情勢の特徴 - 2019年5月前半
●「住宅金融支援機構が提供する長期固定金利型の住宅ローン『フラット35』が、不動産投資に不正利用された疑いが出てきている。…機構は『不正が疑われる事例があるため調査中だ』としている。国交省も現時点では調査中との立場だ。そのうえで石井国交相は『本来の目的を逸脱した利用は遺憾だ』と語った。投資目的の借り入れだと確認できれば、資金の一括返還を求めることになる。」(『日本経済新聞』2019.05.08)
●「家計で貯蓄にお金をまわす傾向が強まっている。総務省が10日発表した家計調査によると、収入を消費でなく貯蓄などにあてた割合を示す『黒字率』が2018年度に30%を超えた。働く女性や高齢者の増加で家計収入は増えているが、将来への備えを優先する世帯が多い。家計調査によると、1~3月の消費支出は29万2284円(2人以上の世帯、月平均)で、前年同期に比べ実質1.9%増えた。4月下旬から5月上旬の大型連休を控え、宿泊や航空、鉄道の予約などが増加した。ただ消費が盛り上がっているとは言いがたい。1~3月の消費支出は10~12月比(季節調整値)でみると実質0.2%減だ。…2人以上の勤務者世帯の実収入は18年度で月56万5271円と前年度に比べ実質0.5%増えた。女性の労働参加が進むなど世帯収入が増加したが、消費がその分だけ伸びなければ黒字率は上がる。お金は消費の代わりに貯蓄に向かっている。」(『日本経済新聞』2019.05.11)
●「災害時の緊急対応の充実強化などを柱とする公共工事品質確保促進法の改正案が、10日の自民党・国土交通部会で了承された。公共工事品質確保に関する議員連盟(品確議連)の野田毅最高顧問(衆院議員)は、『この国会において既に提出されている建設業法、入契法(入札契約適正化法)の改正とあわせて、「新・担い手3法」の成立を期してしっかりと頑張っていきたい』とあいさつした。今後、野党との調整を経て、議員立法として今国会に提出し、成立を目指す。改正案は、全国で相次ぐ大規模な自然災害からの迅速かつ円滑な復旧・復興を目的とする緊急対応の強化や長時間労働の是正・従事者の処遇の改善といった働き方改革の推進、生産性向上への取り組み、公共事業に関する調査・設計の品質確保が柱となる。」(『建設通信新聞』2019.05.13)
●「PFI法が1999年の施行から20年を迎え、初期に建設された公共施設を中心に契約期間(維持管理を含む運営期間)を終えたPFI事業が増えてきた。人口や予算が少ない地方自治体などでは、公共機関主体の運営に戻った施設でサービス水準の低下が懸念される。内閣府民間資金等活用事業(PPP/PFI)推進室は、PFIをはじめ民間ならではの創意工夫が最大限反映できる運営手法の継続的な採用を促す。」(『建設工業新聞』2019.05.14)
●「日本建設業連合会の山内隆司会長は、4月26日に開いた定時総会後の会見で、建設キャリアアップシステムについて、『会員各社の取り組み状況を、国土交通省にも報告することで意識を高めていきたい』とし、『われわれの本気度を国交省にも理解してもらう。そのくらいの意気込みでやらなければならない』と、普及・推進に向けた取り組みの加速に力を込めた。制度の徹底・拡充に向けて将来的には、『ある程度行きわたったところで、国交省の直轄工事で義務付けることをお願いする必要も出てくると思っている』とし、『お願いできるようなところまで普及の輪を広げられるよう努力していきたい』と意気込んだ。」(『建設通信新聞』2019.05.08)
●「建設産業労働組合懇談会(建設産労懇、会長・久保田俊平日本建設産業職員労働組合協議会議長)は、6月の土曜閉所運動の取り組みを発表した。『一人一人の意識改革! 皆で集まり大きな改革! ! 実現させよう土曜閉所』をスローガンに、休日取得の強化月間として、各組織がポスターの作成・配布、加盟組合への協力要請、閉所状況の調査などに取り組む。」(『建設通信新聞』2019.05.08)
●「4月に本格運用を開始した『建設キャリアアップシステム』への技能者の登録件数が4月末で2万9753人となったことが分かった。本格運用を開始した当初の段階で約2万人(4月5日時点)となっていた登録者数がわずか1ヵ月足らずで約1万人も増加したことになる。」(『建設通信新聞』2019.05.10)
●「政府は企業が従業員に最低限支払わなければならない『最低賃金』について、引き上げ幅を拡大する検討に入った。14日に開く経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)で、民間議員がこれまでの実績を上回る『年率3%以上』の引き上げを提案する。政府は6月にまとめる経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に盛り込む方向で調整する。10月の消費増税を控え政府は低所得者層への配慮が欠かせないとみる。ただ景気冷え込みの懸念がくすぶる中での大幅な引き上げは経済界から反発が出る可能性がある。」(『日本経済新聞』2019.05.12)
●「建設産業専門団体連合会は、登録基幹技能者、職長、それ以外の技能者の能力評価と処遇に関する調査結果をまとめた。給与額(中央値)を見ると、おおむね技能の熟練に応じて水準が高くなっているものの、個別意見では登録基幹技能者の認知度向上やメリットを得られる仕組みを求める声が上がった。職長については、登録機関技能者に比べ客観的な評価が普及しておらず、元請けによる評価制度も一様ではない。一方で、今後の職長の処遇のあり方については、73.3%が『能力を重視してもっと格差をつけるべき』と回答しており、建設キャリアアップシステムを活用し技能のレベル分けなどを通じた統一的な体系の確立が急務となっている。」(『建設通信新聞』2019.05.15)
●「日本建設業連合会は4月26日、東京都千代田区のホテルニューオータニで2019年度定時総会・理事会を開き、山内隆司会長の再任などを決めた。山内会長は2期目のスタートに当たり、『今後、建設市場がいかなる状況になろうとも、(働き方改革が)決して後戻りすることのないよう道筋をつける必要がある』と決意表明し、『社会構造の変化に耐え得る建設業の確固たる礎』に位置付ける、建設キャリアアップシステムの普及・促進と週休2日の実現に引き続き全力を傾ける構えを見せた。」(『建設通信新聞』2019.05.07)
●「建設産業の今後を左右する大きな変化は、『令和元年』スタートの1ヵ月前、19年4月から始まった。具体的には、▽罰則付きの残業時間上限規制いわゆる『働き方改革』▽新たな在留資格である特定技能の『新外国人材受け入れ』▽本格運用が始まった『建設キャリアアップシステム』――の3施策だ。…中小建設企業にとって高いハードルと映る働き方改革や処遇改善、生産性向上などの取り組みを支援するのが、『公共工事設計労務単価』『公共投資』『新・担い手3法』『低入札価格調査基準(調査基準価格)』という4つのキーワードだ。」(『建設通信新聞』2019.05.07)
●「日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)が4月26日に発表した会員企業97社の2018年度受注額は、前年度比7.4%増の16兆6545億円となった。過去20年間で最高、1998年度以来の16兆円台を記録した。建設需要が底堅く推移。特に国内民間受注が好調で製造業、非製造業とも前年度を上回った。8年連続の増加となり直近20年間で最高値を更新した。」(『建設工業新聞』2019.05.07)
●「トヨタ自動車とパナソニックは9日、住宅関連事業を統合すると発表した。2020年1月に共同出資会社を立ち上げ、ここに両社の住宅関連の子会社であるトヨタホームやパナソニックホームズなどを移管する予定だ。移動サービスの台頭で、都市のあり方が変わる中、両者の資源を融合させ、街づくりに絡む事業を強化する。両社は共同出資会社『プライム・ライフ・テクノロジーズ』を立ち上げて、住宅関連のグループ企業を傘下にぶら下げる。両社の出資比率は同じ割合になる見通し。トヨタは子会社のトヨタホーム、トヨタホームの子会社であるミサワホームを移管。パナソニックはパナソニックホームズや松村組など子会社3社を移管する。共同出資会社には三井物産からの出資を受けることも検討する。」(『日本経済新聞』2019.05.09)
●「2020年夏季東京五輪の施設整備が急ピッチで進む一方で、大会期間中の都内建設現場の稼働に対する不安と不透明感も急速に高まっている。専門工事業が大会期間中の現場対応を確認しても、元請けは行政や民間発注者の対応をつかみかねて判断できない状況が続いているからだ。専門工事業は交通混雑緩和を理由に、現場が稼働するかどうか分からないなら、都内現場を一時的に離れ近郊で仕事をすることも選択肢としている。業界で不安が先行しているのは、いまのところ大会期間中の都内現場対応の判断を決定付ける舵取り役が不在なことも背景にある。」(『建設通信新聞』2019.05.09)
●「鹿島は全国で稼働する建築現場の労務状況がリアルタイムで把握できるシステムを開発した。職種や地域、現場ごとの集計が容易に行え、各支店や本社管理部門で確認できる。建設技能者不足が特に懸念される職種は、常時監視しているという。こうした情報を活用して建設技能者不足に早期対応することで、工程遅延や品質低下の防止につなげる。今後は、建設キャリアアップシステム(CCUS)と連携を図り、現場の日常管理業務にも生かしていく。」(『建設工業新聞』2019.05.09)
●「建物の柱や梁を結びつける『ボルト』が不足し、建設工事の遅れが相次いでいる。2020年開催の東京五輪関連や都心再開発に伴う建設工事が首都圏で増加。需要拡大に供給が追い付かず、地方都市でも子育て施設や橋などの整備の遅延が起きている。ボルトの品薄は続く見込みで、市民生活や経済活動への支障が増えそうだ。不足感が強いのはビルや橋などで鉄骨の接合に不可欠な『ハイテンションボルト(高力ボルト)』。メーカーに注文しても『年内に届けるのは無理と言われた』(関西地方の鉄鋼問屋)との声もあるほどだ。」(『日本経済新聞』2019.05.12)
●「国土交通省は10日、2019年3月末の建設業許可業者数(許可業者数の調査結果)を発表した。全国の許可業者は前年度比0.7%増の46万8311社。4年ぶりの増加だが、微増にとどまり横ばいの傾向が続いている。建設業許可業者数が最多だった00年3月末の60万0980社と比較すると、22.1%の減少となった。16年6月に新設した解体工事業の許可は1万2851社が取得した。」(『建設通信新聞』2019.05.13)
●「コンクリート製品などの建材メーカーの間で輸送費の上昇を理由にした製品値上げ機運が高まっている。運転手不足でトラック運賃が上昇し建材各社の収益を圧迫しているためだ。各社は東京五輪や首都圏再開発の関連工事などで需要が堅調なうちに値上げを浸透させたい考え。需要家との間で攻防となりそうだ。」(『日本経済新聞』2019.05.14)
●「日本建設業連合会(山内隆司会長)は、会員企業を対象に実施した週休2日試行工事の調査結果をまとめた。試行工事のうち、『発注者指定型』の受注件数は1割程度にとどまっているものの、工期延長が適切に認められたかの有無については75%が『認められた』と回答し、『受注者希望型』の46%を大きく上回っている。また、休日の取得状況(国の工事対象)でも、指定型は4週8休の割合が7割と高い傾向が見られた。」(『建設通信新聞』2019.05.14)
●「大林組の2019年3月期決算は、連結の売上高が前期比7.3%増の2兆0396億8500万円となり、初めて2兆円を超えた。手持ち工事が順調に進捗したことが主な要因。20年3月期も0.5%減の2兆0300億円と、2年連続の2兆円台を見込む。売上高の内訳は、建築が9.8%増の1兆5352億7100万円、土木が2.9%減の4102億4200万円、不動産事業その他合計が18.1%増の941億7000万円。海外事業では米国子会社ウェブコーや、タイ大林の建築で売上高が大幅に増加した。不動産事業も好調に推移した。」(『建設通信新聞』2019.05.14)
●「温暖化対策の長期戦略について政府は、温暖化ガスの排出量を今世紀後半の早い時期までに『実質ゼロ』とする初の戦略をまとめた。再生可能エネルギーの主力電源化や水素の普及、二酸化炭素(CO₂)を活用する新技術などによって達成を目指す。気候変動に伴う自然災害や海面上昇などから国際的な対策が求められている。『CO₂ゼロ国家』という旗を掲げて、技術力を総動員する。」(『日本経済新聞』2019.05.03)
●「国土交通省が4月26日発表した2018年度の新設住宅着工戸数は前年度比0.7%増の95万2936戸となり、2年ぶりに増えた。内訳は、持ち家が2.0%増の28万7710戸、貸家が4.9%減の39万0093戸、分譲住宅が7.5%増の26万7175戸。持ち家と分譲住宅は2年ぶりに増え、貸家は2年連続で減った。」(『建設工業新聞』2019.05.07)
●「オフィスビル仲介大手の三鬼商事(東京・中央)が9日発表した都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の4月の空室率は1.70%となり、前月比0.08ポイント下がった。月次データの残る2002年1月以来の最低を更新した。4月に完成した大規模な物件はなく、解約の動きも少なかったため、オフィスの需要が一段と逼迫している。」(『日本経済新聞』2019.05.10)
●「国土交通省は、道路上の電線類を地下埋設する無電柱化事業の一環で、既設電柱の撤去を促す方策を検討している。災害時の安全確保の観点から、緊急輸送道路のうち道路事業が実施される路線を優先対象区域に想定。猶予期間を公示から10年間とし、以降は道路上の占有を許可しない。電線管理者との協議も踏まえ、具体的な方策を固めていく。」(『建設工業新聞』2019.05.10)
●「物流施設の供給と需要がともに拡大している。不動産サービス大手CBRE(東京・千代田)によると、2019年1~3月の首都圏の大型物流施設の新規供給面積は約66万9900平方メートルで、四半期ベースで最高となった。新規需要も約62万3700平方メートルでこれまでの最高を4割上回った。大量供給でも空室率はわずかな上昇にとどまり、配送需要の強さを映し出している。」(『日本経済新聞』2019.05.14)