作業を完了した。これから申請作業を開始する予定の技能者数は2559人だった。2次下請け以下の技能者登録は、会員の約6割が2次以下の作業を代行する考え。技能者登録ができない2次下請けの作業を1次下請けが代行する予定の技能者数は6120人で、2次下請けに申請作業を任せる場合の申請予定者数は4537人だった。」(『建設通信新聞』2019.03.27)
●「27日の『建設キャリアアップシステム運営協議会』の総会に、2019年度の事業計画などが報告された。本格運用を目前に控えた現段階での登録者数(18年度の登録者数・概数)は技能者が約2万人、事業者が約1万社。技能者登録が100万人、事業者登録が13万社という当初の目標値をベースに、初年度の技能者登録『98万人』(累計100万人)、事業者登録『12万社』(累計13万社)の取り組み目標を設定した。システムの安定的な稼働を目的にセキュリティーの強化や、利用者の操作性の向上に向けたブラッシュアップを実施。機能の追加として、技能者の能力評価や外国人材の受け入れ拡大といった国策への対応(システムの追加的な開発・改修)も図っていく。」(『建設通信新聞』2019.03.28)
●「4月から新たな在留資格『特定技能』による外国人材の受け入れがスタートする。今後5年間で最大4万人を上限に外国人材の受け入れを行う『建設分野』を所管する国土交通省は、適正かつ円滑な受け入れを目的に建設産業の関係団体が設立する『一般社団法人建設技能人材機構』と連携して、建設産業にとって“必要な外国人材”の確保に取り組んでいく。…建設分野は、5年後の建設技能者を約326万人と推計。必要となる労働力(約347万人)に対する不足分(約21万人)に毎年1%程度(5年間で約16万人程度)の生産性の向上と、追加的な国内人材の確保(5年間で約1-2万人程度)に取り組んでもなお、不足する4万人を受け入れの“上限”に設定した。受け入れる外国人材に求める基準として、即戦力となる『特定技能1号』に技能検定3級に相当する技能水準と日本語検定N4相当の日本語能力を求める一方、より熟練した技能を持つ外国人材に付与する『特定技能2号』は技能検定1級に相当する技能レベルと建設現場での班長としての実務経験(職長としてのマネジメント能力)を設定した。受け入れ企業などに求める独自の基準(受け入れ計画の認定基準)として、日本人と同等以上の報酬予定額の設定や月給制・固定給といった安定的な賃金の支払い、技能の習熟度合いに応じた昇給などを盛り込んでいる点も特徴だ。特に適正な賃金の支払いなど、実際の運用を支えるツールの1つとして『建設キャリアアップシステム』の活用を明記。特定技能によって入国する外国人や、その外国人材の受け入れ企業に登録・活用の“義務”を課す。…『特定技能』外国人の適正かつ円滑な受け入れを支える仕組みとして、建設業界の“協働”によって立ち上げる『建設技能人材機構』が果たすべき役割も大きい。4月1日に設立する、この新法人は建設分野における共同ルール(行動規範)の策定や、多数の専門職種に分かれている業界団体の調整、外国人材の入国前後のサポート(海外の現地機関と調整、外国人の応募・試験・選考、受入企業に対する人材紹介等)などを一体的に行う。建設産業として『必要な人材を確保する』という本来の目的を果たすためのプラットフォームとしての機能を担うことになる。」(『建設通信新聞』2019.03.28)
●「主要ゼネコンが採用した新卒社員の離職率が低下傾向にある。日刊建設工業新聞社の調査に回答した31社のデータによると、15年度新卒社員の3年以内離職率は『10%未満』が最も多く、全体の約4割を占めた。13年度入社の離職率は『10%以上20%未満』という回答が4割を超え最多だったが、14年度入社から離職率の低下傾向が顕著になっている。」(『建設工業新聞』2019.03.29)
●外国人技能実習生の失綜・死亡事案について調査していた法務省のプロジェクトチーム(PT)は29日、2012~17年に43人が亡くなっていたことが新たに判明したなどとする調査結果を発表した。失踪者5218人をめぐっては、賃金台帳などの資料を入手できた事例のうち759人について、最低賃金違反など企業側の違法・不正行為の疑いを認める一方、約2300人については「書類不備」として違法行為等の有無を判断しなかった。…死亡事案は、法務省入国管理局が各地方入管局からの報告・届け出に基づいてまとめたもの。調査報告書は、地方入管局の報告漏れや本省の確認不足が主な要因で、「実習生の死亡事案を確実かつ網羅的に把握するための仕組みが整備されていなかった」とした。12~17年に亡くなった実習生は、従来の発表と合わせて171人。失踪者5218人(4280機関)に関する調査では、受け入れ企業の協力拒否や倒産・所在不明等が383機関・475人分あった。客観資料を入手できた事例でも、賃金台帳の一部不記載など「軽微な書類不備」が2060人、台帳廃棄など「重大」な書類不備が222人に上り、調査の不十分さが示されている。(『しんぶん赤旗』2019.03.30より抜粋。)

建設産業・経営

●「全国建設業協会(近藤晴貞会長)は18日、東京都千代田区の経団連会館で理事会を開き、働き方改革の実現に向けた2019年度の取り組みを決めた。前年度から実施している、公共工事設計労務単価の改定分を下請契約に反映する『単価引上げ分アップ宣言』では、引上げ率ではなく『引上げ金額』での対応を各建設業協会の会長に要請する。休日実績を1日増やす『休日月1+(ツキイチプラス)』運動も継続展開し、前年度比で毎月プラス1日の休日確保を目指す。理事会では『今後の働き方改革への取り組み』として、▽休日月1+運動の実施▽社会保険加入対策▽公共工事設計労務単価の改定を受けた取り組み――の3点を推進することを決めた。…全建は、政府の『働き方改革実行計画』などを受け、地域建設業が目指すべき働き方の指針となる『働き方改革行動憲章』を17年9月策定。長時間労働の抑制や生産性向上、適正価格・工期による受注の徹底など10項目を改革実現に向けて実施すべき取り組みとして盛り込んでいる。『今後の働き方改革への取り組み』は、憲章の理念を具体化するために機関決定し、各建協、会員団体と一体となった活動を展開する。全建は19年度の取り組みを4月に各建協に通知し、具体的取り組みの円滑な推進を要請する。」(『建設通信新聞』2019.03.19)
●「鹿島は20日、建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録情報を読み取るカードリーダーを、全国のほぼ全ての土木・建築現場に設置したと発表した。CCUSと連動した現場入退場管理システム『EasyPass』(イージーパス)を合わせて開発しており、試験運用を始めた。技能者の入退場時間や労務実績も蓄積し、現場運営全体の効率化につなげる。CCUS連携可能な入退場システムの開発と、稼働中現場での試験運用は同社が初めてという。」(『建設工業新聞』2019.03.22)
●「竹中工務店は、4月から建設キャリアアップシステム(CCUS)の本運用が始まることを踏まえ、年内にも全現場でカードリーダーの設置などを完了させる。改修工事のように短期間の現場では、タブレット端末を用いてデータが蓄積できる環境を整える。社内用情報共有システムとも連動させる方向で調整しており、現場管理の効率化も図っていく。 同社は、施工情報共有システム『WIZDOM(ウィズダム)』を用いて、協力会社と施工体制や安全関係などの情報共有を図っている。CCUSの導入に当たっては、ウィズダムと連動してデータを蓄積できる環境を整備し、施工体制台帳の作成などにも活用していく。独自のカードリーダーを開発しており、既に相当数の現場にカードリーダーを設置したという。短工期の現場では、米アップルのタブレット端末iPadにカードリーダーをつなぎ、データをやりとりする。将来的には、建設業退職金共済制度(建退共)や優良職長らに手当てを付与する『竹中マイスター制度』との連動も図る方向だ。」(『建設工業新聞』2019.03.25)
●「日本建設業連合会(山内隆司会長)は26日の理事会で、2019年度の事業計画を決定した。重点実施事業には、建設技能者の処遇改善など8項目を掲げている。特定技能外国人の適正・円滑な受け入れに向けては4月に『受入れ方針(仮称・安心受入宣言)』を決定する。週休2日の実現と建設キャリアアップシステムの普及を2大事業として引き続き推進し、元号が変わる節目の年に、働き方改革と生産性向上による『建設業の新たな進展』を推進する。…計画に盛り込んだ全313事業のうち、新規は11件(一部重複除く)となっている。重点実施事業には、▽働き方改革の推進▽建設キャリアアップシステムの普及促進▽建設技能者の処遇改善▽生産性の向上▽公共事業予算の安定的・持続的確保▽インフラシステム輸出戦略への貢献▽広報活動の充実▽適切な企業行動の確保――の8項目を位置付けた。」(『建設通信新聞』2019.03.27)
●「東日本建設業保証(東保証、三澤眞社長)は、地域建設業の人材確保や賃金、週休、事業継承などの現状把握を目的に実施した『地域の守り手』アンケートの結果をまとめた。2016年度から3年度の採用希望数と実際の採用数はいずれも増加傾向にあることが分かった。事業継承の課題が浮き彫りとなり、今後の地域の工事量や後継者・人材不足を懸念する意見が多く寄せられている。東保証が地域の安全・安心の守り手である地域建設業の現状を切り口にアンケートを実施するのは初めて。調査は東日本の23都県に本社がある顧客2万7954社を対象とし1月に実施し1万4728社(回答率52.7%)が回答した。回答企業は完成工事高が5億円未満(回答割合76.7%)、主たる業種は土木(43.3%)が多い。16~18年度(18年4~12月)の3年度の採用と離職状況を質問した。…求人の希望に対しどの程度の採用ができたかを示す『充足割合』は16年度54.2%、17年度56.1%、18年度58.3%。採用できた人数のうち、離職人数は16年度2898人(離職割合33.6%)、17年度3281人(34.3%)、18年度2539人(23.3%)だった。…1月時点の従業員の過不足感については、技術者、技能労働者とも『不足』『やや不足』と回答した企業の合計が70%弱を占めた。従業員の定着率向上のために取り組む各社の対策が3000件以上寄せられた。従業員の賃金の支払い形態のうち、技術者は月給制が全体の67.3%、日給月給制が31.7%だった。技能労働者は月給制35.7%、日給月給制61.9%だった。営業職と事務職はいずれも月給制が80%台となっている。完工高が大きくなるほど月給制の割合が高く、日給月給制の割合は低い。就業規則などに定めている週休はいずれの職種も『4週6休』が最も多かった。」(『建設工業新聞』2019.03.27)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「全国の約2割にあたる321市町村で災害時の司令塔となる『災害対策本部』の設置庁舎が、耐震不足であることが総務省消防庁の資料から分かった。財政難のなか、多額の費用がかかる改修や建て替えに踏み切れずにいるためで、ほかの公共施設に比べても対応の遅れが目立つ。被災時に迅速な応急措置の妨げとなる恐れがある。…学校や診療施設、社会福祉施設などを含めた公共施設全体の耐震化率は93%だった。トップの文教施設は99%に上る。災害対策本部を設置する自治体の庁舎の耐震化率は公民館や体育館なども下回っており、調査対象のなかでも最下位となった。」(『日本経済新聞』2019.03.17)
●「レオパレス21の施工不良問題で、創業者で当時の社長だった深山祐助氏による『トップダウンの指示』があったことが判明した。外部調査委員会は18日の中間報告で、一部の部署や職員ではなく、全社的な施工体制のずさんさを問題視。調査委は5月下旬までに最終報告をまとめるが、意図的な不正の有無や現経営陣の関与が焦点となる。…2018年春に発覚した一連の問題を巡っては、天井の耐火性に問題のある641棟に住む7700人の入居者が住み替えを迫られる事態に発展した。レオパレスは同日、すでに引っ越しなどを済ませた住人が425人にとどまっていると明らかにした。3月末までに1100人、4月以降に480人が住み替える見通しだが、残る約5700人は見通しが立っていない。報告書は『当時の社長である深山祐助氏の指示で、内部充填剤として発泡ウレタンを使用する方向性が示された』と明記した。祐助氏は06年まで社長を務め、顧客から預かった約49億円の資金を流用したとして引責辞任した人物だ。レオパレスは仕様書では違う内部充填剤を使っているとしていた。発泡ウレタンは施工手順を簡略化できる一方、法令が定める遮音性能を滴たしていない可能性がある。報告書は開発段階で十分な性能試験をしていなかった可能性を指摘。『全社的な開発・施工態勢のずさん・脆弱さ』があったと問題視した。…報告書は施工不良の背景の一つに、物件への入居者数を増やすため工期の短縮や施工作業の効率化を進めた点を挙げた。1990年代のバブル崩壊後、同社の業績は低迷しており、建築受注や賃料収入の拡大を最優先した可能性がある。一連の問題を踏まえ、国土交通省は3月から、有識者や自治体関係者らで構成する共同住宅の品質管理についての検討会を開催。他社の実態調査を実施するなどし、今夏をメドに再発防止策の検討を進めていく。同時に、レオパレスに対し建設業法に基づく処分を検討する。」(『日本経済新聞』2019.03.19)
●「不動産経済研究所(東京・新宿)が18日発表した2月の首都圏1都3県の新築マンション発売戸数は、前年同月比6.7%減の2323戸だった。2カ月連続の減少となり、マイナス幅は1月の1.8%から拡大した。景気回復が力強さを欠き、賃金も伸び悩んでいる。1戸あたりの価格は同2.5%増の6284万円と高止まりしており、マンション市況の回復は見込みにくい状況が続いている。消費者が購入した割合を示す月間契約率は65.6%と、好不調の目安となる70%を11カ月連続で下回った。2018年末にかけて各社が供給を増やした反動で、在庫圧縮を優先して供給を抑える動きが出ている。」(『日本経済新聞』2019.03.19)
●「政府の原子力災害現地対策本部は26日、東京電力福島第1原子力発電所事故で全町避難が続く福島県大熊町に、一部地域の避難指示を4月10日に解除することを提案し町も合意した。第1原発が立地する同県双葉町、大熊町での避難解除は初めてとなる。政府は放射線量の低下、生活インフラの復旧、復興公営住宅や仮設商業施設の整備が進んでいることなどを踏まえたとしている。…避難解除の対象は、放射線量が高い帰還困難区域を除く、居住制限区域と避難指示解除準備区域。2月末時点で140世帯374人が住民登録している。大熊町の人口は約1万人。役場新庁舎は避難解除対象区域に整備中で、開庁式後に引っ越し作業を行い、5月7日に業務を始める。」(『日本経済新聞』2019.03.26)
●「国土交通省は28日、実効性のある避難を確保するための土砂災害対策検討委員会の第3回会合を開き、対策のあり方をまとめた報告書廣を示した。2018年7月豪雨の特徴などを踏まえ、土石流や土砂・洪水氾濫によるインフラ・ライフラインの被害や市街地の被害予防のための施設整備を強化することを提言。被災のおそれが高く地域への影響の大きな石積砂防堰堤は早急に調査を実施し、改築・補強など必要な対策に取り組むべきだとした。流域面積が小さい渓流では、常時の流水がなく、谷出口に住家が近接している場合が多いことから、土石流が発生すると人的被害が発生する可能性が高いことを指摘。被害予防の観点から、小規模渓流の効果的・効率的な対策を求めた。地区の防災計画と連携した砂防施設の整備も提案。個別の状況を考慮した地区防災計画の策定を推奨し、それらを生かして効果的に被害の防止軽減や避難路、避難場所の安全度を向上させるための砂防施設の整備を積極的に進めることを盛り込んだ。」(『建設通信新聞』2019.03.29)
●東京都は29日、築地市場跡地(中央区、約23ヘクタール)を国際会議場・展示場(MICE)などの大規模集客・交流拠点として、民間主導で再開発する「築地まちづくり方針」を決めた。…方針では築地地区の将来像として「国際的な交流拠点」「東京の成長に大きく寄与する交流拠点」と提示した。地域を四つの区域に分け、国際会議場や高級ホテル、大規模集客・交流施設、研究開発施設などを整備する計画。20年ごろから民間事業者を募集し、段階的に開発を進める方針。(『しんぶん赤旗』2019.03.30より抜粋。)

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